大統領令には従わない!…映画『キャプテン・アメリカ4 ブレイブ・ニュー・ワールド』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2025年2月14日
監督:ジュリアス・オナー
きゃぷてんあめりか ぶれいぶにゅーわーるど
『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』物語 簡単紹介
『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』感想(ネタバレなし)
キャプテン・アメリカが映画に戻ってきた
2024年のスーパーヒーロー系(もしくはスーパーヴィラン系)のアメコミ映画は各社で命運が分かれました。『マダム・ウェブ』、『ヴェノム ザ・ラストダンス』、『クレイヴン・ザ・ハンター』と最も劇場公開作品数が多かったソニーはシリーズを放り捨てる暴挙で失望をもたらし、ワーナー・ブラザースは『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』でナルシシズムに勝手に浸って去っていきました。ディズニー&マーベルの『デッドプール&ウルヴァリン』だけがお祭り映画的なムード全開で特大ヒットを記録。やっぱりみんなハシャぎたかったんでしょうかね。
2025年はどうなるのか…。ディズニー&マーベルが進める「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の2025年の第1弾がさっそく2月に参戦しました。
それが本作『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』。
2025年のMCUはこの2月の『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』と、5月の『サンダーボルツ*』、7月の『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』があり、前年の1作公開と打って変わって豊作です。
『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』はその名のとおり、「キャプテン・アメリカ」を主役にしたシリーズとしては4作目。しかし、『アベンジャーズ エンドゲーム』でキャプテン・アメリカはスティーブ・ロジャースから引き継がれるようにサム・ウィルソンに交代したので、今作はサム・ウィルソン版キャプテン・アメリカの華々しいスクリーン・デビューとなります。
サム・ウィルソン版キャプテン・アメリカの物語はドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でも描かれたのですが、あちらもアツい葛藤と宣言が込められていましたが、それを踏まえてこの翼と盾を持つキャプテン・アメリカがどんな正義を貫くのか…。注目したいところです。
久々のポリティカル・サスペンスのMCU映画というのも見どころですね。ただ、まあ、現実のアメリカ政治がしっちゃかめっちゃかなので、それで気分が乗れない悪影響がいささかあるにはあるのですけど…。
『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』を監督するのは、2015年に『The Girl Is in Trouble』で長編監督デビューし、『クローバーフィールド・パラドックス』(2018年)や『ルース・エドガー』(2019年)を手がけてきた“ジュリアス・オナー”。ナイジェリア出身の監督ということで、独特の才能がハリウッドで頭角を現しました。
主人公を演じるのはもちろん“アンソニー・マッキー”。アメリカ大統領の役には“ハリソン・フォード”が抜擢されていますが、こちらは本来は“ウィリアム・ハート”が2022年に他界したことによる起用です。大統領の役、既視感しかありませんね。
2025年はこの映画を観て、正義の翼と盾を受け取って、この現実の恐ろしい世界を飛び越えていきましょう。
『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』を観る前のQ&A
A:『インクレディブル・ハルク』やドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』を観ておくと主人公やサイドキャラクターのこれまでの物語がさらに伝わります。
鑑賞の案内チェック
基本 | — |
キッズ | やや暴力描写があります。 |
『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
アメリカは新しい大統領を迎えました。サディアス・E・“サンダーボルト”・ロスです。元陸軍将軍のロスは以前はハルクに絡んだ事件を担当し、その強硬的な姿勢から批判を浴びたりもしていました。また、スーパーヒーローたちを国の管理下に置く政策も推し進め、アベンジャーズといったヒーローチームと対立を起こしたりもしてきました。
しかし、現在のロスは安定を優先し、転身しました。人口が半分になったりする未曽有の異常現象を経験した社会は混乱しており、それを平和に着陸させる強いリーダーが求められたのです。
サム・ウィルソンはそのロス大統領にとって無視できない問題に対処するべく、現場に飛び降りました。サムはスティーブ・ロジャースから盾を受け継ぎ、「キャプテン・アメリカ」を継承し、ヒーロー活動をしていました。今はホアキン・トレスを良き相棒にして、彼に「ファルコン」としてのスキルを教えてもいます。
今回はサイドワインダーという犯罪組織の男が「ある物質」を盗んだため、それを取り返す任務です。見事な腕前でそのミッションは達成しました。
そしてサムはホアキンを連れて、アメリカ大統領がホワイトハウスで開催する国際会議に招待されたので行ってみます。そこにはイザイア・ブラッドリーも連れていきます。彼は実は超人兵士として実験を受けるも投獄されていた過去があり、政府に不信感を持っていました。なんとか説得してこの会議に参加してもらうことにしました。次の未来に進むために…。
ロス大統領は会議の場で宣言します。議題は突如としてインド洋に出現したセレスティアル島と名づけられた未知の巨大な構造物。そこで発見されたのがヴィヴラニウムさえも上回るアダマンチウムという物質で、多くの国々がこの資源を欲しがっていました。そこでロス大統領はこの資源を共有して分かり合うという条約を提案したのです。
その演説の直前、サムはロス大統領に個人的に呼び出され、アベンジャーズを再建しないかとも言われます。ヒーローをあれだけ忌み嫌っていたロスですが、今はヒーローをアメリカの手元に置き、国民を安心させることを優先したいようです。
サムはその件で頭がいっぱいになりながらロス大統領の演説を聞いていましたが、目の前で目を疑うような出来事が起き、それどころでなくなってしまい…。
やっぱり隣は…
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ここから『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』のネタバレありの感想本文です。
いつもと雰囲気の違うオープニングで始まる『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』ですが、紛れもなくMCUらしいエンターテインメント大作であり、「キャプテン・アメリカ」の4作目として面白さを上積みして盛りだくさんで届けてくれました。
新たにサム・ウィルソン版のキャプテン・アメリカとなったことで、飛行アクションも展開。今作にいたっては日米の戦闘機とドッグファイトするという、他の映画でも観たことがない構図のハイスピード空戦をお披露目。
スティーブ・ロジャース版のキャプテン・アメリカは超人と言えども戦闘のレパートリーは豊富ではなかったのですけども(そこがまた格闘の創意工夫がみられて面白かったのですが)、サムはもう何でもできますね。
正直、作中で「自分は超人じゃないから…」なんて卑屈なことを言ってましたけど、そのやたら強すぎる盾があって、ワカンダ製のウィング・スーツもあって、「お前、じゅうぶん恵まれた戦闘力だよ」って思いましたよ。あれだけ戦闘機よりも超高速で飛んでGに耐えているんだから「もう超人並みでは?」と思わなくもない…。
サムの物語としては、イザイア・ブラッドリーという大先輩が今作ではロス大統領暗殺未遂の容疑者として投獄される事態に陥り、正義が揺らぎます。イザイアの物語はドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でも描かれており、「黒人がアメリカを背負ったヒーローになること」の影響力というものを突き付ける存在でした。
今回の映画でも明らかに黒人史を土台にしたドラマが展開されるのですが、映画だとだいぶ人種的な語り口は見た目は薄くしており、そのかわりフワっとしたヒーロー論を語るのに終始しがちではありました。
ここは『ブラックパンサー』と比べるとだいぶ控えめです。
それでもホアキンというキャラクターの追加が良い味をだしており、サムはちゃんと誰かの憧れの目標になれているという肯定が最後は描かれ、決して政治の駒ではないというバランスで軟着陸させていました。
そしてやっぱりバッキー・バーンズが隣にいると安心感が違う…。あの2人の短い掛け合いだけでこっちはニッコリできますよ。
日本の絡まり方のぎこちなさ
『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』でイマイチだったのは、ポリティカル・サスペンスの部分ですかね。
まずロス大統領がレッド・ハルクになるのはもう事前の公開前の段階でバレバレでしたので、観客としてはわかったうえで観ることになります。そうなってくるともうサプライズもないわけです。「早く戦わないのか…」と焦らされているようなだけで…。
あとは「どうレッド・ハルクを倒すのか」というそこに注目が集中するのですけども、サムの説得に桜の花びらを添えて解決してみせるというセンチメンタルな閉幕でした。
いや、今回のサムが共感性を得意技にしているのはわかります。軍隊でもカウンセラーをやっていたくらいでケアすることの重要性をわかっている男ですから。ただ、あのロスの場合はそういう次元なのかというツッコミはあるにはある…。ケアってそんな一瞬でなだめる裏技ではないですからね。
ロス大統領絡みはちょっと拍子抜けです。これだったらもっと悪に染まりきっているほうがいっそのこと良いのではと思ったりもする。『ザ・ボーイズ』のように振り切ったスーパーヒーロー政治ドラマも直近であるのですし…。
次に日本など他国との絡め方がどうも下手な感じがします。今回は『エターナルズ』で出現したセレスティアルの残骸をめぐる多国間の同盟が焦点になり、そこにはアメリカ以外に、インド、フランス、日本が関与しているようです。
日本にいたっては「日米開戦か?」ぐらいの緊迫感になり、MCUでもこれまでにないほどに日本という国がドラマの表舞台に引っ張られます。あの展開を観ていてあらためて思いましたけど、MCUの世界には日本国内にはスーパーヒーローは公然といないんだな…。いたら尾崎総理大臣が連れてくるもんね…。
しかし、セレスティアルの島があるのはインド洋らしいので、そこに日本が関わるのはどう考えても変です。普通はインド、中国、アフリカ諸国、中東諸国、オーストラリア…そのへんの顔ぶれになるでしょう。
私が思うに今作で日本が役割を担ったのは一番「無難」な国だったからなのではないかな、と。アメリカと同盟を結んでいて、亀裂が入ると大ごとにはなるけれども、わりと簡単に修復してくれそうな国。最も都合がいいのは日本だったのではないか…。
リアルで考えたら今の日本政府はアメリカ大統領がどんなに腐った巨悪でも同盟関係を崩さないと思ってますけどね(今のトランプ政権への対応をみれば一目瞭然)。アメリカの犬ですから。
そうやってみると、今回の日本描写はやや日本を侮りすぎだとも思います。物語内ではポリティカルに絡んでいるように見せかけていますが、日本に政治力は無いと言い切っているようなものです。私に言わせれば、アメリカの悪いところを一番にマネしているのが日本ですよ。日本の総理大臣も一緒に刑務所にぶち込むくらいしないと。
また、“シーラ・ハース”演じる政府高官で元ブラック・ウィドウのルースや、シークレットサービスのエージェントのレイラ・テイラーといった女性陣は、ほとんど存在意義が無く、後手後手で翻弄されているだけの役回りなのも残念でした。ルースはもともとイスラエルのヒーローキャラクターの予定だったという噂もありますが、今回の物語ならば要るのはこれこそ日本のヒーローでしたよ。日本のヒーロー不足が浮き彫りになってきているな…。
MCUはなんだかんだでまだまだアメリカ中心的すぎますね。今回みたいにグローバルな展開をすると余計にその欠点が浮上します。
今後のMCU展開の説明役を担当したサミュエル・スターンズの言うとおり、アベンジャーズ再結成は次への持ち越し。またもお預けを食らうファンにはいつもの光景。正真正銘の新世界はいつ来るのかな…。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
関連作品紹介
作品ポスター・画像 (C)2025 MARVEL. キャプテンアメリカ ブレイブニューワールド キャプテンアメリカBNW
以上、『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』の感想でした。
Captain America: Brave New World (2025) [Japanese Review] 『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』考察・評価レビュー
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