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ドラマ『ベビー・シッターズ・クラブ』感想(ネタバレ)…イマドキな女の子たちにおまかせ!

ベビー・シッターズ・クラブ

イマドキな女の子たちが世間の面倒を見ます!…ドラマシリーズ『ベビー・シッターズ・クラブ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Baby-Sitters Club
製作国:アメリカ(2020年)
シーズン1:2020年にNetflixで配信
原案:レイチェル・シューカート

ベビー・シッターズ・クラブ

ベビー・シッターズ・クラブ

『ベビー・シッターズ・クラブ』あらすじ

何かやってみたいという若いエネルギーを持てあましている女の子たち。そこで思いついたのがベビーシッターだった。もっと便利で利用しやすいサービスを自分たちなら提供できる。そう確信した女の子たちは「ベビー・シッターズ・クラブ」を設立。クリスティ、メアリー・アン、クラウディア、ステイシー、ドーンの5人が集い、自立できるやりがいを感じながら活動を始める。

『ベビー・シッターズ・クラブ』感想(ネタバレなし)

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女の子が世間の面倒を見る?

育児は大変です。そんなのわかりきっています。でも世間は本当の意味ではその苦労をなかなか理解してくれなかったりします。

マイボイスコム株式会社のアンケート調査によれば、とくに女性は子育てをするうえで困っていることとして「精神的な負担」「自分の自由な時間が少ない」を挙げています。男性よりも女性の方がこの回答をしている割合が明らかに多いのは、育児におけるジェンダーの不平等を強く浮き彫りにさせていますね。

そもそも育児は親だけで完了するにはあまりにハードなミッションです。日本であればその支援として託児所や保育園などがありますが、全員に等しく気軽に行き渡っているとは言えません。

一方のアメリカでは「ベビーシッター」が日本よりも一般的です。しかも、中高生がアルバイト感覚でやっていたりします。これがアメリカの中流階級のスタンダード。シッターというか、学校で年長者が下級生の面倒を見ている感じですね。これによって親たちは自分の時間を持つことができます。

ちょっと日本では考えられないです。本当にそれは子どもにとって良いことなの?と懸念を持ってしまうかもしれません。でもこのドラマシリーズを観れば、それも少し払拭できるのではないでしょうか。

それが本作『ベビー・シッターズ・クラブ』です。

もともとはアン・M. マーティンが書いて大ヒットした同名小説が原作になっており、かつては1990年にテレビシリーズ化されて、1995年には映画にもなりました。映画はそこまでヒットしたわけでもなく、評価もまずまずといった平凡さに落ち着いていたので、すっかりもう埃をかぶった作品と思っていた人もいたかもしれません。

ところが、Netflixでドラマシリーズとしてリブートされ、2020年にシーズン1が配信されました。これが過去の映像作品もびっくりの高評価。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では批評家スコアが100%となっており、Netflixで配信された歴代ドラマシリーズで頂点に仲間入りする快挙です。

物語自体は中学生程度の年齢の女の子たちがシッターをするグループを作って活動する…本当にそれだけの内容です。世界を揺るがす大事件もなく、超常現象もなし、過酷な運命を背負うでもない。なぜそんな普通すぎる日常モノがこうも絶賛されたのか。

それは観てのお楽しみと言いたいところですが、ひとつ言えるのは、しっかり現代的なアップデートを巧みに組み込んでおり、今の社会における「育児とは」「女の子の自立とは」というテーマに快活に答えを出せているのが気持ちがいいです。

世間が女の子たちの面倒を見るんじゃない、女の子たちが世間の面倒を見る。そんなコンセプトが見えてきます。本作を観ることで私たち視聴者がこの作中の女の子に教わることになりますね。

でも難しい話ではありません。王道の青春ドラマであり、慣れないシッター業に対して愛嬌のある悪戦苦闘を展開する姿にホッコリする、そんな癒しストーリーです。

昨今は育児に関してシリアスな映画もいくつもありました。『タリーと私の秘密の時間』とか。そういうのも大事なのですが、『ベビー・シッターズ・クラブ』のように現実的課題から逃げない姿勢を見せつつもポジティブに描いてみせる作品も大切だと思います。

リニューアルした『ベビー・シッターズ・クラブ』は、ドラマ『GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』で脚本とプロデューサーを務めた“レイチェル・シューカート”が原案になっています。

各エピソードの監督は『ラフ・ナイト 史上最悪!?の独身さよならパーティー』の“ルシア・アニエロ”、『アンブレイカブル・キミー・シュミット』の“リンダ・メンドーサ”など。

そして何よりも魅力的な女の子たちを活き活きと演じる子役も見どころ。基本的にキャリアの浅い子ばかりなのですが、みんなが楽しそうで、こっちまで元気が伝わってきます。彼女たちのシスターフッド全開の物語にパワーを注入されるでしょう。

個人的な注目の俳優は、主要キャラクターのひとりを演じる“モモナ・タマダ”ですね。彼女は日系カナダ人で、まだまだ業界では少ないアジア系俳優の若手有望株として今度も大活躍していってほしいところ。すでに演技も上手いですし、チャンスさえあればこれからぐんぐん伸びるのではないでしょうか。

また、あるエピソードではトランスジェンダーを題材にしたものがあって、それが私としてはクリティカルヒットするほどの心が満たされるストーリーでした。その回だけでも激推しできます。

シーズン1は10話構成で、各話22~27分程度の短さなので、サクッと観れると思います。ちょっとした時間の空きに鑑賞してみてください。

オススメ度のチェック

ひとり◎(気軽に観れる楽しさ)
友人◎(オススメしたくなる)
恋人◎(気分も明るくなれる)
キッズ◎(子どもにも最適のドラマ)
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『ベビー・シッターズ・クラブ』予告動画

『ベビー・シッターズ・クラブ』予告編 – Netflix
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ベビー・シッターズ・クラブ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):シッターやります!

ストーニーブルックのミドルスクール。7年生(日本で言うと中学1年)の新学期が始まり、クリスティ・トーマスはやる気に満ち溢れていました。クリスティの父は弟が生まれてからすぐに出ていってしまい、音信不通。今は母と兄と弟と暮らしています。仕事で忙しい母に代わって、弟の面倒はいつもクリスティが見ています。

親友はお隣に住んでいて、クリスティの長々した話にも嫌な顔せず付き合ってくれる、聞き上手なメアリー・アン・スピア。彼女は母を1歳で亡くして父親と生活しています。その父はやや過保護です。

もう片方のお隣には、同年代のクラウディア・キシが住んでいて、この3人で昔はよく遊んでいました。でも今はクラウディアはファッションや男の子に興味を持ち始め、イケてるグループに格上げした感じでちょっと距離ができてしまっています。

ある日、母はクライアントとの接待があり、クリスティもメアリー・アンとお泊りする予定だったので、弟の世話ができる人を探します。しかし、全然見つかりません。値段も高く、実用性がないものばかり。思わず母は愚痴ります。私が子どもの頃は簡単に近所に頼めたのに…。

その瞬間、クリスティは思いつきました。自分たちでベビーシッターのビジネスをしよう、と。需要があるし、半額程度でも子どもの自分ならじゅうぶんな儲けになる。さっそくメアリー・アンに説明し、彼女も仲間に入れます。でももっと一緒に働けるメンバーが必要です。

クラウディアはOKしてくれました。彼女の家で、祖母のミミに迎え入れられて部屋にあがります。その部屋にはニューヨークから引っ越してきたばかりというステイシー・マギルがいました。シティから来たと気軽に言うそのステイシーの都会っ子っぷりに眩しさを感じるクリスティとメアリー・アン。とにかくこの4人で「ベビー・シッターズ・クラブ」を始めることにします。

クラウディアの姉でオタクのジャニーンの持っている回線を利用して固定電話を仕事受付に用いることに決め、拠点はクラウディアの部屋に決定。数学が得意なステイシーがマーケティングと会計をやり、デザインが得意なクラウディアにその仕事を任せ、書記をメアリー・アンがやりたがり、いざビジネス開始です。

チラシをご近所に配布するというアナログな方法で宣伝。電話をうずうずと待っていると、かけてきたのはクリスティの母の恋人であるワトソン・ブルーワーでした。苛立つクリスティ。部長としてどうしても張り切りすぎて仕切りたがるクリスティに、クラウディアはメンバーの意見を聞いてと注意します。やむを得ずメアリー・アンがそのシッター依頼の仕事を担当することに。

次のミーティング。クリスティは反省し、メンバーに謝罪します。クラブはみんなのもの。

そしてクラブにドーンというメンバーが加わり、たくさんの仕事が舞い込んできます。世間には育児に助けを求めている人たちがいっぱいいます。「

ベビー・シッターズ・クラブ」は忙しくなりそうです。

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自分らしさを磨くためのシッター業

『ベビー・シッターズ・クラブ』のリブートと聞いても私は当初はそれは上手くいくのかとやや半信半疑でした。なぜなら女の子たちがシッターをするという作品の土台が今の時代に合わないのではないかと思ったからです。

古臭い女性らしさ、つまり「女とは育児をするものである」という固定観念を増長する可能性も大いにあるでしょうし、それは完全にジェンダーの現代的価値観に逆行しています。

しかしさすがにそんな落とし穴にはハマっていませんでした。それどころかちゃんと現代のニーズに答える作品にアレンジされていました。

本作ではただ女の子たちがシッター業をするだけではありません。その過程で「自立」「成長」を手にしていく、アイデンティティ形成の物語になっています。

例えば、主人公のクリスティはとくにフェミニズムへの意識が高いものの、頑張ろうという気持ちだけが先走りすぎて若干周りに迷惑を与えていましたが、シッターを通して相手を信頼し、助け合うことを理解します。孤高のフェミニストからシスターフッドへと進化するわけです。

シーズン1第8話「Kristy’s Big Day」では、なんだかんだで自信たっぷりで知識人として振る舞うクリスティですが、実はまだ生理を経験しておらず、大事な日に初潮を迎えてしまって困惑しているときに、クラブの仲間が優しく助けてくれます。さりげないことですが、これもシッターの精神と同じ…困っている人を助ける、困っているときは素直に助けられる…ですね。

日系アメリカ人の家系のクラウディアは、アジア系ながらファッションリーダーとして描かれており、そのステレオタイプを吹き飛ばす描写もフレッシュです。そんなクラウディアは、大好きな祖母がかつてカリフォルニア州にあった日系アメリカ人収容所のひとつ「マンザナー強制収容所」にいた辛い経験があることを知り、自分のルーツを知ります。それが好きなデザインの趣味にも生かされていきます。このエピソードも良かったです。

ニューヨーカーだったステイシーは、1型糖尿病であり、その発作のせいで騒ぎを起こしてしまい、なくなく転校してきた経緯がありました。そのインスリン注射が常に必要になってくるステイシーをシッターとして信頼できるのか…これはそのまま病気や障がいなどのハンデを抱えた人の雇用問題を描いていると拡大解釈できるわけであり、とてもターゲットの広い問題提起です。その作中での回答も素晴らしいものでした。

シーズン1の終盤はキャンプでの大規模ストライキ。ただのシッター業を描くものだと思ったら、社会運動へと発展していく。このあたりもいかにも今のZ世代を直撃するストーリーだと思います。

また、地味ながらしっかり固定電話ベース(「olden times phone」って呼ばれてた)でビジネスをしているのもツボですね。作中でも言ってましたが、ネットベースのビジネスは年齢制限的に12歳以下だとコンプライアンス違反なので、そこを守っているあたりは律儀です。

一方で、なんでも子ども任せにしてはいないバランスも良い部分。ちゃんと必要なときにクリスティの母などが前に出てきてガツンと言ってくれる。この適度な「親の務め」の描写もグッドでした。

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ベスト・アライです

私の中で一番お気に入りのエピソードはシーズン1の第4話「Mary Anne Saves The Day」。

口下手で人前で意見をハッキリ喋れないメアリー・アン。ベイリーという子のシッターを指名で任されます。指名はルール違反ですが「NO」を言えません。

そのシッターをする対象となったベイリーはトランスジェンダーでした。すぐにそれを察知して、それでも自然体でドレス姿のベイリーと王女ごっこで遊んであげるメアリー・アン。

しかし、そのベイリーが急に体調を崩し、ひとりだったメアリー・アンは適切に病院への緊急搬送に動き、さらにそこで“男の子”用の入院着を嫌がるベイリーを見て、初対面の医者にこう毅然と言います。

「カルテではなく“彼女”を見てください。男の子として扱うのは存在を否定するのと同じ、自尊心を奪われたように感じるんです」…そして青色以外の服を要求します。

このエピソードで素晴らしいなと思うのは、ベイリーがトランスジェンダーであると説明的なセリフで言及することもなく、その言葉自体すら使っていないこと。「古い服」とベイリー自身が表現する男の子の服がクローゼットに並んでいる光景…これだけで観客に一発でわからせてくれます。

そして消極的で自己主張できないメアリー・アンがベイリーのために「アライ(セクシュアル・マイノリティに寄り添う支援者のこと)」になってみせる。これはメアリー・アンとベイリーの双方にとっての自己肯定の相互作用です。

それはつまり、親と子だけではなかなか解決できない問題がLGBTQ界隈にはあり、それを担えるポジションとシッターを重ねているものでもあり、とても素敵な視点だなと思いました。似たようなトランスジェンダーを扱った作品は『デンジャー&エッグ なかよし2人のおかしな大冒険』『ロッコーのモダンライフ ハイテクな21世紀』など子ども向けアニメにはありましたが、こうして実写作品でも観られるとは…。

トランスジェンダーだからといって悲劇の物語にしなくていいんですよ、ほんと。むしろ当事者が求めているのはこういうさりげなくもパワフルな肯定感をプレゼントするストーリーですからね。

シッターは他人ですけど、本当に大切な役割を担える。それは子守なんて話にはとどまらない。そういう無限の可能性を見せてくれましたし、私たちが忘れかけている共助の意味を考えさせる、とても印象的なエピソードでした。

個人的には2020年のベスト・アライ賞ですね…(勝手に新設)。

『ベビー・シッターズ・クラブ』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 100% Audience 79%
IMDb
7.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 8/10 ★★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)Terrible Baby Productions, Netflix ベビーシッターズクラブ

以上、『ベビー・シッターズ・クラブ』の感想でした。