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『キャッシュトラック Wrath of Man』感想(ネタバレ)…現金輸送車の中にはこの男がいる

キャッシュトラック

現金輸送車からこの男が出てきたら逃げよう…映画『キャッシュトラック』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Wrath of Man
製作国:アメリカ・イギリス(2021年)
日本公開日:2021年10月8日
監督:ガイ・リッチー

キャッシュトラック

きゃっしゅとらっく
キャッシュトラック

『キャッシュトラック』あらすじ

ロサンゼルスにある現金輸送専門の警備会社フォルティコ・セキュリティ社では、特殊な訓練を受け、厳しい試験をくぐり抜けた警備員たちが現金輸送車(キャッシュトラック)を運転していた。それは危険と隣り合わせの仕事。以前も凶悪な強盗犯に紙幣を奪われ、仲間を殺されている。そこに新人のパトリック・ヒル、通称「H」が警備員として採用された。この口数の少ない男には驚くべき秘密があるとは知らずに…。

『キャッシュトラック』感想(ネタバレなし)

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あのコンビが帰ってきた

現金輸送車…それはある所からある所へと多額の現金を運ぶ車。何でもデジタルになってきている現代でも、この現金を運搬するという職業はまだまだ消えそうにはありません。

この現金輸送車を見たことはあるでしょうか。たまに道路を走っています。でも現金輸送車というのは実は意外にもいろいろな種類があって、あからさまに現金輸送車だなとわかる強固そうな車もあれば、一般車両と外見はそう変わりないように見える現金輸送車もあったりするのです。

もちろんたいていの現金輸送車は厳重な防御を有しています。防刃・防弾などの強力な装甲だったり、内部も何重にもロックされていたり、そう簡単に強盗に奪われないようになっています。銀行の本店から支店へと運搬する現金輸送車は警察車両に警護されている場合もあります。性質上、狙われやすいのでセキュリティはあるだけ有用だとは思いますが…。

なかなかに異色の存在なので見かけるとなんとなく気になってきますが、変に眺めていると不審者だと思われかねないのでじっくりは観察できない…。

でも映画なら現金輸送車を見放題。なんだったら襲われているところも鑑賞できる。映画における現金輸送車の信頼性は低いですよね。たいていはやられてしまいますから。

今回紹介する映画も現金輸送車を題材にしている作品です。その名も『キャッシュトラック』

邦題は文字どおり現金輸送車のことですね。原題は「Wrath of Man」なんですけど、日本人には「wrath」という単語は理解できないと思われたのか…。「wrath」は「怒り」の意味です。

『キャッシュトラック』を語るうえで真っ先に挙げられるのは、“ガイ・リッチー”監督“ジェイソン・ステイサム”のコンビです。この2人の付き合いは古く、大切な関係です。“ガイ・リッチー”監督の長編デビュー作である『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998年)からの間柄であり、以降も『スナッチ』(2000年)、『リボルバー』(2005年)でもタッグを組みました。今や実写版『アラジン』など大作にも抜擢される“ガイ・リッチー”監督ですが、その初期のキャリアを支えたのが“ジェイソン・ステイサム”。そして水泳飛込競技の選手だった“ジェイソン・ステイサム”を俳優へと躍進させたのが“ガイ・リッチー”監督。この2人、そこらへんの婚約者カップルよりも深い関係で結ばれているのです。

今作『キャッシュトラック』で16年ぶりにコンビ復活となれば、それはファン界隈は盛り上がります。昔に戻ったような気分です。やっぱり今も超仲良しじゃないか!っていう。

一応、本作は2004年のフランス映画『ブルー・レクイエム』のハリウッド・リメイクということになっているのですが(私は観たことがない)、もうだいたいの観客は“ガイ・リッチー”監督と“ジェイソン・ステイサム”のコラボレーションの再開にしか興味ないだろうな…。

『キャッシュトラック』では“ジェイソン・ステイサム”が現金輸送車を守護します。最強の防御だよ…。

他の俳優陣は、『ハドソン川の奇跡』『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』の“ホルト・マッキャラニー”、『アウトポスト』の“スコット・イーストウッド”、『テッド・バンディ』の“ジェフリー・ドノヴァン”、『マイナス21℃』の“ジョシュ・ハートネット”、『ジェントルメン』の“エディ・マーサン”、『フロム・ザ・ダーク』の“ニアム・アルガー”、『デトロイト』の“ラズ・アロンソ”、『運び屋』の“アンディ・ガルシア”など。かなり登場人物は多いのですが、まあ、察しのとおり、全部“ジェイソン・ステイサム”が持っていくので…。

それにしても日本版のポスター、元をがっつり改変してきたなぁ…。わからなくもないけど、銃までハッキリ握らせてしまうと、体裁としてあった主人公のミステリアスさみたいなものはもう欠片もない…。“ジェイソン・ステイサム”だからわかるでしょ…ってことなのかな。「英雄(ヒーロー)か、悪党(ヒール)か」というキャッチコピーもあんまり意味をなしてないけど…。

なお、本作では“ジェイソン・ステイサム”は泳ぎません。泳いでいる“ジェイソン・ステイサム”の筋肉を見たい人は『MEG ザ・モンスター』を、それが終わったら『キャッシュトラック』で陸上を二足歩行で歩く“ジェイソン・ステイサム”をお楽しみください。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:ジャンルが好きなら
友人 3.5:俳優ファン同士で
恋人 3.0:ロマンス要素は無し
キッズ 3.0:暴力する人だらけ
↓ここからネタバレが含まれます↓

『キャッシュトラック』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):新人は最強のセキュリティだった

1台の現金輸送車が走っています。車内では警備員が雑談交じりで仕事をこなしており、いつもの日常。すると急に攻撃を受け、フラッシュに目が眩み、運転していた警備員2人は銃を突きつけられ、外に出されます。工事車両員に偽装した襲撃犯が現金の詰まったバックを車に移していくのが見えます。しかし、どこからか発砲音。殺したのか、殺しは計画外だったのか…慌てる襲撃犯の仲間たち。そして退散していき…。

現金輸送を専門とするフォーティコ・セキュリティ社に、ひとりの男が面接を受けていました。名前はパトリック・ヒル。上司のテリーに代わり、ベテランの警備員であるブレットが説明します。以前に勤務中に襲撃された事件があったせいで訓練を強化したらしく、これからその実力をテストしないといけないそうです。「H」と呼ばれたその新人の男は「射撃訓練は? 始めるか?」と聞かれ、「いつでも」と淡々と答えます。

テストは滞りなく進行。体力、射撃、運転。やや危なっかしい場面もありましたが、合格ラインの70点ギリギリでした。これならば良し。

更衣室で準備する一同の前で「H」は紹介されます。がさつながら仲間同士の絆は深そうです。

集金の初仕事もブレットのわかりやすい説明もあって無事に完了。

初日も終わり、飲みに誘われます。ビリヤードをしていると「前の仕事は?」と同僚に聞かれますが、口数は少なく愛想もない「H」。しかし、威圧力はあるので同僚はたじたじ。

次の日の仕事。港で待っていると、ブレットからの無線で襲われているような声が聞こえます。隣のデイヴは慌てて逃げようとしますが、「H」は冷静に語りかけ、「俺は見捨てない、彼を取り戻す」と発言。車を始動して指示に従えと無線があったので停車。そこに覆面の人間がブレットを人質にして、「カネを荷台に投げ入れろ」と言ってきます。

その瞬間、指示に従ったかに見えた「H」は冷静沈着に正確な射撃で襲撃者を撃ち殺していきます。逃げる襲撃者をスタスタと歩いて追い詰め、「誰に雇われた?」と質問しながら答えない相手を撃つ…。ブレットもデイブも唖然です。

会社に戻ると上層部に質問されます。合格点ギリギリの新人がなぜ6人を怪我もなく殺せたのか…。過去の襲撃の映像を見せられ、神妙な面持ちで映像を見つめる「H」。

テリーにセラピーに通いなさいと言われますが、「仕事をしただけ」と事も無さげに対応。社長のブレイク・ホールズからは「君はヒーローだ」と言われ、社員もみんな祝ってくれます。

3カ月後。今度はフルフェイスの襲撃者に襲われました。しかし、「H」の顔を見ると武装していて有利なはずの襲撃者はみんな逃げたのです。にわかには信じられない話にさすがのテリーも困惑。

この「H」…一体何者なのか。

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3つの視点が現金輸送車を取り囲む

“ガイ・リッチー”監督は群像劇が得意で、多数の登場人物たちが出てくるそのドラマを上手くテンポよくまとめるのもお手の物。前作『ジェントルメン』もそうでした。

この『キャッシュトラック』は引き金となる現金輸送車強奪事件を3つの視点で描くという、前半はやや変則的な構成になっています。

最初の視点は、フォーティコ社の警備員視点。というよりは車内映像です。ずっと固定カメラなので、とりあえず襲撃されたのはわかるけど、詳細まではわからない。誰かが撃たれたらしいけど、誰が殺されたのかはわからない。そういう謎の多い場面です。ここに伏線が仕掛けられるわけですが…。

続いて「H」の視点。息子を車に乗せて走っていて、少し仕事をこなすことになったものの、その何気ない現金輸送車が曲がる方向を教えるという行為が、まさか自分の大切な人を奪うなんて…。ここで「H」の動機がわかります。巻き添えで撃ち殺された息子の仇を討つべく、彼はフォーティコ社に乗り込んだのでした。

最後は襲撃犯側の視点。この襲撃者は一枚岩ではなく、それぞれの思惑が錯綜しており、とくにジャンという男の暴走が現金輸送車襲撃が殺人の現場になってしまう原因となっていました。ここでやっと「H」とジャンという2人の男同士が明確な線で繋がり、物語は次の段階へと進みます。

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絶対に新人じゃない新人

それにしてもあの「H」の新入社員としての違和感。もはやギャグです。どう考えてもただものじゃない、序盤から殺気がスゴイですよ。おそらく監督としてもここは笑える場面だと思ってもらうつもりなんじゃないか。

普通は新人いびりみたいなのがあったりするものですけど、この「H」は先輩同僚を威嚇して追い払えますからね。シマウマの群れに仲間入りした、シマウマだと思っているライオンみたいな…。この本質的な場違いさ。「H」は潜入任務は得意じゃないんだろうな。

殺していくシーンもシュールで、基本はテキトーな気軽さで撃ち殺すんですね。しっかり狙いを定めて撃つみたいな型すらもない。「はい、ちょっと通りますよ~」というお気楽さでバンバンと射殺していく。

このあたりも“ガイ・リッチー”監督らしいテンポの良さ。また、デイナとは肉体関係を持つのですが、ベッドシーンは描かず、その後の質問タイム(脅し)はじっくり描く。この意地悪さも面白おかしくて、ここでもくしゃみのようなちょっとした動作で相手を銃で脅していくものですから、「H」さん、怖い…。

実際、こういうセキュリティ企業って入社させる前に身辺調査とか、犯罪歴とか調べないのかな。たぶん信頼性を売りにする職務だし、それくらいはするよね(アメリカではそれも違法なのかな)。私が面接官だったら、これは差別になっちゃうけど、“ジェイソン・ステイサム”並みの強者オーラを放つ男だったら、採用を躊躇ってしまうけど…。

でも本作の上司のテリーはいいやつでした。ちゃんとPTSDの心配もしてくれる社員想いで…。“ジェイソン・ステイサム”を見抜けたかったことだけが痛恨のミス…。

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わかりきった答え合わせ

『キャッシュトラック』の後半はいよいよ決着のときです。でも誰が死んで誰が生き残るのか、おおよそはキャスティングでわかっちゃうんですよね。やっぱり有名な俳優は最後まで生き残っていくことになりますから。

“ホルト・マッキャラニー”演じるブレットの裏切り、そして“スコット・イーストウッド”演じるジャンのひとり勝ち。

けれども最後に座っているのは…。

予定調和です。わかりきった答え合わせ。「“ジェイソン・ステイサム”の勝ちである」という…。

凶悪犯10人と警官100人、対決したらどちらが生き残る? “ジェイソン・ステイサム”。

イチかバチかのギャンブルをしました。勝つのは誰? “ジェイソン・ステイサム”。

運動会で優勝するのは赤組と白組、どっちでしょうか? “ジェイソン・ステイサム”。

今年のオリンピックで最も金メダルを獲得した国は? “ジェイソン・ステイサム”。

もう彼の勝ちなのです。世の真理ですよ。これは覆せない。そういう意味では本作はずっと既定路線のお約束を眺めているだけの映画とも言える。それを面白いと思うかどうかは完全に趣味の範疇ですね。

逆に“ジェイソン・ステイサム”が冒頭10分で死亡したら私たちは大混乱ですけどね。太陽が爆発した並みのパニックだ…。

“ガイ・リッチー”監督と“ジェイソン・ステイサム”のコラボレーションも復活は今作限りではありません。なんと次回作もこのコンビなのだとか。でも次も“ジェイソン・ステイサム”の勝ちなんでしょう?

『キャッシュトラック』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 66% Audience 90%
IMDb
7.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
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関連作品紹介

ジェイソン・ステイサム出演の映画の感想記事です。

・『ワイルド・スピード スーパーコンボ』

・『MEG ザ・モンスター』

・『メカニック ワールドミッション』

作品ポスター・画像 (C)2021 MIRAMAX DISTRIBUTION SERVICES, LLC ALL RIGHTS RESERVED. ワラス・オブ・マン

以上、『キャッシュトラック』の感想でした。

Wrath of Man (2021) [Japanese Review] 『キャッシュトラック』考察・評価レビュー