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『Dads 父になること』感想(ネタバレ)…父親についてもっと素直に語ろう

Dads 父になること

父親についてもっと素直に語ろう…「Apple TV+」ドキュメンタリー映画『Dads 父になること』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Dads
製作国:アメリカ(2020年)
日本では劇場未公開:2021年にApple TV+で配信
監督:ブライス・ダラス・ハワード

Dads 父になること

Dads 父になること

『Dads 父になること』あらすじ

親になる人もいれば、親にならない人もいる。もしあなたが親になって子どもを育てることになったら、もし今まさに子どもを育てている最中だったら、もし子どもを育て終わったとしたら…。そして父親だったとしたら、あなたはその父親というものをどう説明するだろうか。父親であることの素晴らしさ、葛藤、歓喜の瞬間などありのままの姿と物語を通じて、変化の激しい現代を生きる父親像を掘り下げる。

『Dads 父になること』感想(ネタバレなし)

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父の日に観たい作品

2021年6月20日、この日は何の日か。そうです、「父の日」です。

でも「母の日」と比べたら「父の日」は目立っていない…と全国のお父さんは少し寂しい思いをしているかもしれません。

しかし、その理由を考えてみるといろいろな視点が見えてきます。そもそも女性はすぐに「母親」という役割を背負わされやすく、ゆえに母親の存在感は強調されがちです。人生のコマを進めているだけで「母親になるんだよね?」と暗黙の了解のように扱われることも。

対する男性はどうかと言えば「父親」という役割を社会から強要される圧力は比較的薄いです。それよりも男性の親というのは、「父親」という認識をすっとばして「稼ぎ頭」「家長」という役割を背負うことが多いでしょう。

なので自分が父親になるということと真正面から向き合う機会が乏しいと言えるかもしれません。親と言えば育児であり、育児と言えば母親…その固定観念の裏でないがしろにされている父親の在り方。母親の責任を問うことはあっても、父親の責任は…? 仕事や家長なんてものを抜きにしたとき、父親として純粋に残るものは何…? 父親って何のために存在しているの…? 父親の意味は…?

こういう疑問をストレートにぶつけられたことはおそらく多くの父親にはありません。

だったら今ぶつけてやろうじゃありませんか。ということで本作『Dads 父になること』です。

本作はドキュメンタリーであり、まさに「父親」に焦点をあてたものになっています。といっても、学術的な分析があるわけでもなく、ジャーナリズムな切り口があるわけでもないです。どちらかと言えば、ホームビデオのように寄り添って父親というものを浮かび上がらせていくアプローチです。

『Dads 父になること』にはハリウッドなどで活躍する著名人であり父親でもあるたくさんの人物が出演、そして一般市民からも父親が映し出され、多種多様な父親の在り方を見せつつ、父親とは何かという質問に各人が答えていきます。

そんな本作の監督も特筆されます。その人とは“ブライス・ダラス・ハワード”。彼女は子役で幼い頃から仕事していましたが、本格的な俳優主演作は2004年の『ヴィレッジ』。その後は『スパイダーマン3』(2007年)、『ターミネーター4』(2009年)、『エクリプス/トワイライト・サーガ』(2010年)とキャリアを重ね、2015年からは『ジュラシック・ワールド』シリーズでも大活躍。恐竜相手に大奮闘です。

最近は「スター・ウォーズ」のスピンオフドラマである『マンダロリアン』でエピソード監督を務め、キャリアを監督業へと広げていました。

その“ブライス・ダラス・ハワード”ですが父親はあの『ビューティフル・マインド』や『ダ・ヴィンチ・コード』でおなじみの“ロン・ハワード”。さらに祖父は『チャイナタウン』など幅広い作品に出演していた“ランス・ハワード”。つまり、産まれたときからどっぷり映画業界に浸かっているファミリーなんですね。なんでもトム・クルーズがベビーシッターだったこともあるらしいです(危なそうなんですけど…)。ナタリー・ポートマンと同期で一緒に演技を学んでいます。父の“ロン・ハワード”は”ジョージ・ルーカス”や“スティーブン・スピルバーグ”、“ロジャー・コーマン”と親交もありますし、今や大御所と呼ばれる人たちに囲まれた人生を送っていたのでしょう。

だから“ブライス・ダラス・ハワード”が「父親」を題材にしたドキュメンタリーを監督するというのも、なんだか意味深いですね。その家庭環境からして色々な父親を見てきたでしょうから。

本作の制作に至る一応の本来の動機は、自分の弟に子どもができて父になるから…とのこと。

『Dads 父になること』を見るとどんなに有名人でも(こういう言い方はあれですが)しょせんは平凡な父親にすぎないことがわかりますし、みんな完璧じゃなく無様に失敗を繰り返しつつ、悪戦苦闘しているのがわかります。

ぜひ全国のお父さん(これからお父さんになる人も)は本作を鑑賞してほしいです。「父親」というプレッシャーから少し距離を取り、見栄を張るための仮面を脇に置いて、素直に父親としての自分を曝け出せるようになるのではないでしょうか。

『Dads 父になること』は「Apple TV+」のオリジナル・ドキュメンタリーです。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:家族を考える時間に
友人3.5:父親を語り合える仲と
恋人3.5:自分たちに重ねつつ
キッズ3.5:父親と一緒に
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『Dads 父になること』予告動画

Dads — Official Trailer | Apple TV+
↓ここからネタバレが含まれます↓

『Dads 父になること』感想(ネタバレあり)

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あの人もこの人も父親です

『Dads 父になること』では冒頭でたくさんの著名人がカメラの前に立ち、単色の背景を背にして「父親とは?」という質問を直球でぶつけられていきます。

出演する父親たちは以下のとおり。

“コナン・オブライエン”。司会者、コメディアン、脚本家、プロデューサー、ミュージシャンと何でもこなすオールマイティな人物。NBCのトーク番組『ザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・コナン・オブライエン』なんかは有名ですが、その持ち味は自虐気味な痛烈スタイル。以前、名探偵コナンは俺のおかげで人気が出たと豪語して話題になったこともありましたね。『Dads 父になること』でも「父親とは○○である」に入る言葉は何?と聞かれて「知らない」と突っぱねるなど、そのトークが冴えわたっていました。“コナン・オブライエン”は2人の子の父親です。

“ジミー・キンメル”。こちらも超有名な司会者。自身の冠番組『ジミー・キンメル・ライブ!』では数えきれないほどのセレブとトークを繰り広げ、世間の話題を作ってきました。アカデミー賞の司会もしたこともありますね。“ジミー・キンメル”は4人の子の父親です。

“ジミー・ファロン”。トーク番組『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』の司会などで大成功を収めている彼は、やっぱり安定のトークが持ち味。ちなみに『ジュラシック・ワールド』でもカメオ出演していました。“ジミー・ファロン”は2人の子の父親。なお、代理母出産のようです。

“ニール・パトリック・ハリス”。『天才少年ドギー・ハウザー』などに出演した俳優であり、最近だと『ダウンサイズ』にも出演。彼はゲイであり、俳優のデイヴィッド・バーカと2014年に結婚を発表しました。“ニール・パトリック・ハリス”は2人の子の父親です。

“キーナン・トンプソン”。俳優兼コメディアンであり、『サタデー・ナイト・ライブ』などでその笑いのセンスはいかんなく発揮されていました。最近は『アンブレイカブル・キミー・シュミット』にもちょこっと出ていましたね。“キーナン・トンプソン”は2人の子の父親です。

“ハサン・ミナジ”。コメディアンとして最近も急上昇で活躍しているひとりであり、『ハサン・ミンハジ: 愛国者として物申す』はNetflixでも気軽に見れます。インド系アメリカ人ながらのキレの良さはクセになります。“ハサン・ミナジ”は1人の子の父親です。

“ウィル・スミス”。説明不要だと思いますが、彼と言えば出演映画でほぼ必ずと言っていいほど親子要素があるくらいに「良き父親像」の象徴みたいになっています(たまに親バカすぎることもあるけど)。自分の子との共演作も多め。“ウィル・スミス”は3人の子の父親です。

“パットン・オズワルト”。コメディアン兼俳優であり、『レミーのおいしいレストラン』などでは声優としても活躍。声優キャリアの方が目立つかな。『エージェント・オブ・シールド』でもユニークなキャラを好演していました。“パットン・オズワルト”は1人の子の父親です。

“ケン・チョン”。『ハングオーバー』シリーズ、『クレイジー・リッチ!』、『トムとジェリー』など多くの作品で存在感を強烈に示すアジア系コメディアン俳優。『Dads 父になること』でもすかさずギャグをかましていました。そんなアホ全開の彼は実は医者でもあり、本当は秀才。“ケン・チョン”は2人の子の父親です。

“ジャド・アパトー”。アメリカのコメディ映画の王道を築き上げたベテランである彼の功績は計り知れません。『40歳の童貞男』で映画監督デビューして以降は、もはや「アパトー」はブランドネームですね。“ジャド・アパトー”は2人の子の父親です。

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みんな完璧じゃない

この名だたる著名人たち。忘れないでほしいのはみんながある分野での一流で、誰にも負けない才能を持っているということ。そしてトークスキルが滅茶苦茶上手い人ばかりだということです。これまで百戦錬磨でいろいろな人とやりあってきた猛者だらけです。

それなのに「父親」に関する質問をぶつけられる彼らの、何と言いますか、妙にキョドキョドした態度。なんか自分は悪いことをしたのかなという不安と、ここでも男らしくしないとと精一杯にカッコつけてみる姿。そこには本来は武器だったはずのカリスマ性はなく、ただのひとりの父親になっています

おそらくこういう「父親」についての質問を真面目にぶつけられる経験は滅多にないんでしょうね。だからこそ「父親とは何か」というクエスチョンへの回答にも慎重に考え抜くことになっていく。

『Dads 父になること』は他にも一般人の姿も映し出します。カリフォルニア州のサンディエゴに暮らすグレン・ヘリーは、セールスマンの仕事が嫌で、ある日ふと妻に「主夫(stay-at-home dad)をしたら?」と言われ今の立場に。しかし、子育ては想像以上のキツさで、トイレに籠って泣く日々。それでも少しずつ父親業を身につけ、それはしだいに自分の天職になっていく…。

バージニア州のトライアングルに暮らすロバート・セルビーは、産まれてきた赤ん坊が心臓に重い病気を負っており、そのまま以降の人生は子どもの育児と介護に追われる、ノンストップなジェットコースターの日々に。「いい父親だと言われても、僕は一度息子を拒絶した」と子育てへの放棄経験に心が後悔で染まるも、こちらも一歩一歩確立していく父親としての在り方がそこにありました。

ブラジルのリオデジャネイロで暮らすティアゴ・ケイロスは、子育ては女に任せろというのが当然となっている社会で生きつつも、自分で子育てを積極的に実践。ブログで子育ての経験を綴っていくことで、それが思わぬ反響を呼んでいきます。

東京に暮らす佐久間修一は、残業時間が自慢なワーカホリックでしたが、サルコイドーシスという病気を患い、会社に行けなくなります。働けていない男は世の中のドロップアウトした人間とみなされる日本社会ゆえに、仕事をやめた日に妻に離婚を告げて自殺するつもりでいましたが、妻の言葉で主夫としての新しい人生をスタート。日本という国の息苦しさがぎゅっと詰まった体験談でした。

メリーランド州のダーンズタウンのロブ&リース・シェールは、レズビアンカップルに精子ドナーを頼まれたこともありつつも、でも自分が子どもを欲しかったので、養子を迎えます。主夫業に専念する父親が弱いと思ったことはないと語りますが、実は父に暴力を受け18歳でホームレスになった経験も。その言葉は重いです。

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親になるのが遅い父親

『Dads 父になること』でも語られていましたが、父親は母親と比べて「親になる」という実感が湧きづらいです。多くの場合、母親は妊娠していく過程で徐々にその覚悟を決めていきます。もちろんその妊婦となった母親はラクではなく、精神的にも健康的にも相当な負担ですし、キャリアの壁にもなります。

しかし、父親は「子どもができました」とパートナーに告げられて喜ぶか驚くかしてもまだこの時点では現実感はなく、出産中はあまりにも無力に突っ立てるしかできず、やっと赤ん坊が生まれてその手に抱いて初めてことの重大性を知る。「親になる」という最初の瞬間がハッキリとタイムラグがあるんですね。

しかも、父親とは身を粉にして仕事に没頭するという古い考えがいまだにあるせいで、その自身の子と向き合う機会をスルーしてしまう父親もいます。本作に登場する父親はわりとその機会をモノにして上手くいっている方だと思いますが、そうじゃない家庭は少なくないですし、むしろそうじゃない家庭の方が多いかもしれません。

『Dads 父になること』の良さはその父親のありのままの葛藤を映しだしていることであり、変に「カッコいい父親像」を宣伝する気もなく、かといって「父親に感謝を」という押しつけがましいこともしていません

結局は良き父親になるということはそのまま男らしさの再考につながるものでもあり、親になることがジェンダーステレオタイプになりかねない女性とは真逆と言えるのかも。

もちろんノンバイナリーの親もいます。だから父親は「出産しなかった方の親が名乗ることのできる肩書」と定義するべきかもしれません。でもトランスジェンダーのように、出産する父親もいるのでそれだとあれですね。

要するに父親なんて容易に定義できないわけです。でも目指すべき方向性は確かにある。理想の父親とはジェンダーの枠を超えて子どもに尽くせる人のことを言うのかな。そんなことを想わせるドキュメンタリーでした。

『Dads 父になること』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 94% Audience 92%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0

作品ポスター・画像 (C)Apple

以上、『Dads 父になること』の感想でした。

Dads (2020) [Japanese Review]