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『ダマカ テロ独占生中継』感想(ネタバレ)…Netflix;あの映画をインドがリメイク

ダマカ テロ独占生中継

あの韓国映画をインドでリメイク…Netflix映画『ダマカ: テロ独占生中継』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Dhamaka
製作国:インド(2021年)
日本では劇場未公開:2021年にNetflixで配信
監督:ラム・マドヴァニ

ダマカ テロ独占生中継

ダマカ テロ独占生中継

『ダマカ テロ独占生中継』あらすじ

落ちぶれた元ニュースキャスターの男は愛する女性との関係さえも壊れてしまい、失意のどん底のままにラジオ番組というやりがいのないキャリアに格下げされていた。しかし、自身の番組にかかってきた1本のリスナーの電話が全てを変える。それは爆破テロ予告だった。これに乗じて報道番組に復帰するというチャンスを強欲にモノにする。人生を挽回する特ダネのために、男はどれほどの犠牲に耐えられるのか…。

『ダマカ テロ独占生中継』感想(ネタバレなし)

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あの韓国映画がインドに舞台チェンジ

人口が爆増しているインド。2024年には中国を抜くという推測もあります。

それだけ人の数が多いのですから、当然のようにテレビも多いそうで…。なんと世帯の7割弱がテレビを所有しているので、その台数はかなりのもの。一方で「インターネットはどうなの?」と思うのですが、インターネットは各家庭にそれほど普及しているわけではないらしく、インドではメディアと言えばテレビが主流。もちろん有料のケーブルTVチャンネルの数は日本とは比べものにならないほど存在し、なんでも月に4~5の新チャンネルが立ち上がるほどの勢いがあるとのこと。

そんな巨大市場があれば、必然的に海外企業も目をつけます。とくに動画配信サービスはそのテレビ市場を奪っていこうと虎視眈々と動いています。例えば、Netflix。規制の厳しい中国よりもインドへの進出に力を注いでいるNetflixはインド観客にウケそうな作品を揃えるべく邁進。実際、日本からもNetflixのラインナップを眺めていればわかると思いますが、近年はグッとインド作品の数が増えましたよね。

ともあれテレビの過熱する競争に動画配信サービスも参戦して今やこのビッグなインド市場を制するべく始まった戦いの行く末は誰にもわかりません。勝者とかそもそも存在するのかな…。

今回紹介する映画もそんな激化するインドのテレビ業界競争という背景を踏まえて鑑賞するといいと思います。それが本作『ダマカ テロ独占生中継』

『ダマカ テロ独占生中継』の物語はざっくりいうと以下のとおり。

主人公はとある失態で冠番組を持つ人気キャスターから地味なラジオ番組に降格されてしまった男。すっかりやさぐれていると、ラジオ番組のオンエア中になんと犯人から直接の爆破予告が。これは上手く利用すれば自分のキャリアがまた復活するチャンスだ!と狡猾にも頭をフル回転させた主人公は、すぐさまこの特ダネを上司に持っていき、即行で生放送を開始。犯人と交渉しながら視聴率を稼ぎまくる…。

…とここまであらすじを説明すると「あれ、その映画、なんか知ってるぞ…」という人もいるはず。

実はこの『ダマカ テロ独占生中継』、インド映画なのですが、韓国映画のリメイクなのです。オリジナルは2013年に公開された『テロ、ライブ』という韓国映画。“キム・ビョンウ”監督作であり、この映画で注目されたことで青龍映画賞で新人監督賞を獲得するなどキャリアの躍進となりました。物語はまさに上記で説明した内容とほぼ同じ。つまり、『ダマカ テロ独占生中継』は『テロ、ライブ』の舞台をインドに移し替えたという、ほとんどそれだけの作品になっています。

なので『テロ、ライブ』鑑賞済みの人はこの『ダマカ テロ独占生中継』のオチ含めた展開についてかなりわかりきってしまっているのでやや新鮮味に欠けると思うのですが、なにせこの作品の面白さはプロットにあって…。本当にノンストップの怒涛の展開なので、顛末を知っていても緊張してしまうスリリングさを提供するという…。この感じは同じくリメイクされても緊張感そのままだった『THE GUILTY ギルティ』に通じるものがありますね。主人公がずっと同じ場所から動かないという点も似ているし…。

『ダマカ テロ独占生中継』の監督は“ラム・マドヴァニ”。『Neerja』(2016年)、ドラマ『Aarya』(2020年)といったクライムスリラーを手がけている人だそうで、この手のジャンルが得意分野なのかな。

主演は、ロマコメなどで活躍している“カルティック・アーリアン”。今作ではそのロマコメ感が冒頭でちょこっと活かされています。ヒロインは、『恐怖のアンソロジー』の“ムルナル・タクール”。他には『ガリーボーイ』の“アムルータ・スバーシュ”など。

『ダマカ テロ独占生中継』はNetflixで独占配信中ですので、気軽に鑑賞してみてください。ただ、何度も言いますけど息もつかせぬノンストップで進んでいくので、約104分、トイレにもたてないほどに集中してみないといけなくなることは覚悟してね。

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『ダマカ テロ独占生中継』を観る前のQ&A

Q:『ダマカ テロ独占生中継』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2021年11月19日から配信中です。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:暇つぶしにじゅうぶん
友人3.5:スリルを一緒に体験
恋人3.5:ロマンス要素薄め
キッズ3.0:テロ事件を扱うけど
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『ダマカ テロ独占生中継』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ダマカ テロ独占生中継』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):真実だけを語ります

幸せそうな男女カップルの動画。いいねとコメントをたくさん集めています。アルジュン・パタクソミヤ・メヘラともに記者として出会い、アルジュンはキャスターとして成功して年間ジャーナリスト賞を受賞するほどに。2人の仲はいつまでも…。

しかし、そうはいきませんでした。離婚協議書を見つめるアルジュン。SNSの設定を既婚から離婚に変えようとするも躊躇。もうソミヤは傍にいないのは事実なのですが…。

気を取り直してラジオ席に座ります。伸びをしてやる気もなさそうに狭い収録室でラジオを始めるアルジュン。今の彼の仕事はこのアナウンサーです。交通情報を伝え、今日のテーマである税金の話題に。

オンエア中に電話を受けます。相手は「ムンバイ在住のラグビール・マハタだ」と名乗ります。「ご職業は?」「建設業だ」「何かご意見は?」「電気を止めると言われて…」その後もグダグダと不満をたれるラグビールという男に嫌気が差して、次のリスナーに移ります。

ところがまたもあのラグビールという男が電話で乱入し、思わぬ発言をしてきました。

「爆弾を持ってる。シーリンク橋を爆破する」

アルジュンは「いたずら電話は犯罪ですよ」とうんざり気味で諭しながら、それでも態度を変えないラグビールという男にキレて、「爆破でもしてみろ。できるもんならやってみろ」と煽ってしまいます。そして電話は切れました。

何事もなかったかのようにオンエアに戻します。しかし、揺れ。その後にドン!と鈍い音…。

窓を見るとこのテレビ局のビルから見えるシーリンク橋が爆発していました。煙をモクモクとあげています。

また電話。「俺だ、きっかり15分後に掛け直す」

これはイタズラではなく本気の犯罪予告だ…。そう確信し、ムンバイ市警に電話しかけるも、これは特ダネだという考えが頭によぎり、やめます。仲間に警察を呼ぶなと指示し、「スクープを掴んだんだぞ。独占で放送するぞ」と息巻くアルジュン。

トイレで身だしなみを整えつつ、上司のアンキタに電話。犯人の録音の爆破予告を聞かせ、ラジオDJに格下げされたことを根に持つアルジュンは「キャスターに復帰させろ」と強引に交渉。

またオンエア。落ち着いた声で「当番組に爆破予告があった」と伝え、犯人からの電話に答えます。「あなたが爆破したのですか?」「真実しか話さない。私がやった」

その間にも収録室に機材が持ち込まれていき、アンキタとどんなテロップを流すかを早口で議論。「恐怖を植え付け、感情を揺さぶる表現がいい」と熱弁するアルジュン。

するとソミヤが爆発現場に取材に行っているのがモニターに映っています。

「改心させてみせる」と豪語するアルジュン。感動の結末で終わらせてみせる…。

スーツ姿になり、完全に切り替え、吸っていた煙草を捨て、生放送がスタート。

しかし、犯人はさらに想定外の発言をしてきました。「その前に支払いだ。番組の出演料だ」「視聴率で得た利益は俺に払え。じゃないと他の局にいくぞ」…217万9245ルピーを指定。しょうがないので送金。

ともかく独占インタビューでテロリストを取材するということで番組は開始。「なぜシーリンク橋を?」と訊ねます。すると犯人は「あの橋は俺が架けた。2000年。2年後に修復することになり、インド投資サミットに間に合わせるためだった。そのときに事故で3人が海の中へ。たった1000ルピーを稼ぎたいがために…。政府からは謝罪もなかった」と心境を語りだします。

そして「ジャイデーヴ・パティル大臣をだせ」と要求。

しかも、従わなければアルジュンの耳につけているイヤホンを爆発させるとまで主張し…。

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マスコミの欺瞞

『ダマカ テロ独占生中継』は観てわかるとおり、マスコミという組織の欺瞞を描く作品になっています。

それはアルジュンやアンキタの態度からも一目瞭然。特ダネが入れば、人命が関わっていることなど気にもせずに、いかにして視聴率を稼ぐか、それだけしか眼中にない…。激しいテレビ業界の競争に打ち勝つためには、結局はいち早くネタをゲットして、それを視聴者が最も釘付けになるように加工して報道する…。それありきになってしまいます。

まあ、これはテレビのマスコミだけでなく、新聞、ネットメディア(ブログやまとめサイトなど含む)、SNSインフルエンサー、YouTuberなど、今やあらゆるメディアに共通の問題点だと思いますが…。

序盤はアルジュンが特ダネを幸運にも(その時点ではそう思ってる)入手し、この機会を最大限に利用してやろうと上司にまで半ば強迫的に交渉し、まんまとメインキャスターへと返り咲く一歩を踏み出します。あのだらしない姿からどんどんとシャキっとしたキャスターに変身していく姿をいかにもこれ見よがしに描いていく感じがまた露悪的ですが、作り物であるマスコミの素性を露呈させる嫌味な演出でもありました。主人公を演じている“カルティック・アーリアン”のあの二枚目な顔もいいですね。

しかし、まだ気持ちを引きずるソミヤが現場にいることを知り、さらには耳が爆発する危険に晒されるとアルジュンの立場は一変。視聴率主義の上司のアンキタと謝罪をさせたい犯人との間で板挟みに陥り、あの強欲に満ちた自信の表情は一瞬で狼狽した困惑の顔に…

ここでアルジュンがソミヤと別れることになった理由も判明。年間ジャーナリスト賞の取材内容は実はソミヤのもので、功績を奪ってしまったという、これまた自業自得な過去が…。

いかに綺麗事でデコレーションしていようともマスコミの性根の腐った実態は変わらないというのがよくわかる、象徴的な主人公です。

そんなアルジュンに対してソミヤはある種のマスコミ、ジャーナリストとしてのお手本のような姿。最後まで弱き者に味方し、巻き込まれた橋の通行人を守ることを最優先に、そして社会に蹂躙された犯人さえも気遣う。「罪を認めても人の器は小さくならない」と必死に語りかけて…。

マスコミは本来はこうあるべきではないですかという正しさの理想。それも橋とともに崩落してしまうのですが…。

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インドでリメイクする意味

私は元の映画である『テロ、ライブ』を観たときから、「これはハリウッドではリメイクしづらいだろうな…」と思いました。というのも、リメイク含めて本作は基本的にテロリスト側に徹底して同情的だからです。

ありがちだと中立な主人公を設定しますが、それさえもない。中立ですらもない。実際に主人公は中立なんて不可能な状態に陥りますからね。

本作は、社会正義のために過激なことをする人を基本的に擁護しており、そうするように追い込んだ社会の責任ではないかと問いかけます。

作中でも、あの顔を見せぬ大臣の代わりに出演した大臣補佐マトゥルが「社会のクズに謝れと?」と暴走しながら発言して状況を悪化させますけど、とにかく政府はクソである…ここは揺るぎません。だからといって、テロ行為を肯定はしているわけでもありません。ただ、テロまでしても変わらない権力の醜さだけが観客に突きつけられて…。

なんだかんだで非常に韓国映画らしいテイストなんですね。

それをインド映画としてやることはとても意味があって、つまりインドもこういう社会不満に対する捌け口を求めているわけです。インドもデモとか起きますからね(日本以上に)。世界人口第1位の中国は実質的にデモなんて不可能なほどに体制側の統制が厳しいですが、インドはまだそうではないという現実。これがインドという社会にとっての希望でもあり、未来でもある。インドのエンターテインメントがそれを描くというのは前向きに捉えることもできるでしょう。

私もインドの活動とかを見ていると、フェミニズムやLGBTQに関する当事者の運動がとても活発で勢いがあるのを知り、もう「インド=保守的」という印象も違うかなと認識を改めたりしていますし…。もちろん規範的で古臭い慣習もいっぱいあるのですけど、それを変えようと叫ぶ人もいる。その人の側にエンターテインメントが立つというのはとても健全なことだと思います。中立に…なんて日和ったこともせずに。

といっても本作はそもそも設定が荒唐無稽ですし(イヤホン爆弾は何なんだ)、かなり滅茶苦茶な勢いありきの映画です。雑さを全部展開の速さで誤魔化しているような…。リメイクするならもう少し変えてもいいのではと思う部分もいくらでもあります。

私としてはそろそろテレビ業界ではなく、動画配信サービス業界を題材にしたその業界の商業主義の闇を暴く作品が生まれてもいいんじゃないかと思っているのですけど、動画配信サービス主導の今の業界だと厳しいのかな…。

『ダマカ テロ独占生中継』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 45% Audience 60%
IMDb
8.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『ダマカ テロ独占生中継』の感想でした。

Dhamaka (2021) [Japanese Review]