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『ダム・マネー ウォール街を狙え!』感想(ネタバレ)…ゲームを止めるな!

ダム・マネー ウォール街を狙え!

ゲームを止めるな!…映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Dumb Money
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2024年2月2日
監督:クレイグ・ギレスピー
恋愛描写

ダム・マネー ウォール街を狙え!

だむまねー うぉーるがいをねらえ
ダム・マネー ウォール街を狙え!

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』物語 簡単紹介

コロナ禍で静まり返った2020年、とある熱狂が巻き起こる。それを引き起こした人物が、マサチューセッツ州に暮らすキース・ギルという何の変哲もない男だった。全財産5万ドルをゲームストップ社の株に注ぎ込み、同社の株が過小評価されているとネット掲示板で訴えながら、趣味の動画配信でアピールする。すると彼の主張に共感した大勢の個人投資家がゲームストップ株を買い始め、とんでもないことが勃発する…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ダム・マネー ウォール街を狙え!』の感想です。

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』感想(ネタバレなし)

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株はヤバいぞ…(いろいろな意味で)

TVゲームから始まった「ポケットモンスター」のトレーディングカードである「ポケモンカード」は現在の日本でも大人気です。しかし、今、その人気の裏にあるのはカードゲームを本来の在り方で楽しんでいる人たちだけではないのが正直なところ。いつの間にかこのポケモンカードに投機性があることが注目され、トレーダーや転売ヤーなど、投機的価値を見いだした人たちの購入が爆発的に増えたのです。希少なカードの取引価格は高騰し、1枚10万円以上のものから、昔のレアカードだと数百万円になるものまで。

純粋にカードに目を輝かせて楽しむ気持ちを台無しにされたような気分になるのもわかります。金儲けに目がくらんだ人たちが群がるカードに成り下がった感じもします。この熱狂を冷めた目で見ている人もいるでしょう。

こういう特定のオモチャやアイテムが一時的に異様な狂乱で爆発的な投機ブームが起きるというのは、どの時代でも不定期に巻き起こります。たいていは必ず落ち着き、価値は急減します。それでも今度は別の品で同じ現象が繰り返されます。投機の中毒性は底なしです。

しかし、そもそもな話、私たちの社会の基盤となっている金融システム自体がこの投機の原理で成り立っています。たいていの企業は「株式会社」。の投機で価値が左右されてしまう存在です。

冷静に考えると「そんな投機任せで大丈夫なの?」と心配になります。でも政治家や金融大手はこう言います。「システムはちゃんと成り立つように設計されているから心配する必要はない」と。

ところがそんな言葉がいかにハリボテなのかを実感させる大事件が2020年に起きました。今回の映画はその出来事の中心人物に焦点をあてた作品です。

それが本作『ダム・マネー ウォール街を狙え!』

本作は通称「ゲームストップ株騒動」、英語では「GameStop short squeeze」と呼ばれている事件を主題にしています。「ショートスクイズ(short squeeze)」とは、株式市場にて市場の何かしらの技術的要因によって株価が急騰する現象のことですが、この事件をちょっと目にしたことはあるかもしれませんが、詳細はよく知らない人も多いでしょう。でも大丈夫。この映画を観ればだいたいわかりますから。

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』は、いわゆる『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のような金融界を軸にしたマネーものです。実話をベースにハチャメチャなこの業界を痛烈に風刺する一作の最新版。

原作は「The Antisocial Network」というノンフィクション本となっており、この作家の“ベン・メズリッチ”はマーク・ザッカーバーグが「Facebook」を創業する過程と顛末を描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』の原作本も執筆した人で有名です。

監督は『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』『クルエラ』、ドラマ『パム&トミー』など、多彩なクリエイティブを見せている“クレイグ・ギレスピー”

ちなみに製作総指揮には、ドキュメンタリー映画『仮想通貨 ビットコイン』にもでていた仮想通貨投資家として有名な”ウィンクルボス兄弟”も参加しており、結構、業界を知り尽くしているガチな人たちの監修つきなんだなということが窺えます。

俳優陣は、『THE BATMAN ザ・バットマン』『フェイブルマンズ』“ポール・ダノ”。最近の映画では社会の荒波に揉まれた苦労人の男ばっかり演じてますが、今回もそうです。合ってるんだなぁ…。

“ポール・ダノ”が一応の主人公を演じるのですが、作品自体が群像劇スタイルで共演俳優は多め。『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』“ピート・デイヴィッドソン”『バービー』“アメリカ・フェレーラ”『トランスフォーマー/ビースト覚醒』“アンソニー・ラモス”『終わらない週末』“マイハラ・ヘロルド”『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』“セス・ローゲン”、ドラマ『エコー』“ヴィンセント・ドノフリオ”、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』“セバスチャン・スタン”と、よりどりみどりです。

株や金融の知識が無くても作品内でだいたい説明してくれますが、まあ、勢いでわかるかな?というストーリーテリングなのでそんなに心配は要らないと思います。

何かに投資する前に、本作を観ましょう。成功は保証しません。

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『ダム・マネー ウォール街を狙え!』を観る前のQ&A

✔『ダム・マネー ウォール街を狙え!』の見どころ
★痛快で痛烈なストーリーテリング。
✔『ダム・マネー ウォール街を狙え!』の欠点
☆映画というよりは、株や金融には注意!

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:知識なくても見やすい
友人 3.5:気の合う人同士で
恋人 3.5:やや同性ロマンスあり
キッズ 3.0:少し小難しいか
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):GME! GME!

豪華な邸宅。ここで悠々自適に暮らしているゲイブ・プロトキンはヘッジファンド運営会社の「メルビン・キャピタル・マネジメント」のトップです。今は電話中。その相手はスティーブ・コーエン。資産1兆円を優に超える大富豪のヘッジファンドマネージャーで「ヘッジファンド王」とも称されており、ニューヨーク・メッツの株も多く保有しています。同じくヘッジファンドマネージャーのケン・グリフィンにも電話を繋いでいます。

今日も世界は株価の変動で動いています。それを動かすのはウォール街の大物たち。しかし、今回は違いました。

「Roaring Kitty」またの名を「Deep Fucking Value」。YouTubeでは前者を名乗り、Redditでは後者を名乗る。本名はキース・ギル。全てはこの男が発端です。

6カ月前。マサチューセッツ州ボストン。まだ2020年の中頃は新型コロナウイルス感染症のパンデミックが深刻で、マスクは必需品。外を行きかう人の数も少なめです。

キース・ギルはMassMutual社で金融アナリストをしており、家ではリアクション動画を配信するYouTuberでもありました。暇な時間にはRedditの「r/wallstreetbets」に定期的にアクセスし、株に関する交流をしています。

キースには妻と子がおり、家族を養うのに苦労していました。

そんな彼のもっぱらの今の関心はビデオゲーム小売業の企業「ゲームストップ」。ロックダウンで多くのゲーマーは家でゲームをダウンロードするようになっており、実店舗の業務形態は今では厳しい状況にあります。

しかし、キースはこの株価が下落しているゲームストップは過小評価されていると考え、貯金をつぎ込んで同社の株を買うことにしました。

配信時のトレードマークである赤いバンダナ猫のシャツ。その格好でゲームストップの価値を熱弁。

その配信を何人かは真面目に聞いていました。ペンシルベニア州のジェニーは職場の病院でそれを視聴。閑散とするゲームストップ店内で働く店員のマルコスも…。大学生カップルのリリハーモニーも…。

この配信の影響は少しずつ拡大し、オンラインで株を積極的に買い始める者たちの出現で、ゲームストップの株価が上昇し始めます

金融商品取引所に上場する銘柄を識別するために付けられるコードでゲームストップに割り当てられた「GME」はいつしかネットミームになり始め、報道でも取り上げられます。ネット上の一部の人たちは「ヘッジファンドを倒せ」と盛り上がり、その熱狂は天井知らずでヒートアップ。

株価の急上昇で、キースは自分がファッキン・リッチになったのかと驚きますが…。

この『ダム・マネー ウォール街を狙え!』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/02/03に更新されています。
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コロナ禍だからこそのあの空気

ここから『ダム・マネー ウォール街を狙え!』のネタバレありの感想本文です。

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』は表面だけみると、“ポール・ダノ”演じる奇抜な見た目で売っているYouTuberが勢いだけでとんでもないことをやらかしていく破天荒な物語に見えますし、実際そういう面もあるのですけど、他の同ジャンルと比べると格差とか時代を捉える真面目な風刺が滲んでいます。決して金持ちがひたすら羽目を外していくようなタイプの映画ではないんですね。

そうなっている理由は、まずこの主人公であるキース・ギルが、言ってしまえば中産階級下位の最もありがちな経済状況にある男にすぎないという点です。こういう家計にある男はひと昔前だったらギャンブルとかに手を出していそうですけど、今回は細々とYouTuberをやってるってところが2020年らしいです。

そして本作は非常にこの2020年の時代を映す作品でもありました。何と言ってもコロナ禍です。まだ覚えていると思います。あの「これからどうなるんだよ」という重い空気に包まれた世界。明るい将来なんて全く見えず、感染症だけでなく漠然とした不安が拡大していたあの時期。当然、多くの人が収入を激減させ、仕事を失い、困窮していました。

「ゲームストップ株騒動」として爆発的に火がついたのも、このコロナ禍だったからというのは無視できないです。大勢が今まで以上にスマホやパソコンで繋がるしかなくなり、どこかに人生を変える一攫千金のチャンスはないかと血眼になり、そしてのうのうと私腹を肥やす金持ちに苛立ちを蓄積していた状況…。そこに「ゲームストップの株を買って儲かるかも! さらにウォール街の金持ち連中をギャフンと言わせられるかも!」なんてチラつかされて、思わずタップしてしまう…。

この感覚、コロナ禍を経験していない人が普通になった時代だと理解されないかもしれませんね。あの時代はそういう執念がいつどこで爆発してもおかしくなかった空気だった…。

たぶんそういう怪しげな「チャンスを謳う情報」は当時もあちらこちらのネット上に転がっていただろうし、その大半は詐欺かスパムか、そんなものです。

しかし、このキース・ギルはどういう人間だったのか。本作はこの人物像の解釈をかなり引いた目線で最後まで描いていたと思います。ネタにしすぎず、一方でカリスマ的にも描かず…という塩梅。あえて白黒つけない絶妙なさじ加減にしているあたりは、“クレイグ・ギレスピー”監督の手慣れたセンスがありました。

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「I like the stock」

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』の風刺は単純ではありません。「まんまとウォール街の奴らを出し抜いてやりました!ざまあみろ!」みたいなサクセス・ストーリーで片付けることもできません。「金持ちに一発食らわしてやったぜ!」というスカっとする話として受け止めたい人がいるのもわかりますし、実際、あの作中で描かれた人たちはまさにそういう心情だったのだと思いますが…。

本作で一貫してずっと描かれているのは、株などを含む金融システムの脆さです。つまり、これは私たち社会の基盤となっている「おカネ」という概念の脆弱さが露呈したことになります。

全く無名で財力も無い人々が、ネット上のノリで協力して集まることで、そんな烏合の衆でも市場を操作することがいかに簡単であるかということ。それは見方によっては良くも悪くもなる可能性があります。正しくあればそれはより良い世界のために機能するかもしれませんが、一歩でも間違った動機に基づけば特定の組織や人物に危害を加えることにもなりますし…。

作中でも、「ゲームストップ株騒動」に参加した多くの一般の人たちはノリだけで動いています。乱造されるネットミームがそれを下品に盛り上げ、収拾つかなくなっていきます。

おそらく当初はそうした一般人は自分たちがウォール街に立ち向かっていることに快感を得ていたのでしょうけど、実はそんなシンプルな対決構造ではありません。なぜならウォール街が潰れれば自分たちの依存する「おカネ」という概念自体崩壊するのですから…。ドタバタと集団で暴れまくっているうちに自分たちの足場まで壊れるようなものです。

それに気づく事件となったのが、「r/wallstreetbets」のシャットダウンと株式取引サービス「Robinhood」からの締め出し。想定外の事態に立場は一変し、株を保持するか、売るかの選択で焦り始める。対象の企業名が「ゲームストップ」なのがまた皮肉ですよね。このゲームをどうやってストップさせるのか、実は誰も考えていなかった…という…。

やっぱり支配権を持っているのはウォール街ですし、いくらでも汚い手も使ってきます。株式取引の制限がありならもう何でもできますよね。しかも、相変わらずまたも全然逮捕者も何もないし…。

ラストの米国下院金融サービス委員会による調査が本作の終着点ですが、ここでコロナ禍らしくオンライン開催で、普段から配信をやっていたキースの才能がちょっと輝くのがいいですね。さすがにあの服装はしないですけど、お守りにはなっている。この最後の場面が本作で唯一、金持ちと庶民が対等になった瞬間なのでした。

でも本当に対等なのはこの瞬間だけで、確かに一部の株購入者はそれを売って多少の資産は増やせましたけど、誰ひとりヘッジファンドマネージャー級の資産は手に入れてません。その差は埋められない…。それが現実でもあって…。

最終的に残った結論は「金持ちも貧乏人もこの投機の魔力にのめり込んでしまう」ってことです。真に倒すべきはこの投機の魔力じゃないかと思うけども、それには人間は抗えない。

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』が2020年のこのジャンルの象徴的一作となったならば、次の時代には何が待っているのかな…。あまりいい出来事ではないだろうな…。

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 84% Audience 85%
IMDb
6.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved. ダムマネー タム・マネー

以上、『ダム・マネー ウォール街を狙え!』の感想でした。

Dumb Money (2023) [Japanese Review] 『ダム・マネー ウォール街を狙え!』考察・評価レビュー