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『グリーン・ナイト』感想(ネタバレ)…キツネと旅して騎士になろう

グリーン・ナイト

キツネと旅して騎士になろう、覚悟があるなら…映画『グリーン・ナイト』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Green Knight
製作国:アメリカ・カナダ・アイルランド(2021年)
日本公開日:2022年11月25日
監督:デヴィッド・ロウリー
性描写

グリーン・ナイト

ぐりーんないと
グリーン・ナイト

『グリーン・ナイト』あらすじ

アーサー王の甥であるサー・ガウェインは、立派な騎士になれぬまま怠惰な毎日を送っていた。クリスマスの日、円卓の騎士が集う王の宴に異様な風貌をした緑の騎士が現れ、奇妙な首切りゲームを持ちかける。やむを得ず挑発に乗ったガウェインは緑の騎士の首を斬り落とすが、騎士は平然としながら、ガウェインに1年後の再会を言い渡して悠々と去っていく。月日は経ち、ガウェインはその約束を果たすべく、旅に出る。

『グリーン・ナイト』感想(ネタバレなし)

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性格検査の旅に出よう

就活などをしていると直面することがある「性格検査」。日ごろの行動や考え方に関する多角的な質問から対象者の性格的特性を把握し、マッチングを効率的に行うために実施されます。

これが本当に人間の性格とやらを正しく評価できているのかはわかりませんが、巷では活用されており、なんだか納得はしていないけど利用せざるを得ない人もいるでしょう。

遊び半分で楽しむ心理テスト程度なら別にどうでもいいかなと思うのですけど、就職や人生に影響を与えかねない性格検査というものがまかり通るのはちょっと怖いですけどね。

人格診断検査といったものはその歴史をたどると心理臨床などの分野が発端になるのだと思いますが、人々に語り継がれる「物語」の中にもその人間の性格や人格を評価しているも同然なプロット構造を持ったものがあります

今回紹介する映画もそんな作品ではないでしょうか。

それが本作『グリーン・ナイト』です。

この映画は原作が有名です。というかすごく昔の作品です。元は14世紀にイングランドで書かれた作者名不詳の物語である「サー・ガウェインと緑の騎士(ガウェイン卿と緑の騎士)」。あの「アーサー王物語」の影響で生まれた、いわば派生作品で、アーサー王の甥という設定の騎士ガウェインを主人公にしています。ガヴェインはいろいろな物語に登場しますが、その中でもこの「サー・ガウェインと緑の騎士(ガウェイン卿と緑の騎士)」は代表登場作でしょう。

どんな物語なのか、ざっくり語ると、ある日のこと、ガヴェインは突如として来訪した緑の騎士(グリーン・ナイト)の一風変わった挑戦を受けることになるというもの。この挑戦は「首切りゲーム」と言われ、ガヴェインの人格が試されることになります。

かなり解釈が多方面からできる物語で、一般的には「騎士道」というものを提示する寓話であると受け取られることが多いです。

その「サー・ガウェインと緑の騎士(ガウェイン卿と緑の騎士)」を2020年代に映画化した『グリーン・ナイト』。原作そのままというわけではなく、わりと独自のアレンジが加えられており、物語そのものの大幅な改変というよりは演出での新鮮さが際立つと言えるかもしれません。

この『グリーン・ナイト』を監督したのが、“デヴィッド・ロウリー”だということも特筆されます。“デヴィッド・ロウリー”監督は、『ピートと秘密の友達』(2016年)や『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』(2017年)、『さらば愛しきアウトロー』(2018年)など、ひとりの人物の内面性に焦点を当てた寓話的な作品を得意としています。

今回の『グリーン・ナイト』もガヴェインという男の内面を“デヴィッド・ロウリー”監督らしい手際で掘り下げており、「サー・ガウェインと緑の騎士(ガウェイン卿と緑の騎士)」の映像化のアプローチとしても非常に面白いものになっています。

注意してほしいのは、決して一般ウケするような映画ではないということ。ファンタジーと言っても、派手な展開が盛沢山のエンターテインメント作品では全くありません。宣伝では「ダーク・ファンタジー」みたいな表現も使っていますけど、別にダークとも違うと思います。『グリーン・ナイト』は、あえて言うなら、そうですね、ものすごくパーソナルな寓話ですかね。

静かに淡々と進んでいきますし、非説明的で、最小限の構成しかない物語。人によっては退屈でしょうし、眠くなることもあるでしょう。でもこの映画はガヴェインの性格検査テストなのです。他人がテストを受けさせられているさまを眺めるようなもんですね。

そんな『グリーン・ナイト』でガヴェインを熱演するのは、『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』や『どん底作家の人生に幸あれ!』の“デーヴ・パテール”(デヴ・パテル)。まさか“デーヴ・パテール”のガヴェインが見れる日が来ようとは…。

共演は、『光をくれた人』『ブルー・バイユー』の“アリシア・ヴィキャンデル”、『13人の命』の“ジョエル・エドガートン”、ドラマ『リトル・ファイアー〜彼女たちの秘密』の“サリタ・チョウドリー”、『ザ・ストレンジャー 見知らぬ男』の“ショーン・ハリス”、『エターナルズ』の“バリー・コーガン”、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の“エリン・ケリーマン”など。

とりあえずキツネと旅する“デーヴ・パテール”が見たいなら『グリーン・ナイト』が期待に応えてくれます。

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『グリーン・ナイト』を観る前のQ&A

✔『グリーン・ナイト』の見どころ
★人格を試される物語を変わった演出で映像化。
✔『グリーン・ナイト』の欠点
☆地味で淡々としているので好みは分かれる。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:変わった映画が好きなら
友人3.5:俳優好き同士で
恋人3.0:デート向きではない
キッズ3.0:やや地味な物語
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『グリーン・ナイト』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『グリーン・ナイト』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):首を切ったらお前も切られろ!

静かな村。雪まう中、家畜がのんびり行き交っており、奥の家の屋根が燃えていますが、それ以外は平穏です。

そんなとある一画の建物で、ベッドで寝ていたガヴェインという男は水をかけられてベッドから目覚めます。起こしてくれたのは恋人のエセル。そしてここは売春宿。急いで服を着ながらもエセルにじゃれつくガヴェインは、教会へ向かうのも面倒くさがるほどに怠け癖がありました。

これでも王族のひとりで、こっそりと城に戻ります。母親に小言を言われますが気にせず、ベッドに倒れ込み、今日も好き放題に過ごしているのでした。

クリスマスの日、叔父のアーサー王のもとを訪ね、宴会に参加。するとアーサー王に呼ばれて跪きます。隣に座れと言われ、英雄譚を聞かせて欲しいと頼まれます。話すことはないと断ると、アーサー王の隣にいた王妃ギネヴィアは「まだないのよね」と淡々と付け加えます。

別の場所、ガヴェインの母は魔法の儀式を行っていました。

円卓の宴の真っ只中、異様な存在が現れます。全員が剣をとり、警戒態勢に入ります。それは馬にまたがり、全身が植物のような人間風の騎士でした。アーサー王は前に来るように合図し、そのグリーン・ナイトは1通の手紙を渡してきます。

ギネヴィアが封を開けると、彼女は別人のような声でそれを読み上げます。

なんでもグリーン・ナイトの首を刎ねた騎士には緑の斧と名誉が得られるそうですが、次の1年後のクリスマスにはグリーン・ナイトの住む緑の礼拝堂に行き、同じようにグリーン・ナイトの手で首を刎ねられないといけない…と。この挑戦はガヴェイン以外は受けられないとも言います。

そう異様な声で読み上げたギネヴィアは意識を失い、手紙は燃えます。きっと首を刎ねた時点で相手の死なのだから大丈夫だと考えたアーサー王はガヴェインを勇気づけ、エクスカリバーを与えます。

ガヴェインは対峙すると、グリーン・ナイトは無抵抗に手を広げて見せ、斧まで置き、首を差し出す仕草をしてきます。ガヴェインは怒鳴りつけ、怯えつつも、覚悟を決めて、首を切り落とすのでした。

これで終わった…そう思った瞬間、グリーン・ナイトの首のない体は起き上がり、みんなが固唾を飲んで見つめる中、首を持ち上げ、「1年後だ」と言い放ち、馬に乗ってまた帰っていきました。高笑いだけを残しながら…。

みんなが拍手で讃えるが、ガヴェインは茫然と立ち尽くしています。エクスカリバーを返し、緑の斧だけが残された宴の間。ガヴェインは次なる運命を待つだけに…。

1年が過ぎ、相変わらず飲んだくれているガヴェイン。緑の礼拝堂に向かって旅に出なければいけない時期が来ました。つまり、今度は自分が首を差し出して死ぬことになります。

エセルはここにとどまって家庭を築けばいいと言ってくれますがガヴェインは義務だとそれを固辞。

馬に乗って出発します。母がくれた緑の帯と、あのグリーン・ナイトが残した緑の斧を持って…。

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はじめてのおつかい(首切り)

『グリーン・ナイト』の原作である「サー・ガウェインと緑の騎士(ガウェイン卿と緑の騎士)」は先に触れたとおり、これまで多くの専門家によってさまざまな解釈で分析がされてきました。ある人はフェミニズムな読み解きをしますし、またある人はクィアな読み解きをすることもあります。

ではこの『グリーン・ナイト』では“デヴィッド・ロウリー”監督はどんな独自のリヴィジョニズムで向き合ったのか。

端的に言ってしまえば、ものすごくダメダメな息子を見かねた母親が愛の鞭で厳しい試練に送り出して大人にさせようとする…そんなど根性育児ストーリーとも受け取れるのではないでしょうか。

本作のガヴェインは、歴代のガヴェイン史上最低にダメダメな奴なんじゃないかと思うほどに本当にいろいろ残念です。まず騎士ですらありません。完全に売春宿通いで飲んだくれており、その朝帰りで家に戻ることを繰り返している…騎士以前に人としてどうなのというレベル。現代に例えるなら、スマホゲームのガチャにカネを使いまくって親に小遣いをせびっている男みたいなもんですよ。

エセルというこのガヴェインにはもったいないんじゃないかという恋人がいるのですが、彼女にもろくに答えてあげない。おまけに信仰心もなく、他人を支える力も自分を支える意思もゼロです。

そんな息子がこのままでは危ないと思ったのか、母は謎の儀式を始めます。今作ではこのガヴェインの母は「モーガン・ル・フェイ(モルガン)」と同一人物のように描かれています。魔女であり、原作とは立ち位置が違っています。これにより、本作は母親という愛が魔術であのような奇想天外な試練を息子に差し向けたという前提になってきます。

王妃ギネヴィアからも完全に子ども扱いを受けているガヴェインでしたが、緑の騎士を前に「ええ…首、切るの?」と躊躇していると、アーサー王があろうことかエクスカリバーを渡してくれます。「剣がいるんですけど…」とぐだぐだ呟いていたら、よりによって聖剣を貸してくれるんですからね。もう引くに引けない。

この挑戦を受ける姿勢がすでにヘッポコで、カッコよさみたいなものは皆無です。そして案の定、緑の騎士の策略にハマり、挑戦として1年後の首切り(切られる側だけど)に向かわないといけないことに…。

いよいよ出発する際、全然村の人とかは見守ってくれず、後ろから子どもが無邪気に追いかけてくれるだけなのが、なんとも虚しい…。

これはあれですよ、某番組「はじめてのおつかい」と同次元の不安しかない旅立ちです。大丈夫? ひとりでできる? ガヴェインくん、がんばれ~!…そんな感じで応援が必要ですよ。

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ガヴェインくん、全問不正解です

意を決して孤独に出発した『グリーン・ナイト』のガヴェインくん(趣味:売春宿)でしたが、行く先々で人格評価テストみたいなのが待ち構えています。

そして驚いたことに、このガヴェインくん、その人格評価テストに全問不正解していくんですね。なんかひとつくらい正解できるだろと思うのですけど、無理なんです、この子。

戦場跡地で出会った青年に道を教えてもらったけどお礼はコイン1枚で済まそうとして、しっぺ返しをくらいます。ケチです。一方で、ウィンフレッドという若い女性を助けるのですが、そこでは自分が失くした斧を取り返してもらうというお礼を受け取ります。自分には甘いです。

キツネと旅してキノコを一緒に食べて巨人を見たりしたのに、そのキツネの警告を無視します。薄情です。一方で、辿り着いた城でエセルそっくりのレディに目を奪われ、ちゃっかり誘惑されて、性を解放してしまいます。自分には情動的です。

原作ではガヴェインはこの旅路で騎士道の模範を見せていくのですが、この『グリーン・ナイト』のガヴェインくんは真逆で、ダメな例を全部示していきます。どうしようもないですよ。

そしてついに緑の騎士の目の前に到着。ここで騎士の精神を覚醒するのかと思ったら、なんと何度もびびりまくり、あげくには逃亡。ガヴェインくん、どこいくの!

そのまま帰宅し、余生を過ごす姿が描かれます。でもこれはいわゆるバッドエンディングを垣間見せただけでした。それにしても酷いエンディング・ルートです。エセルを妊娠させたけど子だけ奪って見捨て、大衆からの支持は失い、最後は敵に攻め込まれ、緑の帯を抜き取った瞬間に自分の首が転げ落ちる。己の弱さを認めなかった者はその時点で死んだも同然であり、結論の直視を先延ばしにしているだけ。

敗者の権力者に対して非常に手厳しい映画です。まあ、実際に現実社会でも負けても負けを認めない権力に溺れた人間はいるからね…。

けれどもそれはあくまでバッドエンディングの先読み。ガヴェインくんは首を差し出した直前に頭によぎったのでした。こうはなりたくない、と。

こうしてガヴェインは覚悟を決め、大人しく首を差し出し、緑の騎士はその姿勢をやっと褒めます。

この後、どうなったのかはわかりません。斬首されてしまったのか。しかし、大事なのはガヴェインがついに騎士道として正しい行動をとれたということであり、人は最後の最後で正しくあれるかということで決まるという物語。

全体を通すと『グリーン・ナイト』はかなり直球でマスキュリニティを描く映画でした。エンドクレジット後に小さい女の子が王冠を被ってみせるささやかなオチも含めて、男らしさの憂いを揶揄いつつ、模範を示すという、なんとも現代的な「緑の騎士」のリニューアルだったと思います。

今作のガヴェインがそれでも憎めないのはやっぱり“デーヴ・パテール”が演じているからかな。

性格検査はあてにしなくていいけど、ここぞというときは正しい行動をとれるようになりたいですね。

『グリーン・ナイト』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 89% Audience 50%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
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作品ポスター・画像 (C)2021 Green Knight Productions LLC. All Rights Reserved グリーンナイト

以上、『グリーン・ナイト』の感想でした。

The Green Knight (2021) [Japanese Review] 『グリーン・ナイト』考察・評価レビュー