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韓国ドラマ『シスターズ』感想(ネタバレ)…若草物語が現代の韓国に咲く

シスターズ

若草物語を現代の韓国を舞台にアレンジ…ドラマシリーズ『シスターズ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Little Women
製作国:韓国(2022年)
シーズン1:2022年にNetflixで配信
監督:キム・ヒウォン
セクハラ描写 自死・自傷描写 DV-家庭内暴力-描写 児童虐待描写 交通事故描写(車) 恋愛描写

シスターズ

しすたーず
シスターズ

『シスターズ』あらすじ

インジュ、インギョン、イネの3姉妹は韓国の片隅で貧しいながらも支え合って暮らしていた。ある日、頼りない母親のせいで高校生のイネは修学旅行にも行けなくなってしまい、姉たちはなんとかおカネを工面しようと各自で奮闘する。しかし、イネはそんな姉たちから距離をとるようになってしまい、世間で政治的な注目を集める裕福な家と親密になる。さらに衝撃的な事件が発生し、3姉妹の人生を揺るがすことに…。

『シスターズ』感想(ネタバレなし)

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社会構造に声をあげる女たち

円安が止まりません。2022年10月21日には一時151円95銭まで円安が進行。政府・日銀の為替介入が幾度となく行われる事態となりました。また、ウクライナ侵攻、コロナ禍からの急速な回復などの社会情勢の変化もあって、物価高騰は目に見えて深刻に庶民の財布をゴジラの熱線放射の如く勢いで直撃しました。

あれの値段も高い、これの価格も上がっている、それも値上がりで…。

それに対して政府は、ポイントだ、クーポンだ…とのゴリ押しで、マスコミも「賢い節約術はこれ!」と謙虚な無抵抗の忍耐を毎日奨励しています。みんながポイ活に躍起になり、おカネ配りアカウントを必死にフォローしたり、家電は中古で買うのが当たり前になり、DVDどころかサブスクの料金も払うのさえも厳しくなったり…。金持ちになれないならせめてSNSでフォロワーを集めて一端の論客にでもなろうとしたり…。

こうやって私たちはいつの間にか貧困に陥っていく…。無自覚に…。

でもこれでいいのか。私たちは自分に降りかかる貧困というものに対して「しょうがないよね」という諦めの境地になりがちですが、ただ節度を守って耐えしのぐ状況に「いや、これっておかしくない?」と感情が沸き上がる瞬間がきっとあるはず。

今回紹介するドラマシリーズは、そんな現代の貧困という構造に対して自分たちなりに立ち上がろうとする女性たちを描いている作品です。

それが本作『シスターズ』

『シスターズ』は、まず脚本&企画の人物に着目したいところ。その人とは“チョン・ソギョン”です。“チョン・ソギョン”と言えば、あの“パク・チャヌク”監督とのコラボレーションが有名で、『親切なクムジャさん』『サイボーグでも大丈夫』『渇き』など多数の共同脚本作を手がけ、とくに2016年の『お嬢さん』はキャリアにおいてもクリティカルヒットとなる一作でした。

『お嬢さん』では、”サラ・ウォーターズ”の小説「荊の城」を原作に、舞台設定をヴィクトリア朝から日本統治時代の朝鮮に大胆に翻案し、女と女の圧倒的な物語として息を吹き込みました。その手腕は本当に見事で、私もこの映画は何度見てもエキサイティングで楽しいなと思います。

その“チョン・ソギョン”が今度はあの“ルイーザ・メイ・オルコット”の名作「若草物語」を現代の韓国に暮らす姉妹の物語としてリニューアルする…と聞いたら、それはもう期待したくなるというもの。

「若草物語」と言うと、アメリカでも『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』が作られましたし、台湾の『弱くて強い女たち』も若草物語風でした。

では韓国はどうくるのか。本作『シスターズ』の中身はというと…『お嬢さん』の女と女の圧倒的な物語を継承し、登場する女の数が一気に増え、もう…女・女・女・女・女・女・女・女・女…くらいの関係線が入り乱れる凄まじいドラマに仕上がっています。

もちろんいかにも韓国ドラマらしいエンターテインメント性も盛り盛り状態。姉妹の家族ドラマが基本の台になっているのかと思いきや、ミステリーサスペンスが始まるし、と思いきやサイコロジカル・スリラーの様相を醸し出し始め、今度はアクション展開も顔を出しつつ、さらに別のジャンルに突っ込んでいったりもする…。

とにかく二転三転どころか七転八転していくので、どこでどう区切りをつければいいのかもわからない、息もつかせぬドラマです。見だしたら止まらないですよ。

1話だけでも濃厚すぎて、第1話を見終わった後は「すごい、映画を1本見終わった気分だ…」という満腹感に襲われつつ、それでいて「あれ、でもまだ1話だぞ? え? あと11話もあるの? このボリュームで?」と恐れおののいてしまうくらいです。

韓国本国では次はどんな展開になるんだとSNSも大いにストーリー予想で賑わったそうですが、これから観る人はぜひネタバレは一切観ずに視聴してくださいね。

続きが気になってしょうがないノンストップなストーリーだけでなく、『シスターズ』の俳優陣の名演も魅力の柱です。

主人公である3姉妹のうち、長女を演じるのは、ドラマ『ユミの細胞たち』の“キム・ゴウン”。次女を演じるのは、ドラマ『リセット〜運命をさかのぼる1年〜』の“ナム・ジヒョン”。そして三女を演じるのは、『はちどり』で素晴らしい存在感を披露し、ドラマ『今、私たちの学校は…』でも印象的だった“パク・ジフ”。この3人が本当にとても良いです。

他には、『ソウォン/願い』の“オム・ジウォン”、ドラマ『悪魔判事』の“チョン・チェウン”、ドラマ『オクニョ 運命の女』の“キム・ミスク”、『グリーン・マザーズ・クラブ』の“チュ・ジャヒョン”など。

『コンジアム』の“ウィ・ハジュン”、ドラマ『袖先赤いクットン』の“カン・フン”、ドラマ『ペントハウス』の“オム・ギジュン”など男性陣も活躍しますが、あくまで女性のバックアップという感じです。

ドラマ『シスターズ』は全12話。1話あたり約60分~80分と大ボリュームなのですが、2022年の最も面白い韓国ドラマの一本なので、ぜひ時間を作って鑑賞してみてください。

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『シスターズ』を観る前のQ&A

✔『シスターズ』の見どころ
★多彩な女性たちが主体的に活躍する、女と女の圧倒的なボリュームの物語。
★予測できないハラハラドキドキの展開。
✔『シスターズ』の欠点
☆一気見したくなって中断できなくなる。

オススメ度のチェック

ひとり5.0:見逃せない韓国ドラマ
友人4.5:話の展開で盛り上がる
恋人4.5:異性愛ロマンス多少あり
キッズ3.5:やや残酷な描写あり
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『シスターズ』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『シスターズ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):人並みに生きている

狭い家で隣り合って床に座り、思い出を語るインジュインギョンの姉妹。小学生の頃はゆで卵にロウソクをたてて誕生日を友達と祝い、テレビにでている人たちと同じものは望めないと思っていました。でも今は人並みに生きている…。そして2人は帰って来た高校生の一番下の妹のイネを誕生日ケーキで盛大に祝います。

そのとき、慌ただしく母が帰ってきます。夕食では、姉たちはイネに欲しいものはないかと聞きます。

「修学旅行に行きたいんでしょ」「どうせ行けない」

姉は封筒を渡します。姉たちの貯めたおカネです。「ありがとう」とイネは嬉しそうに受け取りますが、母はその封筒のカネを取り上げ、「父の借金があるのに」と怒鳴ります。「それは私たちが返す」と反論しますが、「高校生が修学旅行でヨーロッパに行くなんて」「イネは全国一の芸術学校に通っている。自力で合格して奨学生になった」「あなたたちは行かせられなかったのに、この子だけ行かせるなんてできない」と母は納得しません。「私たちは妹を行かせられて幸せなの」と母から紙幣を取り上げる姉たち。イネは沈黙します。

翌朝。母からの手紙が1通。「母親よりも1人の人間として生きたい」…そう書かれており、母はあのカネを持って外国へ出ていきました。キムチだけを残して…。

イラつくインジュをよそに、イネは淡々と料理し、インギョンは慰めます。イネは「修学旅行は諦めていたから大丈夫」と口にし、「2人に気遣かわれるのは嫌」と冷静です。

インジュはオーキッド建設に勤めており(ちなみに「Orchid」は蘭を意味します)、チーム長に給料の前借りを頼みますが、不愉快だと叱責されます。インジュが気安く話せるのは上階のチン・ファヨン先輩だけです。ファヨンは125万ウォンを貸してくれると言います。

そしてインジュはファヨンと高級なレストランで食事。ファヨンはインジュに高そうなハイヒールをくれます。何か達観した生き方をするファヨンにインジュは憧れていました。

インジュはイネにお金を見せますが受け取ってくれません。イネがヒョリンという同級生の子の母からおカネを貰っているのを目撃し、それは物乞いだと怒るインジュ。

一方、OBNで働く記者のインギョンは大富豪な大叔母ヘソクから電話を受けます。インギョンは大叔母と食事すると、金銭的な支援をしてくれるそうです。そして偶然に幼馴染だったハ・ジョンホと再会します。

インギョンはソウル市長選を控える大物理事長のパク・ジェサンの不正疑惑を追及していました。しかし、自身のアルコール依存症を先輩記者であるチャン・マリに暴かれてしまい、停職に…。

対するインジュもファヨンが姿を消して不安になっていました。職場にはチェ・ドイルという怪しそうな男も来訪します。

インジュはファヨンの家に行ってみるとそこでファヨンの首つり遺体を発見。さらに取締役からファヨンが700億ウォンの裏金に関与している可能性を指摘され、資金探しに協力を求められますが、断ります。

ところがファヨンのお気に入りのヨガの会員が自動的に自分に移行したのに気づき、そのヨガに訪れると、ファヨンのロッカーから20億ウォンの札束が入ったバッグを見つけてしまい…。

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3姉妹ともうひとりの女

『シスターズ』は貧困の描写から始まり、このドラマは一貫して貧困を描いています。しかし、ただの貧困日常モノではなく、それに対して3姉妹がどう向き合うかの物語です。

長女のインジュはバツイチで、まだ玉の輿を狙うのもありだと思っている女性。長女という重圧のせいか、他人への依存体質が強く、ファヨンをかなりべったりと慕っています。そんなインジュは20億ウォンを手にしてしまい、さらに総額700億ウォンが降ってくる可能性も浮上し、リッチな夢の成就に浮足立ちます。ハイヒールがキーアイテムで、フェアリーゴッドマザーなファヨンと考えれば、典型的なシンデレラ・ストーリーです。

次女のインギョンは記者という職業なだけあって正義感が強く、彼女にとっての人生の肯定はまさに不正を正せるかにかかってきます。貧困が社会構造ゆえに生じていることは3姉妹の中で一番よくわかっているはずですが、理解していてもキャリアがついてこないと意味がない。インギョンの場合はおカネで解決できない葛藤なので余計に辛いところです。

三女のイネは序盤からとにかく可哀想で悲壮感がキツくて…。イネの胸の内にあるのは、姉に助けてもらうことへの申し訳なさ、そして何もできない自分の不甲斐なさ。姉たちの存在さえも重荷になってしまい、イネは富裕層であるパク・ジェサンの家族に頼ることもやむなしという結論に至る。貧困が尊厳を奪うとはこのこと。それでもヒョリンとの格差を超越したシスターフッドな描写はみずみずしく、作中で最も理想的な着地に到達するのですが…。

上手いなと思うのは、そもそも着想元になった「若草物語」は4姉妹の物語です。でも『シスターズ』は3姉妹。ではもうひとりはいないのか

一応はイネも発症する病気で昔に亡くなった姉のインソンが4人目と言えますが、関係性で言えば、ファヨンを4人目と考えてもいいですし、ヒョリンだって成り立つでしょう。もっとエモい解釈をするなら、これを観ているあなたが4人目だという受け取り方でもいいはずです。

『シスターズ』はそうやって女と女の関係性を自由に紡いで、好きな場所に着生させて、その鮮やかさを楽しむ…まるでそれこそ蘭の鑑賞みたいです。しかも、見るだけに終わらず、女と女の関係性は貧困を抜け出すパワーも化学反応で発生させるはずだという希望も与えてくれる。とても刺激的なドラマですね。

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敵となる女たちも魅力あり

『シスターズ』は黒幕がなかなか見えてきません。紆余曲折ありつつ、多くのミスリードで視聴者を翻弄しつつ、最終的に正体を現すのはパク・ジェサンの妻であり、ウォルリョン美術館館長にして、蘭に狂った魔女…ウォン・サンアでした。

その敵側には、サンアの他にも、ウォルリョングループの忠実な駒にして暴力でいたぶることも平気で行うコ室長であったり、はたまた権力者と裏で繋がろうと暗躍するチャン・マリ記者だったり、ご丁寧に3姉妹に対応するように3人の悪い女が設定されています。血の繋がりはないけど、悪の3姉妹って感じかな。

でもこの敵側にいる女性たちも元をたどれば社会構造の犠牲者です。とくにサンアはその人生が作中で深く掘り下げられます。ベトナム戦争の英雄のウォン・ギソン将軍の娘にして、母の壮絶な死を目の当たりにして、生き方を歪めざるを得なかった女。兄であるウォン・サンウに家の富は流れていき、それを奪うには自分の手を汚してでも、夫を生贄にしてでも、突き進むしかない…。

自作の舞台で自作のキャラクターを殺すというサンアの劇場型犯罪は、どこまで意図していたかは不明ですが、ラストは青い蘭の木の下で自分の死が飾られて終わるという皮肉な一貫性で幕を閉じます。それにしても塩酸スプリンクラーは韓国らしい奇抜な傷害演出だったな…。

結局のところ、表向きの敵はサンアでしたが、真の敵は貧困であり、家父長制なんですね。

そしてラストは善悪の狭間にいるファヨンの生還で締めるというね…。ファヨンの見せ場といい、なんか全部ファヨンに持っていかれた気がするくらい、あの法廷でのファヨン登場シーンはカッコよかったな…。

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控えめな男の援助(手投げ爆弾)

『シスターズ』は物語を見終わってみると、構図としては女と女の戦いではあるのですが、男がそこに上から目線で見下してこないので、そんなに嫌な感じはしません

本作の男性ヒロイン枠である、チェ・ドイルとハ・ジョンホもあくまでサポートに徹するのみで、女性の主体性を邪魔することはしません。タキシード仮面のごとく毎度のピンチに駆け付ける姿は、話数を重ねていくとすっかりパターン化してなんか笑っちゃいますけど…。

あとそのドイルの父である、隠居するベトナム戦争経験暦のある百戦錬磨のチェ・ヒジェも、『ランボー』か!とツッコみたいくらいの豪快な役回りでしたね。「人生には爆弾が必要だ」って言ってハンドグレネードを女性に渡すオッサン…普通に考えてヤバイのですが、まあ、役に立ったから良し!

『シスターズ』は予期せぬ展開の連発するミステリーサスペンス主軸の物語ですが、複数の登場人物の画策が錯綜していくわりには、そんなにややこしくはありません。そこはちゃんとミステリーとしては王道に作ってくれているからでしょうかね。

今作のミステリーらしいアイテムは「青い蘭」です。ベトナム戦争の英雄のウォン・ギソン将軍たちが発見し、幻覚作用でもあるらしく、情蘭会という組織の象徴になります。突拍子もない植物がでてくる感じはクラシックなミステリー“あるある”かな。

『シスターズ』の不満点を挙げるなら、ミステリーとしてはかなり大雑把で「なんだそりゃ」という種明かしなのは目をつむるとしても、ベトナム戦争絡みの組み込みはあまり上手くないかなと思いました。韓国作品ではベトナム戦争が取り上げられるのは珍しくないのですけど、やっぱり韓国の立場的にはベトナムを攻撃している側ですからね。そこをスルーするのは貧困の社会構造を描く本作のテーマとしてもやや都合がよすぎます。今のベトナムの女性のエピソードを絡められると理想的だったのですが…。

あと、自殺を予想外のストーリー展開としてサプライズのネタに活用するのはさすがにもう止めた方がいいと思います。自死の表象も気を付けないとね…。

そんなこんなありつつ、『シスターズ』、毎話しっかりのめり込んでしまいました。もし私にも70億円手に入ったら、そうだなぁ…映画製作の助成金とかにして分配するかな…。

『シスターズ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience 50%
IMDb
8.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
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作品ポスター・画像 (C)tvN

以上、『シスターズ』の感想でした。

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