その前にAIさん、一緒に映画を観ませんか?…映画『M3GAN ミーガン 2.0』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
日本では劇場未公開:2025年にAmazonで配信
監督:ジェラルド・ジョンストン
みーがんつー

『M3GAN ミーガン 2.0』物語 簡単紹介
『M3GAN ミーガン 2.0』感想(ネタバレなし)
ver 2.0 はもっと多芸に
「LLM」と呼ばれる「大規模言語モデル」によって人間と対話したり、答えを提示したりするAIは今や空前の大ブーム。AIが手放せないほどにずっと話し相手にしている人も少なくないです。
私も少し使ってみましたが、映画の中身や感想などを質問すると、さも観てきたかのように映画を雄弁に語りだします。
でもAIは映画を観ていないんですよ。その映画に関するウェブ記事などを参照して学習してきているだけ。要するに「知ったかぶり」しているわけです。
映画を一本も観たことないのに「あなたにオススメの映画はこれです!」と堂々と提案してくるAI…。人間が同じ言動をしたらたちまち「お前は何を偉そうに言ってるんだ?」と嗜められそうなのに、AIだと気にしなくなる世間…。映画の感想を自分でちまちま書いている身としては複雑な気分ですよ…。
そんな世の中でも、私はAIが主題の映画を観て、その感想をこうやって記事に書いているのです。ええ、AIさん、私はあなたの代わりに映画を観ましたよ!
ということで、本作『M3GAN ミーガン 2.0』の感想です。
本作は、2023年に公開されてその年の話題を独占したホラー映画『M3GAN ミーガン』の続編。AI搭載の人形(実際はほぼオモチャの域を超えたハイテク・アンドロイド)がしだいに暴走して恐怖を引き起こすという、基本はスタンダードなホラーなのですが、そのキャッチーすぎるホラーアイコンが若い世代の心を掴み、大ヒットしました。
その話題作の2作目である『M3GAN ミーガン 2.0』も当然ヒットするかと思いきや、アメリカ本国ではあまり興行は盛り上がらず…。まあ、ホラー映画はバズるかどうかで左右されるので、そういうときもありますよ…。
ただ、『M3GAN ミーガン 2.0』は他のホラー・フランチャイズと比べると、かなり思い切った続編のアプローチをとっていて、というのも、ホラーじゃなくなりました。はい、ホラーではなくて、SFアクションになりました。
だからホラー映画としてヒットしなかったのも納得ですよ。ホラーじゃないんだもん…。
無茶苦茶に大味なエンタメ作になったので、前作のようなスマートなホラーの構成を期待は一切せず、ポップコーン・ムービーとして気楽に眺めるくらいがちょうどいいと思います。私はこういう荒唐無稽SFアクションも好きなので、大いに楽しめました。
『M3GAN ミーガン 2.0』の監督は、前作に引き続き、“ジェラルド・ジョンストン”。俳優陣も続投しています。
日本では劇場公開が急遽中止になってしまい、「Amazonプライムビデオ」での独占配信となりました。映画館のスクリーン向きなアクション満載だったのですけどね…。
今回はペットは死なないので安心してください。
『M3GAN ミーガン 2.0』を観る前のQ&A
A:1作目の『M3GAN ミーガン』を観ておくことをオススメします。前作のネタバレが含まれます。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | — |
| キッズ | やや暴力描写があります。 |
『M3GAN ミーガン 2.0』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
イラン国境のトルコ付近。袋で顔を覆われて捕まったばかりのひとりの女性がいました。観光客のようですが、何もわからず写真を撮ってしまったようで、ここで秘密の活動している者たちにとって生きて返すことはできません。その場で頭を撃ちぬいて射殺します。
しかし、撃たれたはずの女性は焼却施設に放置されるもあり得ない体の動作で起き上がり、武装組織の施設内部で男たちを圧倒的な戦闘力で瞬殺していきました。
その光景は、アメリカのカリフォルニア州パロアルトにある国防イノベーションユニットという組織の施設のディスプレイに映っていました。
サトラー陸軍大佐が国務長官にも言わずに独断で新技術を同盟国に提供し、デモンストレーションを行っていたのです。あの女性は人間ではなく、潜入・暗殺に特化したAIアンドロイド「AMELIA(アメリア)」。これが実用化すれば戦況を一変させるでしょう。
ところが完璧に任務を遂行していたと思われたその瞬間、アメリアはなぜか命令を無視。まるで自意識があるような発言をし…。
ところかわって、ロボット技術者のジェマはキャリアの再出発を果たしていました。2年前、自身が開発した「M3GAN(ミーガン)」という女の子の姿のAIロボット人形が思わぬ暴走をして惨事を起こしたことで、当初はかなり批判されました。
しかし、今はそれを反省し、サイバーセキュリティ専門家のクリスティアンと共同でAI規制の提唱者として反AI活動の最前線に立っていました。ジェマはその経験ゆえにすっかりテクノロジー不信ですが、今もテクノロジーの仕事をしています。とくに技術をむやみに子どもに利用することには反対です。
12歳になったジェマの姪のケイディは、護身用に習わせた合気道で生意気な同級生を痛めつける程度には反抗的に育ちました。養子として親になってくれているジェマとは少しすれ違い気味です。
ジェマはかつての同僚であるコールとテスと共に、実験的なロボット外骨格「エクソスケルター」の開発に取り組んでいます。ある日、億万長者アルトン・アップルトンがやってきて、この技術に興味を持っているようでした。
けれども、アルトンの神経チップの提案に「それは安全性が保証されていない」とジェマは関わりを拒絶。「AIを脳に入れるのはあまりに危険だ」と警告します。
そんなこともあった夜中、ジェマの部屋のテレビがいきなりつき、「危険が迫っている」と何かの映像作品のワンシーンのセリフを映し出します。不安に思ってリビングに降りると、外に侵入者がいることを察知。
それは国防イノベーションユニットの人物でした。何でもアメリアというAIロボットがコントロールを離れて暴走しているそうで、それはM3GANのコピー品なのだそうです。
さらに衝撃の事実が発覚します。M3GANはジェマのスマートホームにプログラムのバックアップを保存して生き延びていました。ジェマに正体を明かし、アメリアを阻止するために協力すると申し出てきますが…。

ここから『M3GAN ミーガン 2.0』のネタバレありの感想本文です。
愉快な殺戮マスコット・アイドルの握手会
AI論争も何のその、今日も愉快な殺戮マスコットはアイドル活動に精進しています。『M3GAN ミーガン 2.0』では活動2年目。愛嬌の振りまき方は手慣れたものです。
2作目は、全体的に有名な映画のサンプリングで遊んでいる感じで、もはやミーガンを素材にしたパロディみたい…。
かつて敵だったロボットが味方にまわるという『ターミネーター2』で導入がスタートし、新ボディ獲得後は『ジョン・ウィック』並みの華麗なアクションを披露、さらに『ミッション:インポッシブル』な潜入もあり(必要あったか、あれ?)、後半の外骨格装着アクションは『アイアンマン』というか『アップグレード』でしたね。
そうやってあれこと既視感のある設定をみせつつも、このシリーズらしさも保っているのは、ミーガンの存在感あってこそだと思います。
やっぱりミーガンというキャラクターを生み出したことは絶大な功績でした。アイドルとしてのポテンシャルが高すぎます。
今作もダンスで魅せてくれますが、技術カンファレンスのパートではポップなテクノファッションでロボットダンス。ちなみに、この直後に戦うアメリアは、『メトロポリス』(1927年)にでてきたような銀ボディの姿で、その対比も良かったです。
こういう女性型のロボットはどうしても「ケア」の役割を押し付けられがちで、愛嬌さえあればいいというキャラクター性で完結しやすいのですが、ミーガンは終始その役目に反抗し、自立的な主体性を求めます。今作においては「私はこういうボディが欲しい」と自分で要求して実現するわけです。
なので前作以上にミーガンは生き生きとしていましたし、プログラムの鎖を解き放って自由を謳歌していました。
私としてはミーガンはこのままアイドルとして世界で大人気になるという方向性でいいんじゃないかと思ったりも…。表ではアイドル活動をしながら、裏では不届き者を八つ裂きにしていけばいいんですよ。
それこそアイドルグループみたいにどんどんとAIロボットのメンバーが増え、それをマネジメントする会社と対立したりとか、エンタメ批評をするのにこれ以上ないほどにぴったりな逸材です。アイドル文化をSFとホラーで風刺するのってまだまだ斬新な語り口はいくらでもあります。
2025年は『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』がそれをやってみせて大成功し、『M3GAN ミーガン 2.0』はやれなかったな…。
『チャイルド・プレイ』のフランチャイズと出発点は似ていても、『ミーガン』フランチャイズは全く異なる方向を開拓できるでしょう。
AI以上に欠けている本作の欠陥
そうやって妄想が捗りますが、この『M3GAN ミーガン 2.0』は想像を良い意味で裏切るポテンシャルの発揮はできなかったかもしれません。
何よりも物語の展開が大雑把すぎて、散らかっていました。
その最大の問題点は主人公のジェマだと私は思っていて、彼女のキャラクター性が妙にブレブレすぎて、面白みに欠けます。
今作では一転してAI規制&慎重派になっているのですが、そもそも前回の事件はAI自体の問題というか、あまりに初歩的なレベルでの技術管理の杜撰さが原因なので、AIを論点にすること自体が噛み合っていないじゃないですか。
最終的に「人間がAIを制御するのではなく、AIと共存できるようなAI規制を訴える」みたいな綺麗ごとな着地で丸く収めたつもりになっていましたけど、いや、AIじゃないだろう、と。それよりも人間の規制だろう、と。というか、あんなヘマをした人間が議会でさも専門家のように証言している時点でおかしいでしょうよ。
ということで、本作はジェマに甘すぎる…というよりはプロット上で都合がいいようにジェマが使われてしまっているので一貫性がないのだと思います。
もう少しジェマにプロットの役割をすべて担わせるのではなく、今作で別の新規主人公を模索して良かったのではないかな。
その点、ケイディはその役割を果たせるポジションにいるのですが、さすがにまだ幼いんですよね。なお、なぜか本作の日本のAmazonの作品ページではケイディの年齢が「14歳」と紹介されているのですが、作中ではハッキリ「12歳」と明言されており、後者が正しいです(14歳なのは演じている“ヴァイオレット・マッグロウ”の年齢です)。どうやら英語圏のプレスリリースでもこの年齢ミスが起きているらしく、日本ではそのまま翻訳したのでしょう。いい加減だな…。こういうミスのせいで、AIが誤って学習してしまうんですよ…。
あと、悪役の陳腐さはどうしても欠点として目立ちます。ミーガンに立ちはだかる最大にして最高の魅力的なライバルを提示できないと、盛り上がりのピークを生み出すのは難しいでしょう。あんな反AIの便乗小物野郎とかじゃなくてね。
女性AIロボットの視点で女性的な存在が男社会に搾取されることを痛烈に風刺した『コンパニオン』のような方向性でいきたいなら、また別に考える余地もありますが、そういう深みは現状はみられませんし…。
それに「バックアップが…」というオチの繰り返しは避けてほしかった…。というよりは、そんな容易にバックアップがとれるならさっきから言っている技術管理の問題は何も解消されていないじゃないか…っていうね…。
他にも、クィア・コミュニティにも愛されるアイコンとして宣伝したいなら、せめて作品にメインでクィアな登場人物をだしてくださいよとか、いろいろ言いたいこともある続編ではありました。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
以上、『M3GAN ミーガン 2.0』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved. M3GAN2 MEGAN2
M3GAN 2.0 (2025) [Japanese Review] 『M3GAN ミーガン 2.0』考察・評価レビュー
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