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『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』感想(ネタバレ)…ダニエル・クレイグの有終の美

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

ダニエル・クレイグの有終の美、それとMI6無能記録更新…映画『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:No Time to Die
製作国:イギリス・アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年10月1日
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』あらすじ

常に命の危険があった現役を退いてジャマイカで穏やかな生活を送っていたジェームズ・ボンドのもとに、CIA出身の旧友フェリックス・ライターが助けを求めにやってきた。誘拐された科学者を救出するという任務に就いたボンドは、その過酷なミッションの中で、世界に脅威をもたらす最新技術を持つ黒幕を追うことになる。殺しのライセンスは過去のものであったとしても、このスタイルを曲げることはない。

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』感想(ネタバレなし)

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ダニエル・クレイグ、お疲れ様です

「金髪(ブロンド)のボンド?」「なんか無愛想だ」「こんなのボンドじゃない」

キャスティングが発表された当初、それはもう酷評の銃弾でハチの巣にされたような状態でした。2005年、大人気シリーズ『007』の主人公であるジェームズ・ボンドを長らく務めてきた5代目“ピアース・ブロスナン”の引退を受けて、第6代目のジェームズ・ボンド役へ抜擢されたのが“ダニエル・クレイグ”

それまでほとんど脇役が多かったので“ダニエル・クレイグ”の知名度がないのはわかります。しかし、何もこんなにもボロクソに言わなくても…というくらいの痛烈なバッシングの連発。デビュー前の新人ボンドはテロリストでも凶悪なサイコパスでもなく、陰湿なアンチの攻撃にまず耐えないといけないのでした。その惨状の様子はドキュメンタリー『ジェームズ・ボンドとして』にも映し出されています。

しかし、初めて“ダニエル・クレイグ”主役の『007 カジノ・ロワイヤル』が2006年に公開されるとどうですか。手のひら返しですよ。「歴代最高のジェームズ・ボンド」なんて評価まで飛び出し、ほんと、世間って変わり映えが激しい…。

そうして激動のキャリアがスタートした“ダニエル・クレイグ”。2008年の『007 慰めの報酬』、2012年の『007 スカイフォール』、2015年の『007 スペクター』とシリーズを順調に成功に導き、完膚なきまでに初期のいわれなき批判を抹殺する実力をスマートに見せつけました。そのスタイル、まさにジェームズ・ボンド。

こうやって作品を重ねていくと今度はいつ引退するのかとその話題ばかりが持ち上がるのですが、ついに“ダニエル・クレイグ”のジェームズ・ボンド役の幕引きとなる映画がやってきました。それが本作『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』です。

いや、やってきました…と言いましたけど、なかなかやってきませんでしたね。2020年に公開予定でしたが、あの最高の殺し屋であるボンドもウイルスは殺せない、コロナ禍の影響で延期を繰り返し、やっと本場のイギリスでは2021年9月30日に公開を迎えました。ファンにとっても「待ってました!」のお祭り。コロナ制限のせいで余計に劇場で『007』新作を観れる感動も格別です。

監督は当初は『トレインスポッティング』の“ダニー・ボイル”が予定していたのですが、創造性の違いから離脱して、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』の“キャリー・ジョージ・フクナガ”の起用に。これは私も驚きました。というのもあんまりイギリスに縁がないですし、クリエイティブ面でも進歩的な姿勢をとる人ですから。この監督選定からも今回の『007』は時代の変化を取り入れようという製作の“バーバラ・ブロッコリ”の意識が感じられます。

しかも、脚本は“キャリー・ジョージ・フクナガ”、そしてシリーズおなじみの“ニール・パーヴィス”に加えて、ドラマ『Fleabag フリーバッグ』や『キリング・イヴ/Killing Eve』で大注目の若手“フィービー・ウォーラー=ブリッジ”が参加しているんですよ。

そして恒例の主題歌を担当するのが、Z世代のトップアーティストである“ビリー・アイリッシュ”

これだけでも今回の『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の座組、時代性を強く印象づけますね。

俳優陣は、前作から引き続き、“レア・セドゥ”、“レイフ・ファインズ”、“ベン・ウィショー”、“ナオミ・ハリス”、“ジェフリー・ライト”、“クリストフ・ヴァルツ”が登場します。そこに新規として、『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』の“アナ・デ・アルマス”、『キャプテン・マーベル』の“ラシャーナ・リンチ”、そして悪役に『ボヘミアン・ラプソディ』の“ラミ・マレック”。シリーズ屈指の多彩な顔ぶれになりました。

とにかく“ダニエル・クレイグ”が有終の美を飾る見事な一作になっていますので、ぜひ映画館の大スクリーンで鑑賞してください。上映時間が163分もあるのでトイレに気を付けて!

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『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』を観る前のQ&A

Q:『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:“ダニエル・クレイグ”出演シリーズ作の過去4作(『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』『スカイフォール』『スペクター』)は予習必須。過去作のキャラクターが平気でバンバン登場して、さながら集大成になっています。
鑑賞前の おすすめ PiCKUP!
『007 スペクター』
シリーズ前作。
Amazonで視聴
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オススメ度のチェック

ひとり4.0:初心者もようこそ
友人4.0:ファン同士で白熱
恋人4.0:一緒にファンになろう
キッズ3.5:結構怖いシーンも
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『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』予告動画

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』最新予告
↓ここからネタバレが含まれます↓

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):全ての過去に決着を

世界を裏で支配する悪の巨大組織「スペクター」を束ねる首領であるエルンスト・スタヴロ・ブロフェルドの野望を食い止めたイギリスのMI6に所属するエージェント「007」のジェームズ・ボンドはその一件の後、引退をしてその事件に巻き込まれたマドレーヌ・スワンと一緒に静かな生活を送っていました。

マドレーヌ・スワンは『007 スペクター』で登場。父はミスター・ホワイトであり、ミスター・ホワイトの初登場は『007 慰めの報酬』。

ボンドとスワンはイタリアのマテーラで過ごしていましたが、2人は過去と向き合うのに苦労していました。自分の過去を後で明かそうと心に決めるスワン。一方でボンドは過去に愛したヴェスパー・リンドの墓を訪れて想いに区切りをつけようとします。

ヴェスパー・リンドは『007 カジノ・ロワイヤル』で登場しました。ボンドは彼女と結婚を考えるほどに愛するもそこには裏切りが…というお話。

しかし、墓が突然の大爆発。そこにあったのスペクターの印。わけがわからないままにボンドはスワンを問い詰めながら、車で逃げます。結局、ボンドは彼女が裏切ったと思い、決別するのでした。

それから5年後。

ボンドはジャマイカでひとり隠居生活をしていました。そこに旧友でCIAのフェリックス・ライターがアメリカ国務省のローガン・アッシュとともに訪問してきます。なんでもとあるラボから拉致されたヴァルド・オブルチェフという科学者を救ってほしいとのこと。

フェリックス・ライターも『007 カジノ・ロワイヤル』で登場。

最初は断るボンドでしたが、MI6の新しい「007」エージェントであるノーミが接触してきて、どうやらMI6はCIAとは協力せずに別行動でオブルチェフを追っていることを知ります。かつての上司であるMI6のMの冷たい態度に腹を立て、ボンドはフェリックスに力を貸すことにします。

向かったのはキューバ。現地に潜入するCIAエージェントであるパロマと合流し、スペクターの会議に紛れ込みます。そこで今はロンドンで厳重に監視投獄されているはずのブロフェルドの声が響き渡り、ボンドを名指しして天井から謎の煙が拡散。それを浴びた参加者は悶え苦しみ死んでいきます。どうやら本来はボンドを殺す予定だったようですが、オブルチェフが細工したようです。逃走するオブルチェフを新007のノーミと奪い合いながらなんとか奪取。

洋上のCIAの施設に連れ帰りますが、そこでアッシュは裏切り者だと発覚。彼に指示を出していたのはリューツィファー・サフィンという謎の男で…。

フェリックスを失ったボンドは覚悟を決め、かつての古巣に戻ります。「007」の番号を置いてきたあのMI6に…。

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MI6、土下座してください

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』は過去4作と比べると一番に荒唐無稽な娯楽作になっていました。ほとんどツッコんだら負けなレベルです。

一応、リアリティもなくはないです。例えば、今作は前半はかなり対立関係がごちゃごちゃしていて混乱した人もいると思います。とくにイギリスのMI6とアメリカのCIAは情報共有しておらず仲が悪いようです。これはおそらく背景にはブレグジット(イギリスのEU離脱)とトランプ政権のせいで英米の諜報も分断しているということなんでしょう。

それにしたって今回のMI6は無能でしたね…。まずブロフェルドの身体調査くらいちゃんとしてよ、と。そして例のヘラクレス計画。あんな生物兵器、絶対に危ないことくらい小学生でもわかる。そして終盤のあのミサイル攻撃ですから。国際問題の件はどうなったんだろう…。これまでのMI6も酷かったのですけど、今作は完全にMI6の決定的な墓穴。ボンドじゃなくてMが土下座するべきでした。

今回の敵であるサフィン。鑑賞前にひとつ懸念していたのは、“ラミ・マレック”が演じていますし、これでまた「中東系=悪者」の偏見が強化されるのではないかということ。でも実際に観てみたら中東要素皆無で、むしろなぜかやたらと「和」推しです。冒頭の能面サイコキラー(演出がホラー映画で怖かった)といい、終盤のアジト(どう考えても北方領土に位置していて、日本庭園風の毒草栽培、畳での対面など)といい、このサフィン、日本生まれ日本育ちの人なのだろうかというほどに和に馴染んでる…。個人的には終盤のサフィンの祭りの青年団みたいな恰好畳が下に下がっていくカラクリ仕掛けでツボに入りました。ここで笑いたくなるのは日本人だけだろうなぁ…。『007は二度死ぬ』の体験が再びですよ。

ナノボット兵器もどこぞの反ワクチン派の妄想並みのバカバカしさなんですが、最後にミサイルで一掃するのは本当にあれでどうにかなるのかとずっと疑問のままでしたけど…。

まあ、でもこれぞ『007』なのですけどね。真面目すぎないのがいいというか、でもホモソーシャルな暴走はしない、そのバランス感覚。コロナ禍でシリアスにならざるを得ない経験をした私たちにプレゼントされた最高のスパイアクション・エンターテインメントでした。

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旧キャラも新キャラも魅力的

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』はキャラクターの魅力も爆発していました。“ダニエル・クレイグ”のシリーズはストーリーが積み重なっているので、キャラの成長や深掘りができて愛着が湧きやすいのも良いところ。

私のイチオシはやっぱり“ベン・ウィショー”演じるQです。今作では私生活も垣間見えて、猫も見れたし、大満足。たぶん作中でも同性愛の設定なのでしょうね(“ベン・ウィショー”本人もゲイです)。せっかくのお家食事会の準備中にズカズカとあがりこんでくるボンドの空気読めなさ…。

今作の新規キャラも良かったです。新007を演じた“ラシャーナ・リンチ”、セクシーでクールで最高でした。彼女のスピンオフが観たいくらいに。アクションが映える俳優ですよね。ボンドが「00」にしれっと復帰してから「00…what?」としつこく聞くくだりとか、コミカルさもあっていいですね。

コミカルで言えば、キューバでの短い出番にもかかわらず印象を持っていく“アナ・デ・アルマス”演じるパロマ。自分のセクシーさを一切武器にする気はなく、目の前の仕事でいっぱいいっぱいになっている感じがまたユーモラスで、それでいてやたらと戦闘は得意という…。あのスタイルはいかにも“フィービー・ウォーラー=ブリッジ”脚本っぽさがあります。“アナ・デ・アルマス”は他の映画でもどうしてもセクシーアイコンとして起用されやすいのですが(『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』ではゲロ吐いてたけど)、今作ではあえて外しているのが高ポイント。

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男優の引退ストーリーとしての定番

そして忘れてはならぬ“ダニエル・クレイグ”のジェームズ・ボンド。今作では最も人間味が溢れる温かい人柄が見える物語だったと思います。

冒頭のマドレーヌ・スワンと決別。あれはこれまではボンドと言えば「女を捨て駒にする」のが定番だったシリーズの負の側面に対する、男である自分が同じ目に遭ったら…という意趣返しにもなっていたような気がします(今作ではボンドに捨て駒で死ぬ・利用される女性がいない)。実際は勘違いなのですが、すっかり裏切られたと思って不貞腐れて劣等感に沈んでいる男に成り下がるボンド。

しかし、それは過ちであり、しだいにボンドは「家族」の存在を意識していくことに。このあたりは『アベンジャーズ エンドゲーム』のトニー・スタークとほぼ全く同じ構成であり、一種の男優の引退ストーリーの定番軸なんでしょうかね。最終的にはあの娘がボンドの実の子かはボカしたままにしており(青い眼だけを強調)、血縁主義に陥らないような配慮はあるのかな。

ラストはお決まりのセリフをマドレーヌ・スワンに言わせる。ジェームズ・ボンドの死を直球で描きつつも、有終の美としても綺麗な着地だったのではないでしょうか。

さっそく話題は次のジェームズ・ボンドは誰が演じるのかに移りそうですけど、ひとまずはご苦労様とこの“ダニエル・クレイグ”のキャリアを讃えたいところです。あ、Mはクビね。

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 84% Audience –%
IMDb
7.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)2019 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED. ノータイムトゥダイ

以上、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の感想でした。

No Time to Die (2021) [Japanese Review]