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『ノエル Noelle』感想(ネタバレ)…サンタから学ぶキャリア論

ノエル

Disney+イチオシのクリスマス・ムービー…映画『ノエル』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Noelle
製作国:アメリカ(2019年)
日本では劇場未公開:2020年にDisney+で配信
監督:マーク・ローレンス

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『ノエル』あらすじ

サンタクロースの娘であるノエルは新しいサンタとなった兄を支える仕事に情熱を捧げていた。しかし、その兄が北極から消えてしまったために、自ら探しに行くことにする。兄が向かったと思われる場所はアリゾナ州のフェニックス。この暖かい地域で挙動不審になりながらも懸命に兄を探す。クリスマスまでもう時間はない。無事に聖夜を迎えることはできるのか。

『ノエル』感想(ネタバレなし)

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Disney+の今年のクリスマスは…

新型コロナウイルスのせいでずっと自粛ムードが続き、気を緩められないままに冬を迎える2020年の終わりになりました。

もしかしたらサンタクロースも外出制限で出られず、今年のクリスマスは中止になると不安に思っている子どももいるかもしれません。

大丈夫、クリスマスは2020年もいつもどおりやります。サンタは健康です。WHOもサンタは免疫を持っていると断言していました。

こんな年だからこそ、クリスマスの心は必要だと思います。クリスマスとは何なのか。キリスト教に関連した日? 家族や恋人と一緒に過ごす日? プレゼントをもらったり、あげたりする日? イルミネーションを楽しむ日? 美味しいケーキやご馳走を味わう日? 恋人がいないことに劣等感を抱えてイジける日?

全部、NOです。クリスマスは、人間の善良さを信じる日。他人に尽くす日です。それが愛であり、この世界中がかつてない不安に覆われている今の時期に必要なもの。自分さえよければいい…ではなく、困っている人に手を差し伸べよう。頑張っている人に感謝し、その献身に恩返しをしよう。それはマスクや手洗い・うがいと同じくらい、パンデミックを抑えるパワーを発揮するはず。

そんな想いを今一度、確認するためにもこんなクリスマス映画はいかがですか。それが本作『ノエル』です。

本作はディズニーの動画配信サービス「Disney+」だけで独占配信されているオリジナル映画です。本国アメリカではサービス開始当初の2019年から配信されていたのですが、日本ではサービス開始がそもそも遅く、結果、クリスマスの時期に合わせて2020年の12月に配信されました。

クリスマス映画らしく、ストーリーはオーソドックスで、家族や愛の大切さを感じさせる定番のものです。ただ、ちょっと捻りを加えていますけど。

クリスマス映画は基本的に毎年のように新作が登場するので、ちゃんと時代の変化に合わせてその中身も変わっているのが面白いところです。クリスマスというベースとなる精神は同じですが、細かな調整が加わるものです。本作『ノエル』も現代的なアレンジがバシっと注入されています。

物語は、サンタクロースの娘が実家を出た兄を追っていろいろな騒動を起こしていくドタバタ劇。ちびっこが主役ではなく、大人の女性(でも童心)が主人公であり、大人向けのシュールなギャグも散りばめられているので、大人が楽しめるクリスマス映画といった感じ。まあ、子どもが観ても全然問題ないですけど。Disney+で配信されているくらいですからえね、ファミリー映画です。

主役を熱演するのは、日本でもファンも多い“アナ・ケンドリック”。彼女はもともとブロードウェイ・ミュージカルでキャリアデビューしたこともあって、この手のジャンルもお手の物。私たちが“アナ・ケンドリック”に期待するとおりの魅力を終始振りまいてくれます。だいたい彼女は年齢のわりには幼稚さのある女性を演じることが多いですよね。今作ではあえてそれを逆手にとっているので、願ったり叶ったりなキャスティングだったのではないかな。

共演はドラマ『バリー』で高い評価を得ている“ビル・ヘイダー”。声優としてもコメディアンとしても多才な人ですが、今作『ノエル』では“サンタになりたくないサンタ”をユーモラスに好演しています。

個人的には大女優“シャーリー・マクレーン”も割と目立って活躍するのでそこにも注目してほしいです。なんか楽しそうにハシャいでいる姿を眺めているだけでも気分がいいものですから。

他には『One Night in Miami』の“キングズリー・ベン=アディル”、超実写版『ライオン・キング』でティモンの声を担当していた“ビリー・アイクナー”、『フライングハイ』の“ジュリー・ハガティ”、『マクファーランド 栄光への疾走』の“ダイアナ・マリア・リーヴァ”など。

監督は『恋は嵐のように』や『デンジャラス・ビューティー』の脚本を手がけてきた“マーク・ローレンス”。『ノエル』でも脚本を手がけています。

製作は名プロデューサーとして活躍している“スザンヌ・トッド”。彼女が関わっているからなのか、この『ノエル』は女性のキャリアを考えさせるメッセージ性も持っており、お仕事ムービーとしてもオススメできます。

2020年のクリスマスは家でゆっくり映画鑑賞がベストですね。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(沈んだ気持ちも明るく)
友人 ◯(ハッピーになれる映画です)
恋人 ◎(クリスマス気分を盛り上げて)
キッズ ◯(子どもでも楽しめないことは…)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ノエル』感想(ネタバレあり)

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愛と優しさとiPadを贈ろう

夜。ある家に煙突からひっそりと入ってくる赤い服の男。白いひげを蓄えた、その人は誰もが知っているあのサンタクロースです。クリスマスツリーの横をそっと歩いていると、女の子に見つかってしまいます。その子の兄も起きてきて、その女の子は無邪気に言います。

「サンタみっけ!」「パパ、私がいい子なの、知っているでしょう?」

サンタは2人の子ども、ノエルニックを抱きしめます。ここは北極、サンタの家です。

サンタは自信の娘と息子にプレゼントをあげます。ニックにはサンタの帽子。「サンタの訓練を始めるときがきた」と告げます。

「じゃあ私は何をするの?」とノエル。父であるサンタは「ニックのクリスマスの心を支えてくれ」と優しく語りかけ、ノエルはその言葉を胸に刻み付けるのでした。

そうしてノエルは成長しました。尊敬するサンタクロースである父は5か月前に亡くなり、ニックは23代目のサンタになりました。しかし、ソリを上手く飛ばせず不時着してばかり。親戚のゲイブはテクノエルフと何やらわけのわからない開発に明け暮れています。

かくいうノエルは父に言われたとおりカードを作ってクリスマスの喜びを広めている毎日。ノエルの仕事はサンタを支えることです。お世話係のポリーがそんな私を支えてくれています。

あまりにもニックがダメダメなので心配した母がノエルに助けてあげてほしいと懇願してきます。さっそくノエルはサンタのお仕事を解説し、指導していきます。いい子が悪い子があてる訓練、欲しいプレゼントをあてる訓練、煙突の入り方、トナカイを従える方法…。

ある日、ニックは「ここを抜けて暖かい場所でリラックスできたらなぁ」とぼやき、「じゃあ行ってみたら? 旅行雑誌で選んで週末にちょっと行ってくるとか」とノエルは気楽に提案してしまいます。

ところが北極ではサンタであるニックがいないと判明してしまい、大騒ぎに。急遽、集会が開かれ、このクリスマスの危機に対して、エルフ大勢を前に「新しいサンタを決めないといけない」と宣言されます。そして、あっさり次期サンタはゲイブに決定してしまいます。なんでも決まりに従って成人男性から決めないといけないだとかなんとか。とにかく評議会の命により、サンタ帽子を授かるゲイブ。一同は不安でいっぱいです。

ノエルは自分が責められ、自室で凹んでいましたが、旅行雑誌の切り取られたページからアリゾナ州フェニックに兄は行ったと推測。兄連れ戻すことを決意し、そりとトナカイを連れ出し、出かけます。うっかりポリーも巻き添えにして…。

到着したのはショッピングモール。そこで責任者のヘレンと協力しつつ、さらに私立探偵ジェイク・ハップマンに相談しながら、ニックを捜索。するとニックはヨガ教室で講師をエンジョイしていました。しかも、「サンタはもう嫌だ、こっちでの生活が性に合っている」とまで発言。ノエルはショックを受け、困り果ててしまいます。

そこに小さいトナカイのスノーコーンが手紙を持ってきました。どうやらゲイブのままだとクリスマスは滅茶苦茶になると母は酷く危惧しているようです。ゲイブはそりにUSBポートとGPSを取り付けるだけでなく、ドローンとAmazonPrimeを駆使したオンラインデリバリーのシステムを構築。しかも、FALALAという独自開発アルゴリズムで子どもの善悪を判定し、良い子は世界中で2837人しかいないから、プレゼントはそれだけでいいとまで豪語。これでは本当にクリスマスの伝統が消えてしまう…。

サンタを支える重責を背負うノエルにできることは…。

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フェニックスは暑い!

北極の狭い世界しかしらないノエルが外の世界にやってきててんやわんやの騒ぎになる。『ノエル』はクリスマス映画の定番である、異世界からの訪問者モノでもあります。

本作はその点においてはシュールを売りにしており、アリゾナ州フェニックス(12月でも平均気温は約20度、最高気温は30度を超える暑さ)という場違いなフィールドでまずは笑いをとってきます。

それだけ季節感がないと、やっぱりクリスマス意識も薄れるのか、外の世界の凋落したクリスマス文化に失望するノエルの一挙手一投足が面白いです。

このへんは“アナ・ケンドリック”の独壇場。彼女自身メイン州ポートランド出身ということもあってか、なんかフェニックスの雰囲気に合っていない感じも妙におかしいですし…。あのモコモコした服装で歩き回っているだけでもアホっぽさが出ます。

じゃあ、本作はただバカをしているだけのコメディなのかと言えば、そうでもなくて。

『ノエル』はルックからは想像はできませんが、実はキャリア論をテーマにした、とても社会人にもためになる“お仕事”ムービーでした。とくにジェンダーを基軸にしたキャリアの在り方に強く言及するものになっています。

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適材適所ってものがある

まず、次期サンタとして大役を任せられたニック。プレッシャーに耐えられず、ニックはサンタの仕事を放棄してしまいます。

このサンタが消えるというプロットの元ネタはおそらく『The Year Without a Santa Claus』という1974年の作品なのかな。

とにかくニックはサンタの職業を生まれながらに自分の意思とは関係なしに押し付けられてしまいます。実際はサンタになりたいと思っていたわけでもなく、あきらかに能力的にも向いていません。

こういう“やりたくもない仕事”をそれが男なら当然だろうとキャリア至上主義で強引に背負わされる…典型的な「男らしさの苦悩」であり、ニックはその犠牲者になってしまいます。

クリスマス映画というと、どうしても夢と愛に溢れる世界であり、そんな仕事に関われることは無条件に幸福であると思われがちですが、そうじゃない人もいる。本作はそこに目を向けさせてくれます。

本作の大事な要素は「人の能力に気づく」ということの重要性ですね。

ジェイクも息子のアレックスに気づいてやれません。彼は彼でそこまで男らしさ全開ではなく、むしろそういうステレオタイプを捨てて、育児に料理に家事にといろいろ頑張ろうとしているのですが、でも向いていないゆえに失敗しています。その不向きを認めて他者に協力を仰ぐ方がいっそのことラクになれるのに。

ゲイブも能力と仕事がミスマッチだから、あんなハチャメチャなことになってしまいます。彼自身とくに悪気はなく、要するに適材適所が整えばいいだけの話

男性はなかなか「自分には能力がない」と素直に認めづらい空気の中で生きていることが多いですが、本作はそのずっしりと重たい豪雪の塊を溶かしてくれるものでした。

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「伝統はただの包み紙、中身が大事」

そしてもちろん女性のキャリア論も全面で描かれます。

もうこのあたりはオチが序盤からバレバレなのですが、ノエルは実はサンタに向いている存在でした。良い子を見抜く力にも長けているし、どんな言語もマスターできるし、トナカイを統率できる力もある。根っからのサンタ・スキルが優秀です。なのに彼女は自分がサンタになれる

とは考えもしない。自分の可能性を自分で蓋してしまう。これもまた女性にはよくありがちなこと。

冒頭でノエルが父に言うセリフ…「パパ、私がいい子なの、知っているでしょう?」…これは同時にサンタですらもノエルの能力を見抜けていなかったことでもあり、人の能力に気づくことの難しさをちゃんと最初の時点で提示しています。

でもそんなノエルを無自覚にジェンダーバイアスに影響を受けているコミュニティが台無しにしてしまう。女性がサンタになれないとはどこにも書かれていなかったのに、なんか女性はサンタになってはいけない雰囲気だけで今まで過ごしてきたことの反省。

一方でそれをノエルが自覚して、どうやって自分で納得するか。この「私はサンタになれる!」という自信の獲得の描写はやや弱い部分はあります。「もし子どもが目を覚ましてサンタじゃないと言ったら…?」という恐怖感と、「メリークリスマス、サンタ」と子どもに言ってもらえた嬉しさはすごく感動的ですけど。まあ、ここはなんだかんだでクリスマス映画で、職業もサンタですからね。ややフワッとしたオチになるのも無理はないのですが…。

“アナ・ケンドリック”出演のお仕事映画だと、『マイレージ、マイライフ』や『バッド・バディ! 私と彼の暗殺デート』なんかがあって、どれも男性キャラにリードしてもらっているものばかりでした。今回の『ノエル』では完全に女性自身で自立してみせているので、そこはとても良かったです。

逆に家事全般で酷使されてきた人生を送るポリーの、外の世界でのハジケっぷりは清々しいですけどね。“シャーリー・マクレーン”のバケーション映像集です。『八十日間世界一周』みたいにそのまま旅にでも行きそうなテンションだった…。

個人的にはもうちょっと母親も深く絡んでくるものであってほしかったけど、そこまでの尺もなかったかな。

それよりも私はこういうクリスマス映画で女性主役ながら本作は恋愛ありきのストーリーにならなかったのが凄いと思います。これがベタな映画だったら、絶対にノエルとジェイクがくっつくという展開になるのですが、2人はあくまで親友状態のまま。本作は随所にクリスマスはロマンスありきではないと目配せしてくれています。もしノエルがただ恋するだけの装置になってしまったら、女性のキャリアのテーマも寒々しくなるだけですからね。

初めてのサンタ業。ブカブカだったサンタ・ファッションは、仕事を終えれば服のサイズがいつのまにか合っている。伝統はただの包み紙、中身が大事。

最近のサンタクロースはガラスの天井を破る方法もプレゼントしてくれるのです。

『ノエル』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 53% Audience 57%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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作品ポスター・画像 (C)Disney

以上、『ノエル』の感想でした。

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