初めてのプリキュアでも!…映画『HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:日本(2018年)
日本公開日:2018年10月27日
監督:宮本浩史
HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ
はぐっとぷりきゅあふたりはぷりきゅあ おーるすたーずめもりーず
『映画HUGプリ』あらすじ
突然現れてプリキュアたちの思い出を奪い、口癖や技までコピーしてしまう神出鬼没のミデンによって、プリキュアオールスターズが小さい姿(ベビープリキュア)にされてしまい、これまでのことを全部忘れてしまう。残った中で戦えるのはキュアエールとキュアブラックだけ。大切なプリキュアたちの思い出を取り返すため、力をあわせて立ち上がる。
『映画HUGプリ』感想(ネタバレなし)
私も今からプリキュアになれますか?
「私が一度も触れたことのない有名作品フランチャイズに映画で初めて触ってみる」のコーナーです。
そんなコーナーを勝手に自分の中で作ってます。なんか楽しい。
前回は『ONE PIECE STAMPEDE』を鑑賞して日本に君臨する漫画王「ONE PIECE(ワンピース)」の世界を初めて堪能しました。日本中を惹きつけるのも納得の、評判どおりのウルトラ・パワーでした。人生にもっと余暇に捧げる時間があれば単行本なども全部読むのに…。
今回はこちらもパワープレイでは負けていない、そして子どもたち、とくに女児に末永く愛されている作品「プリキュア」シリーズです。
第1作は2004年から放映され、以降は毎年世界観やキャラクターを一新しながらも「変身ヒロイン」のジャンルを維持し、毎世代、子どもたちを魅了し続けています。大人の男性もハマっている人もいるみたいですが、まあ、それは一応メインターゲット層ではないので置いておくにして…(楽しむのは誰でも自由)。
東映アニメーションの女児向け作品は『美少女戦士セーラームーン』が1990年代に一世を風靡しましたが、今や「プリキュア」に世代交代。このプリキュア旋風がどこまで続くのかはわかりませんが、なんだかんだで2020年に突入しても人気は衰えていないあたりを見ると、もう10、20年は前進し続けるのではないかという気がしてくる…。映画業界も「プリキュア」のおかげで賑わっています。
で、私の話ですけど、この私はそんな「プリキュア」についてテレビアニメも映画も見たことはなく、知っている知識も語ることはろくにないスッカラカンな乏しさです。あえて言えば、なんか…女の子たちが…戦っている?…みたいな、そんなイメージしか湧かない…。あらためて言葉で書くと酷いな…。
でも映画では観客一体型のエンターテインメントになっていて、子どもたちがペンライトみたいなのを振るという演出がある…ということは知っています。まさに応援上映ですね。今は大の大人が応援上映する時代なのでそこには何も違和感もないという…時代の先駆けだったんですね、プリキュアは…。
そのほぼ乳幼児と変わらない(?)ビギナーの私がプリキュア・デビューを果たすときが来たわけで、じゃあ、何を観るべきかと悩んで選んだのが本作『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』です。
本作は2018年の作品。プリキュアの映画としては何番目になるのかな? これは私も調べているうちに知ったことですけど、プリキュアの映画は、各シリーズごとの劇場版と、シリーズをクロスオーバーしたキャラクター集合となる作品の2作展開になっており、最近は毎年それぞれ1本ずつ計2作を公開しているんですね。なので映画だけでもかなりの数があります。
この『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』はそのプリキュア映画史の中でも「プリキュア」シリーズ15周年記念作品ということで特殊な位置づけになっています。まず当時の現行放映されていた『HUGっと!プリキュア』の劇場版として基本は役割を果たしつつ、記念すべきシリーズ第1作『ふたりはプリキュア』とがっつりタッグを組んだクロスオーバーになりつつ、さらにこれまでの「プリキュア」シリーズの歴代キャラたちもゲスト的に総出演する…まさにお祭り映画の様相です。
そんな歴史と愛の詰まった本作に完全新参者の私は場違いにならないのかと不安になってきますが、まあ、たいていはなんとかなる(謎の自信)。シリーズ史上最高55人のプリキュア総出演を謳っていますけど、前に見た『ONE PIECE STAMPEDE』は200名以上のキャラがいたって言うし、55人くらいは楽勝だろう(根拠のない余裕)。
ということで私は「プリキュア」には変身できないけど、「プリキュア」の世界に迷い込んだモブキャラの気分で楽しんできました。その感想をさらに知りたい人は、この先の後半にお付き合いください。
オススメ度のチェック
ひとり | ◯(初心者も優しくあやします?!) |
友人 | △(その人の趣味関心しだい) |
恋人 | △(その人の趣味関心しだい) |
キッズ | ◎(言うまでもなく) |
『映画HUGプリ』感想(ネタバレあり)
ぷいきゅあ!がんばえ~!
「え、もらっていない? そもそも入り口ってどこって? あれ、おかしいな、みんなどこからアクセスしてきたの? まあいいや、ミラクルライトを脳内で妄想してね!」
「あと、このサイトをお気に入りに登録とかしてくれると、きっと元気が注入されると思うよ!」
「以上!お約束をよ~く守ってみんなでプリキュアを応援してね!それじゃ始まるよ~!」
ここは平穏な街…だと思ったら、海から突然巨大モンスターが出現し、街を破壊しています。観覧車になぜかいるレポーターを襲いかけますが、そこへ降ってきたのは3人のプリキュア(1人は厳密にはプリキュアではないのかもですが)。モンスターは観覧車を回し始めて愉快なことになるも、3人が連携して技を決めていきます。
「みなぎる勇気!あふれる希望!光輝くきずなとともに!エキストリーム!ルミナリオ!」
強力な攻撃でモンスターは消滅。一件落着…と思いきや、安心したのもつかのま「ヨコセ…」と近づく怪しい奴が襲ってきます。光線を放つ謎の敵。九条ひかりが変身するシャイニールミナスは、美墨なぎさの変身するキュアブラックと雪城ほのかの変身するキュアホワイトを守るために前に立ちますが…。
一方の別の世界、別の場所。草原にて今日も愛くるしい姿を振りまく「はぐたん」の写真をデジタルカメラで撮りまくっている、野乃はなと愛崎えみる。薬師寺さあや、輝木ほまれ、ルールー・アムールの3人は生暖かく、ときに飽きれつつ、その光景を見守っています。
すると何かを察知したのか急に「はぐたん」が泣きだします。そして現れたのは謎の敵(てるてる坊主だとみんな言うけど、そうは見えないよね?)。それぞれプリキュアに変身、5人は応戦しますが、全然攻撃が効きません。しかも、その謎の敵はどうやら他のプリキュアの技を使っているようです。
「ルミナス・ハーティエル・アンクション!」「ホイップ・デコレーション!」「プリキュア・ダイヤモンド・エターナル!」「プリキュア・パッションダイナマイト!オ・レ!」
容赦ない猛攻にタジタジ。野乃はなが変身するキュアエールは「はぐたん」をかばい、そんなキュアエールを他の4人(キュアアンジュ、キュアエトワール、キュアマシェリ、キュアアムール)が体を張って守り…。
気が付くとキュアエールの前には赤ちゃんになってしまった4人がいました。しかも記憶がないようです。これはピンチ。戦力不足は目に見えています。
また襲ってくる謎の敵。そこに間一髪で駆け付けたのはキュアブラックとキュアホワイトでした。しかし、キュアホワイトも攻撃を受けて赤ん坊になってしまいます。
敵はミデンというらしく、プリキュアの記憶を奪っているようで、ステンドグラスに保存しています。あんなにたくさんステンドグラスがあったということは…と心配しますが、その危惧のとおり、残ったプリキュアは2人だけ。他のプリキュアたちは全員が赤ん坊になってしまいました。
たくさんの赤ん坊たちは思い思いに大暴れで手が付けられず、大泣き。二人の女の子にはとてもではないですが手に負えません。
二人は、育児支援金の拡充や託児所の設置などのサポートを求めて国に声を上げることに…(違う)。
「子育て」テーマはほどよく
「プリキュア」は女児向け作品としてのフォーマットは一貫しつつも、毎シリーズでテーマというかコンセプトがあるそうで、『HUGっと!プリキュア』は「子育て」が大事な要素になっています。
主人公の13歳の野乃はなは赤ちゃん「はぐたん」との運命的な出会いによって物語が始まるとのことですが、まあ、別に是枝裕和監督の『誰も知らない』のようなハードな人生になるわけもなく、そこは女児向けらしい「子育て」のテーマとの距離感です。
でも下手したらジェンダーロールの(悪い意味での)強化になりかねないのですが、テレビアニメの方ではシリーズで初めて少年がプリキュアに変身したりと、ジェンダー面での新展開も見せているそうで、おそらく製作陣もその問題点を意識したうえでの仕掛けなのでしょうね。
私は「子育て」を子ども向けの題材に選ぶのは作り手は大変だろうなと思います。その性質上、子ども客層を相手にテーマを深掘りできないですし、性までストレートに題材にはできませんから、さじ加減が難しいですよね。
ただこの『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』では「子育て」のテーマ性への言及は割と薄いです。もちろんミデンの力によって予想外の人数の赤ん坊を抱えていっぱいいっぱいになる野乃はなや美墨なぎさの姿からは日々の育児の過酷さや孤独さが伝わってきますが…。「育児は大変である」以上の踏み込みはないのですけど、でも児童向けと考えればこれでもじゅうぶんなのかなと思います。たぶんプリキュアを観るくらいの年齢層だともう妹や弟ができている子もいるでしょうしね。赤ちゃんとの付き合いを学ぶにはこれくらいでいいのかな。
『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』では「子育て」の社会性よりも「赤ちゃん化」というビジュアル的なエンタメを重視する、いかにもお祭り映画らしいことに舵を切っており、これはこれで記念作品としては妥当なつくり。
確かに全プリキュアたちが赤ちゃん化する姿はファンも見たかったでしょうし、ファンサービスとしては大満喫できることでしょう。
個人的にはもっと赤ちゃんドタバタギャグをたっぷり見たかったですけど。後半のプリキュアオールスターズのベビー状態もあれはあれであの姿のままで大暴れして、敵の攻略に一役買っていくと絵的にも楽しかったのですが…。
そういえば若干話が逸れますが、このプリキュアたちはもう他のシリーズのプリキュアを認知しているんですね。何も驚きもせずに受け入れているものだから最初ちょっとびっくりしました。話のテンポを最大限高めるためのスリムアップなので良いのですけどね。
本作はターゲット客層を考えて短い時間に物語を収めているので編集が大変そうで、それでもコンパクトにハマっているのはさすが手慣れたものです。
プリキュア作品を育てた親の力
『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』はお祭り映画として歴代プリキュアたちの赤ちゃん姿を見せることでファンサービスのメインディッシュは終わりなのかなと思ったら、終盤にちゃんとアツい展開を残していました。
プリキュアたちの全滅も見え、最大のピンチに達したとき、赤ん坊プリキュアたちを思い出によってもとに戻せば…と思いつき、ハリハム・ハリーが唐突に映画館の観客に呼び掛けます。「君らはどのプリキュアが好きや?何でもええからたくさん思い出してくれ!」…これでプリキュアたちは復活し、怒涛のラストスパートに突入。
これぞ15周年の歴史のなせる技であり、そこからの各自のテーマ曲アレンジを流れるように組み合わせたBGMを背景に、各キャラが大技を決めていく姿は圧巻。
私はプリキュア初心者なので「どのプリキュアが好き?」と聞かれても何も答えられないし、全然物語に貢献できませんでしたけど(面目ない)、こういう作品歴史を感じさせる展開はコンテンツを愛する者にとっては至福だというのは共感できるわけで…。あらためてよくここまでシリーズを積み重ねてきたなと、シリーズを見事にスクスクと育てた「製作陣」という親たちに拍手を送りたくなりました。
本作の敵である「ミデンF mark2」フィルムカメラのお化けに関しては、包容力で勝つという、言ってしまえばベタな決着ですが、キッズ向けであればこれくらいで終わらないとねというのはわかるので…。ただ、これはあくまで子どもに向けた決着であって、大人がこの決着に自己肯定感を抱くのは危ういだろうなというのは留意しないとダメですが…(劣等感を抱えた大人が無垢な少女に癒されるのは良い構図ではないですし)。
それよりも現実的に喫緊となるこの映画、最大の致命的な問題があります。それは…子どもがフィルムカメラを欲しがるのではないか、ということ。1万円台のもあるけど、これは危険な沼です。もうこの物語は販促効果が抜群すぎるんだもの…。子育ては、おカネがいくらあっても足りないんだよ…(泣き)。
ということで約70分の時間しかなかったのにプリキュアについて私も濃密に触れることができました。すでに私のオリジナルなプリキュアを妄想できるレベルです。え~っとですね、「スリラー!プリキュア」です。あらゆるホラー映画の恐怖エネルギーを武器に戦います。「プリキュアレザーフェイス」は「マジカル・ブラッド・チェーンソー!」が得意技。「プリキュアリーガン」は「エクソシスト・ステップス!」で敵を階段から突き落とします。…どうだろうか、いつか実現するかな(私だけが期待)。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
作品ポスター・画像 (C)2018 映画HUGっと!プリキュア製作委員会
以上、『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』の感想でした。
『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』考察・評価レビュー