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アニメ映画『バブル』感想(ネタバレ)…Netflix;東京泡沫事件は少女とパルクールでなんとかなる

バブル

東京泡沫事件は少女とパルクールでなんとかなる…映画『バブル』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Bubble
製作国:日本(2022年)
日本:2022年にNetflixで配信、2022年5月13日に劇場公開
監督:荒木哲郎
恋愛描写

バブル

ばぶる
バブル

『バブル』あらすじ

世界に降り注いだ原因不明の泡によって重力が乱れ、ライフラインも断たれて壊滅状態となった東京。立入禁止区域となってしまったその変わり果てたビル街では、こっそり侵入した居場所のない少年たちが遊び場として低重力を活かした競技で気分を発散していた。そのひとりであるヒビキという少年は過去のせいで塞ぎ込んでいたが、ある日、ひとりの不思議な少女と運命的な出会いを果たし、思わぬ出来事を経験する。

『バブル』感想(ネタバレなし)

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東京泡沫事件です

「バブル(bubble)」というのは「泡」のことです。これはまあ誰でもわかるでしょう。

でも経済用語でも「バブル」は使います。バブルの崩壊とか…。これは実はわりと歴史ある表現方法なのです。

始まりは1720年。「南海泡沫事件(South Sea Bubble)」という出来事が起きました。名前だけ聞くとなんだか愉快でギャグチックな光景を想像できます。海が泡だらけになってパニックにでもなったのかな…と。実態は全然違って、これはグレートブリテン王国(イギリス)で起こった空前の投機ブームによる株価の急騰と暴落に端を発する事件であり、その渦中にいたのが貿易から金融へと転身して拡大していた勅許会社の「南海会社」でした。この悪名高い事件は多くの人々にカネの恐ろしさ(大金は一瞬にして溶けて消えるという恐怖)を刻み込ませたのですが、以降、バブルという言葉は経済用語として定着します。

今回紹介する映画は南海泡沫事件ならぬ東京泡沫事件と呼ぶべき内容です。といっても無謀なマネーゲームで経済崩壊を起こしたわけではなく、文字どおり東京の街中が泡だらけになることで経済どころか生活圏まで破綻してしまったという大事件が背景に描かれるのですが…。

それが本作『バブル』です。

本作は日本のアニメーション映画であり、舞台は東京。ある日のこと突如として謎の現象が襲い、街中が泡に包まれてしまい、さらには重力まで異常をきたしてほぼ街は壊滅状態に陥った…という世界観。一体そんな世界でどんな物語を展開するのだろうと思うのですが、わりとなんてことはないというか、その世紀末な世界で生きるひとりの少年が不思議な少女と出会って、心開いて、世界を救っちゃったりして…という、まあ、ベタなセカイ系のジャンルです。

日本の日常風景に異変が起こって若い男女のリレーションシップがあって…というのは“新海誠”監督の『君の名は。』以降はすっかり業界も傾倒しているスタイルですが、『バブル』も例外ではありません。やっぱりこういう作品が量産されやすくなっている感じはありますね。別にどれも大ヒットしているというほど甘くはないけど…。

今作の『バブル』は製作の布陣で勝負しているところがあって、まず企画・プロデュースには『君の名は。』『天気の子』などで絶好調の“川村元気”が陣取り、監督はアニメ『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』の“荒木哲郎”が抜擢(制作も『進撃の巨人』の「WIT STUDIO」です)。脚本には『魔法少女まどか☆マギカ』などのカルト的な支持を得るヒット作を手がけ続けている“虚淵玄”が名を連ね、キャラクターデザイン原案には少年ジャンプで「DEATH NOTE」や「バクマン。」を描いてきてファンを惹きつけている漫画家の“小畑健”、音楽には『進撃の巨人』『プロメア』『機動戦士ガンダムNT』といったアニメ作品で知られるベテランの“澤野弘之”…そんな感じで日本の名をあげているクリエイターをとりあえず集めてみました…みたいなメンバー構成になっています。

声優陣は、主人公を『さんかく窓の外側は夜』の“志尊淳”が熱演。日本のアニメの声優仕事は初だと思いますが、海外アニメだと『2分の1の魔法』で吹替をしていましたね。

物語の鍵を握るヒロインを演じるのは、シンガーソングライターの“りりあ。”で、全然セリフはないのですが、歌唱するのでぴったりです。

他には、研究者の女性の役で“広瀬アリス”、そして“宮野真守”、“梶裕貴”、“千本木彩花”、“逢坂良太”、“三木眞一郎”などの安定の声優陣が揃っています。

アニメ映画『バブル』はジャンルとしてはオーソドックスですが、映像的には低重力という世界観を活かしたパルクール風のアクションが売りになっており、アニメーションらしい爽快感を味わうことができます。そこは見どころの最大ポイントです。

パルクールって何?という人のために説明すると、建物とかの構造物を利用して生身の人間が飛んだり登ったりして軽快に動き回り、そのパフォーマンスやスピードなどを競ったり、披露したりする行為のことです。映画でもよくパルクールがアクロバティックな見せ技として演出に取り入れられたりしています。

なのでぜひ大きいスクリーンのある劇場で観てください…と言いたいのですが、この『バブル』、Netflixで先行配信され、その約2週間後にワーナー・ブラザースの配給で劇場公開されるという、かなり変則的な提供の仕方になっています。先行で劇場公開してその2週間後にNetflix配信じゃダメだったのかな…まあ、Netflixがおカネを出してくれているからなんだろうけど、これだと後に劇場公開されずにNetflixで先に見ちゃう人もいるだろうに…。私はあまり作品に理のある得策には思えないけど…。でも海外の人は全世界配信になるのですぐに観れて嬉しいかもですね(いや、もちろん海外でも劇場公開するくらいの気概を見せてよ、ワーナーさん…とは思うけど)。

もしNetflixで観るにしても出来る限り大きい画面で鑑賞するようにしたらいいと思います。

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『バブル』を観る前のQ&A

Q:『バブル』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2022年4月28日から配信中です。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:爽快なアニメ表現を堪能
友人3.5:アニメ好き同士で
恋人3.5:多少の恋愛要素あり
キッズ3.5:子どもでも普通に見られる
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『バブル』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『バブル』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):泡に包まれた世界での出会い

水没して廃墟となったビル街。東京はかつての人口密集地としての賑わいなど見る影もなく、廃れてしまっていました。こうなってしまったのは5年前が発端です。世界中に泡が降り、その未知の現象に世の中は混乱。とくに東京中心部で原因不明の大爆発が発生し、各地で泡が降りやんだ後も東京中心部では継続しており、重力に異常が発生して崩壊してしまいました。全世界から集まった大勢の科学者も泡の謎を解き明かすことはできず、東京は捨てられたのです。

そんな居住禁止区域となった東京に不法に滞在する少年たちが現れ、特殊な環境を利用した危険なゲームに興じるようになりました。

今、彼らは崩落して一部が低重力ゆえに浮いているビル街でパルクール競争をしています。「東京バトルクール」と呼ばれ、生活必需品をかけて「5vs5」のチーム戦で勝負し、フラッグを先に奪取すれば勝ち。

「関東マッドロブスター」など他のチームが見ている中、「電気ニンジャ」と対決しているのは「ブルーブレイズ(BB)」と呼ばれるチーム。イソザキ、カイ、ウサギなどのメンバーが軽快に駆け回っていく中、小柄なウサギは野良泡に飛び乗り、赤い渦(蟻地獄)に落ちそうになります。重力の異常でそのような危険地帯が水上に出現していました。あわやピンチと思った矢先、そこにひとり様子見をしていたブルーブレイズのヒビキが助けに入ります。

ヒビキは唯一無二の卓越した運動能力を持っていました。普段はヘッドホンをしているのですが、それをとるとメロディーを聴こえ、ハミングしながら進みだします。泡に乗っても安定し、普通ではありえないルートであっという間にフラッグをとるのでした。

「もっと怖がれ」とヒビキはウサギに淡々と言います。ヒビキはあの始まりの降泡現象の被災者でもあり、今はこのブルーブレイズと暮らしています。

住処は船の上。ブルーブレイズの面々の他に、マコトシンという重力異常の観測で同行している研究者もいました。

仲間と慣れあわないヒビキは上で佇んでいると、マコトが「あんまり危険なことをしていると本部に報告するからね」と忠告。しかし、揺れを感じ、ヒビキは「聞こえる」と言ってタワーの方へボートで出ていってしまいます

そのタワーは降泡現象の爆心地となったエリアです。複雑な重力場があるタワーは多くの人が挑みましたが、誰も到達はできていません。あるところまでは行ける、でもこの先は…。ヒビキはいけると思った瞬間、タワーの展望台に人影を見て、そのまま体制を崩して水まで落下。水中で瓦礫に飲み込まれ、溺れかけます。

けれども泡が少女の姿に変身し、ヒビキのもとへ泳いできて、呼吸のために口づけを…。

気が付く陸の瓦礫の上。その少女はこちらを見ています。「誰!?」

ヒビキを探しに行ったシンの船が帰ってくると、ヒビキの他に謎の少女も一緒でした。この子はほとんど喋らず、好き勝手に動き回り、まるでネコのようになんでも興味津々。とりあえずここに住まわせることに。

翌朝、少女はヒビキのヘッドホンを口で奪ったり、ニワトリ小屋を荒らしたり、やはり自由気まま。

名前を知らないことに気づき、ヒビキは少女がハミングしていたのを見たので「ウタ」と呼ぶことにします。

そんな日々の中、ウタの秘密が明らかになり…。

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嘘っぽい世界観も貫き通す

『バブル』は世界観設定が何よりも特殊。泡だらけになって重力がおかしくなった東京の街。このビジュアルだけでもじゅうぶんにワクワクさせます。ある種のディザスターものなのですが、地震や津波のような現実にあるものではなく、あえて泡という要素にしているので、そんなにトラウマを刺激するものでもないですし(作中では過去に相当な犠牲者が出ているようだけど)、むしろファンタジーな好奇心がくすぐられる。そのあたりのマイルドな置き換えは本作の上手さですね。

そこで若者たちがパルクールまがいのことをしてなぜか生存競争しているという、冷静になると「なんだそりゃ!?」というツッコミだらけの設定も、あえて潔く冒頭で押し通しています。『HiGH&LOW』の連中よりもイカれている生き方ですよ。生活必需品を奪い合っているというけど、絶対にこんな世界じゃろくなものも残っていないだろうに…。

そして行われる低重力パルクール。この映像の爽快感は序盤から終盤に至るまでの本作の気持ちよさになっていて、アニメーションならではの躍動感が楽しいです。やはりアニメは動きを見せてこそ。

あれも重力がかなり低くなっているという設定をそれとなく見せつつ、でも泡には人間は乗れないだろうというあり得ない出来事をしれっと突き通していますからね。本作はそういう嘘をつくのが上手。さすがに終盤の「バブルこうせん」から逃げるヒビキとか、もう映像としての背景は考えるだけ無駄なくらいの突拍子もなくなっていくと、ふと「なんでこうなっているんだっけ」と我に返ることもあるのだけど…。

個人的にはあの本作の実質上の悪役的存在であるアンダーテイカーのチーム。もうちょっと強烈な凄さや陰湿さを見せてほしかったところ。足から水をピューっと出したり、スポンサー付きで資金力を活かしてハイテクだったりするけど、本当にただ配信視聴者稼ぎだけがしたかったということで終わるのか…とも思うし。もっとこの泡泡現象を利用しようと企む大企業が裏にでもいるのかと思った…。

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なぜ古典的なプリンセス・ストーリーを再生産するのか

『バブル』は映像面では楽しいですが、物語面は普通というか、普通以下というか…。

説明セリフがやたら序盤で多くなるのは映画のプロットに収まるようにしようとした結果かもしれないですけど、全体的に各種の要素が噛み合っていない感じはあります。

私はSFっぽいのを期待していたのですが、終盤のウタとヒビキの真実の種明かしといい、やけに抽象的な真相に終始してしまったのは残念です。知的生命体とのコンタクトというワンダーをいくらでも提供できただろうに…。私は『ウルトラセブン』の「発泡怪獣ダンカン」がずっと頭の中にあったよ…。

そもそも本作は日本オタク界隈の「何でも少女にしてしまう」手癖がここでも発動してしまっており、SFも何も無くなってしまっているので期待するだけ無駄だったかもしれません。幼く未熟で世話のかかる少女という、もはやペットみたいな表象ですからね…。泡なんだから泡のキャラクターにすればそれこそアニメーションとしてのキャラクター化の腕の見せ所になるのに…。

『バブル』は物語のインスピレーション元が作中でも何度もしつこいくらいに言及された「人魚姫」であって、「少女が恋した末に泡になる」のではなく「泡が恋して少女になる」という逆転の発想で土台を作ったと製作陣も語っています。

とは言え、ここで気になるのはなんでまたイマドキになって「人魚姫」なのかということ。最近は日本のアニメ作品を観ていてとくに思うのですが、『竜とそばかすの姫』といい『アイの歌声を聴かせて』といい、クラシックなプリンセス・ストーリーを再生産する傾向が目立つ気がする…。

もともと日本のアニメは「セーラームーン」や「プリキュア」のようにクラシックなプリンセス・ストーリーのステレオタイプから脱した作品の画期性が昔は海外から評価されていたのですけど、なぜ今になって日本のアニメ・コンテンツは自国のアニメ史を逆行するかのようにクラシックなプリンセス・ストーリーに傾倒しつつあるのか…。これはなかなかに根深い問題で、いろいろ論考する余地のあるテーマにも思うけど…(ある種のワールドワイドな作品を作ろうとして安易にプリンセス・ストーリーに飛びついているのか、それとも作り手が単に無頓着なのか、はたまた特定の保守的なバックラッシュの予兆なのか)。

唐突なロマンスを軸にするセカイ系が行き着く先がこれなのだとしたら、それこそ泡みたいに一瞬ではじけそうですけどね。

『バブル』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 47% Audience 82%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
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作品ポスター・画像 (C)2022「バブル」製作委員会

以上、『バブル』の感想でした。

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