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『search #サーチ2』感想(ネタバレ)…タイトルは「Missing」じゃダメなの?

search サーチ2

タイトルは「Missing」じゃダメなの?…映画『search サーチ2』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Missing
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2023年4月14日
監督:ウィル・メリック、ニック・ジョンソン
DV-家庭内暴力-描写

search #サーチ2

さーちつー
search サーチ2

『search #サーチ2』あらすじ

高校生のジューンは、ロサンゼルスから遠く離れた南米のコロンビアにボーイフレンドと旅行に出かけた母を見送る。しかし、その母と連れの男は消息を絶ってしまった。明らかに不自然なので警察に相談するが、自分でも家で何か調べようとする。そこでSNSなど使い慣れたサイトやアプリを駆使して母の捜索を試みる。不確かな情報に翻弄されながらも懸命に真相を掴もうとするが、予期せぬ驚愕の事実が現れ…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『search #サーチ2』の感想です。

『search #サーチ2』感想(ネタバレなし)

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全編デジタルプラットフォーム画面、第2弾!

このページにネット検索をした結果、辿り着きましたか? それははるばるご苦労様です。損をさせないように頑張ります…。

ネット検索の界隈もどんどん様変わりするので、テキトーに検索してもお目当ての情報なんて見つからない気がしてきますよね。私なんかもっぱら「このサイトとあのサイトをチェックする」みたいに自分であらかじめお気に入りのサイトをマークして、それらを中心に情報を得るようにしています。こうでもしないと、ほんと、今のインターネットはノイズが多すぎる…。

近頃はTwitterのイーロン・マスク侵攻のせいで大手SNSだって信用できないことをあらためて痛感したし、欧米ではTikTokだってブロックされそうな雰囲気…。一般投稿型の動画サイトを見る人もいると思いますが、私は動画サイトから情報を入手することはあまりしないんですよね。あの動画の直前や途中で広告を挿入するという手段を考えた人は、呪われてしまえ…。

とは言え、インターネットから情報を探すのは今の時代を生きる私たちの必須スキルになっています。これを磨いていないと、あっさりデマを掴まされたり、迂闊な言動で炎上したり、シャレにならないことにもなりますから…。

もっとスキルとか気にしなくても安心で正確な情報を見つけられる世の中になってほしいのですけど、全然そうなる気配はない…。どうなってるんだ、インターネット時代…。これが未来なのか…。

今回紹介する映画もそんなインターネット・スキルを否応なしに日々試されてしまう私たちを鏡のように映し出す作品です。

それが本作『search #サーチ2』

タイトルに「2」と入っているので「あれ?」と思った人もいるかもですが、本作は2018年に公開された『search サーチ』という映画のシリーズの一作となります。と言っても、物語やキャラクターが継続する正規の続編ではありません。あくまでコンセプトが同じシリーズを構成する一作ということです。なので『search #サーチ2』を観る前に『search サーチ』を観ないといけないということはありません。

原題は「Missing」。この原題がまた上手いネーミングなのです。どう上手いのかについてはネタバレになるので言えないのですが…。ちゃんと映画を最後まで観れば「Missing…なるほどね!」ってなるはず。なんでこういうときに限って「2」なんて邦題をつけたんだよ…。

で、このシリーズの肝となる共通コンセプト…それが「全編デジタルプラットフォーム画面」で物語が展開するということ。パソコン、スマホ、スマートウォッチ…とにかくデジタルな機器の画面だけが表示され、登場人物が映るのは機器に映るカメラ映像越しだけ。

「ファウンド・フッテージ」の系譜に連なる新ジャンルなスタイルとして、前作『search サーチ』がこの手法を洗練させてみせたのですが、『search #サーチ2』も同じです。

「じゃあ、同じだから新鮮さはないね」と言われればそうなのですけど、同じ手法ながらしっかり仕掛けを変えてきたりと、今作でも器用な技を披露しています。

前作の監督で『RUN ラン』も手がけた“アニーシュ・チャガンティ”は製作にまわり、今回は前作で編集を担当していた“ウィル・メリック”“ニック・ジョンソン”が監督をしています。

主演するのは、ドラマ『THE LAST OF US』でも印象的な演技を見せたばかりの若手俳優“ストーム・リード”

“ストーム・リード”と共演するのは、『誘惑は死の香り』“ニア・ロング”『ダウンサイズ』“ジョアキム・デ・アルメイダ”『オールド』“ケン・レオン”『プロジェクト・パワー』“エイミー・ランデッカー”『セントラル・インテリジェンス』“ティム・グリフィン”、ドラマ『クリミナル・マインド』“ダニエル・ヘニー”、ドラマ『私の初めて日記』“ミーガン・スリ”など。

念のために再度忠告しておくと『search #サーチ2』は、今回も主人公の前に起きる“ひとつの事件”を解き明かしていくミステリーサスペンスです。なので当然のようにネタバレ厳禁。うっかり検索とかしてネタバレに遭遇しないようにしましょう。「サーチ」ってタイトルなのに検索してはいけないというのも変な話だけどね…。

『search #サーチ2』は前作と同様に、画面の情報量がとにかく多く、展開も早いので、ワンシーンワンシーンを見過ごさないようにしましょう。トイレとかで席を離れてしまうと、すっかり物語がわからなくなって追いつけなくなるかもです。

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『search #サーチ2』を観る前のQ&A

✔『search #サーチ2』の見どころ
★息もつかせぬ怒涛のミステリーサスペンス。
✔『search #サーチ2』の欠点
☆情報量が多いので映像処理力が試される。

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:じっくり展開に向き合う
友人 4.0:考察し合って鑑賞
恋人 4.0:一緒に謎を解く
キッズ 3.5:展開が早いけど
↓ここからネタバレが含まれます↓

『search #サーチ2』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):母はどこへ消えた?

2008年4月13日の日付で、幼い子がと仲良く遊んでいるホームビデオの映像が流れます。その映像内では、母らしき女性がやってきて、「ジェームズ」と夫の名を呼び、「junebug」と愛おしそうに愛称で我が子に声をかけます。

その動画ファイルをトリミングして「最後の家族」とファイル名を変えて移動させ、アカウント削除。そのうえで「For June」と書かれたフォルダにしまうパソコンのカーソル…。

それから年月が経過。「UNFICTION」というドラマを視聴していたのを一旦止め、友人とテキストチャットするジューン。「UNFICTION」は実際の事件を元にしたドラマシリーズなので、ネット上には「どこまでが実話?」という解説記事があり、それも一緒に眺めていました。

そこに母のグレイスが動画通話してきます。運転中の母はいまだにデジタル機器には疎いです。

夫を亡くした母は、今はボーイフレンドのケヴィンと一緒にコロンビアのカルタヘナへの1週間の旅行にでる計画をたてていました。母の友人であるヘザーにジューンの世話を任せると言っており、口論になりますが、ジューンは従うしかありません。

ジューンはこのケヴィンとどう接すればいいかわからないでいました。まだ実の父を忘れられないのです。

ついに母とケヴィンは出発しました。しょうがないのでこれを機に、ジューンは親友のヴィーナと騒ぎまくることにします。アルコールもがっつり持ってきてもらってハイテンションです。

しかし、父の日になるとみんな父親との写真をSNSにあげており、ジューンも母の残した父の動画を見つつ、自分も父親の写真をアップしようかと悩みます。

1週間後、ジューンは母親とケヴィンをロサンゼルス国際空港まで迎えに行く予定の日となったことに気づきました。急いでお手製のお迎えボードを待って空港のロビーで待ちます。けれども、一向に現れません。母にメッセージを送りますが返事はなし。電話もでない状態です。

空港のサイトを見ると飛行機は確かに到着しているようで、コロンビアのホテルに電話。でも英語がわかってくれないので、翻訳ツールでなんとか会話すると、もう去ったとの情報が把握できました。

では一体どこに? 途方に暮れるジューンはヘザーに連絡。心配いらないと言われ、FBIに調査を依頼することになります。

とりあえず手がかりになればと、母のGoogleアカウントにログインを試みますがパスワードがわかりません。思いつくものは全部試しましたが万策尽きました。

FBIの対応もあまり早くなく、こうなったらジューンは自分なりに調べることにします。とりあえず何でも人に仕事を頼めるサービスを使って、コロンビアの現地で動いてくれるハビエルという男を雇うことに成功。事情を説明し、さすがに普段は人探しはしていないらしいですが、お願いするとなんとか対応をOKしてくれました。

さらにケヴィンのGoogleアカウントにログインすることに成功。そこで思いがけない情報を発見し…。

この『search #サーチ2』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/01/05に更新されています。
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行方不明なのは誰?

ここから『search #サーチ2』のネタバレありの感想本文です。

第2弾となる『search #サーチ2』も「そうやって見せるのか!」という驚きの連続の演出で、相変わらず作り手のセンスが冴えわたっていました。

今回は前作をあえて意識しつつ、わざと反転させるようなサスペンスになっています。前回は「父が子を探す」物語でしたが、今作は「子が母を探す」物語となり、それだけでなく、主人公が10代になったことで最もデジタルプラットフォームやサービスに使い慣れている世代ですから、その捜索に駆使する手数も豊富になっています。

それゆえか映画内の画面に展開もいざ始まりだすと非常にスピーディで、情報がバババっと流れまくることになり、ちょっと目が追いつかないですよね。ただでさえ、こっちは英語を眺めるハメになるのですから…。前作もそうだったけど、このスタイル、翻訳者泣かせですよ…。日本語字幕もカバーしきれないもんなぁ…。

そしてまさしくタイトルどおり「Missing(行方不明)」となった母親はどこへ消えたのかという本題。最初はずっと信用しきれていなかったケヴィンをあかさらまに疑うも、デートマッチングサービスのアカウントを通して、母とケヴィンが想像以上に親密に素直に関係を深めていたのを知って、少し反省モードになるジューン。2人はコロンビアでプロポーズまでしていたことを現地カメラで確認し、すっかり「私が大袈裟だった」と後悔の気分になります。

ところがコロンビアで2人が謎のバンに誘拐されていたことが判明し、事態は急転直下。しかし、ケヴィンはレイチェル・ペイジというそっくりな女優を雇ってコロンビアを旅行していたことがわかり、ますます謎は深まります。

この謎の畳みかけが今回は勢いがありましたね。「Missing(行方不明)」の次元がどんどん変わっていくという…。コロンビアで行方不明になったのではなく、ロサンゼルスで行方不明になったのか?

そして一瞬疑うもヘザーまで殺され、ついに明かされる真実。母のGoogleアカウントにログインすることに成功し、そこでブロックされていた唯一のユーザー。

父親のジェームズは生きていました。消えていたのは父の方でした。

ここで今回も序盤からこの真相がしっかり観客に密かに提示されていたことが後から気づけます。そう言えばあのホームビデオはトリミングされていたし、ヘザーはDV専門の法律家だったし…。背景にすぎないと思っていた点と点が凄い速度で繋がっていく心地よさは今作も健在です。

前作は「父の家族愛」を土台にしておきながら、今回は「家父長的な残虐性」をこれでもかと露わにする。デジタルでその傷跡を抹消しても、やっぱり浮かび上がってしまう…。これはもうオンラインのパターナリズムだな…。

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スリルの中にもしっかりユーモアも

『search #サーチ2』は家庭内暴力というテーマを露出させつつ、今作もデジタル関連についてはそれほど「ITは危険だ!」みたいな上から目線な説教も無く、むしろそのITの良い部分も悪い部分も全部スマートに拾い上げてしまうような立ち位置でした。

例えば、今回は家から動けないジューンに代わり、ハビエルを現地探偵のように雇います。これはアメリカには「Taskrabbit」という、個人の買い物や掃除を請け負って小遣い稼ぎできるアプリがあって、そのコロンビア版として「Go Ninja」というアプリがあるんですね。

今作では主人公が10代なのでデジタルには強いのですけど、10代ゆえにできることが限られます。それをITで補うというアイディアが随所にあります。ちゃんと「Go Ninja」を使う際も、おカネが安い人を絞っているあたりがユーモアにもなっていますが…。

笑いと言えば、緊迫感のある物語の中でもしっかりギャグが用意されているのが、この製作者の面白いところ。AIではないかを判断する画像認証で「バスを選んでください」という指示に「この部分はバスに入るか?」とこれ見よがしにズームして悩んでいる描写を入れたり、あそこも大方の人は「わかる」と納得するんじゃないでしょうか。

こういう人間臭い仕草の積み重ねがこの「全編デジタルプラットフォーム画面」という、下手するととても機械的な映画製作になりかねないものに、感情的なドラマ性を与えているのだと思います。

誘拐監禁されてからはもう怒涛のように「Apple」宣伝みたいになってましたけどね。「Hey Siri, call 911」の起死回生で事態を解決。私、1度も音声指示で緊急通報したことないんですよね…人生で1度は経験してみたい、映画みたいなシチュエーションだな…。でも実際は絶対に上手く反応してくれない気がする…。

逆に「Google」はアカウントに他者がログインしまくりで、なんだか散々なセキュリティ描写だったけど…。このあたりはプロダクトプレイスメントの差か…。

『search #サーチ2』でも情報氾濫社会における人間同士の繋がりの大切さを最後は示しつつ、助け合って守り合う強さを見せてくれました。結局はこれに尽きるんですよ。いくら便利なITと言えども孤立したら不利になるだけなので、信用できる人がどれだけ周りにいるかで決まってくる…。

本作を鑑賞した人はともかくやるべきは、あれかな…自分が緊急事態に陥ったときのために信頼できる人にアカウントのパスワードとかを教えておくことかもしれないですね。信頼できる人って誰なんだという最大の難問があるけど…。

『search #サーチ2』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 88% Audience 90%
IMDb
7.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)2023 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

以上、『search #サーチ2』の感想でした。

Missing (2023) [Japanese Review] 『search #サーチ2』考察・評価レビュー