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韓国ドラマ『イカゲーム<シーズン2・シーズン3>』感想(ネタバレ)…イカゲーム2とイカゲーム3

イカゲーム

そしてゲームはまだ終わらない…「Netflix」ドラマシリーズ『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

この感想はドラマ『イカゲーム』の「シーズン2・シーズン3」のものです。「シーズン1」の感想は以下の別記事にあります。
原題:Squid Game
製作国:韓国(2024年~2025年)
シーズン2:2024年にNetflixで配信
シーズン3:2025年にNetflixで配信
原案:ファン・ドンヒョク
動物虐待描写(ペット) 自死・自傷描写 LGBTQ差別描写
イカゲーム(シーズン2・シーズン3)

いかげーむ
『イカゲーム』のポスター

『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)物語 簡単紹介

困窮によって絶望に追い詰められていたソン・ギフンは、ある秘密の超高額の賞金を懸けたサバイバルゲームに参加し、人生を一変させる大金を手に入れた。しかし、喜ぶことはできない。あの場所での壮絶な体験を忘れることはできなかった。犠牲になった者たちのことを心に刻み、ギフンはゲームの主催者に反撃しようと決意する。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)の感想です。

『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)感想(ネタバレなし)

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イカゲーム、再参加

○△□…(まる・さんかく・しかく)

もうこのマークの並びをみると、プレイステーションのコントローラーのボタンではなく、この韓国ドラマを真っ先に思い浮かべるようになってしまいましたよ…。

そんな韓国ドラマの待望のシーズン2シーズン3が2024年末から2025年にかけてついに配信されました。

それが本作『イカゲーム』

『イカゲーム』がお披露目となったのは2021年。配信前は変な名前のタイトルだなくらいにしか思っていませんでしたが、このオリジナル・ドラマはダークホースな話題作となり、「Netflix」でトップに君臨していた『ストレンジャー・シングス 未知の世界』に匹敵する大盛況で、瞬く間に社会現象化しました。

韓国ドラマとしてもトップクラスの世界的ヒット作となり、デスゲームのジャンルの傑作として確立し、いつこのポスト『イカゲーム』な作品が登場するかと常に何かと試金石扱いされる不動の地位を得ていた感じですが、やはり本家に並べるのは本家だけなのか。

『イカゲーム』のシーズン2とシーズン3はあのシーズン1の目を離せないラストからの続きが描かれます。

なお、シーズン2とシーズン3になっていますけど、実質は「PART1」と「PART2」みたいなものであり、シーズン2とシーズン3は2つでワンセットです。なるべく一気に鑑賞するのをオススメします。

『イカゲーム』のシーズン2&シーズン3でも、作品を引っ張るショーランナー兼監督は“ファン・ドンヒョク”。もうこの人、『イカゲーム』のイメージがつきすぎちゃったから今後が大変そうだな…。

主演は当然、“イ・ジョンジェ”です。この間にドラマ『スター・ウォーズ アコライト』でジェダイ・マスターにもなっちゃったし、怖いものなしかな。今作でも嫌な奴はみんなライトセイバーで切り倒していってほしいくらいですよ。

そして詳細は伏せますが、前作で影の主人公であった“ウィ・ハジュン”、そして前作で美味しいところを持っていった“イ・ビョンホン”も、出番が増量して活躍します。

新しい俳優陣も大勢です。「IZ*ONE」の元メンバーの“チョ・ユリ”、ドラマ『セレブリティ』“パク・ギュヨン”『ボストン1947』“イム・シワン”、「BIGBANG」の元メンバーの“チェ・スンヒョン”『ワンダーランド あなたに逢いたくて』“カン・エシム”『ヒプノシス/催眠』“イ・ダウィ”、ドラマ『ナインパズル』“ノ・ジェウォン”、ドラマ『ハートビート』“ウォン・ジアン”『あしたの少女』“キム・シウン”などなど。

そしてこれは最初に書いておこうと思いますけど、今作では主要人物にトランスジェンダー女性のキャラクターがいて、それは別にいいのですが、その役に“パク・ソンフン”という男性の俳優を起用したことでLGBTQコミュニティから厳しく批判されましたPinkNews。これがなぜ問題なのかは識者がじゅうぶん説明しているのでそちらを参照してください(“東海林毅”氏による「なぜトランスジェンダー役は当事者の俳優を起用すべきなのか」を解説した動画資料)。いくら「韓国にはオープンリーなトランス当事者俳優がいなくて…」と言い訳を述べようともLGBTQ Nation、それは俳優を目指しているトランス当事者に失礼なだけでしょうし…。

もう少しLGBTQ抑圧的な韓国社会に風穴を開ける挑戦を期待したかったんですけどね。本作が逆に韓国社会(そして日本含む世界)でのトランスジェンダーへの偏見を悪化させることに寄与しないか、不安ではある…。

さておき、『イカゲーム』のシーズン2(全7話)&シーズン3(全6話)も、前作と同じあの世界に飛び込めます。人間の底なしの欲深さとほんのひと握りの正義の大切さを噛みしめて、参加してください。これを観たらあなたもゲームの駒です。

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『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)を観る前のQ&A

✔『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)の見どころ
★あの世界観で繰り広げられる人間同士の駆け引き。
✔『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)の欠点
☆前作と比べてミステリアスさは減退気味。
☆トランスジェンダー表象の致命的なキャスティング問題点。

鑑賞の案内チェック

基本 トランスジェンダーに対する差別的な反応を描くシーンが一部にあります。また、自殺を描く場面もいくつかあります。
キッズ 2.0
残酷な殺人の描写が多いです。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

ソン・ギフンは空港で飛行機に乗る直前に引き返すことに決めました。ロサンゼルスにいる娘と再会するための大切な機会をかなぐり捨ててでもやらなければならないことがあったからです。

あの密かに行われていた壮絶なデスゲーム。それはまだ何者かによって継続されていました。これを見て見ぬふりはできない…。超高額の賞金を懸けたサバイバルゲームに参加し、人生を一変させる大金を手に入れましたが、犠牲になった者たちの顔が脳裏にこびりついています。

自分を監視する得体の知れない存在がいるらしく、ギフンは慎重に行動しようと覚悟し…。

2年後、刑事として職務に励むファン・ジュノは左肩の傷を触ります。彼もまたあのデスゲームの一部を末端の兵員として潜入した結果、目撃し、しかもその統率指揮者(フロントマン)の正体は実の兄ファン・イノであることを知りました。イノもかつてはこのゲームに参加したはずですが、なぜ現在はあんな主催側に関わっているのか…。

兄はジュノを撃ち抜き、ジュノは海に落ちましたが、パク船長の漁船が助けてくれ、九死に一生を得ました。今もジュノはあのデスゲームが行われている島を探しており、パク船長に漁船をだしてもらい、海域をしらみつぶしに調べていますが、成果はありません。

一方、ギフンは警戒心全開でボロボロの閉店したラブホテルに籠城し、トラウマを抱えながら、デスゲームの全容を解明しようとしていました。ゲームに優勝して得た大金は部屋に放置し、ほとんど手をつけていません。

糸口になりそうなのは、メンコで参加者を勧誘するスーツの男の存在です。その男はめぼしそうな人間をそうやってつけ入り、以前と同じように連絡先の書かれたカードを渡しているはず。

彼を見つけ出そうと、闇金のキム代表とチェ・ウソク理事と彼らのその他大勢の部下たちをあちこちの駅に送りだします。しかし、日々が過ぎていくだけでした。

ところが、ある日、キムとウソクは偶然にある駅であのメンコ男を発見します。また貧しそうな人を相手にメンコを仕掛けていました。

2人はギフンに連絡をしながら、追跡を開始しますが…。

この『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/07/25に更新されています。
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最も意外に頑張ったキャラクター

ここから『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)のネタバレありの感想本文です。

正直、『イカゲーム』はシーズン1のときの「一体これは何なんだ!?」という全く情報のない立場に置かれてデスゲームに翻弄されるという唯一無二の体験を得た後だと、このシーズン2以降はミステリアスな衝撃を与えてくれはしません。

ビデオゲームでいうところの、1度クリアして2週目でゼロからプレイし直すみたいな感覚です。関心事は「どうやって前回以上に上手くこなし、新しいルートを開拓するか」という攻略に注力することになります。

やはり再びあのデスゲームに参加するという土台は同じことの繰り返しなので、そこで起きる人間模様もキャラクターの顛末もやや類型的になってきている雰囲気はあるなとも思いました。少し派生的なキャラクターアークをもたせてバリエーションをだした感じでしょうか。

グムジャは典型的な高齢者女性が担いやすい「良母」的な象徴であり、身をひいて首を吊るくだりもベタな高齢者の末路です。息子ヨンシクとの葛藤がドラマにある程度のエモーショナルさをプラスしていますが…。

ジュニは不安定要素をもたらす妊婦という役回りで、赤ん坊を出産した時点で「この子が唯一の勝者になるのだろうな」とちょっと予想ついてしまいましたが…。

それにしても本作は少し女性キャラがジェンダーロールに囚われすぎのようにも感じました。グムジャもジュニも、そして兵のノウルも、「子」を軸にした存在ですからね。逆にそうした女性的役割の外にある女性キャラはセミといいヨンミといい前半に脱落してしまうし…。

一方のトランス女性のヒョンジュはシーズン1のあの移民の参加者に通じるような良心的マイノリティを担っています(第1ゲームのおなじみの「だるまさんが転んだ」で自分を顧みずに他者を助ける展開も一緒)。鑑賞前は「寝泊まりする部屋も男女一緒だし、ゲームも性別関係なしに合同でやるし、性別分離のほぼないこの世界観で、どうトランスジェンダーのアイデンティティを描くのだろうか」とも思ったのですけど、わりと漠然とした偏見に晒されつつ、最も高齢のグムジャに理解されていく展開を添えることで(女性トイレも普通に一緒に使っている)、包摂を描くという無難な味わいではありました。まあ、ただ性別適合手術を含めた新しい自分の再出発のために大金が要るというのは少し単純化しすぎでは?とも思いましたけど(当事者のトランジションのハードルは何も資金面だけではないので)。

ミンスは薬物依存になる展開が急すぎた気も…。

別パートとしてジュノの島捜索も並行して描かれますけど、そこまで深く切り込んでこなかったのもやや物足りなさはありました。

しかし、最も予想外の生存能力をみせたのはチェ・ウソクでしたね。絶対に死にそうな面しているのに(失礼な言い方)、あの意外な勘の良さとネバーギブアップ精神。「頑張ったで賞」は彼に贈呈したい…。

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産業化することの恐ろしさ

『イカゲーム』シーズン2&3は、あのデスゲームの全容が以前より俯瞰できるようになったからこそ、このゲームの設定上の社会風刺構造の上手さがよく見えてきました

今回のシーズンでは、ゲーム続行するかを決める投票によって「○(まる)」と「×(ばつ)」の勢力に分離されてしまい、より陰惨に党派的な対立が生じてしまいます。赤を基調とする「○(まる)」側が常に優勢で、青を基調とする「×(ばつ)」側は劣勢で、表向きは民主的な投票に委ねているようにみえて、実態としては対立を煽って弄んでいる…これ自体がゲームになっているという嫌らしさです。

現実の政治選挙もこんなものかもしれませんね…。

一方で参加者にとっては得体の知れない存在であるあの兵員も、実はサバイバルを強いられており、こちらは紙幣ではなく臓器の奪い合いで欲がこぼれます。兵員側の北朝鮮出自のエピソードが今回は強められ、南北の分断を匂わせる構図でした。

そして今回のシーズンでとくに嫌~な感じで新たに浮かび上がったのが、「かつてのゲーム参加者がさらに開催側に深く関与してしまう」という底なし沼です。

シーズン2第1話であのメンコ男は元兵員で、プレイヤーだった父親を殺害したことを明かし、ゲームによって決定的に人生が狂わされたことが示唆されます。ずっとジュノを騙していたパク船長も過去のゲーム優勝者で、大金を得てもゲームに囚われ言いなりになっていました。もちろんあのファン・イノも…。

つまり、このゲームは「勝ち」という概念があるようにみせかけていますが、参加者が期待しているような「負け組から成り上がる」ことはそもそもできないというオチです。欲深すぎる者はゲーム中で必ず死に、かろうじて優勝した者は人間性を信じられなくなって絶望し、ゲームの因果に取り込まれて一部になってしまう…。

なんとなく観る前から「ゲームを根絶するのは無理なんだろうな」と思ってましたけど、案の定、このデスゲームは黒幕は存在せず(フロントマンも代えがきく)、もう産業として主体性なく確立していることを突きつける終盤。救いのない作品だ…。

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アンチヒーローからの再起と信念

そんな容赦のない現実に直面してなお主人公のソン・ギフンはどうするのか。『イカゲーム』シーズン2&3は、ギフンの葛藤が相変わらず見ごたえがありました。

前回で優勝して大金を手にしたギフンですが、ゲーム主催者側に対抗することはできません。カネでは勝てない相手です。

結局は、またも自分はゲーム参加者になってしまうのですが、以前に優勝してしまったゆえに「やっぱり優勝できる人もいるんじゃないか」と自分の存在がむしろゲーム肯定の願望に利用されてしまったりと、なかなか屈辱を味わうことに序盤からなっていく追い込まれっぷりに同情したくなります。もうすでにゲームの駒なんですね。

しかも、今回はあのフロントマンのイノもいけしゃあしゃあとプレイヤー「001」として参加していますからね。掌の上で踊らされている感じがなんとも…。

今回のシーズンのギフンは非常にアンチヒーローを体現する存在になっていくのも印象的。確かに社会正義に根差した信念でこの非倫理的なゲームを終わらせようと挑みますが、相手を食い止めるにはしだいに暴力的なレジスタンスも止む無しということでシーズン2終盤は多大な犠牲をだしてしまいます。

シーズン3は大敗北を経験し、完全に絶望してしまったギフンがしだいにまたあの信念を取り戻す展開です。ここの感情の復活も丁寧に描いていて良かったです。

今回もいろいろな悪役がいますが、開き直りの快楽主義者のサノス、便乗しかできないナムギュ、信仰を搾取するソンニョ、権威主義に依存する中高年男性のジョンデ…それを出し抜きつつ、最後の最後でギフンの前に立ちふさがるのは結構意外な存在でした。暗号通過投資詐欺で多くを騙したYouTuberのミョンギです。

ミョンギという人物の、あに何とも言えない人間性の醜さと弱さは、ある種の劣等感に沈んだ若い男性の具現化でもありましたが…。

ギフンも一歩間違えればミョンギやイノと同じになっていたかもしれない…でもそうならなかった。それはやはり正義を心に宿せたかどうかというのが運命の分かれ道なんでしょうね。

最終的にギフンは「(私たちは)賭ける馬じゃない。人間だ」と宣言して大往生を迎えるしかできませんでしたが、現実社会でもヒューマニティ(人間性)はとことん軽視されているので…。

そう感傷に浸りたいところですけども、このフランチャイズは「Netflix」という別の欲深い存在によってさらにゲームは拡張するという、それはそれでどうなんだと疑問に思わなくもない企業資本主義に自身も囚われていることを示す、なんだか二重で考えたくなるラストが待ってます。

“ケイト・ブランシェット”は、まあ、カッコいいにしても、アメリカ版『イカゲーム』はオリジナルの味をだせるのですかね? 本作は相当に韓国だからこその風味だと思うのですが…。その前に『イカゲーム』よりも酷い現実社会の心配をするほうが先かな…。

『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)

作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『イカゲーム』(シーズン2・シーズン3)の感想でした。

Squid Game (2024) [Japanese Review] 『イカゲーム』考察・評価レビュー
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