まだ初心者です(すでに最強クラス)…映画『トゥームレイダー ファースト・ミッション』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2018年)
日本公開日:2018年3月21日
監督:ローアル・ユートハウグ
トゥームレイダー ファースト・ミッション
とぅーむれいだー ふぁーすとみっしょん
『トゥームレイダー ファースト・ミッション』あらすじ
自転車便のバイトに精を出しているごく普通の大学生ララ・クロフト。実は彼女には資産家で冒険家だった亡き父がいた。そして、あるきっかけで父が残したメッセージを受け取ったララは、トレジャーハンターとして世界を破滅に導く幻の秘宝を封印することになる。しかし、たどり着いた島には謎の組織が暗躍し、危険な罠が次々と降りかかるのだった。
『トゥームレイダー ファースト・ミッション』感想(ネタバレなし)
映画もリブート
アメリカ映画界では『ワンダーウーマン』『アトミック・ブロンド』『スター・ウォーズ新三部作』と女性を主人公にした作品の勢いが最近は盛り上がっていますが、ビデオゲーム業界では女性主人公の人気作品は珍しくありません。たぶん女性を操作したいという男性ユーザーの需要もあったりするのでしょうね。少なくとも女性だから売れなくなることはないです。
そんな女性主人公の人気ゲームの代表作が「トゥームレイダー」です。1作目は1996年に制作され、今も新作が作られている、20年以上の歴史があるアドベンチャーゲームです。1作目制作時は女性主人公は珍しかったらしく、当初は男性主人公で制作していたところ、思い切って女性にしたら思いのほか好評だったという経緯があるとか。まさにビデオゲーム業界の女性の躍進につながった歴史的一作だったんですね。
そのゲームが実写映画化されたのが本作『トゥームレイダー ファースト・ミッション』。主人公のララ・クロフトを演じるのは『エクス・マキナ』や『リリーのすべて』で賞に輝き、『光をくれた人』ではマイケル・ファスベンダーと作中でもリアルでもラブラブとなったスウェーデン女優“アリシア・ヴィキャンデル”です。
「トゥームレイダー」は過去にも映画化されていて、日本でもヒットしたので、知っている人はそれなりにいるはず。制作は2001年。その時の主演はアンジェリーナ・ジョリーでした。
そのアンジェリーナ・ジョリー版を観た人はもしかしたら今作の“アリシア・ヴィキャンデル”版は、なんかイメージと違う…と困惑しているかもしれません。華奢で弱そうだし、幼くて未熟に見えると…。
でも、それでいいんです。今作のベースになっている2013年に発売されたゲームはリブートで、ララがトレジャーハンターになる最初の冒険を描いたもの。要するに初心者です。アンジェリーナ・ジョリー版にあった“トム・クルーズ”レベルの超人的身体能力を手にする前の話だと思ってください。だから過去作とか観ておく必要性はゼロです。
ちなみに今作はもうひとつ特徴があります。それは一応、日本が舞台なのです。でも全然日本の宣伝はひとつもこの話題に触れていません。その理由は“ヘンテコ日本”だからでしょうね。邪馬台国には謎の力があって、卑弥呼には秘密が隠されていた…という話になってます。これでもゲームよりはだいぶマイルドになっていて、ヘンテコ成分は薄めになった方なのですけど(ゲームでは「鬼」が襲ってきます)。
ともかく社会的もしくは政治的要素もなく、こんなにシンプルに楽しめるアクション映画は久しぶりじゃないですか。
『トゥームレイダー ファースト・ミッション』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):卑弥呼は邪悪です
「2009年5月17日。調査を進める。伝説によれば日本最古の女王ヒミコは邪悪な呪術の力を使い、国を治めた。手で触れただけで死や破壊をもたらした。ところが思わぬ事態で失脚する。自らの軍の将官たちに拘束され、魔の海の孤島に島流しになる。そしてその島の山に埋葬された。私は知られざる古地図を手に入れた。女王はそこで封印が解かれる時を待っている」
この伝説に導かれたひとりの男は幼い娘を置いて行ってしまった。それから数年後、その娘であるララ・クロフトはリングの上で相手と闘い、怒りを拳にぶつけていました。しかし、格闘技戦はボロ負けとなります。ジム費も滞納しており、ララは個人配達員の仕事で小銭を稼いでいます。
今日も自転車で街を疾走。仲間から600ポンドが手に入る野外ゲームを教えてもらい、参加を即決します。キツネ役がとにかく逃げるというものです。ララはキツネ役を名乗り出ます。
キツネ狩りの開始。自転車に乗った人間の群れがララを追跡してきます。ララは車を活用するなどして颯爽と逃げ回ります。その際、父の面影を思い出したララは、よそ見でパトカーに衝突。
釈放を助けてくれたのはアナ・ミラーでした。父の企業であるクロフト社の経営を一任されている人物で、久しぶりの再会です。ララはじゅうぶんな遺産があるはずなのにその手続きを拒んでいました。父とは確執があり、今も納得いっていません。父は日本から帰らず行方不明になって5年。世間は死亡扱いでした。
事業を引き継ぐのが宿命だと諭されるも、その場は断ります。しかし、気持ちが揺れ動き、クロフト社に足を運んでみることに。死亡認定書にサインしようとしたとき、役員のヤッフェから父の遺品があると教えられ、それを見せられます。カラクリ箱です。それを解いてみせたララ。中から父娘の写真と鍵が出てきます。「終着点での最初のレター」というメッセージとともに…。
何か思い当たる節があったララは懐かしい屋敷へ向かいます。その地下墓所で秘密の入り口を発見。そこには父が密かに調査していた資料が無数にありました。
それによれば父は卑弥呼の力を悪用しようとする組織に狙われていたようで、ただならぬ状況にあったことが推察できます。父からのビデオメッセージで父の覚悟を知り、ララは父の認識を改めます。私を見捨てたわけではなかった…。
ララは父の足跡をたどり、真相を知るべく、父が向かった地へ飛び立つことに決めます。魔の海のどこかにある島へ…。
普通の女子大生が冒険してみた
まだ冒険なんて経験していない“ごく普通”の女子大生のララ(趣味は総合格闘技。自転車で街を疾走し、パトカーに衝突しても怪我なく受け身ができる程度の能力)。行方不明となった父リチャードの存在から逃げるように、貧しい生活に身を投じていた彼女ですが、父の会社へおもむき、父の残したカラクリをいとも簡単に解いてしまったことから生活は一変します(基本、どんな仕掛けも解けるスキルを初期能力として持っています)。
父からのビデオメッセージに導かれるように、香港に来たララ。そこで不良少年に追いかけられ、アクロバットなアクションを早速披露。そこで出会った、これまた丈夫そうなルー・レンという男と父が目指したという島へ向けて船を出港。途中、嵐に巻き込まれ、救命具もなしに海にダイブ。でも、生きています。この時点で察しているでしょうが、このララは耐久力がすでにカンストしています。
島に流れ着いたその後は、マサイアスという、貴重な労働力も容赦なく殺す経営センスのなさそうなヤバい男から逃げるララ。激流の川に落ちてしまうと、滝の寸前でひっかかっていた朽ちた日本軍の戦闘機みたいな飛行機の翼に掴まってギリギリセーフ…と思いきや、今度は翼が崩れ始め、ダッシュして間一髪でガシッ!と飛行機の内部へジャンプ。はい、レベルアップですね。続けて、今度は飛行機ごと落ちそうになり、超低空パラシュートで強引な強制着地を成功。はい、またレベルアップです。この時点で一切破れることのないタンクトップが凄いですね(ヴィブラニウム製かな?)。なお、ララの体は傷ついています。
夜になると、マサイアスの仲間に見つかって襲われ、初めての人殺しを経験。はい、またまたレベルアップ。殺人スキルを習得。ここからある男と出会いをはたしてから、荷物とルー・レンを救出するために、敵陣へ。一人殺した経験があればもう余裕ですよと言わんばかりに、殺人スキルを発揮。弓矢で殺していきますが、結局、マサイアスと一緒に謎の遺跡へ。
そこでの数々のトラップもララには効果なく、マサイアスをワイルドに突き落とし、貴重な建造物も盛大に爆破して、タイトル回収したあと、彼女は立派なトレジャーハンターになっていたのでした(まだ初心者です)。
最後は2丁拳銃に興味を持ち始めて、ますます危ない女になっていく片鱗を見せて終わっていました。
やはりゲームの実写化は難しい
こんな感じで話自体は王道。私はベースになったゲームをたまたまプレイしたことがあるため、思い出しながら比較して観てみると、結構、原作どおりです。明らかにゲームのシーンをそっくりそのままマネた場面もありました。例えば、序盤の嵐で船が沈んで、ララが海にカッコよくダイブするシーン。あそこがゲームではオープニングなのですが、ゲーム版では割と大きな調査船だったのが、映画版では漁船になっていて、それでも同じ構図にしようという工夫が感じられました。
一方で、ゲーム版にはない映画独自の要素も目立っていて、それが家族です。映画ではこれがテーマになってました。
本作の監督はノルウェー人の“ローアル・ユートハウグ”。この監督は本作の前に『THE WAVE ザ・ウェイブ』というディザスター映画を撮ったことで有名になりました。こちらの作品はノルウェーで起きた岩山崩落による大津波を描いたもので、自然災害大国の日本でも見たことがないような山岳での津波シーンが大迫力です。ぜひチェックしてほしいのですが、この作品でも王道な話の中で家族がテーマになっています。“ローアル・ユートハウグ”監督の得意分野なのでしょう。
そのアレンジによって『トゥームレイダー ファースト・ミッション』ではキャラクターに深みが増しました。しかし、そのぶん、デメリットもあって、冒険か始まるまでの導入に35分以上かかっているのは退屈かなとも思います。ディザスター映画であれば、溜めの時間として納得もいきますが、これはエンタメですからね。観客を飽きさせないことが第一です。
あと、原作ゲームには日本人のキャラなど多くの仲間がいたのにバッサリとカットされていたのは残念。これで日本人キャストがいればもっと日本で話題になったと思うのに…。やはり『バイオハザード』の成功例を狙って、アジア受けを狙うべきだったのではないですかね?
他のゲームの実写化作品(『アサシン クリード』とか)の感想でも書きましたが、ゲームの面白さを映画に反映するのは難しいですね。
といっても、ここで終わるのはさすがにもったいないので、シリーズが続くといいと願ってます。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 51% Audience 55%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. トゥームレイダー ファーストミッション
以上、『トゥームレイダー ファースト・ミッション』の感想でした。
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