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『サマリタン Samaritan』感想(ネタバレ)…もしもスタローンが超人だったら

サマリタン

もしもスタローンがスーパーヒーローだったら…映画『サマリタン』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Samaritan
製作国:アメリカ(2022年)
日本では劇場未公開:2022年にAmazonで配信
監督:ジュリアス・エイヴァリー

サマリタン

さまりたん
サマリタン

『サマリタン』あらすじ

スーパーヒーローの「サマリタン」の伝説を信じ、そのヒーローはまだ生きていると考えている少年のサムは、正義に憧れるも現実では不良たちにいいようにこきつかわれていた。ある日、サムは向かいのアパートに暮らすみすぼらしい初老のゴミ収集作業員の男と知り合い、しかもその男がとんでもないスーパーパワーを持っていることを偶然に知ってしまう。それはまるでかつてのサマリタンのようであり…。

『サマリタン』感想(ネタバレなし)

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スタローンはヒーローです!

『ロッキー』でおなじみの名俳優“シルヴェスター・スタローン”。彼と言えば、ニューヨーク・マンハッタン区のヘルズ・キッチン地区出身であり、なにかとそんな街の一角にいそうな雰囲気を漂わしていますし、ファンもそういうイメージを持っているのではないでしょうか。

ただ、実際は“シルヴェスター・スタローン”本人は今どこで暮らしているのかというと、フロリダ州パームビーチにあるバカンス気分で過ごせる邸宅に住んでいます。2020年に購入したようで、お値段は3538万ドル(48億円以上)。本当にいかにも豪邸という感じです。以前はカリフォルニア州コーチェラバレーに邸宅を持っていたのですが、そこは売ってしまったとのこと。

つまり、あなたもそんなリッチな人がひしめきあっているリゾート地区に邸宅を持てば、「お隣さんはスタローンです!」みたいなシチュエーションになれるということです。どうですか、試してみませんか?(私はちょっと税金払うのでいっぱいいっぱいなので…)

今回紹介する映画はスタローンがもう少し身近なお隣さんになってくれる作品なので大金は要りません。

それが本作『サマリタン』

『サマリタン』は、原作がグラフィックノベルなのですが、物語はアパートの向かいに住んでいる初老のおじさんが実はとてつもないスーパーパワーの持ち主だった!という、ざっくり言えばそんな話。ただのおっさんだと思っていたら超人だった!というと、『アンブレイカブル』を思い出しますが、ノリ自体はそれに近いものがあります。

そして今回のそんなヒーロー枠が“シルヴェスター・スタローン”。ついに“シルヴェスター・スタローン”もスーパーヒーローになる時代が来てしまったのか…。

まあ、でも『ランボー』シリーズも後半は完全にヒーロー化していたし、『エクスペンダブルズ』なんて完全にスタローン版の『アベンジャーズ』だし、大半の人は忘れてそうだけど『ジャッジ・ドレッド』(1995年)なんかもほぼヒーロー映画的な立ち回りなような…。

要するに“シルヴェスター・スタローン”は結構今までもヒーローやってるし、誰よりも古典的なスーパーヒーローを体現する活躍を映画で昔から発揮してきたのですが、なんかスタローンとしての印象が強すぎてヒーローとしてカテゴライズしてこなかったという…。

この『サマリタン』は、忘れていたヒーローの元祖“シルヴェスター・スタローン”に立ち返らせてくれる映画でしょうかね。

現時点で76歳なのにこんなアクション映画にでるのはスゴイですけどね。

“シルヴェスター・スタローン”とこの『サマリタン』で共演するのは、ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』でおなじみの“ダーシャ・ポランコ”、『エンダーのゲーム』の“モイセス・アリアス”、ドラマ『シリコンバレー』の“マーティン・スター”、ドラマ『ユートピア 〜悪のウイルス〜』の“ジャヴォン・ワナ・ウォルトン”…そして悪役を演じるのは『ゴースト・イン・ザ・シェル』の“ピルウ・アスベック”です。

『サマリタン』を監督するのは、『ガンズ&ゴールド』(2014年)、『オーヴァーロード』(2018年)の“ジュリアス・エイヴァリー”

久しぶりの“シルヴェスター・スタローン”主演作が映画館で観れるのか!とワクワクしていたら、この『サマリタン』、「Amazonプライムビデオ」での独占配信になってしまいました。

これは制作の「メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)」が2022年3月にAmazonに買収されたからであり、『13人の命』と経緯は同じです。

『サマリタン』はダークヒーローな雰囲気を出していますけど、案外とキッズ向けなテイストにもなっており、これはたぶん製作のスタローン的には「ヒーローは基本は子どもに正義を教えるためのものだからね」という方針の表れなんじゃないかな。

どうして『サマリタン』というタイトルなのかは…観ればわかると思います。これを語っちゃうと事前に物語展開のネタバレをしてしまうことになる気もするし…。

ともあれ“シルヴェスター・スタローン”のファンは彼が豪快にヒーローしている姿を今回も眺めてみてはいかが?

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『サマリタン』を観る前のQ&A

✔『サマリタン』の見どころ
★シルヴェスター・スタローンがヒーローしている!
✔『サマリタン』の欠点
☆見た目に反して案外とダークヒーローでもない。
☆子どもが主人公であり、大人向けというほどでも…。
日本語吹き替え あり
玄田哲章(ジョー)/ 山本和臣(サム)/ 野沢聡(サイラス)/ 東内マリ子(ティファニー)/ 白石兼斗(レザ)/ 三瓶雄樹(キャスラー) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:俳優ファンは必見
友人 3.5:役者が好きな人同士で
恋人 3.5:ロマンス要素は無し
キッズ 3.5:子どもでも観られる
↓ここからネタバレが含まれます↓

『サマリタン』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):サマリタンはご近所にいた?

昔、双子の兄弟がいました。2人は幼少期から尋常ではないパワーを持っており、周囲からは忌み嫌われてしまいました。街の住人は家に火を放ち、その子たちの両親は死んでしまいます。そしてその兄弟のうち、ひとりはサマリタンとなって正義に目覚め、もうひとりは復讐に燃えてネメシスとなりました。兄弟は敵対します。ネメシスは怒りと憎しみをこめて作ったハンマーを生み出し、サマリタンを倒せる唯一の武器で対抗。ネメシスはサマリタンを発電所に呼び寄せ、息の根を止めようとしました。互角の戦いのすえ、2人は爆発で死んだと言われています。しかし、サマリタンは生きているのではという噂も絶えません。

25年後。失業や貧困で不満が募り、街全体が不穏の中で佇んでいるグラニットシティ。ここで貧しくも暮らすサム・クリアリーという名の少年がいました。シングルマザーの母はいつもおカネに困窮しており、そんな母に小銭を貸すのはサムです。実はサムには小銭を稼ぐ手段があったのでした。

夜の雨の中、ゴミ出しにでたサムは、向かいのアパートに住むジョー・スミスがゴミ箱にやってきたので思わず隠れます。売れそうなものを漁っているようです。

学校から帰ってきたサムは立ち退き通知書がサムの家の扉に貼ってあり、入れなくなります。しかたないのでアパートから締め出されたので外で絵を描いていました。サムはサマリタンが生きていると素直に信じており、学校でもノートに絵を描くのに夢中になるくらい、サマリタンのファンです。

そこへジョーが帰ってきて、サムは「何を持っているの?」と話しかけます。「ラジオだ」とジョーはぶっきらぼうに答えます。

サムは近所の子にそそのかされて、古びた建物に窓から侵入。そこで売れそうな銅線などを盗みます。「サイラスのところに行くの?」とサム。そいつはネメシスの信奉者として有名なヤバい奴です。

そのサイラスのアジトで銅線などを売っていると、複数の車が入ってきます。ボスと呼ばれる男サイラスが降りてくるのでした。

レザを中心とする不良グループから、気をそらす仕事をしてくれと持ち掛けられ、サムは承諾。それは万引きの仕事でしたが、まんまと盗みに成功。

アジトに戻るとサイラスが「年はいくつだ」と聞いてきて「13」と答えます。ノートを見られ、「お前はファンなのか」と言われます。サイラスいわく、「ネメシスは権力に逆らっていた、やられて当然の連中と戦っていた」とのこと。報酬としてそれなりの額をくれてサムは上機嫌。

大家にカネを渡し、家に入るサム。でも母は「あのおカネはどうしたの?」と問い詰めてきます。

翌日、サムは不良グループに追われ、捕まってボコボコにされます。するとジョーが現れ、いとも簡単に不良たちを投げ飛ばしてしまい、なんと鋭利なナイフも素手で受け止めます

もしかしてこのジョーはサマリタンではないのか…。

サムはひん曲がったナイフを拾い、急いで帰宅し、お隣の建物を双眼鏡で監視。ジョーの背中は酷い傷だらけ。これは可能性がある…。

一方で、サイラスはとある金庫を襲い、ネメシスのフェイスマスクとハンマーを盗み出します。そのパワーを感じながら、ハンマーを手にして地面に打ち付け、サイラスはマスクをつけて鬱憤を溜め込む大衆に呼びかけるのでした。

「今こそ自分たちのものを取り戻そう!」

こうして暴動が起きる中、サムはジョーの正体を突き止めようと必死になり…。

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スタローンを轢きました!

映画『サマリタン』は、“シルヴェスター・スタローン”のスター映画であり、彼を輝かせるために用意された舞台です。無論、全ては“シルヴェスター・スタローン”ありきで展開され、“シルヴェスター・スタローン”を観たい人のためのシーンの詰め合わせになっています。

スーパーパワーを持っている“シルヴェスター・スタローン”が隠居しながらゴミ漁りまでして地味に暮らしている…という設定からして、いかにも“シルヴェスター・スタローン”のファン好みの出だしなのですが、スタローン本人もその需要と供給にきっちり答えます。

ジョー・スミスのキャラクター性は特段珍しいものはなく、なんというかほぼ『ロッキー』じゃないかっていう感じなのですが(オチも含めてね)、スタローンがこんな姿を見せてくれれば、とりあえずファンは一定の満足を得る…そんな感じかな。

でもスタローンを倒せるハンマーとか、スタローンを豪快に轢くとか、要所要所でぶっとんでいるのが、やっぱりスーパーヒーローものらしいタガの外れ方をしているな、と。あの轢かれた後にゴキゴキと骨折した肉体を再生しながら体から湯気をだし、シャワーをざっと浴びて、猛然とデカいアイスを食べだす…というシーンの、どことないスタローンのおっさん愛嬌が楽しい…。そこですっごい雑な科学用語セリフを言い出す場面も、必死に賢いアピールしている構図(しかも相手は13歳)みたいでシュールだし…。

子どもが捕えられているというのに大型トラックで突っ込んでくるあたりとか(安全に保護する気ある?)、たぶんあのジョーもやっぱりどこか常識外れですよね。終盤の大ジャンプも正気じゃない。

でも、おそらく大半のスタローンのファンはもっとジョーの日常生活を見せてくれ!って思ったんじゃないかな。ちょっと少なかったですね、描写が。スーパーパワーを持った奴の日常描写って一番面白いのに。

アクションのシーンとしてはそれなりに見せてくれる感じにはなっていたのかなと思います(さすがにスタントを使いながらの撮影だとは思いますが)。少なくとも『ランボー ラスト・ブラッド』と比べると、敵はあからさまに悪い奴だし、ギッタンギタンにぶちのめしてもそんなに見ている側としては嫌な気分にはならない。

思いっきり轢かれたしね。やり返してもいいよね。

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スタローン以外はそれほど関心が無い物語

そんな“シルヴェスター・スタローン”の勇姿を拝むという一点で特化している映画『サマリタン』なのですが、そこだけに一点突破しているので、スタローン以外のキャラクター描写は驚くほどスカスカです。もうなんでしょうかね、メインディッシュを一生懸命作ったから、それ以外の品はどうでもよくなった…みたいな…。

例えば、本作の表向きのストーリー進行の主人公であるサムという少年。この子はまだマシな方なのですが、あくまでジョーというキャラクターを崇めたてるための目撃者&信者として機能すればいいだけなので、その役回りは単純です。ちょっとサマリタン信者すぎて、行動が一線を超えすぎているので、子どもながらに怖いときがあるのですけど。悪ではなく正義を根差す、ジョーにとっても光となる存在としては、それなりに輝いていましたが…。

対する本作の一応のヴィランであるサイラスはものすっごくテンプレ。ずいぶんと人相の悪い“ピルウ・アスベック”がひたすらになんだかこじらせている。このキャラクターに関してはとくに深みも何もない。スタローンと大違いすぎる…。“ピルウ・アスベック”、結構有名な俳優なのだけどハリウッドでの扱いは『デンジャー・ゾーン』といい雑だよね…。

また、サムの母親ティファニーも雑で、あれだと保護者の怠慢に思えてくるし、それでいて急にジョーを責めたりしてくるものだから、あのキャラクターの倫理観がよくわからない…。

本作のタイトルは「善きサマリア人のたとえ」に由来しているものと見られ、一般的な解釈としては誰でも善行をすることを推奨するような内容です。「善きサマリア人の法」というのもあるように、正義の行いはどんな結果にせよ、一定の社会の保護が与えられるものだと。

今作のジョーも実はサマリタンではなくネメシスでしたが(このオチは双子という設定時点で暗示されたようなものでしたが)、あの対立の一件以来、善行を重ねることにしたのだと思われます。持つべき能力を正しいことに使えば、その瞬間からそれはヒーローである。オーソドックスなヒーローのメッセージです。

ラスト、サムはマスコミの前でサマリタンの勇姿を語り、物語はヒーローを作ります。『ロッキー』や『ランボー』という、ファンの中には“シルヴェスター・スタローン”のヒーロー映画の決定版はすでに存在しているので、この映画『サマリタン』はあまり映画ファンの間で語り継がれることはないかもしれないですが…。

『サマリタン』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 39% Audience 85%
IMDb
5.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
4.0

作品ポスター・画像 (C)Metro-Goldwyn-Mayer

以上、『サマリタン』の感想でした。

Samaritan (2022) [Japanese Review] 『サマリタン』考察・評価レビュー