銀河系青春してる?…「Disney+」ドラマシリーズ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2024年~2025年)
シーズン1:2024年にDisney+で配信
ショーランナー:ジョン・ワッツ、クリストファー・フォード
すたーうぉーず すけるとんくるー
『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』物語 簡単紹介
『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』感想(ネタバレなし)
『スター・ウォーズ』のジュブナイル
子どもの頃、少しでも生活圏を離れればそれは「大冒険」でした。いつもの家の周辺、学校の通学路、よく行くスーパーマーケット。そんな見知った範囲から一歩でるだけで未知の世界。そうやってワクワクドキドキしながら行動できる世界を広げていく楽しみはあの子ども時代にしか体験できません。
しかし、「遠い昔、はるかかなたの銀河系で…(FAR, FAR AWAY)」のフレーズが作品の象徴となっているこの『スター・ウォーズ』の世界では、子どもの大冒険も銀河スケールになってくるようです。
そんな物語が幕を開けるのが『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』。
本作は続々とドラマシリーズを展開している『スター・ウォーズ』フランチャイズの2024年末から「Disney+(ディズニープラス)」で配信された新作となります。正直、新ドラマを作りすぎなので、どれかいくつかのラインに絞るべきだと思うのですが…(『スター・ウォーズ アコライト』も打ち切るし…)。
今回の『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』は、ルーク・スカイウォーカーがダース・ベイダーを倒して銀河帝国を崩壊させてから数年後の新共和国時代が舞台になっています。
一方で、わりとメインのサーガとは距離をとっており、どちらかと言えば脇に逸れるような立ち位置の作品です。新しく登場する惑星が舞台で、そこで平凡に暮らしていた子どもたちがひょんなことから大冒険にでるジュブナイル・SFアドベンチャー。そんなジャンルです。『スター・ウォーズ』に『グーニーズ』を混ぜ合わせた雰囲気ですね。
この『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』のショーランナーを務めるのが、MCU版の『スパイダーマン』3部作を見事に成功させた“ジョン・ワッツ”。
今回、“ジョン・ワッツ”も一部のエピソード監督を務めていますが、他にも『グリーン・ナイト』や『ピーター・パン&ウェンディ』の”デヴィッド・ロウリー”、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の“ダニエル・クワン”&“ダニエル・シャイナート”、『サンダーボルツ*』の“ジェイク・シュライアー”といった新しい監督参加者が並んでいます。また、『マンダロリアン』でもエピソード監督をした”リー・アイザック・チョン”や“ブライス・ダラス・ハワード”もいます。
『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』で重要なキャラクターを演じるのは、“ジュード・ロウ”。『スター・ウォーズ』初参加ですが楽しそうに暴れてます。
世界観が拡張傾向にあった現状の『スター・ウォーズ』フランチャイズの中では、本作は小休止な一作ですが、子どもはもちろん、ジュブナイル好きの大人も楽しめると思います。
『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』は全8話(1話あたり約30~50分)です。
『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』を観る前のQ&A
A:とくにありません。
鑑賞の案内チェック
基本 | — |
キッズ | 子どもにも見せやすく、楽しさ満載です。 |
『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
宇宙を進む貨物船を突然容赦なく襲う海賊。この海賊たちは手馴れており、あっという間に制圧。ヘルメットを被った海賊の船長シルヴォは残忍な声で脅し、金庫をこじ開けます。しかし、金庫の中は空っぽ。これに不満を爆発させた海賊たちは船長を袋叩きにしていき…。
一方、ところかわって惑星アト・アティン。閑静な住宅地で暮らすウィムという少年がいました。父親は忙しいようであまり相手をせずにウィムを送り出します。ウィムは友人のニールと合流。2人はライトセーバーごっこをしていつもの遊びに興じます。とくにウィムはジェダイに憧れていたのです。
乗り物で学校に向かい、学校の教室でドロイドによる授業を受けます。管理局次官のファラが前に立って挨拶してきて、明日に職業適正テストがあると告げます。それはこの惑星にとっての「大いなる事業」の目的を果たすためであり、「共和国」の平和を保つために欠かせないもの。大人はみんなそんなことを言います。
でもウィムは父のようなシステム・コーディネーターではなく、もっと人々を救う仕事がしたかったのでした。けれどもそんな夢を褒める大人はここにはいません。
ウィムの家はひとりっ子のシングルファザー家庭。家に帰っても誰もいません。
翌日寝坊して乗り遅れたウィムはホバーバイクに乗って鬱蒼とした森を進んで近道を狙うことにしました。しかし、自分の力量はたいしたことはなく、小さな谷に落ちてしまいます。あげくに崖を登れずに困っていると土の坂だと思っていた奥に何かの入り口のようなものを見つけます。しかし、調べる間もなく、ドロイドに見つかって学校へ連れていかれます。
確かにあれはよく絵本で見ていたジェダイ聖堂の形に似ている…。もしかして身近にジェダイがいたりする? 少し期待に胸を躍らせつつ、心配して迎えに来た父に訴えるも怒られるだけでした。そんなやりとりを別の理由で怒られてそこにいたファーンが耳にしていました。
懲りていないウィムはニールを誘ってまたあの森の奥の怪しい場所に行きます。今度こそ確かめるのです。ところがファーンとその友人のKBが先に到着して待ち構えていました。
4人は対峙。ファーンとKBは部品目当てです。しょうがないのでみんなでその入り口らしきものをこじ開けると、中は意外にも宇宙船のようでした。廃墟のようで人の気配がありません。見るからにボロボロな片目のドロイドが放置されているだけです。
少し船内を探索していると、入ってきたドアが何かの拍子で閉じてしまいます。電源が入り、思わず押してしまったスイッチのせいで、宇宙船はエンジン全開。なんと地上を離れ、飛び去ってしまいました。自分たちを乗せたまま…。
目の前に広がる宇宙空間にあっけにとられる4人の子どもたち。さらに宇宙船はハイパースペースジャンプまでしてしまい、4人は宇宙で迷子になってしまうのでした。
ここは一体どこ…?
光もあれば闇もあり、そして糞野郎もいる
ここから『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』のネタバレありの感想本文です。
ショーランナーの“ジョン・ワッツ”はこれまでの手がけた作品の傾向として、たいていは「世間知らずの無邪気な子どもが悪い大人に翻弄されていく」という構図の物語が十八番です。『COP CAR コップ・カー』からMCU版『スパイダーマン』、近作の『ウルフズ』に至るまで、子どもの年齢は多少の振れ幅があるにせよ、同様の特徴があります。
“ジョン・ワッツ”はこの子どもが悪い大人に翻弄され、ときに大人を出し抜くやりとりを、とてもテンポよくシュールな味付けで描くのが上手く、見ていて愉快です。
『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』もご多分に漏れずその魅力がたっぷり詰まっていました。
故郷の惑星アト・アティンから宇宙船でうっかり盛大に飛び立ってしまったウィム、ニール、ファーン、KBの4人の子どもたち。この子たちが行く先々で出会うのは悪い大人ばかり。その中でもとくに極悪なのが海賊に交じっているジョッド・ナ・ナウッドと名乗る男。その正体はジェダイになりかけたものの、政治情勢からより自己利益に走った人間でした。
これまでシスの暗黒面に闇堕ちしたジェダイは何人もいましたが、ジョッドのように根っからの人間性がここまで腐っている奴は初めてじゃないだろうか…。シスとしてのある種のオーラも何もないんですね。本当にただただ糞野郎っていう…。
最初のほうはまだ『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウ的な、ダメ人間だけど愛嬌ありそうなオジサンの振る舞いはありました(ちなみに“ジュード・ロウ”は『ピーター・パン&ウェンディ』でフック船長を演じたばかりなので海賊が染みついてますね)。
しかし、後半からはもう卑劣な本性をこれでもかと発揮。よりにもよってライトセーバーでいたいけな子を容赦なく脅すわ、大量のカネを前に高笑いするわ、擁護不可な最低さで暴れまくります。冒頭のシルヴォ船長時のヘルメットもヴィランであることを暗示する『スター・ウォーズ』らしい演出でした。
正直、このジェダイを悪として描く展開は直近の『スター・ウォーズ アコライト』でもやってしまったのでオチが被った感は否めないですし、『アコライト』のほうが組織的腐敗とそれに対抗して足掻く次なるフォース感応者を描くという点で前進的だったと思うのですが、“ジュード・ロウ”もノリノリで演じていたし、楽しそうだったから良しとするか…。
ほんと、世界観の拡張とか関係ない一発屋な出番でしたね、あのジョッドは…。ラストでも生死不明なので今後登場は一応はできるけども、結構どうでもいい扱いで片づけることもできるし…。
他にもあの子どもたちの故郷の惑星アト・アティンを含めた秘匿された星々、その実態は旧共和国の造幣局システム…。これもなかなかに闇深いディストピアですよ。ドロイド依存していた旧共和国の深淵といった感じで、シスとは全然関係ない方向で怖さが滲んでいました(全部ドロイドにやらせて、人間をわざわざ住まわせる必要はないだろう…とは思うけども)。
監視カメラ風の頭部のドロイドはちょっと某日本の映画上映時にアクロバティックに違法撮影注意を警告するアイツに似てたな…。ちなみに監理官巨大ドロイドは私は好きです。あの子だけまた登場してほしい…。SM-33もいい保護者してました。
子どもたちのレプリゼンテーション
『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』の主役である子どもたちも良いキャラばかりで観ていて飽きませんでした。
ライトセーバーのギャグっぽい(でも危ないけど)持ち方ミスをやらかしたウィムも最後は立派に成長。フォースに依存しない勇気を描くという王道の成長です。最後は救援に来た新共和国部隊に憧れていたようだけど、あの組織もだいぶアレだから大丈夫かな…。
ファーンは母のような権力に従事する人生の無意味さをしっかり理解し、母と相互理解を描いていました。子どもはどんな大人よりも教師になれます。
ニールはとにかく見た目も含めてあどけなく可愛いのですが、冷笑されがちな平和主義を純真に貫いており、その心を大切に大人になってほしいですね。
KBはディサビリティ(障害者)のエピソードとして秀逸で…。『スター・ウォーズ』って高度な医療技術があるおかげでルーク・スカイウォーカーに代表されるように義手などのサイボーグがチート的に描かれるのが定番でした。表象としてはちょっとステレオタイプだったんですね。対する今回のKBは事故に遭ってから機械の力を借りた身体になったものの、環境に脆弱で作中でもいろいろな惑星で無理をしていたことを吐露。相手の身体の違いを気遣うことの重要性を、非人間のニールも含めて語っていく、とても『スター・ウォーズ』の世界観に外せない進言だったと思います。
なお、子どもたちの両親も後半は活躍しますが、KBの両親は女性同士のカップルになっていました。『スター・ウォーズ』で女性同士のカップルが登場したことはドラマ『キャシアン・アンドー』でもあったのですが、今作では初の同性の両親でしたね。良いレプリゼンテーションです。
子ども向けの作品だからこそ子どもたちの表象は包括的であってほしいもので(そのほうがいろんな子たちが自分事として物語に触れられますから)、本作はその期待に応えてくれました。
『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』はジュブナイルの豊かさをこのフランチャイズの中で最大限に再現してみせており、ジャンルの応用性の高さを証明したのではないでしょうか。10年に1回くらいのペースでいいので、こういう歴史を動かすビッグスケールのサーガとは無関係の小さな大冒険の物語を眺めたいですね。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)
関連作品紹介
作品ポスター・画像 (C)Disney, Lucasfilm スケルトンクルー
以上、『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』の感想でした。
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