レゴ ムービー2
映画『レゴムービー2』(LEGO ムービー2)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Lego Movie 2: The Second Part 
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年3月29日
監督:マイク・ミッチェル

あらすじ

ブロックシティが大変なことになった事件から数年後、街は謎の宇宙人が現れたことをきっかけに、すっかり荒廃し、誰もがすさんでしまう。そんな中で、エメットだけは相変わらず明るく、ごくフツーの日常を過ごしていた。しかし、ルーシーやバットマンといった仲間たちが宇宙人にさらわれてしまい、エメットは仲間たちとの日常を取り戻すため宇宙へと飛び出す。

ネタバレなし感想

まずは1作目を見てください

“フィル・ロード&クリストファー・ミラー”旋風は止まりません。おそらく今後も。

つい最近このデュオが原案・脚本・製作を手がけたアニメーション映画『スパイダーマン スパイダーバース』はアニメ業界に激震を起こすような映像革命をもたらしたばかり。
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今やこのコンビはアニメ映画界を先導するパイオニア。個人的には「ディズニーの時代」⇒「ピクサーの時代」と来て、現在は「フィル・ロード&クリス・ミラーの時代」だと断言してもいいくらいです。

最近も『コウノトリ大作戦!』(2016年)や『スモールフット』(2018年)とやたらと個性の強い作風を持つ映画の製作に携わり、映画ファンの間にも認知が広まってきた感じもします。彼らは特定のスタジオを持って大々的に宣伝して掲げているわけではないので、なかなか目立ちにくいのですけど、そのぶん作品内で印象にこびりつくような暴れ方をするクリエイターですね。

思えば初期作にして監督作『くもりときどきミートボール』の時点で“ヘンテコ”な作家性でした。一言で言えば「変わり者」。とにかく捉えどころがありません。私も“なんだこれは”と困惑すると同時にそのクリエイティブ・センスに夢中になったものですが、その理由を上手くは説明できませんでしたね。

そんな“フィル・ロード&クリストファー・ミラー”の名を完全に不動のものにしたのは間違いなく2014年のアニメ映画『LEGO ムービー』でした。私にとっては人生に刻まれるようなメモリアルな傑作となりました。その良さを書いていくと無限に文章が続くので自制しますけど、とにかく「どうしてこんな作品を作れてしまう人がいるんだ」と感動したものです。もう何十回と鑑賞しましたね…。

感無量になっている私はさておき、この『LEGO ムービー』の大成功によって『LEGO』映画シリーズとして世界観を拡充することになったわけですが、『レゴバットマン ザ・ムービー』『レゴニンジャゴー ザ・ムービー』というスピンオフ的な作品が続き、単体として強烈な個性はあるものの、正直、レゴという変化球を使っているとはいえ、いつかマンネリするんじゃないかと内心は思っていました。
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そんな中での本家『LEGO ムービー』の続編となる『レゴ ムービー2』の登場。それがどんな内容になるのか気になるのも必然というもの。

最初に結論を言えば「そうきたか」と。ちゃんとシリーズらしいテーマを引き継いで順当に続編らしい続編を作ってきました。本作では“フィル・ロード&クリストファー・ミラー”は監督ではなく原案・脚本・製作にとどまっていますが、しっかり“らしさ”はありましたし、前作に熱狂したファンも納得の出来じゃないでしょうか。

ただこれだけは忠告しておきます。とくに本作で初めてこのシリーズに触れようと考えた人へ。

絶対に1作目を先に観るべきだと。

本作は1作目のエンディングからそのまま物語が始まります。前作を観た人ならわかるでしょうが、あのオチの続きがそのまま冒頭からスタート。1作目は終盤に“どんでん返し”があってそこが作品の面白さにもつながっていたわけですが、2作目はその点に関しては観客は“知っている”前提で話が進みます。なので1作目を観ずに2作目である本作を鑑賞してしまうと、1作目のネタバレとなってしまい、1作目を後で見ようとしても面白さが半減するでしょう。だからとにかく1作目を事前知識なしでとりあえず観てください。

おすすめ PiCKUP!
↑『LEGO ムービー』…レゴ好きもそうでない人も、老若男女で楽しめる。騙されたと思って鑑賞してみてください。
シリーズを知らない人は「本当に面白いの? レゴってことは子ども向けでしょう?」と疑っているかもしれません。大丈夫です。むしろ大人の方が感動してしまいますから。

どうしても日本ではマニアに知られる映画の続編ということもあって映画館での取り扱いは小さくなるでしょうけど、これを機にこの作品シリーズの魅力に気づく人が増えるといいなと、心から思っています。

オススメ度のチェック
ひとり◯(大人でも満足できる)
友人◯(盛り上がる楽しさ)
恋人◯(心温まる感動も)
キッズ◎(全ては最高!)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

デュプロ(妹)はやっぱり強かった

とりあえず前作の話の振り返り。

全てがレゴでできた世界「レゴワールド」にあるブロックシティで暮らしていたごく普通のエメットは、ある日、「選ばれし者」であると告げられ、おしごと大王の野望を阻止することを期待されます。おしごと大王はマニュアルどおりの世界の構築を目的に掲げており、それに対抗するのは自由な創作を目指すマスター・ビルダーたち。ワイルドガール(ルーシー)、バットマン、ロボヒゲ、ユニキャット、ベニーなど個性豊かな仲間と出会い、真の力を発揮したエメットは世界を救いました。

それと同時に、この世界は実は人間の成人男性の持つレゴでできた世界であり、それをその人間の息子である少年が勝手にいじっていたことが判明。現実では父と息子の確執は消え、父が息子に自由にレゴで遊んでいいと言って、めでたし、めでたし。

でも、父は息子に「妹も遊びに入れなさい」と告げる…するとレゴ世界でもエメットたちの前にデュプロ(幼児向けのレゴです)という謎の侵略者が襲来して…そんなオチでした。

そして、2作目となる本作。

デュプロ襲来事件からスタート。常識の通用しないデュプロたちは暴れに暴れ、街を破壊。エメットたちも歯が立たず、そのまま月日は流れて5年後。ブロックシティはすっかり荒廃し、ボロボロなシティに(というか「マッドマックス」状態)。そんな中でも現実を無視するように能天気に暮らしていたエメットの前に現れたのはメイヘムという指揮官。しかも、エメットの仲間たちを誘拐して、宇宙へ拉致。エメットは流れのままに救出に向かう…そんなストーリー。

つまり、前作は「父(おしごと大王)」と「息子(エメット)」の対立が主軸になっていましたが、今作では「兄(エメット)」と「妹(Systar System)」の対立がテーマに据えられています。

まあ、でもこのへんは前作を観ていれば予想がすぐつくところだと思います。今作では序盤からフラッシュバックを多用し、現実世界で兄の作ったレゴと妹の作ったレゴがぶつかり合っているということは、比較的推測しやすいように情報が提示されていました。たぶん製作陣もここをサプライズのように仕掛けるつもりはなかったのでしょう。

兄弟姉妹がいるとよくわかる

ただ、本作はレゴをめぐる兄と妹の子ども対立が非常にわかりやすく可視化されていて、興味深いものでした。

おそらくこれは自身に性別の異なる兄弟姉妹がいたかどうかという個人経験にも関わってくるかもしれません。私はたまたま“経験ある”側の人間だったのですが、身に染みて昔を思い出してしまう物語でした。懐かしいなぁ…。

子どもは玩具で遊ぶのは当然として、でも年齢が違うと同じ玩具でも遊び方が全然違ってきます。そういう場合、年上の方が年下に合わせてあげるのが基本的な“節度ある”対応じゃないですか。でも本作の少年フィンはそれができなかったのでしょうね。だから冒頭、最初は一緒に遊ぼうと歩みよってはみたけれど、妹のデュプロになすすべもなく、敗北。

このあと5年が経過する中で、おそらく精神的成長期にも入って若干グレたのであろうフィンの心象風景を示すかのようなボロボロ荒廃ワールド。ユニキャットがウルトラキャットという猛獣並みのバケモノになったり、バットマンがいつにもましてワイルドに荒んでいるのは、嗜好が大人化しているフィンをそのまま反映したのでしょうか。

そんなフィンが大人気もなく妹に“やり返す”のが後半の展開ですが、私も告白してしまうと同じようなことをやってしまったことがある身としては、エメットの行動は全然笑えないし、同時によく理解できるもので。

逆に本作は一人っ子だった人が観たらどう思うのでしょうか。気になりますね。

レゴ ムービー2

ジェンダーバイナリーからの卒業

一方で、本作は「兄弟姉妹みんな仲良く遊びましょうね」というシンプルな親心の代弁で終わるのではなく、ここに非常にイマドキらしいジェンダー的な議題も見せてくるのが面白いです。

本作は「兄」と「妹」の対立だけでなく、「男らしさ」と「そうでなさ」の対立の物語でもあります。

救出のために宇宙船を制作して向かったエメットが出会ったのは、レックス・デンジャーベストというナイスガイ。演じている声が“クリス・プラット”ということで、完全に自虐パロディの塊みたいなキャラクターになっているのですが(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『マグニフィセント・セブン』『ジュラシック・ワールド』と出演作品ギャグのオンパレード)、“クリス・プラット”は立ち位置的に今最も輝いている“男らしい男キャラ”の代表みたいな存在でもあります。そのため、作中の流れを見ていけば、エメット、つまりフィンはこういう“男らしさ”に憧れているのでしょうね。

しかし、盲目的に唯一の正解であるかのように理想として“男らしさ”を追い求める姿勢が、どんどん周囲を傷つけていく…それが後半で起こる展開。そして、エメットはもうひとりの自分であると判明したレックスと対峙し、“男らしさ”ではない“自分らしさ”を見いだします

また、妹の方はあの世界を支配するクイーンの姿を見ているかぎり(声を演じているのは“ティファニー・ハディッシュ”ということも考慮して)、あまり“女の子、女の子”していないのが印象的。このあたりは女性の方が男性よりもはやく精神的成熟を経験することもあるのでしょうか。とにかく妹の方が先に“自分らしさ”を獲得している感じさえあります。

この“男らしさ”に悩む男性キャラクターと、それを置いて自立する女性キャラクターという構図。どこかで見たなと思ったら、ディズニー映画の『シュガー・ラッシュ オンライン』とすごく類似してます。
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やっぱりこういうテーマに収斂していくのでしょうかね。つまり、今は「ジェンダーバイナリーからの卒業」も子ども時代を描くうえでの当然のテーマになっているということなのでしょう。児童教育史的にも興味深い映画の変化ですね。

はやくも3作目にも期待

『レゴ ムービー2』の場合、まだ子どもなので違う道を歩んだりはしませんが、今後はわからないですよね。気の早い話ですが3作目があるとしたら、どうするのか。これが『トイ・ストーリー』だったら玩具からの卒業を描いたわけですけど、本作シリーズは“レゴは別に大人でも楽しい(卒業する必要はない)”という前提がありますから。そこも本作の素晴らしい部分だと思うので、大事にしてほしいですね。

ちなみに本作は『レゴバットマン ザ・ムービー』の続編であり、別のアンサーとしても解釈できて、少なくともこの世界観では“バットマン孤独問題”は解消したようで。ジョーカーが寂しそうにしてそうだけど、まあ、良かった…そういうことにしておこう。

映像面では正直驚きはすっかりなくなりましたが、本作はおなじみの曲「EVERYTHING IS AWESOME」を深堀りしていて、ミュージックの使い方も前作と方向性を変えていてユニーク。監督は“マイク・ミッチェル”という人で以前はミュージカル・アニメ映画『トロールズ』を手がけており、音楽は得意分野だったのでしょうか。そこは新鮮でした。
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なにはともあれこうなると3作目も期待。“フィル・ロード&クリストファー・ミラー”作品で3作目を作った映画はないはずなので、未知数ですけど、きっと面白いことをしてくれるでしょう。

もちろんレゴ、アメコミに続く新しいアニメーション映画表現の挑戦も待っています。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 86% Audience 72%
IMDb
6.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 WARNER BROS. ENTERTAIMENT INC.