ポリス・ストーリー REBORN
映画『ポリス・ストーリー REBORN』(ポリスストーリー リボーン)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:机器之血 Bleeding Steel
製作国:中国・香港(2017年)
日本公開日:2018年11月23日
監督:レオ・チャン

あらすじ

国際捜査官リンは危篤に陥った幼い娘を病院に残したまま、証人警護作戦に急遽駆り出されるが、ある陰謀に巻き込まれ、瀕死の重傷を負ってしまう。13年後、かつての事件を元ネタにした小説「ブリーディング・スチール」の出版をきっかけに、黒ずくめの犯罪組織との戦いがまた勃発する。

ネタバレなし感想

役目を終えた伝説と、まだ終わらない伝説

アメコミ映画界のレジェンドである“スタン・リー”が2018年11月12日に亡くなりました。世界中の映画ファン、コミックファンが悲しみ、そして功績を讃え、気持ちをひとつにした時間だったと思います。人が亡くなっているのにこういうことを言うのもあれですが、こうやって著名な人物の死をきっかけに、その業界や分野の原点や魅力をもう一度共有して確認できるのは良いものですよね。

その伝説の巨匠の訃報の10日前、実は映画界に関係するもうひとりのレジェンドが亡くなっていたのをご存知でしょうか。

その名は「レイモンド・チョウ(鄒文懷)」

「香港映画の父」と称される偉大な彼の功績と言えば、映画会社「ゴールデン・ハーベスト」の設立に携わったことです。「デン!デン!デン!デン!テテテテ~~」という音でロゴがでるあの会社です(わかるのだろうか、この説明で…)。この「ゴールデン・ハーベスト」との契約で才能を開花させ、世界に羽ばたいたスターこそ、誰であろうあの“ジャッキー・チェン”です。

だからレイモンド・チョウがいなければ“ジャッキー・チェン”の名作の数々もなかったかもしれないわけで、本当にありがとうございましたですよ。

2018年11月2日にレイモンド・チョウは死去し、“ジャッキー・チェン”もショックを受けていました。ひとつの時代の終焉のようにも感じてしまいます。

しかし、“ジャッキー・チェン”がまだいる。なんども引退を宣言するも、一向にアクション映画に出るのを止める気配がないあたりをみると、この人、きっと死ぬまでアクションし続ける気でいることは間違いありません。

そんな“ジャッキー・チェン”のベスト映画といえば何?と聞けば、ファンは1日は余裕で大激論を繰り広げられるくらいホットなトピックですが、少なくとも代表作として有名なのが1985年の『ポリス・ストーリー 香港国際警察』です。

「“ジャッキー・チェン”とか言う男、凄いぞ」と、クリント・イーストウッドを始めとするアメリカの映画人を驚嘆させた、本人監督作。その凄さを語っていると文章がいくらあっても足りないので割愛しますが、クライマックスのショッピングモールでのポール滑降アクションシーンといい、映画娯楽の完成系みたいな作品でした(続く『ポリス・ストーリー2 九龍の眼』で「なんで階段を使わなかったんだ」と怒られているシーンも含めて個人的に好き)。

ジャッキー作品の有名どころは他にもいっぱいありますが、続編が4作も作られ、関係はないですが題名に「ポリス・ストーリー」を冠した映画がたくさん作られているところをみると、やっぱりこの作品は別格なのでしょうかね。

その「ポリス・ストーリー」の名前を含んだ新作ジャッキー映画が公開されました。それが本作『ポリス・ストーリー REBORN』

察しの方もいらっしゃるとおり、本来の『ポリス・ストーリー』シリーズとは全く関係ありません。日本の配給が勝手に名前をつけたパターンです。それどころか、「ポリス・ストーリー」の名を冠した作品群の中で最もオリジナルからはかけ離れているのが本作です。ネタバレになるので控えますが「えっ」とびっくりします。限りなく警察は関係ないですし、「英雄故事」(『ポリス・ストーリー 香港国際警察』の曲)がテーマ曲みたいな宣伝もありますが、あれもただのサービスです。

なのになぜか日本の宣伝は『ポリス・ストーリー』ユニバースという意味不明な用語で本作をアピールし、さらに世界観もつながっている風なことすら匂わせているという状況で、景品表示法の違反とかにならないのだろうかと疑問もなくはないですが、とりあえず忘れましょう。

なんかもう“ジャッキー・チェン”を見れるうちに見ておくための映画といっても過言じゃないですね。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

誰だ、おまえ

香港の国際捜査官リンは、まだ幼い娘が病気で危篤状態に陥り、刻一刻と命が脅かされている状態であるにもかかわらず、証人警護作戦に参加して駆けつけられないジレンマにモヤモヤ。そうこうしているうちに敵の罠にハマったことが発覚。悲鳴と断末魔、銃声と爆発、雨と血しぶきが乱れ狂うなか、なんとか自分の命は助かるもあまりにも失ったものは大きかった…。

こんな壮絶な冒頭で始まる本作。でも、ジャッキー映画熟練者の人なら、もはや既視感しか抱かないいつもの映像なはず。仕事と家族のはざまで揺れ動くシリアスな“ジャッキー・チェン”といえば、それこそ『新ポリス・ストーリー』『香港国際警察 NEW POLICE STORY』『ポリス・ストーリー レジェンド』などでも散々見てきました。というか、出だしがだいたいワンパターンです。

ただ、本作。明らかにこれまでのジャッキー映画と違うところ、いや、製作者があえて裏をかこうとしていることがみえる作りになっています。

まず、いつもだとこの場合は娘は死ぬのはお約束ですが、今回は死にません。なんと超技術によって奇跡的に生き永らえたという衝撃の設定が観客を驚かせます。

そして、今作の敵もびっくりです。冒頭のスペクタクルな大激闘でリンたちの精鋭部隊の前に立ちはだかったのは…、あれっ、ヴォルデモートさんですか?(『ハリー・ポッター』シリーズのね) もしかしたら『第七の封印』の死神かもしれないけど。でもこの「アンドレ」というらしい敵のリーダーっぽいやつ、仲間たちは普通に銃を使ってきます。そんな出演している映画を間違えているのではというツッコミもかねて(?)、リンは懇親の車両アタックを決め、&大爆発。

そして、舞台は13年後に移り、敵のリーダーはサイボーグ化し、謎の宇宙船風な飛行物体を乗り回し、暗躍しているのでした。

つまり、本作、がっつりSFなんですね。もっと言うなら完全にアメコミを意識しているのは間違いありません。その証拠に、やたらと作中で「バットマンか?」「スパイダーマン?」みたいなアメコミへのメタ的な言及セリフが挟み込まれます。

監督と脚本を務めた“レオ・チャン”はまだそこまでの監督経験はないようですが、かなりイマドキな感覚でジャッキー映画をアップデートしようとした挑戦心があるのはわかります。

多才な役者陣は魅力的

そのチャレンジは良しなのですが、私にはあまり刺さらなかったかな…。中国の映画レビューサイトを見ていると、中国国内でも評価はよろしくないので、そういう気持ちの人は少なくないと思いますが、私はジャンル映画は好きだし、そこにアレルギーはないほうです。でも、響かなかったんですね。

もちろん、良い部分もあって、例えば役者は良かったです。“ジャッキー・チェン”は別にして、今作でリンとタッグを組むリスンを演じた“ショウ・ルオ”も独自の存在感があって魅力的。正直、チャウ・シンチー監督の『人魚姫』で演じていたタコ兄の方が個人的には数百倍は好きですけど、今作もなかなか。
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なんでいつも“ショウ・ルオ”は小学生みたいなギャグをやっているのでしょうかね…。

女性警官スーを演じた“エリカ・シアホウ”も、今作で初めて意識しましたが結構、絵になるカッコよさを秘めていました。しかも、今作では脚本にも名を連ねているので(どれくらい関わったのか不明ですけど)、多才な可能性を持っていそう。

そして、リンの娘ナンシー(シーシー)を演じた“オーヤン・ナナ”は、キュートかつほどよいアグレッシブさで“ジャッキー・チェン”のDNAを本当に継承してそうな雰囲気が素敵。ちなみに彼女はもともとチェリスト(チェロの演奏者)として有名で、ネットで調べれば彼女の素晴らしい演奏が聴けるので、気になる人はチェックしてみてください。

女殺し屋というストレートすぎる役柄で登場した“テス・ハウブリック”も、嫌いじゃないです。

ポリス・ストーリー REBORN

これでは2次創作?

それでも本作にノれない理由は、たぶんバランスの取り方と、勢いの弱さかなと。

本作は序盤のシリアスさに対して、以降はちょくちょくと(とくにリシンのキャラが)笑いを提供してきます。このへんはジャッキー映画の伝統なのでまだわかります。

一方でその笑いも一発ネタなところが強く、往年のジャッキー映画にあったような連続性のあるユーモアを提供するまでには至らない感じは残念です。

一番の譲れない部分は、シリアスな論点に対する決着の付け方。これまでのジャッキー映画は、暴力や死に対してしっかり向き合ってきました。それはきっと映画自体が危険なスタントで構成されているからこそ、そこをぼかしてはいけないと思っていたのではないでしょうか。おなじみのラストのNG集でよく流血場面や救急車で運ばれる場面が映るのは、観客に対して「なんだかんだいっても暴力やスタントはやはり恐ろしいものだ」というメッセージを伝えていたのだと思います。

しかし、本作では作中のストーリーで、迫ってくる理不尽な死や、暴力の対価で失った腕が超技術で復活してしまうため、その重みがすっかり薄れてしまいました。

結局、妙に軽いだけの映画に見えてしまったんですね。

さらにジャンル映画としての勢いも弱く、表面的なSF要素を出すにとどまっているのは不完全燃焼です。それこそ『スカイライン 奪還』のように徹底してジャンル映画に突っ切ってくれれば良かったのですが…。
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年齢という不可避な理由でかつての全盛期ほどの勢いを出せない“ジャッキー・チェン”のアクション面を補うためにVFXを使うのは、最近のジャッキー映画では「あるある」ですが、それがSFというジャンルに手を出すならそれなりの本気でこちらも向き合わないと面白い映画にならないのかな。

これだと「ジャッキー映画の2次創作」みたいなものです。2次創作としても出来が悪いくらいです。

“ジャッキー・チェン”の精神を継承して大発展させている人は、それこそトム・クルーズのような人物がいるわけで、本家である香港映画もやっぱりオリジナルの意地を見せるべきでしょう。
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これは何度も書いていますが、“ジャッキー・チェン”もいつ本当に完全引退するかわからないので、せめてこれぞ大傑作という有終の美を飾るような映画を生み出してほしいなと願っています。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 22% Audience 24%
IMDb
5.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 2/10 ★★

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