第5の波は別にいらなかった…映画『フィフス・ウェイブ』(フィフスウェイブ)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年4月23日
監督:J・ブレイクソン
自然災害描写(津波)
フィフス・ウェイブ
ふぃふすうぇいぶ
『フィフス・ウェイブ』物語 簡単紹介
『フィフス・ウェイブ』感想(ネタバレなし)
予告の派手さは序盤だけ
最初に言っておきましょう。
本作『フィフス・ウェイブ』は、「正体不明の敵“アザーズ”vs人類の壮絶な戦いを描く」と宣伝されていますが、とくに壮絶ではないです。地球外生命体と激闘しません。そもそも地球外生命体の姿が残念すぎるのです(詳細は記事後半のネタバレで)。
また「この映画には津波のシーンがあります」と公式ウェブサイトでも注意表記されているように、ディザスター・パニック要素があるのですが、序盤だけです。というか都市に大津波が襲うシーンが本作で一番派手な見せ場です(しかもそこに主人公は一切絡まない)。
では、この映画のメインは何なのかといえば、あっさりとしたサバイバルと人間ドラマなのです。
全体的に軽い感じといい、いわゆるヤングアダルト系作品であり、近い映画としては最近のものでは『ハンガーゲーム』や『メイズ・ランナー』シリーズがあります。これらの作品が好きな人はぴったりでしょう。ただ、それら他のヤングアダルト系映画以上に、今作のジャンルのごちゃごちゃ感はかなり散らかっていますが…。とりあえず地球外生命体とのバトルやディザスター・パニックを望む人は期待しない方がいいです。
あとは主演の“クロエ・グレース・モレッツ”が好きな人も楽しめる…かも? クロエ・グレース・モレッツは映画全編にわたって登場しますが、如何せんドラマが浅いので魅力は引き出せていない気もします。彼女はこういう映画にも出演するあたり、まだまだ若者人気も強い女優なんでしょうかね。まあ、その、頑張っています。
映画タイトルのとおり地球外生命体による5段階の攻撃(ウェーブ;波)を受けますが、1~4番目は予告映像で明かしており、「第5波とはいったい何のか?」が物語の肝となるはずの本作。「第5波とはいったい何のか?」「人類vsアザーズの最終決戦の行方は?」こうした宣伝文句の答えを知って驚愕(落胆)したい人はぜひ見ましょう。ちなみに日本のモニター試写会では鑑賞者の97%が第5波の正体を観賞中に予想することができなかったらしいです。だから何だよという感じですが…。
ちなみに後半の感想では若干(いやかなりだけど)評価は低めになっているのですが、基本はライトに楽しむ映画ですし、ツッコミながらの鑑賞も含めてのご愛嬌。私もそれくらいはわかっています(言い訳)。
『フィフス・ウェイブ』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):日常は消えた
普通の女子高生キャシーは、普通の友人と一緒に、普通の日常を過ごしていました。
学校の授業でサッカーをしていると、何やらある動画が話題になっているようです。それはすぐにわかりました。
謎の巨大な物体が空を移動している映像。ちょうど地元の上空。家を出るとその空には禍々しいものが浮かんでいました。
最初の10日間は沈黙していました。世間はその物体を「アザーズ」と呼ぶようになりました。不気味に思った住人の多くは引っ越します。クラスの人数は激減しました。
ある日、停電が発生。スマホもつかないです。外では車が激突。ジャンボジェット機が墜落までします。アザーズは電磁パルスで電子機器を破壊。電気も水道も止まったのです。何となく気になっていた同級生の少年・ベンを見たのはあれが最後でした。学校生活はおしまいです。あれが第1波(ファースト・ウェイブ)。
弟のサムと一緒に外で過ごしていた時、第2波(セカンド・ウェイブ)が起きます。地震です。さらに濁流。走って逃げる2人。サムを木の上に押し上げ、キャシーも登ります。
オハイオは湖だけだったからマシでした。海辺の街は大津波で壊滅。高層ビルも容赦なく波に押しつぶされ、島と沿岸都市が消えました。
さらに第3波。鳥インフルエンザの毒性を高め、世界中に拡散させたのです。医療従事者の母は、感染者の友人・リズと離れるように指示。大勢が死亡しました。母も…。
アザーズの目的は何か。父は乗っ取りに来たのだと分析します。家族3人、家を出ることに。
難民キャンプに到着。父は拳銃を渡してくれます。「命が危ないときだけ使え」「安全な場所はもうどこにもない」と。
しばらく後、軍用車両が何台もやってきます。車は動かないはずでは…。降りてきた陸軍大佐のヴォーシュは「ライト・パターソン空軍基地から来ました。救出に」と発言。大喜びな一同。
大人は食堂で説明会。子どもはバスで先に避難します。サムの人形がないので取りに行くキャシー。しかし、バスが先に出発してしまいます。
一方、食堂の大人たちは軍の説明を受けていました。「どうやら第4波が始まったようです。彼らは人間に寄生して操れるようです」「一部はこのキャンプにも紛れ込んでいる可能性も」「皆さんには検査を受けてもらうために別の施設に移ってもらいます」
怒号が起き、民衆は反発の声をあげます。そして発砲も…。
キャシーはその場から逃げます。もう行き場はありません。
第5の波は「退屈」
映画始まって約20分、第1の波(電磁パルスで電子機器がダメになる)、第2の波(地震、そして津波)、第3の波(突然変異ウイルスによる感染症)が立て続けに人類に襲うシーンが描かれます。もう3つも“ウェイブ”が来ちゃったことに驚きですが、この扱いで良かったのかな…。
でも、ここはテンポが良くて映像としての派手さもあるので見やすいです。といっても、ほんととってつけたように唐突ですが。被災者の描写も薄いというか、現実味が全くないのも白けます(ただでさえ私たち日本人はつい最近大地震を経験・目撃したばかりであり、なおさらそういう印象を持つでしょう)。まあ、アメリカ映画ではお約束ですからね、被災描写のテキトー感は。
そしてこれ以降は予算が尽きたのか映像は一気に地味になります。この『フィフス・ウェイブ』の一番の見どころは終わりました。皆さん、ありがとうございました。
まあ、でも何か語らないと…。
クロエ演じるキャシーが独りになってしまいサバイバルしながら基地へ向かうエピソードは、申し訳ないですが、退屈の一言。どうしたって低予算B級映画的な映像に思えてしまいます。結構日数が経つであろうにサバイバルな感じはしません。あげくに途中で知り合った青年とイチャイチャしだす始末で、もはやカップルがキャンプしてるだけでは…。
一方で軍の基地に連れてこられたキャシーの弟のエピソードも展開されますが、こちらも無味乾燥。軍の基地のほうでは、キャシーの片思い相手であったベンが中心となってチームものとして話が進みます。しかし、この即席のチームに何の魅力もないのが残念。実践投入される場面では、映像が暗すぎるし、緊迫感もなし。子どものごっこ遊びを見せられます。なんかこう、なんとかならなかったのか…。
大問題が「第4の波」と「第5の波」。避難所に集められた大人たちが軍から聞かされる「第4の波」。予告では“侵略”と抽象的に説明されていますが、映画のあらすじで「アザーズはすでに人間に姿を変えて社会に紛れ込んでいる」とか解説されちゃってます。もうこの時点で映画のオチが読めてしまうのですが、全くその通りで逆にびっくりです。キャシーを助けた青年エヴァンはアザーズでした、子どもたちを回収していた軍もアザーズでした…。すごく普通な展開です。このようにアザーズは人間の姿でしか登場しないのでエイリアンと戦っている感じもゼロなのです。
そして、このアザーズたちがアホです。キャシーに惚れてしまったらしいエヴァン(ちょろい)。残った人間を殺すため子どもを訓練しているが、絶対に軍が戦う方が良いのに戦略を間違っている軍人たち(災害を起こせるだけの力があったのでは?)。映画タイトルの「第5の波」(子どもたちに残党の人間を狩らせる)は必要ないでしょう。それよりもアザーズに恋愛禁止を徹底させたほうがよかったですよ。
そんなこんなで女に弱いアザーズことエヴァンを手玉にしたキャシーは軍の基地にあっさり侵入、弟を救助に向かいます。片思いだったけどもう割とどうでもよくなったベンと簡単に合流、エヴァンが謎の単独行動をして敵を食い止め、すぐに弟発見、基地爆発です。車が迎えに来て、エヴァンかと思ったら、軍でベンがリーダーをしていたチームメンバーのひとりでした(エヴァンは?)。あっさり終了です。終盤なのに見せ場なしです。「第5の波」はどうしたのか。軍に洗脳された子どもたちがキャシーの前に立ち塞がるとか、何か面白い展開、考えつかなかったのか…。
極めつけは「人類vsアザーズの最終決戦の行方は?」の答えは「続く」ということ。どうやら本作は3部作計画の第1作ということだそうです。でも、アメリカでの評価も低いし、中止になるかもしれませんが。というか、こんな大風呂敷を広げるだけの度胸がよくあったなと。絶対に無理そうだってわかるだろうに…(小声)。
「第6の波」は、そうですね、全部映画の撮影だったことにしましょうか。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 15% Audience 38%
IMDb
5.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★
関連作品紹介
クロエ・グレース・モレッツの出演作品の感想記事です。
・『シャドウ・イン・クラウド』
・『マザー/アンドロイド』
・『ミスエデュケーション』
作品ポスター・画像 (c) 2016 Sony Pictures Entertainment, Inc. フィフスウェイヴ
以上、『フィフス・ウェイブ』の感想でした。
The 5th Wave (2016) [Japanese Review] 『フィフス・ウェイブ』考察・評価レビュー
#ディザスターパニック #侵略SF #クロエグレースモレッツ