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『星の王子 ニューヨークへ行く2』感想(ネタバレ)…誰も望んでいない続編だと!?

星の王子 ニューヨークへ行く2

2作目がやってきちゃいました…映画『星の王子 ニューヨークへ行く2』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Coming 2 America
製作国:アメリカ(2021年)
日本では劇場未公開:2021年にAmazonビデオで配信
監督:クレイグ・ブリュワー
性描写 恋愛描写

星の王子 ニューヨークへ行く2

ほしのおうじ にゅーよーくへいくつー
星の王子 ニューヨークへ行く2

『星の王子 ニューヨークへ行く2』あらすじ

アフリカのザムンダ王国で悠々自適な生活を送っていたアキーム王子が花嫁探しのためにアメリカのニューヨークで大騒動を繰り広げてから早いもので30年。今では夫婦水入らずの幸せな日々を母国で過ごしていた。しかし、自分の息子がアメリカにいるというまさかの事実が発覚して、急遽あのニューヨークに戻ってみる。もしそんな息子が存在するならば自分の亡き後に国王となる王位継承者なのだが…。

『星の王子 ニューヨークへ行く2』感想(ネタバレなし)

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エディ・マーフィ、故郷に帰国?

アフリカは地球最後の成長市場になる…そう期待されて数十年経過。2020年代になりましたが、今のアフリカの現状はそこまで楽観的どおりにはいきませんでした。確かに経済成長はしているものの、他の国と比べれば微々たる値。国土は広く、資源も豊かですが、さまざまな要素が複合的に絡み合い、安定的な基盤を確保できていません。

まあ、もしかしたらワカンダみたいな超大国がアフリカの大地に光学迷彩によってカモフラージュしながら隠れて繁栄を極めているかもしれないですけど。

そんなアフリカを題材にした映画として、おそらく最もポピュラーでカルト的に大ヒットして今なお語り継がれる話題作がありました。それが1988年公開の『星の王子 ニューヨークへ行く』です。

主演は当時『ビバリーヒルズ・コップ』で一躍大ブレイクして絶好調だった“エディ・マーフィ”。彼のコメディアンとしての才能をやりたい放題に引き出した映画だったと言えるかもしれません。

内容は架空のアフリカの国「ザムンダ」の王子がアメリカのニューヨークでなぜか花嫁を探すことになるというもの。そのザムンダという国の描き方がぶっ飛んでおり、もう何て言っていいやら意味不明なのです。「こんなアフリカの国、あるかよ!」というふざけまくりの世界観で、ハッキリ言えば悪ノリが酷いレベルなのですが、当時の“エディ・マーフィ”のコメディはだいたいこんな感じだったので…。

でも結果は大ウケで、コメディ映画としては異例の2億8000万ドル以上の興収を記録。“エディ・マーフィ”の人気をさらに高めたのです。

しかし、それから年月が経ち…。“エディ・マーフィ”の人気は見るも無残に低迷。『星の王子 ニューヨークへ行く』も昔の作品として埃をかぶっていきました。

ところが誰も予想しなかった事態が。「オワコン」状態からまさかのカムバック。2019年に『ルディ・レイ・ムーア』という主演作で“エディ・マーフィ”は批評家から絶賛されたのです。華々しい復活劇でした。

そんな再び軽快さを取り戻した“エディ・マーフィ”の次なる一作はなんと『ルディ・レイ・ムーア』の監督である“クレイグ・ブリュワー”とまたもタッグを組んで、あの『星の王子 ニューヨークへ行く』の続編を作るというじゃないですか。それが本作『星の王子 ニューヨークへ行く2』です。

30年以上ぶりの続編ですよ。あの国、滅んでなかったのか…。

ちなみに1作目の原題は「Coming to America」で、本作2作目は「Coming 2 America」。わかりにくい…。しかも邦題に関しては今回は主人公は王子ではなく国王になり、ニューヨークに行くこと自体に主題はないので、タイトルがややミスマッチになっているのですけど、まあ、しょうがないか。

正直、今さら『星の王子 ニューヨークへ行く』の続編って…大丈夫?…と思ったのも本音。今の社会通念的にもう通用しないノリなんじゃないかとか、心配は尽きない。何より“エディ・マーフィ”の復活がただのまぐれだったと言われないか不安…。

で、その続編の評判は…。うん、まあ、あれです。今回はお祭り映画ということで(ごにょごにょ)。

前作のキャストもフル出演で、前作と同じテンションでバカをしていますので、だいたい予想がつくと思います。相変わらずのセクハラまがいの下ネタも連発しており、このノリがダメな人はとことんダメでしょうけど…。

なお、『星の王子 ニューヨークへ行く2』はパラマウントが制作・配給していたのですが、コロナ禍の影響でAmazonに売却してしまったので、「Amazon Prime Video」での配信オンリーとなりました。劇場では見られないのは残念ですが、家で頭からっぽにして眺めるにはちょうどいいかもしれません。

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『星の王子 ニューヨークへ行く2』を観る前のQ&A

Q:『星の王子 ニューヨークへ行く2』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:前作を見たうえで自分に作品のノリが合うかチェックするのもいいでしょう。ストーリーは完全に前作の知識ありきになっており、それを理解してないと無関係の同窓会に参加してしまったような気分になります。
Q:下ネタは苦手なんだけど…?
A:であれば観ない方がいいかもしれません。全体の3割くらいは下ネタです。というかエディ・マーフィの体が下ネタで構成されているようなものです。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(前作が好きな人は)
友人 ◯(ノリに付き合えるなら)
恋人 ◯(人を選ぶのでやや注意)
キッズ △(下ネタが多め)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『星の王子 ニューヨークへ行く2』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):国はまだ滅んでません!

ザムンダ王国。それはアフリカのどこかにあるかは忘れましたが、とにかく大自然と豊富な資源を無駄遣いしているような国。

その国のアキーム王子はかつて21歳の誕生日を迎えた日、アメリカのニューヨークに世話係のセミを連れて旅だったことがありました。目的は花嫁探しです。国王である父、ジョフィ・ジャファから勝手に伴侶を決められるのにうんざりし、自分で探してくる!と無謀にも異国に飛んで行ってしまったのです。昔はマッチングアプリとかもありませんでした。

クイーンズに到着するもこれまでずっと超裕福な生活をしてきたアキームはこの街の文化に戸惑うばかり。それでもやっとリサという理想の相手と出会い、無事に花嫁にできたのでした。

それから数十年後。大勢の使用人に囲まれて起きる夫婦。アキームとリサの前にいたのは3人の娘。ティナーシェ、オマ、ミーカです。「おはよう、お父様お母様、結婚記念日おめでとう」

そう、今日はおめでたい日。さっそくマクダウェルというファストフード店で新商品の発売を祝しつつ、草しか使ってないハンバーガーと公式ソフトドリンクのペプシで乾杯して、愛の始まりを思い出します。

しかし、水を差す事態が。隣国のネクスドリアの武装兵士が押し寄せてきたのです。その最高指導者にして、アフリカで最大のイチモツを持つイジー将軍は「30年前、姉はあんたに捨てられた。あんたが結婚してくれれば」と恨みを向けます。イジー将軍は自分の息子とアキームの娘・ミーカを婚約させようとしているらしいですが、アキームは「あり得ない」と一蹴。

それでも諦めきれないイジー将軍は「お前には男児は生まれなかった」とアキームを嘲笑います。

ややショックを受けるアキーム。ところが父は予想外のことを言いだしました。

「お前には息子がいる」

え、いつの間に…。その息子だという似顔絵を手にしつつ、セミは正直に白状します。

以前、アメリカに行ったとき、セミは花嫁探しを焦るあまり、クラブでテキトーに女をナンパ。アキームに会わせていたのです。

アキームは思い出しますが、そんな子どもができるようなことは何も…。ハーブを吸わされただけだし、それで意識がぼーっとする中、イノシシが膝の上で荒々しく乗っかってきただけで…。

ヤってしまってた…。ということで「サンダーバードを追え」という意味深なメッセージを与えられ、アキームはアメリカに婚外子がいる事実を知ってしまいました。

父は生きているうちに葬儀をし、息を引き取ります。

「もう一度アメリカにいくぞ」と心に決めたアキーム。どんな人物か確かめないと。

さっそく懐かしいニューヨークの地に再び足を踏み入れたアキームとセミ。すっかり様変わりしていましたが、マイ・T・シャープ理髪店は相変わらず。

そこで得た情報をもとに、チケットを売っている若い男に接近。ラベル・ジョンソンという名前の男。何が何やらよくわかってない様子。

「我が国の王位継承者だ。我が息子」

こうしてザムンダ王国に波乱を告げる人間の実在が判明しました。果たしてこいつは王にふさわしい人間なのか。王国の行く末は。いや、そもそもアキームは国王になれるんですか…? それ以前にあの国に国王は要りますか?

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同窓会だよ、全員集合!

『星の王子 ニューヨークへ行く2』はお祭りというよりも同窓会映画です。懐かしいあの面々が勢揃いしてひたすらにふざけまくるという2時間の濃密な飲み会です。

“エディ・マーフィ”も恒例のように今作でもバンド「セクシー・チョコレート」のランディ・ワトソン、床屋の一同と、一人何役もこなします。吹き替えの“山寺宏一”も本領発揮ですね。

セミを演じる“アーセニオ・ホール”も元気そうで、床屋の従業員、教会の牧師、ババと、こっちも何役も担当して実に大暴れ。

国王を演じた“ジェームズ・アール・ジョーンズ”(ダース・ベイダーの声です)も、90歳ながらエネルギッシュで、生きているうちに葬儀させるのがメタ的な悪趣味ギャグになってました。

ちなみに前作で王妃を演じた“マッジ・シンクレア”は1995年に亡くなっており、作中でも死去したことになっていて気遣うセリフもありましたね。同窓会に参加できなくて残念です。

そんなメンツに混ざるバカ男として、今作ではイジー将軍を演じる“ウェズリー・スナイプス”も相当にアホでした。彼も低迷してましたけど、なんか今作とか観ていると振り切っている感じもする。

また、今作でアキームの息子としてファミリーに加わったラベルを演じたのは“ジャーメイン・ファウラー”。『ホワイト・ボイス』でも活躍している注目のコメディアン俳優です。全然“エディ・マーフィ”には似てないのですけど…。

さらに今作では女性も増量。

リサを演じる“シャーリー・ヘドリー”に加え、アキームの長女ミーカの役として『ビール・ストリートの恋人たち』で名演を披露し、『オールド・ガード』でカッコいいアクションを決めた“キキ・レイン”が参加。いいんですか、このバカ家族に関わって…。

なお、次女を演じたのは“エディ・マーフィ”の実の娘である“ベラ・マーフィ”だそうです。本当に家族じゃないか…。

ラベルが恋をする王室美容師のミレンベを演じるのは“ノムザモ・ムバサ”という人で、南アフリカ出身の若手。私は知らなかったのですが、今後もハリウッドでの仕事が増えそうですね。

ラベルの母を演じた“レスリー・ジョーンズ”はリブート版の『ゴーストバスターズ』でも魅力全開でしたが、さすがのコメディの才能ですね。他の女性はおろか、男性陣すらも圧倒していた気がする。彼女が王になればいいんじゃないだろうか(大変なことになるけど)。

かなり残念キャラなイジー将軍の娘を演じた“テヤナ・テイラー”は、本来はアーティストとしてすごいクールなパフォーマンスを披露している方なので、気になる人は検索してみてください。

前作のときは白人をキャスティングするように強要されたこともあったらしいですが、今回は自由気ままにやれたようで何より。

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アフリカの音楽は本当はカッコいい

『星の王子 ニューヨークへ行く2』のお話としては「割とどうでもいい回りくどい寄り道」です。

基本はその道中でどれだけふざけられるのかというのが売りですからね。風呂での体洗い係とか、ライオンの髭とりゲームとか、割礼ドッキリとか、とにかく脈絡もないマヌケの連続。『ブラックパンサー』風の娘3人との戦闘訓練とかも。

ただ、さすがに前作に合ったアフリカ民族へのお笑いはだいぶトーンダウンして、今回は比較的現代音楽をピックアップしていた感じです。さすがに前作のあれは今やると差別になるのは免れないですからね。私は全然知識がなかったのですが、今回の音楽、「Salt-N-Pepa」のようなアメリカで活躍するヒップホップ・ミュージシャンをゲストに呼んだりしつつ、Def Jam RecordingsとDef Jam Africaによって「Rhythms of Zamunda」も合わせてリリースされており、本場のアフリカ・ミュージックも満喫できるようになっています。

アフリカの音楽と聞くとどうしても伝統民族的なものを連想しますが、今の現代曲は普通にカッコいいんですね。以下は「Rhythms of Zamunda」より「Black And White」。

『星の王子 ニューヨークへ行く2』はそのカッコいいイメージを壊してないのか不安になるんですけど…。

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続編は必要だったかと言われると…

『星の王子 ニューヨークへ行く2』のようなお下劣なコメディは私は嫌いではありません。ただし、今作はやっぱり振り切れていなかった感じもあったと思います。

前作はまだ「異国の者がニューヨークに来てハチャメチャする」という土台があったので面白さを一定はキープしていたのですが、今作はそのニューヨークに行くという行為自体はおざなりになっており(何度も行ったり来たりしている)、ラベルがザムンダ王国でフレッシュな体験をするのもそこまで新しい世界を見せてくれないのでちょっと物足りなかったです。予算は前作の2倍近くはあったはずなのですが、なんだろう、動物のCGとか無理に入れる必要はなかったかな…。

“エディ・マーフィ”は社会&政治的な風刺はしないと言っているのですが、それはそれでいいとして、だとすると今作はものすごく日和った作品に思えてきてしまいます。

しかも、なんだかんだで結局は最後にはミーカ(ちなみにこの名前、アキームの綴りを逆さまにしているだけ)が女王として統治するために法律は変えるというフェミニズムな着地にしているんですから。これだと取って付けたような良い子アピールじゃないですか。

『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』級の攻めを観てしまった後だと、この『星の王子 ニューヨークへ行く2』は温い。

この映画のパンチラインとなる部分としてもっと尖ったものが欲しかったです。例えば、アキームも国王をやめてアメリカの政治家になる!と宣言するオチだとか。

実際のアフリカでは女性の政治的トップが実は多くて、意外かもしれませんがジェンダーの観点からは評価されている面も多いです。そういう意味では「アフリカは女ばっかりだから、もっと男だらけしかいない日本で王様でもやろうかな! 日本って王様いないよね?」くらいのギャグでも良かった…。

ラベルとミルンべの会話で映画トークをしながら、「ヒーローものか、リメイクか、誰も望んでいない続編ばかりだ」とボヤくという自虐ネタがありましたが、『星の王子 ニューヨークへ行く2』は続編としてはまさにあってもなくてもいいような続編だったと言わざるを得ないかな…。けど、映画の存在自体がそんなスタンスですからね。

結論、『バーバーショップ』シリーズは確かに名作だと思います。

『星の王子 ニューヨークへ行く2』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 51% Audience 48%
IMDb
5.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)Images courtesy of Amazon Studios

以上、『星の王子 ニューヨークへ行く2』の感想でした。

Coming 2 America (2021) [Japanese Review] 『星の王子 ニューヨークへ行く2』考察・評価レビュー