消耗品は4回目の使用は控えてください…映画『エクスペンダブルズ4 ニューブラッド』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2024年1月5日
監督:スコット・ウォー
交通事故描写(飛行機) 性描写
えくすぺんだぶるず にゅーぶらっど
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』物語 簡単紹介
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』感想(ネタバレなし)
消耗品も引退なのか?
人気になれば低迷もある。何のことか?
今回は“シルヴェスター・スタローン”のことです。
1976年の『ロッキー』で主人公とシンクロして実人生も栄光の階段を駆け上がった“シルヴェスター・スタローン”はしばしハリウッドの成功者の代表となりますが(ドキュメンタリー『スライ: スタローンの物語』を見よう)、徐々に低迷。90年代後半から00年代前半にはすっかり落ちぶれたなんて言われたりもしました。
しかし、2006年の『ロッキー・ザ・ファイナル』、2008年の『ランボー/最後の戦場』と、自身の象徴的シリーズの最新作を自らの監督さばきで引っ提げて、半ば開き直りの境地に到達。その究極系を突き詰めた当時の新作が『エクスペンダブルズ』(2010年)でした。
『エクスペンダブルズ』は「消耗品」と自称する男たちがチームを組んでミッションに挑むアクション映画で、“シルヴェスター・スタローン”と同類のようなキャリアを持つ俳優が結集した“自虐的”お祭り映画の様相でファンも大盛り上がりな熱い一作。
この勢いのままシリーズ化され、『エクスペンダブルズ2』(2012年)、『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(2014年)と続いていきました。
しかし、今や人気復活というよりは自分のキャリアの幕引きをいかに綺麗にするかを考える時期になっているのかもしれません。『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)、『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年)と、世代交代&引退を印象付ける作品が続いています(『大脱出2』?『大脱出3』? なんのこと?)。
そんな最近の“シルヴェスター・スタローン”がついに『エクスペンダブルズ』シリーズにもケジメをつけるときがきました。
それが4作目となる本作『エクスペンダブルズ ニューブラッド』。
第4作です。「エクスペンダブルズ4」です。正直、4作目を作る気がまだあったことに驚いている…。
今作ではおなじみの“シルヴェスター・スタローン”、“ジェイソン・ステイサム”、“ドルフ・ラングレン”、“ランディ・クートゥア”などの旧メンバーに加え、新メンバーも大量追加しています。
まずは『マッハ!!!!!!!!』で注目を集めて『モンスターハンター』などハリウッドに続々進出しているタイからのファイターである“トニー・ジャー”。次に、ラッパーで俳優業もノリノリでこなす“カーティス・50セント・ジャクソン”。そして『ローグ』ではライオンと戦って『ティル・デス』でも窮地での生存本能をみせた“ミーガン・フォックス”も攻撃力高めで参戦。他には『バッドボーイズ フォー・ライフ』の“ジェイコブ・スキピオ”、『Secret Headquarters』のベトナムの“レヴィ・トラン”などもいます。
さらに今作の悪役は、『ザ・レイド』『スカイライン 奪還』『シャドー・オブ・ナイト』『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』とアクションを惜しげもなく披露してくれているインドネシアの“イコ・ウワイス”です。
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』の監督は、『ネイビー・シールズ』(2012年)や『ニード・フォー・スピード』(2014年)を手がけた“スコット・ウォー”。2023年は米中合作映画の『プロジェクトX-トラクション』なんかにも参加していました。
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』の話の中身はあまり言及するとネタバレがすぎるので控えますが、今作はいろいろ…。まあ、そこは後半の感想で…。
なお、今作は「R15+」指定になっており、少し残虐描写が登場しているのですが、ほんのピンポイントな扱いなので、そこはあまり期待しない方がいいと思います。
“シルヴェスター・スタローン”がどうなっちゃうのか…という点だけ眺めていてください。
ちなみに、一応あんな事故があったばかりなので書いておきますけど、本作は飛行機墜落とその出来事による死体の描写があります(ちょっと悪ふざけなノリがあるのでタイミング的に不謹慎に見えるかも)。
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』を観る前のQ&A
A:とくに前作を観ないとわからないということはありません。
オススメ度のチェック
ひとり | :シリーズ好きなら |
友人 | :ファン同士で |
恋人 | :興味あるなら |
キッズ | :やや暴力描写が過激 |
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):エクスペンダブルズ大失敗
リビアにある軍兵が厳重に警備している施設に、突如、攻撃ヘリが空から舞い降り、強襲を仕掛けてきます。不意の事態に軍隊も対処できません。一気に武装車両まで乱入してきて、あっという間に占拠されてしまいました。
そこに現れたのは、傭兵のスアルト・ラフマト。この大胆な攻撃の中心的人物です。
一方、傭兵部隊「エクスペンダブルズ」を率いているバーニー・ロスはある人物のもとにバイクで向かっていました。それは仲間であるリー・クリスマスの家です。
リーは恋人のジーナと揉めていたようですが、とりあえずバーに連れて行きます。相変わらず腕前は鈍っておらず、荒くれ者たちを軽快に殴りつけていくリー。バーニーも豪快に向かってきた大男を投げ飛ばします。
再び傭兵部隊「エクスペンダブルズ」を再結成しないといけない案件が舞い込んできたようで、集合場所へと移動します。
そこにいたのは、おなじみの仲間であるガンナー・ヤンセンとトール・ロード。調子はいつもどおりです。
さらに新顔もいました。イージー・デイ、ガルゴの息子であるガラン…。血気盛んでやる気じゅうぶん。
揃ったところでCIAのマーシュが説明します。スアルト・ラフマトのプロフィールを見せてきて、この男が核弾頭のコードを盗みだそうとしているとのこと。第3次世界大戦の危機だそうで、状況は一刻を争います。また、オセロットというテロリストと共謀しているらしいです。
さっそく航空機でターゲットのいる場所へ向かいます。しかし、対空攻撃を受け、フレアで回避しつつ、滑走路に一瞬だけ着陸して車両を降ろすという、いきなりの修羅場となります。
ガンナーは狙撃を試みるも、外してしまい、リーたちが車で追うことになります。その間も対空ミサイルが執拗にバーニーの操縦する航空機を襲います。
そうこうしているうちに直撃を受けたバーニーの航空機。車両アタックでミサイルを破壊するリーでしたが、時は既に遅く、航空機は仲間が見ている中、炎上して墜落。ラフマトは退避してどこかへ消えました。
リーたち仲間が駆け付けるも、バーニーの指輪をした無惨な焼死体がコクピットにあるだけで、残りの「エクスペンダブルズ」は言葉を失います。
失敗に終わってしまった作戦に意気消沈しながら、なじみのバーでの弔いを済ませている中、このミッションはジーナが引き継ぐと知って、リーは憤慨。リーにとってはバーニーのいない「エクスペンダブルズ」は考えられません。
リーはチームを抜けて、ひとりで生計を立てていましたが、やはりバーニーの無念を晴らすためにも、あのラフマトを追うことにします。そこで別のツテを頼ることに…。
ジェイソン・ステイサムの映画では?
ここから『エクスペンダブルズ ニューブラッド』のネタバレありの感想本文です。
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』は開幕はいつものノリです。全く変わらないテンションで「エクスペンダブルズ」が現場に向かい、雑すぎるだろうという乱暴な作戦で特攻し…。
しかし、バーニー・ロスがまさかの墜落炎上死で遺体となって発見されます。とは言え、もうこれはどう考えても死んでいないのがバレバレなので、完全に前振りです。
ただ、肝心のバーニーが表向きは退場したまま本題のストーリーに入るので、“シルヴェスター・スタローン”は以降はでてきません。最後だけやけにしてやったりな満足顔でご登場しますが…。こうなってくるとほぼ“ジェイソン・ステイサム”の映画ですよね。
見せ場的にも“ジェイソン・ステイサム”が単独で張り切っているシーンが非常に多く、他のメンバーの出番はかなり少ないです。チーム戦になる展開も序盤を除くと勢いが乏しいです(大失敗してるし…)。
正直、インフルエンサーのボディガードするくだりとか、ジーナとのセックス風取っ組み合いとか、このシーンいるのか?という場面も“ジェイソン・ステイサム”絡みではかなり多いのですけど…。
こうなってしまうと本作は『エクスペンダブルズ』シリーズと言っていいのか?と憤慨する人がでてきてもおかしくはない…。
実は本作はもともとは“ジェイソン・ステイサム”主演の別映画の脚本を一部流用して作っているそうで、こういうことはこの手のジャンル映画界ではよくあります(せっかく脚本の使用権が手元にあるので使っちゃおうみたいなノリ)。
本作の場合はそういう背景もあるせいか、今回、“ジェイソン・ステイサム”製作でもあり、“シルヴェスター・スタローン”はそんなに製作面でも目立っていません。“シルヴェスター・スタローン”的には本作で退場するつもりのようで、“ジェイソン・ステイサム”に製作の主導権も譲るつもりなのかな。
最近の“ジェイソン・ステイサム”は『オペレーション・フォーチュン』など自身の製作映画を持ち始めているので、やっとこの起用されまくっていたアクション・スターも自分のクリエイティブの権限を底上げできる立場に到達したのかもしれません。
“ジェイソン・ステイサム”も“シルヴェスター・スタローン”とはまた違う、キャリアの苦労人としてコツコツ頑張ってはいる人だったですからね…。
コンセプトが焼死している
シリーズものがある特定のタイミングで世代交代を軸にする作品を作るのはよくある話。でもこの『エクスペンダブルズ ニューブラッド』についてはそれは少々上手くいっていないかもしれません。
そもそも前述したとおり、このシリーズは“シルヴェスター・スタローン”を始めとするややひと昔前に持て囃されるも今や陰になっていたマッチョイズムな男優たちが結集した“自虐的”お祭り映画というコンセプトが大前提にありました。
ところがさらに年月が経ち、“アーノルド・シュワルツェネッガー”なんかは踏ん切りがついて身を引いてしまったし、“ブルース・ウィリス”にいたっては健康面で俳優業を引退したり、もう自虐すらできない感じになってしまいました。
だから世代交代は急を要するのですが、世代交代は3作目の『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』でもすでに手を付けています。しかし、4作目はその3作目の新生「エクスペンダブルズ」の若手は一切無かったことになり、またメンバー集め直しをしているんですね。だから本当にその場しのぎで、しかもコンセプトすら曖昧なままの座組になっているのです。
あの本来のコンセプトはあの時代を経験した俳優にしか味わいをだせないものだったので、あのまま受け継ぐのは無理でしょう(消耗品呼ばわりされたい俳優もなかなかいないだろうし…)。だとしたら新しい魅力的なコンセプトを打ち出すしかないのですが、そこを思いつけないまま見切り発車しちゃっています。
他のシリーズ作品を観ると、『ワイルド・スピード』は「ファミリー」というコンセプトを全面に掲げることで、新メンバー加入も馴染ませ、シリーズの原動力としています。
でもこの「エクスペンダブルズ」というチームはそういうファミリーっぽい絆も薄いですし、逆に寄せ集めの雑さを味にしていたくらいですので、今さら急転換もできません。
こうやって考えると、この「エクスペンダブルズ」シリーズって、相当に世代交代の難易度が高いシリーズですよね。
“ジェイソン・ステイサム”を新たな主軸にするにしても、その今まで一匹狼なスタイルだった俳優と組み合わせて楽しい化学反応を生み出せる俳優を見つけてくるのは至難の業。
個人的には悪役も大事だと思っていて、今回はせっかく“イコ・ウワイス”を起用しているのに、あまりアクション方面で楽しませてくれる決闘が薄かったなとも思います。あの“イコ・ウワイス”とガチでやり合える俳優もまたなかなかいないんですよね…。
旧俳優が真面目に引退してしまうと、旧キャラが復活しました!みたいなベタな盛り上げの技も封じられますし…。作中でも“トニー・ジャー”もいいんだけど、あそこは理想としては旧キャラが満を持して登場してくれるとアツかったですよね。
当の“シルヴェスター・スタローン”は『タルサ・キング』(2022年~)など自分の新しい作品を作れているのでまだ悠々自適。スタローンは生涯現役で俳優してそうだな…。
今度は“ジェイソン・ステイサム”はデカいサメと戦うとき、スタローンも誘えばいいんじゃないでしょうか(スタローンは別の映画でサメの声も演じてたけど)。
『エクスペンダブルズ』シリーズはひとまず保留かな…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 14% Audience 71%
IMDb
4.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
関連作品紹介
シルヴェスター・スタローン出演の作品の感想記事です。
・『サマリタン』
作品ポスター・画像 (C)2022 Ex4 Productions, Inc. エクスペンダブルス
以上、『エクスペンダブルズ ニューブラッド』の感想でした。
Expend4bles (2023) [Japanese Review] 『エクスペンダブルズ ニューブラッド』考察・評価レビュー
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