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『フリー・ガイ』感想(ネタバレ)…ライアン・レイノルズの人生論がモブを輝かせる

フリー・ガイ

ライアン・レイノルズの人生論がモブを輝かせる…映画『フリー・ガイ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Free Guy
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年8月13日
監督:ショーン・レヴィ
恋愛描写

フリー・ガイ

ふりーがい
フリー・ガイ

『フリー・ガイ』あらすじ

フリー・シティという賑やかで物騒な街で、いつもマイペースに生きているひとりの男。銀行の窓口係として強盗に襲われる毎日を繰り返していたが、そんなことを気にしたこともなかった。しかし、ある女性に心を奪われて惚れこんでしまったことで日常に疑問を抱きはじめる。ついに強盗に反撃した彼は、この世界はゲームの中であり、自分はただのモブキャラだということに気づく。それで…何をすればいい?

『フリー・ガイ』感想(ネタバレなし)

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ライアン・レイノルズ(モブ)

映画も進化しているようにゲームも進化しています。さすがにゲームと聞いてインベーダーゲームしか想像できない人はもういなくなったと思いますが、いまだにファミコンやゲームボーイの時代しか知らない人もいるかもしれません。

最近のゲームはそれはもうリアルで、実写と見間違うかのような映像クオリティの世界を自由に操作して遊べたりしますし、その世界観もオープンワールドと呼ばれるように広大なものもあります。その世界を多人数でプレイする瞬間はたまりません。キャラクターの表現も格段に向上し、繊細な表情変化も感じとれるものになりました。近年はVRの登場で映像体験が異次元の没入感に突入しましたし、おそらく今後も映画以上にインタラクティブに進化し続けるでしょうね。

こうやって考えるとゲームは明らかに映画よりも優れたポテンシャルを持っている部分があって、それはプレイヤーとの関わりが密接ということ。映画はなんだかんだ言って観客は座ってスクリーンを観ているだけです(応援上映なんかを除けば)。しかし、ゲームは違います。プレイヤーが操作することが始まりです。このシンクロはゲームならではであり、映画にはまずマネできません。

そんな映画がゲームを題材にする…といってもゲームの映画化ではありませんよ…ゲームの構造を題材にするということがあり、つまり主人公がゲーム的な世界に投入されてキャラクターになるというスタイルです。これは私に言わせれば「ゲームに憧れた映画が最大限にできるマネごと」なんだと思っています。

ここ最近だと『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』『レディ・プレイヤー1』がまさにそれど真ん中の映画でしたね。この手の作品は若者の共感性も高く、トレンドなのでしょう。

そしてここにまたひとつ新たなゲーム風の映画が誕生しました。それが本作『フリー・ガイ』です。

本作を語るならやはりこの男を手始めにしないといけません。“ライアン・レイノルズ”です。『フリー・ガイ』で主演、さらには製作にまで関わっている彼は、基本的に近年の出演作『デッドプール』『名探偵ピカチュウ』『6アンダーグラウンド』でもわかるように、思う存分自虐的かつ何でもネタありでふざけまくっているものばかりなのですが、この『フリー・ガイ』もやってくれました。

ストーリーは単純で、ゲームの世界だと知らずに生きるモブキャラがその事実に気づいてしまうというアイディア…それ一発です。“ライアン・レイノルズ”がモブキャラという時点ですでにギャグなんですけどね…。そこからさらに“ライアン・レイノルズ”を最大級にふざけまくらせるために用意された好都合すぎる独壇場が用意されていて…。完全に「俺だけのマルチバース」が形成されている…。

共演は、ドラマ『キリング・イヴ Killing Eve』で大絶賛された“ジョディ・カマー”。今作『フリー・ガイ』で新規にファンになる人も続出しそうなくらいに魅力全開です。他にも大人気ドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の“ジョー・キーリー”、『ゲット・アウト』『ファザーフッド』の“リル・レル・ハウリー”など。

さらに『マイティ・ソー バトルロイヤル』の監督としても有名な“タイカ・ワイティティ”もクセがありすぎるキャラクターで暴れています。

ちなみに“ライアン・レイノルズ”演じるデッドプールと“タイカ・ワイティティ”演じるコーグのマーベル・キャラのコンビが『フリー・ガイ』の予告編リアクション動画があって、爆笑の内容になっているので、観ていない人はぜひ(ディズニー作品の毎度恒例にしてほしい)。

『フリー・ガイ』の監督は『ナイト ミュージアム』シリーズや『ストレンジャー・シングス 未知の世界』でおなじみの“ショーン・レヴィ”。わちゃわちゃした作品が得意ですね。

正直、『フリー・ガイ』、そんなに私は期待していなかったのですが、予想以上にストレートながら今に響く大切なメッセージを伝える映画で感心しましたし、実写のゲーム風の映画の中では一番に好きかもしれないです。

とにかくカメオ出演やらイースターエッグやらが多くて情報量過多なのですが、だからこそみんなで鑑賞して発見を語り合うのも楽しい、この夏ベストのエンタメ映画です。

オススメ度のチェック

ひとり 4.5:モブだと思っているあなたに
友人 4.5:ネタを語り合える友と
恋人 4.5:ロマンスもたっぷり
キッズ 4.0:子どもみたいな大人主役だし
↓ここからネタバレが含まれます↓

『フリー・ガイ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):あなたはただのガイです

フリー・シティ。このビル街で、銃撃を受けながらも颯爽と車を走らせる「サングラス・ピープル」。こいつらはいつも超カッコよくて、美女を連れて華麗に敵を倒す。ヒーローです。

そのサングラスの人たちが活躍するすぐ近くの横のビルの一室で目覚める男。名前はガイ。今日も同じ服、美味しい朝食、美味しいコーヒー。これがガイの毎日。

親友のバディと一緒に銀行で働いており、バディは警備員、ガイは銀行窓口係。そこに銀行強盗が乱入。でも2人は慣れた感じで伏せて会話を続けます。これも日常。

いつもの騒動の後にガイがバディと並んで外を歩いていると、サングラスをかけた女性が颯爽と横を通りすぎ、ガイは目を奪われます。思わず話しかけてしまうガイ。一瞬振り向くその女性。立ち去るその女性の後ろ姿にうっとり釘付け。ガイはバディの制止も聞かず、追いかけて…乗り物に轢かれました

またベッドで目覚めるガイ。いつもの朝、いつものコーヒー。何か違和感…。

出社。また銀行強盗。伏せる。しかし、ガイは考えます。何か違う。するとふとあの女性が窓の向こうに見えました。反射的に立ち上がったガイ。銀行強盗の銃を持ったサングラス男に話しかけると、ボコボコにされてしまいます。ところが思わず抵抗してしまい、銃を奪い取って発砲して吹き飛ばしてしまいました。手には相手のサングラスだけが残り…。

外に出てその置き土産のサングラスを何気なくかけると…。びっくり。風景が一変。今まで見えていなかった光景が目の前に出現。地面にピコピコ浮いているものがあって、触ると変な感じ。近くで別のサングラス人間が死亡し、なぜかガイにおカネが手に入ります。一気に自分の所持金が増加。今までは働いても全然増えなかったのに…。

困惑したまま街をうろついていると、そこに警官風の男謎のウサギ人間が近づいてきます。話はさっぱりわからないです。ゲームがどうとか…。

ガイは知りませんでした。実は自分が「フリー・シティ」というスナミ社が開発・運営しているオンライン・ゲームのモブキャラ(NPC)で、このゲームの中だけにしか存在しないということに…。

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遊び放題のやりたい放題

『フリー・ガイ』の基になっているゲームは「グランド・セフト・オート」「フォートナイト」だと思われ、要するに特定の空間の中で暴力何でもありで暴れまわる系のゲームです。

バイオレンス満載ですから、このガイが暮らす「フリー・シティ」もそれはもうカオス。爆発は日常茶飯事だわ、戦車は走り回るわ、謎のメカも動いているわ…収拾がつきません。

それでも日常を過ごしているガイとのギャップで序盤は観客の心を掴み、サングラスをかけてからのいちいちオーバーリアクションなガイの仕草に腹を抱える。

思えばこれはゲームをしている人ならわりと思うことでした。モブキャラのシュールさというもの。明らかに大変なことが起きても、プログラムどおりにしか動かないからときおり変な挙動になってしまうとか。そういうゲームあるあるを組み込んでおり、それが“ライアン・レイノルズ”という最強の素材で最高に楽しく弄ばれていきます。

終盤は本作がディズニー作品だからこその“誰しもが思いつきそうな”展開をあえて素直にやっちゃうというアホさ。20世紀フォックスの合併をいいことに「マーベル」と「スター・ウォーズ」の公式ネタで遊んじゃった奴と言えば『シンプソンズ』でしたけど、“ライアン・レイノルズ”もそこに加わっちゃいましたよ。でも“クリス・エヴァンス”までチラ見せしてくるとは思わなかった…。『アベンジャーズ エンドゲーム』以後の出演がこれでいいのかって感じですけど…。

他にも本作にはカメオ出演がたくさん。“チャニング・テイタム”のムキムキだったかつての時代で登場してくるあたりもマヌケでしたし、“ドウェイン・ジョンソン”“ヒュー・ジャックマン”の出演も豪華な無駄遣いという感じで…。

こういう何でもありなネット世界観はディズニーなら『シュガー・ラッシュ オンライン』でも見ましたけど、こっちの『フリー・ガイ』はそのレーティング高めバージョンでした(といっても全年齢対象ですけどね)。でも、何度も言いますが本作は“ライアン・レイノルズ”だから面白くなっている部分が8割を占めると思います。“ライアン・レイノルズ”で遊んでいるのか、“ライアン・レイノルズ”が遊んでいるのか…。

残りは“タイカ・ワイティティ”ですよ。この人ももう歯止めゼロの暴れ放題で、きっとアドリブしまくりなんだろうなということだけはわかるという…。“ライアン・レイノルズ”と組ませたらヤバイな…。

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存在感を与えられたギークな女子

『フリー・ガイ』のヒロインとして登場するのがモロトフ・ガールことミリーです。

これがまた主人公以上に魅力的なキャラクターになっており、“ジョディ・カマー”の才能が炸裂ですね。ゲーム内のキャラクターとしては定番のクールな存在に見えつつ、リアルの姿が最初に映しされたときの、こう何とも言えない素。極端にダサいとかではないけど、まあ、いるだろうなという現実。言ってしまえば、ギークそのもの。

笑ってしまうのが、ミリーがガイとキスをする場面で、その実際はゲーム内で起きているキスが映画内で映し出された後にリアルのミリーが映って、これがまた微妙な困惑とドン引きの中間の顔で硬直している。確かに予期せぬキスシーンがゲーム内で始まったらああいうリアクションになりますよ…。

そこからのキーズに「あれ、NPCだよ」と教えてもらった後の「え、私、キスしちゃったけど」という反応が何ともシュールで。あのキョドっている感じは間違いなくオタク。

“ジョディ・カマー”はこういう二面性を持つキャラクターを演じさせると本当に上手いですね。ゲーム・キャラクター状態でのアクションはまさしくうっとりするほどにクールなのに、反面、リアルのオタク的な隙の多さは滑稽で…。

また、こういう女性のギークを描くのはまだまだ珍しいもので、そんな彼女がゲームのデザイナー兼プログラマーとしてキャリアを取り戻すというストーリーも思わず応援したくなります。

今作で“ジョディ・カマー”にメロメロになった人はぜひドラマ『キリング・イヴ Killing Eve』を観ようね。弄ばれますよ。

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劣等感を素直に克服するモブ男子

そして『フリー・ガイ』の主人公、いやモブキャラ?…なガイを演じた“ライアン・レイノルズ”。ふざけまくっているだけのようですが、実際はかなりストレートに大事なメッセージを発信していたと思います。

物語としては『トゥルーマン・ショー』でありつつ、演出的には『LEGO ムービー』にかなり近いものでした。何でもない存在が“何者でもない”ことの大切さに気づき、それが周囲にもプラスの影響を波及させていくという…。

そしていわゆる“男らしさ”の脱却の話を本作『フリー・ガイ』でもしているわけです。『レゴ ムービー2』も同じでしたけどね。

『フリー・ガイ』では前半は結構ベタな男女ロマンスを突っ走るために、これはこのままお約束のハッピーエンドなのかなと思いきや、ラストで意外にも“ライアン・レイノルズ”は舞台を降ります。ここが本作の一番の良さだと私は感心しました。類似の『レディ・プレイヤー1』は“理想の彼女”を獲得することがオタク的モブ男子のゴールになっていて正直残念だなと思ったのですが、この『フリー・ガイ』はそうはならない。

結局のところ、ガイは“女の獲得”でも“ムキムキになる”でもない、この限られた世界での意味を見出します。それは「自分なんてどうせモブなんだ」と劣等感に沈んでいる自称モブ男子にポジティブに伝える人生のテクニック。「人生、楽しんだもの勝ちでしょ?」「人生つまらないって言う前に、この世のエンタメを全部遊び尽くすくらいしよう!」…そんな快活さとともに最高の友人と最高の世界に繰り出していく。

こうやって一部の男子を救う世界を提示できるというのはやっぱりいいなと。昨今の日本のアニメ映画を観ているとまだまだ「女性に救ってもらいたい願望」が強いものが多く、日本の現実社会を見てもそう考えている男性もチラホラ見られ、それが憎悪化して取り返しのつかない事態を引き起こしたり…。そんな今において、『フリー・ガイ』のネクスト・ステージに軽快に踏み出している終幕は「これでいいんだよ」という納得がありました。

全てを手に入れないと主人公になれないわけではないのです。誰かの人生を幸せに導く最高のモブキャラという生き方も楽しいものじゃないですか。

『フリー・ガイ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 81% Audience 95%
IMDb
7.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)2021 20th Century Studios. All Rights Reserved. フリーガイ

以上、『フリー・ガイ』の感想でした。

Free Guy (2021) [Japanese Review] 『フリー・ガイ』考察・評価レビュー