ガメラはアニメでノスタルジーに籠る…アニメシリーズ『GAMERA -Rebirth-』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:日本(2023年)
シーズン1:2023年にNetflixで配信
監督:瀬下寛之
児童虐待描写
GAMERA Rebirth
がめら りばーす
『GAMERA Rebirth』あらすじ
『GAMERA Rebirth』感想(ネタバレなし)
令和にガメラも帰還
今や日米で大暴れの大怪獣「ゴジラ」。
日本では2016年の『シン・ゴジラ』で久方ぶりに大衆に熱狂が巻き起こり、アニメシリーズも作られつつ、2023年は“山崎貴”監督の『ゴジラ-1.0』でまたもフィーバーなるかと期待が高まっています。
アメリカでは2014年の『GODZILLA ゴジラ』以降、「モンスター・ヴァース」というシリーズで盛り上がりを見せ、映画やドラマで展開は拡大し、2024年も『Godzilla x Kong: The New Empire』が待機中。
私も怪獣好きなので「ゴジラ」が盛況なのは嬉しいのですが、でも日本にはもう1体、有名な怪獣がいるのを忘れるわけにはいきません。「ガメラ」です。
早い話が“でっかい亀”の怪獣である「ガメラ」。その初出現は1965年。「ゴジラ」の11年後です。当時は「ゴジラ」の成功によって日本の各映画会社がどんどん怪獣映画を作りだしていましたが、その中でも頭ひとつ飛びぬけることができたのが大映の「ガメラ」でした。
1作目の『大怪獣ガメラ』に始まり、毎年新作が作られ、第7作となる『ガメラ対深海怪獣ジグラ』(1971年)まで続きます。少し間があいて1980年に『宇宙怪獣ガメラ』が制作され、これが俗に言う「昭和ガメラ」シリーズのひと区切りとなります。
続いて動きが起きたのが1995年。配給は東宝に移り、『ガメラ 大怪獣空中決戦』から、『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)、『ガメラ3 邪神覚醒』(1999年)と、「平成ガメラ」3部作が生み出され、特撮ファンの中でもとくに高評価を獲得。4作目を望む声も多かったですが、興収が芳しくなく、シリーズは終了します。
そして2006年、「ガメラ」生誕40周年作品として『小さき勇者たち〜ガメラ〜』が松竹配給、角川ヘラルド映画(現在の「KADOKAWA」)制作で作りだされたりもしました。ただ、これは一発限りの映画で、それ以降はすっかり「ガメラ」の活動は鳴りを潜めてしまい…(生誕50周年記念映像とかは作られたりしたけど)。
そんな中、本当に長い冬眠から目覚めるように、2023年、「ガメラ」がまたも覚醒しました。
それが本作『GAMERA Rebirth』です。
今回は初の本格的なアニメシリーズとなっており、コンセプトとしては「ゴジラ」のCGアニメ3部作となった『GODZILLA 怪獣惑星』『GODZILLA 決戦機動増殖都市』『GODZILLA 星を喰う者』に近いです。それらよりも『GAMERA Rebirth』は過去作を結集させてアニメで表現したようなスタイルになっています。
監督は『BLAME!』やアニメ『GODZILLA』3部作、『ルパン三世VSキャッツ・アイ』などを手がけてきたベテランのCGディレクターでもある“瀬下寛之”。
ということで『GAMERA Rebirth』は往年の「ガメラ」ファンほど、「そうそう、ガメラはこうだった」というノスタルジーを強く刺激するものになっています。ファンなら「ここのシーンや展開はあの映画っぽいな」と自然に連想できるでしょう。
もちろん怪獣プロレスがメインで、怪獣同士の戦いはたっぷり見れますし、登場する怪獣も「昭和ガメラ」の敵怪獣が勢揃いして連戦していく大盤振る舞い。そのせいか雰囲気としては『宇宙怪獣ガメラ』的なのですが、あちらは過去作の映像を使い回して編集して新作風に見せていましたが、『GAMERA Rebirth』は当然アニメーション化して創造し直しているので、新鮮さは上です。
ファン目線で紹介してしまいましたが、「ガメラ」を1度も観たことがないという初心者でもこの『GAMERA Rebirth』はファーストコンタクトとして敷居は低いと思います。
『GAMERA Rebirth』は「Netflix」で独占配信され、全6話(1話あたり約45分)。あの懐かしきガメラの咆哮を一緒に聞きましょう。
『GAMERA Rebirth』を観る前のQ&A
オススメ度のチェック
ひとり | :暇つぶしにでも |
友人 | :怪獣好き同士で |
恋人 | :趣味が合うなら |
キッズ | :子どもでも楽しく |
セクシュアライゼーション:一部あり |
『GAMERA Rebirth』感想(ネタバレあり)
あらすじ(序盤):その名はガメラ
夕日沈む浜辺でひとり座る少年。あだ名はボコ。「ミッション・コントロール。こちらボコ。ジョー、聞こえる? 来年の夏もあの隠れ家に集まって思い出話とかしてさ。みんなで笑い転げてるってジョーもそう思ってただろ? 最後の夏休みだっていうのに。ホントわけわかんねぇことばっかだったよな」…そうコンパクトな端末に呟き、空を見上げます。
「今度は俺たちであいつを守ろうぜ」
そのしばらく前、ニューギニアにあるユースタス財団の採掘基地にて、防護スーツを装備して地下深くへゆっくり降下していく調査隊の姿がありました。底に降り立つと調査員の悲鳴が…。そこには卵から生まれたばかりの無数の空飛ぶ生物が…。
ところかわって日本の極東米空軍・福生基地。そのすぐ近くで小学6年生の同級生同士のボコとジョーとジュンイチが無線機器を見物していました。ジュンイチは「アポロ計画が月資源開発計画に変わってもう20年です。これはきっと軍部の陰謀が…」といつもの口調で語り、他の2人は聞き流します。ボコはまだ自転車に乗れないのでジョーの後ろです。
3人の秘密基地で貯めたおカネを確認。8400円足りないです。これでは夏休みが終わってしまう…。しかし、ジョーはおカネを追加。これで買えます。
「これでボコが引っ越してもいつでも会話できる」
そのときジュンイチが沼の木の根に引っかかったカメを発見。ボコは危険覚悟で助けに行きます。それは結構大きめのカメで、逃がしてあげました。
ボコは帰宅。母が帰ってきて、私立の学校へと進学するために勉強しないといけないことを指摘し、「ずっと友達なんてことは幻想」と辛辣です。
一方、西新宿の裏路地で警官が何かを見つけていました。それは不気味な飛行生物…。
次の日、ボコたちは店の前で外国人の子どもたちの集団に遭遇。カネを巻き上げるつもりのようで、見下してバカにされます。そのリーダー格のブロディがジョーを殴りカネを奪い、ボコも殴られてしまい、喧嘩のすえに撤退。ボコは「取り返そう。1年かけて貯めたおカネだ」と言い、3人で作戦を練ることにします。
夜、3人はゲーセンに向かう、そこであのブロディと対面。睨み合いになった瞬間、揺れを感じ、外に出ると空が赤くなっており、戦闘機も飛んでいました。
父が軍人であるブロディは実戦だと察して走り出し、高いところへ。街の一部が炎上し、飛行生物の群れが人を食べている恐ろしい光景が遠くに見えました。戦闘機も歯が立たない様子です。
さらに超巨大飛行生物が現れ、街を破壊していきます。ボコたちの前にも小型の飛行生物が降り立ち、慌てて必死に逃げます。
もうダメかと思ったそのとき、どこからともなく巨大な亀の生物が現れて、あの飛行巨大生物に戦いを挑み、倒してしまいました。
あっけにとられるボコ、ジョー、ジュンイチ、ブロディ。
そこにユースタス財団のエージェントであるジェームズ・タザキとサポートサイエンティストのエミコ・メルキオリがヘリから降りてきて、驚くような誘いをしてきます。
永遠に刻まれる思い出がここから始まることに…。
STAND BY ME ガメラ
ここから『GAMERA Rebirth』のネタバレありの感想本文です。
『GAMERA Rebirth』は歴代の「ガメラ」過去作からサンプリングして組み合わせながら物語や世界を構築している面が大きいです。ある意味では、「ガメラ」過去作の良いとこどりで集結させたようなもので、ゆえにノスタルジックな刺激を自然と発します。『STAND BY ME ドラえもん』ならぬ『STAND BY ME ガメラ』ですよ。
まず子どもたちのジュブナイルが軸になっているあたりは「昭和ガメラ」を踏襲していて、これは『小さき勇者たち〜ガメラ〜』でリトライされたことの、アニメ版の再挑戦とも言えます。
日本の子どもたちが、在日米軍司令官の息子であるブロディ(本名ダグラス・ケン・オズボーン)という外国人と触れ合って子どもながらに交流していくという展開も、「昭和ガメラ」の伝統である外国人子ども交流要素をなぞっています(4作目の『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』からその傾向が固定化し、その背景にはアメリカでのテレビ放映契約ありきの制作がありました)。
ハリウッド的に言えば『グーニーズ』みたいなものです。
次にユースタス財団が登場し、子どもと怪獣を繋げる物語の推進力になります。この怪獣に精通する組織の登場はハリウッドの「モンスター・ヴァース」でもやっており、まあ、都合がいいんでしょうね。
ただ、今作ではこのユースタス財団の正体は古代人の末裔であると判明し、選民思想で人類を浄化と称して滅ぼして新世界を作る計画が明らかになります。このあたりも「昭和ガメラ」から「平成ガメラ」にも受け継がれていたSFファンタジーを導入したもので、突拍子もない設定を勢い任せで描ききります。
そして怪獣プロレス要素ですが、ギャオス、ジャイガー、ジグラ、ギロン、バイラスと「昭和ガメラ」の敵怪獣と連戦する流れになりつつ、「人を食う」設定やリアルな生々しい生物的なデザインといい、「平成ガメラ」の特徴を併せ持って描いていました。バイラスなんて「誰ですか?」ってくらいに見た目が変わってましたね。
肝心のガメラの戦闘も「平成ガメラ」的な必殺技の連発で、怪獣界の“マ・ドンソク”かのごとく、パワープレイで圧倒しまくり。アニメーションならではのアクロバティックな戦い方もあり、良い匙加減でした。
こんなふうに『GAMERA Rebirth』は「昭和ガメラ」と「平成ガメラ」の良さを混ぜ合わせつつ、アニメーションを触媒に新しい表現をするというアプローチは確かに感じ取ることができました。
最終話のあの展開は…
とは言え『GAMERA Rebirth』は気になる点もチラホラ目立っていたのも事実です。
まずそのアニメーションの映像面ですが、全体的にプリビズみたいなクオリティどまりであるのも否めません。昨今のハリウッドでは『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』や『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』などアメコミ風の新表現によってCGアニメーションが大きな革命期を迎えている中、日本の怪獣を表現するのにひと皮むけたアニメーション表現というものにはまだまだ到達できていない感じです。これはもっと挑戦の機会と予算が必要でしょう。
また、物語も過去作のサンプリングで寄せ集めているためか、話運びはかなり早急で慌ただしいです。
序盤のボコたちがギャオスと遭遇する場面も、避難命令がでているはずなのに物語の都合上であの子たちだけが不自然に取り残されている感じでやっぱり違和感あります。
ユースタス財団が子どもを意図的に巻き込んでいくのは後半にその理由が説明されるのでいいのですが、エミコ・メルキオリの本心がいきなり露わになったり、あの第5話からの展開は随分と急で、それでいてエミコの策略が相当にお粗末に見えるので(怪獣がボコを狙うなら何も一緒に行動することないのに)、脅威度は薄かったかな…。
シャトルでのジョーの犠牲(生死はぼかされたまま)によって最終話で無理やり焦燥感を醸し出すのですが、子どもが死んでいるわりには大人が全然深刻そうでもないし…。
そして最終話は日本の自衛隊とアメリカの在日軍が協力して怪獣を撃退するという、絵に描いたような軍国主義万歳な「日本スゴイ!」系の後味になっており、ここは最大の問題点でした。本来「ガメラ」って「ゴジラ」もそうですが昔から軍国主義含めた人間の権力を諌めるものだったと思うのだけど…。
他には、エミコのキャラについては、一部シーンで性的な目線を向けられる要員としての女性科学者という表象になっていたり、現在の科学界で問題視されている女性差別を無自覚に助長しているのもあれだったし…。
唯一、本作の新しい良さと言えば、実は女子であるとボコ(和多大輝)とジョー(松田了)の口から明らかになったジュンイチ(市原純)の表象でしょうか。ジュンイチのジェンダー・アイデンティティはわかりませんが、ああいうジェンダー・ノンコンフォーミングな子どもが伝統的な少年ジュブナイルに参加するのはとても大切なことだと思います。
「令和ガメラ」はここから始まりなのか、また冬眠期に入るのか。アニメシリーズで終わらず、実写大作もぜひ観てみたいところです。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)Netflix ガメラリバース
以上、『GAMERA Rebirth』の感想でした。
Gamera Rebirth (2023) [Japanese Review] 『GAMERA Rebirth』考察・評価レビュー