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『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』感想(ネタバレ)…初めてのガンダム

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

初めてのガンダムでも!…映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Mobile Suit Gundam: Hathaway’s Flash
製作国:日本(2021年)
日本公開日:2021年6月11日
監督:村瀬修功
性描写

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

きどうせんしがんだむ せんこうのはさうぇい
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』あらすじ

「シャアの反乱」と呼ばれた第2次ネオ・ジオン戦争から12年。世界は変わらず混乱状態にあり、地球連邦政府は強制的に民間人を宇宙に連行する非人道的な「人狩り」を行う。そうした地球圏の富裕層による腐敗した現状に、マフティー・ナビーユ・エリンと名乗る人物が率いる反連邦組織「マフティー」がテロを起こしていた。そんな中、複雑な過去を持つハサウェイ・ノアの運命は色々な出会いによって大きく動き出す。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』感想(ネタバレなし)

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私も今からガンダムに乗っていいですか…?

2021年の「私が一度も触れたことのない有名作品フランチャイズに映画で初めて触ってみる」のコーナーです。

これまでは「ONE PIECE(ワンピース)」を見たことがない私が『ONE PIECE STAMPEDE』を鑑賞して感想を書いたり、「プリキュア」を見たことがない私が『HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』を鑑賞して感想を書いたりしました。

巨大なフランチャイズに映画でいきなり触れてみるのは無謀に思えるかもしれませんが、これまでやってみた感触だと案外と悪くない気もします。何事も初めてはあるもの。あとは勢いです。

今回は「ガンダム」シリーズにファースト・コンタクトしたいと思います。

もちろんこんな私でも「ガンダム」くらいは名前は知っています。海外でもオタク界隈では有名で、『レディ・プレイヤー1』では実写映画内で迫力満点で登場し、最近だとMCUアニメシリーズ『ホワット・イフ…?』でもセリフで言及されたり、もはやオタクの教養です。

でも私はしっかり本家の作品に触れてはこなかった…。以前ちょっと見てみようかなと思い立ったこともあったのですけど、結局取り組めなかったし…。

結果、私の「ガンダム」の知識は「なんか巨大な人型ロボットが宇宙空間とかで戦っている…?」くらいのぼんやりとしたイメージしかないというありさまでしたが、もうその状態は卒業して私も運転免許をとって初めての車を乗り回すかのごとく(初心者マークつき)、頑張っていこうと。

しかし、問題は作品の多さです。1979年からアニメシリーズ『機動戦士ガンダム』としてその世界観は幕を開けたわけですが、それから今日に至るまで膨大な作品が生み出され続け、もう列挙もできないほどです。よく「007」とか「MCU」とかの新作が公開されるたびに過去作を振り返るマラソン鑑賞をしている人がいますけど、「ガンダム」でそれはできないですね(やっている人いるの?)。映像作品数&時間だけなら「スター・トレック」より少ないのかな…どうなんだろう…。

そこがハードルの高さとして感じている人は少なくないと思いますが、そんな中、私が初ガンダムで鑑賞するのが2021年に劇場公開された本作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』です。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を選んだ理由。それは…とくにない!

いや、私みたいな完全初心者がそんな最良の作品選定するほどの包括的な知識を持っているわけもなく、「なんかこれが新シリーズの始まりの1作らしいし、これでいいだろ!」くらいのノリです。いいんです、出たとこ勝負で。

けれども鑑賞したうえで振り返ると結果的には良い判断でした。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』はガンダム初心者でもわりと大丈夫で、かなり丁寧に段階を踏んで物語が広がっていましたし、いきなり専門用語のオンパレードで情報の洪水に放り出されることもないし、身構えるほどではなかった…。

原作は「ガンダム」の創造主のひとりである“富野由悠季”による1989年の小説で、それの映像化であり、3部作になる予定の第1弾。新しい主人公の新しい物語でありながら、初代『機動戦士ガンダム』の主要登場人物の歴史を受け継いだ正当続編になっているので作品らしさもある。良いポジションです。

監督は『虐殺器官』の“村瀬修功”、脚本は『機動戦士ガンダムUC』(2010年~2014年)や『ガンダムビルドダイバーズ』シリーズ(2018年~2020年)の“むとうやすゆき”

ということで私のような初心者の感想でもいいなら、以下の後半に続きます。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:初めての人も見やすい
友人 3.5:新規ファンを誘って
恋人 3.5:作品が好きな人同士で
キッズ 3.5:やや大人の語り口だけど
↓ここからネタバレが含まれます↓

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):ハサウェイ・ノアの物語

U.C.0105。地球行きの特権階級専用往還シャトル「ハウンゼン」が宇宙空間を航行していました。優雅な機内。丁寧なサービスを受けて富裕層の客たちがくつろいでいます。

その中に、若い青年、ハサウェイ・ノアは乗っていました。

通路を挟んで隣にはひとりの少女、ギギ・アンダルシアが地球連邦軍所属のケネス・スレッグ大佐に声をかけています。話題は「マフティー・ナビーユ・エリン」を中心にした反地球連邦政府組織について。このシャトルはアデレード会議に向かう連邦政府の閣僚や閣僚とその家族が乗船しており、ギギはなぜかケネスが軍人だと見抜いており、どうやらハサウェイのことも何やら推察しているようです。

ケネスは「マフティーは危険人物だ、地球連邦政府の秩序を乱す者だ」と言いますが、ギギは「世間はマフティーは好きみたいですよ。シャア・アズナブルが生き返って人の思うことをしてくれるって」と悠々自適に発言。マフティーは「連邦政府の閣僚を暗殺したあとで地球環境のために全ての人類は地球から出なければならない」と宣言した存在であり、軍としては最重要で危険なテロリストです。ケネスはそんなマフティーを「子どもじみている」と評価しますが、ギギはその感想を言い放つ男に冷たい目を向けます。

ケネスは席をたち、乗務員を口説いていると、シャトルに謎の武装集団が乗り込んできます。容赦なく人も殺し、異様ともいえる残忍さ。かぼちゃ頭のハイジャック犯は告げます。

「私はマフティー・エリンだ。しかし今回の作戦は粛清ではない。諸君たちの命と引き換えに地球連邦政府から軍資金を調達する」

乗客名簿を確認して乗員を確認する武装集団。みんな怯えていますが、ギギは呑気に振舞い、軽口をたたきます。立って喋った保健衛生大臣を射殺、その妻も躊躇いなく殺され、空気は張り詰め…。

ケネスは隙がないか様子を窺い、一方のハサウェイは大人しく従おうとしていました。

その瞬間、ハサウェイの頭の中で「やっちゃいなよ、そんな偽物なんか」と声が聞こえた気がします。その声はかつて恋をした女性の声と重なり…。

ハサウェイは咄嗟に反撃を開始。ケネスも呼応。一気に操縦室を制圧し、とりあえず事態を収拾。

シャトルはダバオに緊急着陸。ハサウェイはケネスに挨拶され、次に刑事警察機構のハンドリー・ヨクサン に調書のために対面。今は植物監視官候補として地球に来たハサウェイでしたが、その過去はいわくつきでした。

ハサウェイの父は著名な艦長ブライト・ノア。今から12年前の第二次ネオ・ジオン抗争では、13歳だったハサウェイは宇宙へ飛び出しており、その際にネオ・ジオンと地球連邦との激しい戦いを目のあたりにしていました。そこではネオ・ジオンのシャア・アズナブルと地球連邦のエースであるアムロ・レイが因縁の衝突を繰り広げ、その結果、当時のハサウェイが好意を持っていたクェス・パラヤがシャアの思想に感化されて戦闘に参加し、命を落としてしまいます。死を間近で見たハサウェイはその時すでに感情のおもむくままにモビルスーツを操縦する才能を見せていましたが、その後は自分の生き方を大きく考えることに…。

今、地球に降り立ったハサウェイの目的とは…。

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ビギナーに易しい世界観の見せ方

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を私のようなガンダム初心者でもわりと大丈夫と感じた理由は、まず情報の小出し感というか、世界観の広げ方です。

いきなり「宇宙大戦!何かと何かが戦ってます!」みたいな壮大なスケールで始まることはしません。

冒頭はシャトル内でのハイジャック事件。短いパートですが、ここでケネスとギギの会話から世界観の基本が説明されます。そして「マフティー・ナビーユ・エリン」とは何者なのか?というこの世界で認識されているひとつの謎が提示されるわけですが、その答えはもう明らかなんですね。すでにこの時点でハサウェイ・ノアがマフティーだと示されたも同然(まあ、公式サイトのあらすじやキャラ説明にも書いてある)。つまりそこを隠してオチに引っ張るつもりもない。

本作は一見するとミステリー風に始まるのですけど、実は格好だけで、中身はシンプルです。このあからさまに考察ポイントをわざと設置して観客を悩ませたりしないあたりが、この作品の親切さだと思います。

続くパートではギギの存在がミステリアスに位置づけられている感じになりますが、彼女の場合はよくあるファム・ファタール的な機能を果たすだけで(ギギにとっての過去の女性トラウマを想起させる意味もあるけど)、最終的には初代『機動戦士ガンダム』を継承する「男vs男」(アムロvsシャア=ハサウェイvsケネス)の対決に行き着くわけで、表面上は異性愛コーティングしているけど真の部分はものすごくホモセクシュアルですよね。私は常々、主人公とその敵対者がぶつかり合う展開はほぼ恋愛シーンとそう変わりないものであると思っていて、同性同士なら当然同性愛的繋がりにオーパーラップするのは自然ではないかと…(それを回避したければ『スター・ウォーズ』みたいに「父vs息子」の構図にするのが定番)。

話を戻すと、もちろん『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』はまだプロローグというか、3部作の第1章なので、情報量が少ないのは当たり前ではあるのですが(世界観紹介を95分丸々かけてやった感じ)、それでも丁寧な情報提供バランスでした。

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抑制の効いた演出もかっこよく

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は演出も全体的に良かったです。

このシリーズと言えば当然のように「モビルスーツ」だと思うのですけど、序盤は全然登場しません。それが初登場するのが、ハサウェイがダバオの街を歩いていて「マン・ハンター」の取り締まりに遭遇する場面。巨大なモビルスーツが街を闊歩して歩く姿を地上に人間目線で見上げる。ここでしっかりその巨大さを観客に印象づけさせるあたり。

続いて夜にマフティーのチームと地球連邦軍のチームでモビルスーツ同士が上空で対峙するのですが、そこからの陸上戦。ここも逃げ惑うハサウェイとギギの視点で巨大さを見せつけて、恐怖心すらも感じさせる威圧感。

こういうもろもろの抑制の効いた演出を溜め続けることで、終盤のいよいよハサウェイがモビルスーツに乗り込む、しかもガンダム(Ξ[クスィー]ガンダム)に!というカタルシスが生まれる。

これらの展開の組み立て方がカチっとハマっているのが『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のカッコよさかなと。

ちょっと暗いシーンが多いかなとは思いましたし、ガンダム対決の見せ場も操縦者視点になるとどうしてもわかりづらいのは欠点でしたけど、もっと派手なバトルは今後の作品にお預けなのかな。

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ガンダムの世界にもアレを

とはいっても『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を最初に観ただけだと、ガンダム初心者にはわからないこともそりゃあたくさんありますよ(ちなみに本作を観た後に『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』も鑑賞しました)。

そもそも「ガンダム」ってなんだよ!ってという根本的な疑問はあるし…。モビルスーツの中でもひときわ性能がいい新型の強いやつって認識でいいのかな。あまり強さの基準がわからないのだけど…。

個人的に設定で気になったのは世界情勢における反政府の動機。一応は反権力であり、地球を汚染して特権を貪る富裕層への反逆でもあり、一種のエコテロリストみたいなことをしているわけです。『機動戦士ガンダム』自体が作られた時期がちょうど現実でもエコテロリズムで世界的に揺れた時代を経由していますし、影響を受けているのかな。ただ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』における環境問題への考証みたいなのはそんなにリアリティもなく、なんか漠然としているんですよね。今や現代はエコテロリズムは論点になっておらず、むしろ陰謀論とかポピュリスト&オルタナ右翼の時代に突入していますからね。こういう新しいテーマ性を「ガンダム」は取り入れていくことはあるのかなとも思ったり。

「ガンダム」シリーズ自体が基本的に大人っぽいドラマを特徴としていますし、本作は主人公ハサウェイ・ノアもかなり大人な思考で動いています。『エヴァンゲリオン』のあの主人公みたいなパーソナルな家族規範に基づく自我を題材にしているわけでもないので、もっと現在の政治社会問題をガンガンに取り入れても成り立つ(それだけのポテンシャルがある)シリーズなんじゃないかなと思いました。

ぜひとも「ガンダム」の世界にも“地球平面説”支持者とか、ニュータイプは政府の仕込んだワクチンの副作用の結果だと主張する陰謀論者とかを出してくれないかな。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0

作品ポスター・画像 (C)創通・サンライズ

以上、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の感想でした。

Mobile Suit Gundam: Hathaway’s Flash (2021) [Japanese Review] 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』考察・評価レビュー