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『インビンシブル 無敵のヒーロー』感想(ネタバレ)…グロだけじゃない。真面目なヒーローアニメです

インビンシブル 無敵のヒーロー

グロだけじゃない。実は真面目です…アニメシリーズ『インビンシブル 無敵のヒーロー』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Invincible
製作国:アメリカ(2021年)
シーズン1:2021年にAmazonで配信
原案:ロバート・カークマン

インビンシブル 無敵のヒーロー

いんびんしぶる むてきのひーろー
インビンシブル 無敵のヒーロー

『インビンシブル 無敵のヒーロー』あらすじ

マーク・グレイソンは17歳で父親のスーパーパワーを受け継ぎ、地球で最も偉大なヒーローの一人として父と共に活動することになる。他にもヒーローたちはいるが、父以上に強力な存在はいなかった。父親の背中を追いかけ、大いなるパワーを上手く扱えるように必死に鍛錬する一方で、日常との両立も忙しい。マークの夢は叶ったかのように見えた。ある衝撃的な出来事がすべてを変えてしまうまでは…。

『インビンシブル 無敵のヒーロー』感想(ネタバレなし)

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2021年話題のヒーロー作品

スーパーヒーローを描いた作品なんてもう見飽きたよ…そう思ってもおかしくないものなのですが、なんだかんだでついつい観てしまうのは性(さが)なのか。

そうは言ってもヒーロー作品は今や百花繚乱。マーベルとDCの2大アメコミ大企業を中心に飽和状態にあります。前代未聞の大成功をおさめているマーベル・シネマティックユニバースもあれば、『アンブレラ・アカデミー』のようなドラマシリーズもあるし、アニメ作品だって豊富です。

そうなってくるとそれぞれが独自色を出すのに必死になります。『デッドプール』のように第4の壁を突破してネタ合戦に走るもの、『ヒーローキッズ』のように低年齢向けにフィットするもの、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』のようにフェミニズムの前方を痛快に突っ切るもの、ドラマ『ウォッチメン』のように歴史や人種問題を強く射抜くようなもの…。日本にも『僕のヒーローアカデミア』『ワンパンマン』など個性豊かな作品が無数に存在します。

実に多様です。むしろ今は「次はどんなスタイルでくるのかな」とワクワクするのがヒーロー作品の楽しみ方の定番になったと言えるのかもしれません。

そんな中、2021年も話題となったヒーロー作品が登場しました。それもアニメシリーズです。それが本作『インビンシブル 無敵のヒーロー』

本作は原作者がまず語られるところです。原案であり、原作のコミック・シリーズを生み出したのは“ロバート・カークマン”という人物。この人と言えば、2003年に出版したグラフィックノベル「ザ・ウォーキング・デッド」がとにかく有名で、ご存じのとおり、これは2010年から『ウォーキング・デッド』としてドラマシリーズ化し、今も続くご長寿人気ドラマの代表格となっています。

実は“ロバート・カークマン”は2010年に「Skybound Entertainment」という企業を設立していました。以降はずっと『ウォーキング・デッド』づくしの展開だったのかなと思っていたのですが、ここに来て2003年に描いていた「Invincible」のアニメ化がスタートしたのです。

企画には“セス・ローゲン”も関与し、「Amazon Prime Video」での配信。このメンツと言えば、同じくアメコミ作品であり、こちらは実写である『ザ・ボーイズ』というドラマシリーズが2019年に話題騒然となりました。

この『インビンシブル 無敵のヒーロー』も『ザ・ボーイズ』にハマった人にとくにウケている印象です。鑑賞済みの人なら察しがつくと思いますが、この両者は似ている部分があります。でも違うところは全然違うのですけどね。詳細はネタバレになるので後半で。

これだけは警告として書いておかないとあれなので言及しますが、『インビンシブル 無敵のヒーロー』はアニメですが非常に残酷な描写が大量です。子どもに鑑賞させるかは保護者の判断でお願いします。まあ、アニメなのでだいぶ視覚的な生々しさは緩和されていますけどね。

原語版の声を担当しているのは、主人公の少年役を『ミナリ』で大活躍した“スティーヴン・ユァン”(こちらは『ウォーキング・デッド』つながりなんでしょうね)。その主人公の母親役の声を『キリング・イヴ』の“サンドラ・オー”。父親役を“J・K・シモンズ”が熱演(『セッション』を1000倍増大させた恐怖をばらまく)。

他にも『トゥームレイダー ファースト・ミッション』の“ウォルトン・ゴギンズ”、『スター・トレック BEYOND』の“ザカリー・クイント”、『デッドプール2』の“ザジー・ビーツ”、『スター・ウォーズ』シリーズの“マーク・ハミル”、『グリーンブック』の“マハーシャラ・アリ”など多彩です。とにかく登場人物が多い作品ですから。

2021年の時点ではシーズン1のみですが、すでにシーズン2・シーズン3と製作決定済みのようなので、今からでもチェックしてみては?

作品を観れます!

オススメ度のチェック

ひとり3.5:アメコミ好きはぜひ
友人3.5:語りがいはある
恋人3.5:趣味が合うなら
キッズ2.5:残酷描写が満載なので注意
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『インビンシブル 無敵のヒーロー』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『インビンシブル 無敵のヒーロー』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):血塗られたヒーロースーツ

ホワイトハウスの敷地入り口前で2人の警備員が立ち話をしています。話題はスーパーヒューマン対策訓練について。ひとりは息子との関係にいろいろあるようです。

そのとき、地面が揺れ、割れ、デカい2人が出現します。即座にホワイトハウスの建物上部に設置された武器が自動攻撃を開始。しかし、この瓜二つの青い巨人のような2人には全然効いていないようです。

このままではやられる。その瞬間。上空から颯爽とかけつける複数の者たち、アクアラス、マーシャン・マン、レッド・ラッシュ、ウォー・ウーマン、グリーン・ゴースト、イモータル、ダークウィング…超人チーム「ガーディアンズ・オブ・グローブ」でした。

連係プレイで2人を殲滅していくガーディアンズ。この2人はモーラ・ツインズという言うようです。周辺の民間人の救出が間に合わない…と思いきや、オムニマンというヒーローも登場し、サクっと事態を解決します。そのパワーは群を抜いていました。

別の場所。マーク・グレイソンは居間でニュースを見ていました。オムニマンがホワイトハウスを救ったという報道。あれは父親でした。帰ってくる父。ヒーローでもあるノーランを妻・デビーが迎えます。そんな息子であるマークですが、とくにスーパーパワーは発揮できません。もうすぐパワーは覚醒すると父は言いますがその気配なしです。

学校に行くと、アンバーがトッドに絡まれているのを目撃。助太刀に入りますが、腹に一発やられ、ノックアウト。これが限界でした。

自分の弱さに落ち込みつつ夜はバイト。外にゴミ出しに出ると、ゴミ袋をはるか彼方にぶん投げてしまい、ぽかーん。ついにそのときが来たようです。

すぐにパワーが覚醒したと両親に報告。「本当か」と父は一瞬気まずそうな顔。しかし、すぐに「今度一緒に練習しよう」と喜んでくれます。ビルトラムという星で生まれた父は、ある年齢になると星を離れて発展途上の星を助けるのが使命であり、自分の場合はそこでデビーと出会い、お前が生まれた…と説明してくれます。

次の日、さっそく飛び方を実演で教えてくれる父。しかし、着地に失敗して派手に落下するマーク。

また学校でトッドが絡んできましたが、今度は殴られても平気。マークは街に繰り出し、変装してヒーロー活動を独断でやっていきます。体が岩のような奴・タイタンと対峙。そんな姿を父に見つかり、「強さを証明してみせる! 父さんみたいになりたいんだよ」と訴えると「いつかなれるさ」とハグされます。

その後、スーパースーツ仕立て屋のアート・ローゼンバウムのもとへ。「名前を決めるといい」と言われ、自分のヒーロー名を考えます。「向いてなかったらどうしよう」と父に打ち明けるも「お前は本当に無敵だよ、インビンシブルだ」と言われ、名前は決まったと報告。

新調のスーツを身に着けたマーク。今日からはインビジブルです。

一方、ガーディアンズのメンバーに召集アラートが鳴り出します。ダークウィングが基地に向かうともう全員が揃っていました。「どうして呼んだんだ?」と他のメンバーに質問され、自分ではないと困惑ぎみで答えるダークウィング。

その瞬間、オムニマンが問答無用で攻撃してきます。混乱する一同。しかし、オムニマンは全くの躊躇もなくレッド・ラッシュの頭部を粉砕。他のヒーローたちも健闘虚しく次から次へとグチャグチャにやられていき、全滅。そして力尽きたオムニマンもその場に倒れ…。

しばらく後、血塗れの現場に駆け付けたのは地球防衛局(GDA)とその長官のセシル。一体誰がこんなことを…その時点では真実を知るのはオムニマンだけ。

当然、マークは何も知らずに父の背中を追いかけてヒーロー活動を続けますが…。

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男にとっての最強の敵は父

『インビンシブル 無敵のヒーロー』の主題は序盤でハッキリ提示されるとおり「父子」の関係です。

究極的なほどに絶大なパワーを有する父・ノーラン(オムニマン)とその息子・マーク(インビジブル)。シーズン1の最終話で明らかになるように、ノーランの目的は地球発展ではなく地球征服。強い者だけが生き残るべしという原理原則を盾に、弱者である地球を支配するというのが狙いでした。いわゆる選民思想ですね。

ヒトを「劣った文明」「無能な生き物」と無慈悲に吐き捨て、妻であるデビーさえも「母さんは愛している、ペットのようなもの」と悪気もなく言い放つ。

そんな父の傲慢かつ自己中心的な価値観を目の前にし、一気に怒りと悲しみが全身を駆け巡るマーク。しかし、父のパワーはあまりにも強力で、情け容赦なく蹂躙され、圧倒されるばかり。

この本作の父子の関係は唯一無二でもなく、最近であれば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』のあの父を思い出します。ほぼそっくりの構図でしたね。

『ザ・ボーイズ』にもそういう父子の関係性は描かれていました。ある意味ではヒーロー親子モノの定番かもしれません。

ただ、こういう場合はたいていは男性、つまり父と息子が多いです。別に娘でもいいのですが、息子に設定されやすい理由は、マスキュリニティとの向き合い方がテーマになるからなのでしょう。古い男らしさの具現化である父親という象徴は、息子にとっては自分がなるかもしれない未来であり、向き合わざるを得ないものです。どうしても男性がスーパーパワーを持てばハイパーマスキュリン化しやすいですし、そのテーマ性は露骨に強調しやすいのも事実。

そう考えると『インビンシブル 無敵のヒーロー』はグロだグロだと視覚的なショッキングさばかりが騒がれがちですが、意外にも真っ当で正統派なヒーローストーリーじゃないでしょうか。

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ヒーローのコントロール問題

『インビンシブル 無敵のヒーロー』がもうひとつ浮かび上がらせるテーマは「ヒーローは誰が管理するのか」問題

『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』『ウォッチメン』でも主題になってきたあれです。

『インビンシブル 無敵のヒーロー』の中では地球防衛局(GDA)がヒーローを支援しているようです。第1話で殉職したガーディアンズ以外にも、イブ、レックス、デュプリ・ケイトらが所属していたティーン・チームのような別グループが多数いるようです。

オムニマンが怪しいと睨んでいたダミアン・ダークブラッドという悪魔探偵に対しては長官のセシルは強制的に罰を与えてしまいます。

また、マシンヘッドに下克上を仕掛けたタイタンのように裏社会でのせめぎ合いをしているものもいます。

結局はヒーローを管理しきれる万能な存在はいません。惑星連合の評価委員という地球外の存在は大きな鍵になるかもしれませんが…。

とにかくこのヒーローを管理するという題材は、言い換えれば巨大な権力をどう統治するのかという私たちの世界にも身近な難題にも置き換えられますし、もっといえば「“正しさ”は誰が手綱をひくのか」という哲学的な問いかけにも繋がります。

これに関しては永遠のテーマですし、『インビンシブル 無敵のヒーロー』はシーズン1時点ではまだその難問を解くためにペンを持ったばかりです。

今後、どれだけ心を震わす答えを叩き出せるのか、それが『インビンシブル 無敵のヒーロー』の評価の決定打になるのかな。

『インビンシブル 無敵のヒーロー』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 98% Audience 91%
IMDb
8.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0

作品ポスター・画像 (C)Skybound

以上、『インビンシブル 無敵のヒーロー』の感想でした。

Invincible (2021) [Japanese Review] 『インビンシブル 無敵のヒーロー』考察・評価レビュー