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『モキシー 私たちのムーブメント』感想(ネタバレ)…Netflix;女子の反乱は次世代へ!

モキシー 私たちのムーブメント

学校生活の女性差別に声をあげる…Netflix映画『モキシー 私たちのムーブメント』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Moxie
製作国:アメリカ(2021年)
日本では劇場未公開:2021年にNetflixで配信
監督:エイミー・ポーラー

性暴力描写

モキシー 私たちのムーブメント

モキシー 私たちのムーブメント

『モキシー 私たちのムーブメント』あらすじ

ヴィヴィアンが学校生活に不満を抱えていたがなるべく目立たないようにしつつ、陰で愚痴を言う程度だった。しかし、反骨精神旺盛で威勢よく男社会を壊すために活動していた過去を持つ母と、嫌がらせに屈しないように抵抗する転校生に感化され、校内の女性差別を非難する冊子を感情のままに作ってしまう。その行動が、やがて大きな変化を巻き起こす。もう女子たちは黙っていない。

『モキシー 私たちのムーブメント』感想(ネタバレなし)

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第3波フェミニズムの再来?

「フェミニズム」という言葉が日本でもインターネットで割と普通に駆け巡るようになった今日この頃。まだまだ無知なバッシングも多いですが、確かにフェミニズムをネットで見かけた程度の人にしてみれば、最近ふっと湧いて出た新語なのかと思うかもしれません。

でもそれは違ってフェミニズムはかれこれ100年以上の歴史があるものです。今は「第4波フェミニズム」と呼ばれており、ここに至るまでにはいくつかのムーブメントの波があります。

では今のフェミニズムの前世代、つまり「第3波フェミニズム」はどういうものだったのでしょうか。

第3波フェミニズムは1990年代に巻き起こり、特に若い女性たちが自分たちで文化を創出していくという草の根的な広がりを見せたのが特徴です。例えば「ベットルーム・カルチャー」と呼ばれるように自分たちの部屋でファン活動を育み、「girl zine」と呼ばれるように自分たちが主体的に情報を紙媒体で発信したり…。このような起業家的文化を支えたエネルギッシュな若い女性たちを「ライオット・ガール(riot grrrl)」と表現していました。そのライオット・ガール運動の旗手とされるバンドが「ビキニ・キル(Bikini Kill)」であり、「Rebel Girl」のような容赦なく男社会をぶった切る歌詞は当時の女性たちを熱狂させました。

もちろんこの第3波フェミニズムによる女性主体のサブカルチャー運動は現代の土台になっており、これがなければ今日の女性発信のファッションも音楽もオタク文化もなかったでしょう。

詳細をもっと知りたい人は論考や学術書がいっぱい出ているのでそっちを読んでください。

で、今回紹介する映画はこの第3波フェミニズムが大きく関わってくるものであり、知識があった方が理解が進むので、事前にちょっとだけ解説じみたことをしました。その映画が本作『モキシー 私たちのムーブメント』です。

本作はZ世代な現代のティーン女子たちが母世代の経験した第3波フェミニズムに触発され、自分の学校の女性差別に声をあげていくという、現代版ライオット・ガールなストーリーです。

監督は『サタデー・ナイト・ライブ』で活躍し、最近は『ワイン・カントリー』(2019年)で長編監督デビューしたばかりの“エイミー・ポーラー”です。『モキシー 私たちのムーブメント』でさらに監督キャリアを伸ばしたことでもっと勢いづくのではないでしょうか。

俳優陣は当然ながら若い女性陣が圧倒的に多いのですが、まず主役は『もう終わりにしよう。』にちょこっと出ていた“ハドリー・ロビンソン”。その主人公の親友を演じるのは、中国系アメリカ人でモデルとしても仕事をこなす“ローレン・サイ”

また、アーノルド・シュワルツェネッガーを父に持つ“パトリック・シュワルツェネッガー”が嫌な男子役を奮闘し、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』でスケートボードでビュンビュンしていた“ニコ・ヒラガ”が今作では爽やか好青年を熱演。

“エイミー・ポーラー”も主人公の母親役で登場します。

大人勢としては“マーシャ・ゲイ・ハーデン”“アイク・バリンホルツ”など。

10代の女子たちの赤裸々な社会への不満を目にすれば、決して目をそらすことはできないはず。自分もそんな悩みを抱えていた…そんな差別の光景をこれまで見て見ぬふりをしてきた…自分も差別に関与してしまっていた…どこかしょうがないと思っていた…。そうした経験を何かしら持つ私たちの心に素直に届く物語です。

Netflixでの独占配信なのでお気軽にどうぞ。

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『モキシー 私たちのムーブメント』を観る前のQ&A

Q:『モキシー 私たちのムーブメント』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2021年3月3日から配信中です。

オススメ度のチェック

ひとり◯(青春映画が好きなら)
友人◯(青春の不満を語り合おう)
恋人◯(相手が差別に鈍感でなければ…)
キッズ◯(ティーンに観てほしい)
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『モキシー 私たちのムーブメント』予告動画

『モキシー ~私たちのムーブメント~』予告編 – Netflix
↓ここからネタバレが含まれます↓

『モキシー 私たちのムーブメント』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):ライオット・ガール再始動

叫びを上げてもその声は音にならない。なぜ…。

ハッと悪夢で目覚める少女。ヴィヴィアンにとって今日は新学期の初日。11年生です。母親のリサからは記念に写真を撮りなさいと言われますが軽くあしらって無視します。

ヴィヴィアンにとって学校はあまり好きな場所ではありません。クラスメイトたちの同調的な空気、他人より目立ってお気に入りになろうとする意識…そうしたものがとにかく苦手でした。

ロックポート高校に登校すると、案の定、新学期早々、いろいろな生徒が思い思いに楽しんでいます。もうあの空気は始まっているのです。

唯一の親友であるクラウディア「ランク付けはもう始まっている」と話しかけてきます。この学校では毎年誰かが全校生徒を勝手にカテゴリでランクをつけて発表することが裏で行われていました。

「きっとエマは今年も“やりたい女”になるよ」「エマはミッチェルと別れたらしい」「“最高のお尻”はキエラだね」「ケイトリンは“最高のおっぱい”に違いない」

ヴィヴィアンにしてみればうんざりな恒例イベントです。でもそれに心では不満を煮えたぎらせることはあっても、大勢の前で異を唱えることはしません。そんなことをすれば痛い目を見るのは自分…。

マイク先生の授業では「華麗なるギャツビー」を読むことに。先生は転校生のルーシーに質問します。「この作品の女性はどんな風に描かれていた?」と聞かれ、ルーシーは意外な回答をしました。

「逆に聞きたいんですけど、なぜいまだにこれを読むんですか?」「金持ちの白人作家が金持ちの白人について書いた本です」「アメリカン・ドリームを学びたいなら移民や労働者の話を読むべきです」

毅然とした口調です。すると話の途中で学校で最も支持を得ている男子生徒・ミッチェルが割り込んできます。「僕はギャツビーがいい」「不朽の名作だから授業で習うんだろう」と得意げ。

その後、買い物中に1日の感想を母に聞かれるヴィヴィアン。その時、途中で男が話しかけてきて、明らかに母を口説こうとしている雰囲気でした。

エッセーに何を書けばいいか悩むヴィヴィアン。お題は「情熱を注いでいること」。そんなものは今の自分にありません。

ヴィヴィアンには気になっている男子がいました。スケートボード中のセス・アコスタについてちょっとクラウディアの前で話題にすると「好きなの?」と言われます。4歳からの幼馴染のクラウディアには何でもお見通しです。

一方、ミッチェルに嫌がらせされているとルーシーは校長に文句を言いますが、全く真剣に受け取ってくれないどころか、転校してきたばかりだから感情的にもなると諭されてしまいます。

ヴィヴィアンはそんなルーシーに「ミッチェルのことは無視した方がいいよ」と助言しますが、「下を向いて目立たなくしていればいい」というヴィヴィアンの提案に「でも顔はあげていたい」とルーシーはやはり反発します。

ヴィヴィアンは家で母に何気なく質問をします。「“顔をあげろ”ってママはよく言うけど、それって歌の歌詞だよね」…それは母がフェミニズムに青春を注いでいた若い時代の話。「レベル・ガール」という曲でしたYouTubeで動画を調べると、フェミニズムを激しく力強い歌詞で歌い上げるパワフルな女性がそこにいました。

さらに母の昔の持ち物を漁っていくと、雑誌が無数に。そこには「私は信じています。革新的な女性が世の中を変えるのだと」と力強く書かれていました。

激励会が学校で行われる中、校長は「生徒全員にモキシー(勇気)がある」と古臭い言葉で語っています。すると例のランク付けリストがみんなのスマホに流れてきました。ヴィヴィアンは“従順な女”。そしてルーシーはかなり酷い扱いです。

それを見てヴィヴィアンは気分が悪くなり、体育館を出ます。そして行動に出ました。

勢いでチラシを作り、50部をコピーし、トイレに設置。

そこには学校で蔓延する女性差別への怒りがぶちまけられていました。これを支持するならハートや星マークを手に付けて…。その呼びかけは意外な反響を起こします。

Moxieの反乱が再び…。

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実はみんな苦しんでいる

『モキシー 私たちのムーブメント』は若い心にフェミニズムが宿る過程を描く、覚醒の物語です。

そもそもフェミニズムというのは実際のところ誰の心にも宿るものです。なぜならみんな何かしら社会に不満を抱えているはずですから。

問題はそれを反発として行動にするかどうかというだけ。その勇気はなかなか出てきません。作中のヴィヴィアンも学校への不満を蓄積するも口はずっと閉ざしたままでした。

そういう状態になると、他の女子たちすらも敵視しています。きっとあの子たちは充実しているから悩みなんて抱えていないんだろう…惨めな私の気持ちなんてわかるはずがない…。

ところが母の第3波フェミニズムなやり方を手本に紙媒体というアナログな手法で呼びかけをしてみると以外に共感を集めます。そしてヴィヴィアンは知らなかった他の女子たちの苦悩を知ります

部活に青春を輝かせていると思っていた女子サッカー部は実績をあげても全然評価されていない。胸が大きい女子は同じ露出度のファッションでも目をひきやすく、服装差別の標的になりやすい。ラテン系や黒人の女子はお尻で評価されてしまうことが多い。そして“やりたい女”に選ばれ、学校で一番の勝ち組と思っていたエマは実は性暴力被害に遭っており、それを誰にも言えずに孤独に耐えていた…。

そうなんだ、私たちは同じ“被害者”なんだ…その認識に至ったとき、そこに初めて「連帯」が生まれる。本作はその芽生えをよく描けている作品でした。

日本だといまだに「女の敵は女」と吹聴する輩が一定数いますからね。ほんと、「女の敵は女」論者は邪魔でしかないです。

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「女vs男」ではないですよ

こんな映画に対して「男だって苦労している」と反論してくる人が出現するのも日常茶飯事ですが、別に「女」と「男」の生きづらさを天秤にかけているわけではありません。

そもそもあの学校というコミュニティにおいて権力を振るっていたミッチェルは、他の男子にだって抑圧を強いているわけです。そしてそのミッチェルを甘やかしているのは、スポンサーや世間体ばかり気にする学校という存在そのものでもあります。男らしさを有害に変えているのです。

だからこれは「性差別に苦しむ子たち」vs「性差別を生み出すシステム」との戦い。ジェンダーで対立が分断されるわけではないです。

その点も『モキシー 私たちのムーブメント』はしっかり押さえており、「先生は誰の味方になります?」と教師を巻き込んだり、またセスのような平等を常に意識してくれる男子が仲間になってくれたり、ヴィヴィアンの始めた活動はジェンダーも年齢も超えたムーブメントへと発展します。

もちろんこんなことはそう簡単に上手くいかないかもしれません。日本の学校でも生徒たちが主体となって制服の規定を変えたり、いろいろな活動を耳にします。でも実際は困難にぶちあたることも多いでしょう。シスターフッドなんてそうお手軽にはいきません。

それでも本作を観ていると「みんなで一致団結して学校を変える」という綺麗事と言われそうな行動でも案外と実現できる気がする、そんな後押しをもらえるんじゃないでしょうか。

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不満点もないわけでは…

そんなこんなで作品の方向性としても全肯定してあげたくなる『モキシー 私たちのムーブメント』なのですが、不満がないわけでもない…。

まず、本作は第3波フェミニズムを踏襲していくわけですが、その過程は確かにハツラツとしていてワクワクしてきます。やっぱりビキニ・キルの曲はいいなとか、そんなことを思いつつ、この無邪気で体当たりな反骨精神にこっちもノリノリです。

ただ、作品自体は母世代による「自分の娘に私たちの青春を重ね合わせたい」という願望ありきで終わっている気もしなくはないです。言い方を変えれば、ノスタルジーのような…。

本作は第3波フェミニズムから第4波フェミニズムへと移行しないといけないのですが、そこまで頭が回っていないのではないか。

実際、作中では第3波フェミニズム的課題(差別社会への創作による反発)はクリアするのですけど、第4波フェミニズム的課題に関してはかなり粗雑にスルーされてしまっています。

例えば、終盤でエマが自分はミッチェルにレイプされたと告白するのですが、そのレイプ告発をストーリーテリング上のオチに使うだけで、その後にどうするかという一番大事な部分は欠けてしまっています。性被害のサバイバーに対してこれではあまりにもお粗末では、と。

また、ヴィヴィアンの親友であるクラウディアの件も残念です。彼女はアジア系の家柄のせいか、キャミソール一斉登校などの活動に参加できません。声を上げることに対しての抵抗感も強く、「私の苦労は白人のあんたにはわからない」と不満を語ります。そこはすごく大切なポイントで、最初はこの側面を描いてくれるならこの映画も期待できると思いました。

ところが終盤はなんだかんだでいつの間にかヴィヴィアンとクラウディアは仲直りしており、例の白人特権の問題は放置されてしまいます。これじゃあ、アジア系だから控えめな性格なんでしょ?というステレオタイプを強化しているだけな気がする…。

セスとの恋模様や、母の恋模様も、全体を見ると蛇足というか、物語に恋愛を入れるべきというおなじみのお決まりに従っているだけでしかなく、それこそ第4波フェミニズムが打破しようと頑張っている敵なんじゃないのかと思うのですが…。

私個人の理想の終盤を挙げるなら、あの一斉ストライキの場で、壇上に立ってスピーチする役割をヴィヴィアンはクラウディアに譲ってあげていたら、良い着地になったのかなとも思います。白人が譲るということは大事ですからね。その際、母にできなかったことを娘がやってみせたという、第3波から第4波への改善を提示できるとなおさら良かったです。

レイプ告発の件も、学校と生徒が連携して被害相談の場を構築するような、そういうアフターを描いてあげていれば、もっとサバイバーに寄り添った内容になったのではないでしょうか。

本作の最後のような、各自が熱唱して”はい、お終い”という雑なエンディングは無しの方向で。

それでも『モキシー 私たちのムーブメント』は今の時代を生きる若者にとってのひとつの参考ページになる映画ではあったと思います。

声高に叫ぶことは大人げないことではない、むしろそれを否定することの方が大人げない。作中ではティーンが親世代から学ぶのですが、実際は大人がティーンから学ばないといけません。

私も自分が10代の頃は全然何もできない人間でした。でも今は頑張って社会を変えようとする10代がいればそれを全力で支援しようと思っています。

不屈の精神を共有しましょう。

『モキシー 私たちのムーブメント』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 66% Audience 73%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★
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関連作品紹介

10代の女子が連帯するフェミニズム青春作品の感想記事です。

・『The Wilds ザ・ワイルズ 孤島に残された少女たち』

・『ベビー・シッターズ・クラブ』

・『セックス・エデュケーション』

作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『モキシー 私たちのムーブメント』の感想でした。