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『Mr.ノーバディ2』感想(ネタバレ)…家族には奉公、敵には暴行

Mr.ノーバディ2

それが父の仕事です…映画『Mrノーバディ2』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Nobody 2
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2025年10月24日
監督:ティモ・ジャヤント
Mr.ノーバディ2

みすたーのーばでぃつー
『Mr.ノーバディ2』のポスター

『Mr.ノーバディ2』物語 簡単紹介

ごく普通の中年男性として妻と子どもたちとの家庭も持っているハッチ・マンセルは、殺し屋としての腕も持ち合わせていたが、以前にロシアン・マフィアと揉めてしまい、多額の借金を返済することになり、昼夜を問わず裏社会の任務をこなしていた。その結果、家庭は崩壊寸前になり、家族関係を修復するため、一家でちょっとしたバカンスを計画するが…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『Mr.ノーバディ2』の感想です。

『Mr.ノーバディ2』感想(ネタバレなし)

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まだ続くあの男の憂鬱

家族との付き合い方がわからない…そんな男性は珍しくないようです。ずっと家父長的な社会の中で従順に会社に奉仕してきた男性は、途端にとりあえずの目的(会社で仕事をする)を見失うと、居場所がわからなくなってしまいます。家でどう過ごせばいいのか、家族と何を話せばいいのか、そんな基本すらもおぼつかない…。まるでよそ者な気分にさえなってしまう…。

そういうときこそ、適切なメンタルケアなどのサポートを受けて、ライフスタイルの模索をナビゲートする社会支援があるといいのですが、世の中のせいで有害な男らしさなんてものが個人の男性に深く根付いてしまっているので大変で…。

まあ、この映画の主人公でも眺めてセルフケアでもしましょうか。ワークライフバランスをかなぐり捨てている場合じゃないんです。バランスどころかライフが削られすぎなんです。

ということで本作『Mr.ノーバディ2』です。

本作は2021年に公開された『Mr.ノーバディ』というアクション映画の続編。製作は“デヴィッド・リーチ”、脚本は“デレク・コルスタット”という『ジョン・ウィック』コンビが揃っており、配給会社は違えどノリは一緒。セルフオマージュ満載でありつつ、居場所喪失気味の中年男性の枯れた哀愁が漂う感じがマシマシになっているのが売りでした。

「普段はバカにされているような中年のオッサンだけど、本当はめっちゃ強いんだぜ」的なカジュアルな「ハードボイルド」は日本も含めて最近のトレンドではありますが、この映画はそれを実写できっちりプロフェッショナルなアクションコーディネートでやりきる…というところが面白いです。

2作目となった『Mr.ノーバディ2』も1作目で確立した土台はそのままに、またあの男の憂鬱と共にアクションが炸裂します。

『Mr.ノーバディ2』を監督するのは、前作の“イリヤ・ナイシュラー”からバトンタッチして、“ティモ・ジャヤント”になりました。マニアなアクション映画ファンなら知っている、『シャドー・オブ・ナイト』『ロスト・イン・シャドー』を手がけたインドネシア出身の人です。『Mr.ノーバディ』シリーズは、非アメリカ人を監督に起用するルールでもあるのかな…。

今回の映画が気に入ったら、“ティモ・ジャヤント”監督の過去作も観てみるといいと思います。多くは動画配信サービスで観れるので。

主演は当然、前回から続投の“ボブ・オデンカーク”。この人あってこそのシリーズになっています。

共演は、“コニー・ニールセン”“クリストファー・ロイド”、“RZA”は引き続き参加。さらに、今回の悪役として“シャロン・ストーン”が新規参入です。大物俳優を引き込むのに定評のあるシリーズにもなってきたな…。これも“ボブ・オデンカーク”の人望のなせる技かな。

『Mr.ノーバディ2』を観て世のオッサンたちも活力をもらってください。まずは基礎体力トレーニングからです。ウォーキングでも何でもいいので、できることから始めてくださいね。マッチョにならなくてもいい、心を健康にできればいいのです。

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『Mr.ノーバディ2』を観る前のQ&A

Q:『Mr.ノーバディ2』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:1作目の映画を観ることをオススメします。
✔『Mr.ノーバディ2』の見どころ
★ボブ・オデンカーク流の自虐的なユーモアセンス。
✔『Mr.ノーバディ2』の欠点
☆基本は前回を踏まえているので新鮮味は薄い。

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 3.0
やや残酷な暴力の描写があります。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『Mr.ノーバディ2』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

月曜日、火曜日、水曜日、木曜日…。ハッチ・マンセルは朝早くに仕事に出かけ、夜遅くまで帰ってきません。でもサラリーマンではありません。

借金を返済するために殺し屋の仕事を続けるしかないのです。以前にちょっとしたことでロシアン・マフィアとトラブルになり、おカネ絡みでやらかしてしまいました。そのツケがまだ残っています。

家で留守番するだけの妻のベッカとの関係はまたも悪くなり、子どもたちのブレイク(ブレイディ)サミーとも疎遠になっているのは自覚していました。これでは今までと同じです。何かしないと家族が崩壊してしまいます。少なくとも自分だけが置いていかれているような…。

金曜日の朝、なんとか時間を作って朝に会話しようとしますが、ギクシャクするばかり。こんな状態では近所づきあいもできるわけないです。もうこの家には自分の居場所はないのか…。

ハッチは妻ベッカに家族の仲を深める計画を考えると提案しますが、車で仕事に出た妻は何か言葉を飲み込んでいるようで、何とも言えない不安しか残りませんでした。

今日のハッチの仕事は1件だけ。それでも大変でした。この業界では予想外のことは当たり前。同業者や妨害者はいくらでもいるのです。倒しても倒しても相手は沸いてきます。

しかし、借金はまだまだあります。裏業界のバーバーはさらに仕事を命じますが、ハッチはこれ以上はできないと拒否します。自分の身よりも家族との生活が犠牲になることがツラいのでした。

ハッチは休暇をとれないかと頼みます。しかし、バーバーはこれが本質だと背中に言葉を投げかけるだけ。それでもハッチは必死です。

そんなとき、ハッチはプラマービルへの旅行を思いつきます。国内のリゾート地です。やや古いかもしれませんが…とにかく今は藁にも縋る気持ち。ここに家族で行けば状況は好転するかもしれません。昔、ハッチも子どもの頃に家族で行ったことがあるのです。

家族を集めてこの旅行の必要性を切実に訴え、なんとか承諾を得ます。祖父デヴィッドも引き連れ、さっそく車で出発です。車内は久々の家族らしい温かさに溢れていました。

プラマービルに到着。ハッチは張り切っていました。できることを精一杯して、家族に奉仕しよう…。

いざ満喫しようとウォーターパークに行きますが、事件か事故かで緊急閉園らしく、代わりのホットドッグの券をもらいます。そこでダイナーに行き、昔、子どもの頃にここに来た思い出に耽っていると、保安官に絡まれます。

さらにゲームセンターで息子のブレイクと父親らしく会話のきっかけを作ろうとしますが上手くいきません。

しかし、ブレイクは同年代の少女に優しくしたせいで、地元の同年代の不良マックスに喧嘩を売られてしまいます。ハッチは必死に場を収めようとしますが、一触即発。怒りをぐっと抑えるものの…。

それが理由で、その地元のマックスの父であり遊園地のオーナーでもあるワイアット・マーティンと、彼と手を組む保安官アベルの怒りを買ってしまい…。

この『Mr.ノーバディ2』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/10/25に更新されています。

ここから『Mr.ノーバディ2』のネタバレありの感想本文です。

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犬は死にません!

監督は変わりましたけど、引き続き“デレク・コルスタット”が脚本しているだけあって、前作の1作目と同じ、肩の力を抜いたオフビートなノリはそのままな『Mr.ノーバディ2』でした。

まず冒頭の取調室からして前回を踏襲し、今作にいたってはついにを登場させましたからね。前は子猫だったのですけど、今回は犬なので、もろに『ジョン・ウィック』のパロディを直球でぶち抜いており、そのうえ「こっちの映画は犬は死にませんからね!」とドヤ顔でのアピール。

しかも、今作は終盤に本当に盛大なドンパチが繰り広げられるわけですけども、その最中に放り込まれているあの犬(本当にただの巻き添え参戦)、しっかり1ミリも傷を負わないという製作陣による鉄壁バリアで守られていて、完全にギャグになっていました。

“デレク・コルスタット”はあれだな、もう一生「犬は殺さない」という誓いを立てたんだろうな…。

前作との決定的な違いがあるとすれば、もう私たち観客は(少なくとも1作目を観賞済みなら)この主人公であるハッチ・マンセルがめちゃくちゃ強いオッサンであることを知っている…ということですかね。なのでギャップを楽しむメリハリはかなり抑えられ、前半はいつ爆発するかわからないハッチの我慢大会をこちら側はニヤニヤと眺めることになります

家庭でのあの居場所の無さっぷりといい、このあたりはさすがの“ボブ・オデンカーク”流のユーモアセンス。たっぷり楽しませてくれます。

それにしても今作の舞台を、あのこう言っては何ですが、絶妙にしょぼそうな地方リゾートタウンにしたのは大正解でしたね。マンセル家のような労働者階級(殺し屋は労働者階級なのか?という根本的な疑問はさておき、たぶん“デレク・コルスタット”の世界では殺し屋にも格差社会があるのでしょう)にとって、まあまあ、せいぜいこの程度の家族旅行が関の山だろうという…。

こんなこと書いている私もなのですが、私も世間で有名な高級リゾートなんて行ったことないですし、家族旅行ともそれほどもはや縁がなく、たいして経験がありません。だから頑張って考え抜いたあげく「このレベルの観光」しか思いつかないというハッチの限界に妙に親近感は沸きます。

でも、ハッチは殺し屋としてそれなりにあちこちに行っているので、実質的には旅行とかしているはずなのですよ。それなのに「家族旅行」のノウハウがない…ってあたりがいかにも仕事人間だった男のぎこちなさで世知辛いものがあります。

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同じような父はあちこちにいる

『Mr.ノーバディ2』のアイディアとして良かったのは、主人公のハッチだけではない、もうひとりのいっぱいいっぱいな「父」を登場させたことですかね。

あのプラマービルを管理していたワイアット・マーティン。彼も一児の父親ですが、実は裏社会の大物であるレンディーナに手先にされてしまっていました。ハッチ同様にこき使われる下っ端です。

ワイアットを演じるのはプエルトリコ系の“ジョン・オーティス”であり、おそらく移民家系としてせっせと地域に奉仕し、家計を守るために生業を築き上げたのでしょう。でも横からやってきたレンディーナにいとも簡単に主導権を握られ、コントロールを奪われてしまう…。

このシリーズはふざけたコメディではありますが、その背景には、下流・中流の人たちがほんの一部の大富裕エリート層に従うしかないという現実の階級社会の風刺があり、そこがしっかりしています。

それにしてもあのシンジケート率いる“シャロン・ストーン”演じるレンディーナは、『ジョン・ウィック』の世界観にいる殺し屋業界を実効支配するエリート組の佇まいそのまんまでした(何度も書きますけど、一応、この二作は同一のユニバースとかではありません)。

しかし、それに対する反撃のやりかたはやっぱり安心の『Mr.ノーバディ』シリーズらしさ。『ジョン・ウィック』ではあれはやらないでしょう。

遊園地を活かした盛大な待ち伏せトラップで迎え撃つ作戦は、一度は「こんなことできるかな」と思い浮かべたことのあるアホな戦術を全部盛り込んでくれて、大いに笑える展開でしたね。まあ、ボールプールに地雷をわざわざ仕掛ける意味はあるのか?とか、ツッコミはいくらでもできますよ。でも、プール滑り台串刺しトラップとか、Z級映画でやるようなやつをちゃんと見れるのはいいじゃないですか(謎の納得)。それをオッサンたち(爺もいる)がやっているんですよ。最高です。

残念な点があるとすれば、“ティモ・ジャヤント”監督の持ち味である、血生臭い壮絶な死闘と苛烈な連続アクションがたっぷり満喫できるシーンが乏しかったことですかね。作中のあの小型遊覧船上にての戦いで小指が切り落とされるあたりに一瞬だけ“ティモ・ジャヤント”味がでていますけど、本来はあんなものじゃないですからね。“ティモ・ジャヤント”監督が本気出したら、内臓とかドバドバ飛び出しているし、指は全部無くなってますよ。

これについてはこのシリーズのバランスやレーティングとかをもろもろ考えた結果なのだとは思いますが…。実際のところはかなり数の人が死んでいるのですけども…。

バイオレンスはさておき、あのハッチのマンセル家、状況としては何も解決していないどころか、地味に問題が上乗せされてしまっていて、なんだか将来が心配です。ベッカがハッチの戦闘をサポートしたところで、このままだと夫婦が過労で共倒れですもんね。今回の一件でさらに裏業界に貸しを作ってしまってもいるし、大丈夫なんだろうか…。

『Mr.ノーバディ』シリーズには、安寧の退職のしかたというものを提示していってほしいものです。世界中の全“殺し屋”が参考にしたいだろうから…。

『Mr.ノーバディ2』
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

以上、『Mr.ノーバディ2』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)Universal Pictures ミスターノーバディ2

Nobody 2 (2025) [Japanese Review] 『Mr.ノーバディ2』考察・評価レビュー
#アメリカ映画2025年 #ティモジャヤント #ボブオデンカーク #コニーニールセン #クリストファーロイド #シャロンストーン #殺し屋 #家族 #父親 #東宝東和

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シネマンドレイク

ライター(まだ雑草)。LGBTQ+で連帯中。その視点で映画やドラマなどの作品の感想を書くことも。得意なテーマは、映画全般、ジェンダー、セクシュアリティ、自然環境、野生動物など。

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