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『ナルヴィク』感想(ネタバレ)…Netflix;戦争では中立は容易く破られる

ナルヴィク

戦争では中立は容易く破られる…Netflix映画『ナルヴィク』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Kampen om Narvik
製作国:ノルウェー(2022年)
日本では劇場未公開:2023年にNetflixで配信
監督:エーリク・ショルビャルグ

ナルヴィク

なるびく
ナルヴィク

『ナルヴィク』あらすじ

第二次世界大戦。ノルウェーは中立を宣言していたが、ナルヴィクの港町は兵器産業の鉄鉱石の出荷地として重要な拠点となっており、ドイツやイギリスの双方と関係を持っていた。しかし、ある日、このナルヴィクに突如として爆発と炎があがる。中立の体裁は脆くも崩れ去ったこの町で、ひとりの兵士とその妻、そして幼い息子は、戦乱の中、生き残るためにどちらにつくかの選択を迫られることになっていき…。

『ナルヴィク』感想(ネタバレなし)

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中立の脆さをノルウェーは歴史で伝える

2022年2月から本格化したロシアによるウクライナ侵攻はほぼ1年が経過しようとしており、戦況は長引き、人命はもちろん、経済も含めて深刻な影響を世界に及ぼしています。そしてこの軍事侵攻は国際情勢に変化をもたらそうとしています。

とくにプーチン大統領が主導するロシアの強硬な姿勢は周辺国に危機感を与え、対抗策を考えざるを得ない状況にさせました。ある程度このロシアとは露骨に対立構図にならないように距離を置いてきた国々も以前のままではいられなくなってきます。

スウェーデンフィンランドはロシアによるウクライナ侵攻を受け、2022年5月に北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請しました。すでにNATOに加わっているデンマーク、アイスランド、ノルウェーはこれを歓迎しており、これによって北欧は一丸となってNATO側に立つことになります(ただし、トルコはスウェーデンのNATO加盟を支持しないと言っているので、どうなるかはわかりませんが…)。

北欧諸国はなんとなく中立的なイメージがあります。確かに第二次世界大戦時は、スウェーデン、ノルウェー、アイスランドなどは中立を宣言していました。

しかし、実際はそんな単純にはいきませんでした。「中立」という言葉は、理想的な立ち振る舞いのように思われがちです。私たちも「中立」でいることが良いことだと考えてしまうこともありますし、自分は「中立」だとひとりで勝手に納得している場合もあります。けれども、現実では「中立」を維持するのは極めて困難です。「中立」というのは”ありそうで実は実在しない”幻みたいなものなのかもしれません。

今回紹介する戦争映画はその中立の脆さというものを私たちに突きつける作品です。

それが本作『ナルヴィク』

本作はノルウェーの戦争映画であり、第二次世界大戦におけるノルウェーの歴史の一端がわかります。描かれるのはノルウェーの北極圏寄りでスウェーデンと国境を接している「ナルヴィク」という町で起きた事件、いわゆる「ナルヴィクの戦い」です。ここで何が起きたのかは映画『ナルヴィク』を見てもらえればよく理解できるので、今説明することではないのですが、中立だったナルヴィクの町があっけなく戦争に巻き込まれていく姿が映し出されます。

主人公は兵士の若い男、そしてその男の妻である女性。この別々の2人の視点で並行して進むのが特徴です。これもまた中立に関わる皮肉な展開が待っています。

2022年はヨーロッパの各所を舞台にした戦争映画がいくつも見られました。デンマークの『その瞳に映るのは』とは同じ北欧諸国の翻弄される姿が重なります。

『ナルヴィク』は、アカデミー賞含む各地の賞を総なめにした2022年のドイツ映画『西部戦線異状なし』と比べると映像的な迫力や緊張感ではさすがに見劣りするでしょう。

でもやはりその国にはその国ならではの歴史があり、その反省や教訓があったりするもので、この『ナルヴィク』にもノルウェーにしか伝えられないような戦争に対するメッセージがあると思います。

ただでさえ、今は前述したとおり、ウクライナ侵攻のせいで国際情勢における中立の足場は崩れ去ってしまっている最中なわけです。「中立でいれば安心だよね」と気楽に考えている人もいるでしょう。

別に中立自体が悪いわけではないですが、この『ナルヴィク』を観れば、「中立ってこうもあっさりグチャグチャに消え失せるのか…」と痛感できるでしょうし、自分の立場を再考するきっかけになるのではないでしょうか。

『ナルヴィク』はノルウェーでは2022年に公開されたのですが、製作はもう少し前から行われており、コロナ禍とウクライナ侵攻で公開を延期にしていたそうです。結果的に図らずも世界情勢とこの映画が一致してしまったのは運命なのかもですが…。

『ナルヴィク』を監督するのは“エーリク・ショルビャルグ”。この人は、2015年から開始された『Occupied』というノルウェーのドラマを手がけており、このドラマの内容がまた凄くて、環境政策のために化石燃料の生産を停止したノルウェーの政策転換がヨーロッパ全土のエネルギー事情に変化をもたらし、その機に便乗したロシアがノルウェーを占領しようと動き出すという近未来の政治スリラーなのだそうです。まさにロシアによるノルウェー侵攻を架空ですが描いちゃっているドラマ。ちょっとこっちのドラマの方も観てみたくなる…。ウクライナ侵攻の現実を目にしてしまった今、このドラマも全然フィクションだとは思えなくなってしまうのが悲しいですけど…。

ひとまず現実に起きた過去の歴史を振り返ることから始めましょう。『ナルヴィク』は日本ではNetflixで独占配信中です。

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『ナルヴィク』を観る前のQ&A

Q:『ナルヴィク』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2023年1月23日から配信中です。
✔『ナルヴィク』の見どころ
★第二次世界大戦におけるノルウェーの歴史がわかる。
✔『ナルヴィク』の欠点
☆やや長い期間の出来事を描くので緊張感は持続しない。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:戦争映画に関心あるなら
友人3.5:明るい話ではない
恋人3.0:夫婦愛は描かれる
キッズ3.5:戦争の歴史を学ぶ
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『ナルヴィク』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ナルヴィク』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):ドイツとイギリスの狭間で

第二次世界大戦が勃発し、ノルウェーは中立を宣言。しかし、スウェーデンがドイツ兵器産業の鉄鉱石の85%を供給しており、鉱石は汽車で運ばれ、ノルウェーのナルヴィクから出荷されていました。ドイツと敵対するイギリスは鉱石を止めることを最重要視しており、緊張感は密かに高まっていましたが、それをナルヴィクの住人は知る由もなく…。

1940年4月8日、イギリス海兵隊がノルウェー海域に進出。ノルウェー兵一団が中立監視員として派遣され、常時任務にあたっていました。

その監視任務から船でナルヴィクに帰還したノルウェーの大勢の若い兵士たち。港に到着して気を抜いていると、上官から休暇を取り消すと命令が下ります。しかし、地元のひとりの兵士であるグンナル・トフテは「息子の誕生日がある」と言って一時的に抜け出す許可を貰います。

グンナルが走って到着したのは、妻のイングリッドが働いている近くのホテルです。給仕係として働いているイングリッドは、イギリスとドイツ両方の領事向けのパーティで仕事しており、ドイツ側の通訳もしてあげていました。

グンナルとイングリッドは裏の厨房でキス。その後、外にいた幼い息子のオーレのもとへ。「パパ!」と元気に抱き着いてきてくれ、グンナルは汽車のオモチャをあげます。そのオーレはグンナルの父が面倒をみてくれていました。

家で久しぶりに家族が揃います。

夜、グンナルは遅れながらも急いで身支度し、家を出ます。港で爆発音と火があがっていました。通りかかった兵によれば船が撃沈されたらしいです。

武装もなしで港にに辿り着くと、ノルウェーの兵が一斉に武器を構えてドイツ兵を相手と睨み合いをしていました。上官同士が会話し、話をつけた上官は「引け」と指示。ぞろぞろ歩いて撤収します。

一方、イングリッドの家の裏手にドイツ領事の人が急用があると現れ、ドイツ語に堪能な人が他にいないため、彼女は通訳を任せられます。このホテルはドイツが全て使用するそうです。けれどもイングリッドはイギリス領事の人を密かに山の中にある狩猟小屋へと避難させてあげもしました。

イングリッドたちは街を退避した方がいいと判断し、船が使えないので汽車に乗ります。

対するグンナルの部隊は線路沿いを行進を続けており、グンナルは線路を爆破するためのダイナマイトはどこにあるのかと聞かれます。駅にいた父に電話で聞きますが、イングリッドと息子は列車に乗ったと知ります。

線路に爆弾を仕掛けていると民間人が大勢歩いていきます。イングリッドと息子もいます。列車はドイツが止めたらしいです。「早く離れろ」と退避させながら、線路を辿ってスウェーデンへ行くように送り出しますが、オーレはトンネルで父を待つと言って動きません。

グンナルはドイツ兵と交戦することになり、結果、捕虜になってしまいます。

イングリッドはドイツ兵に保護され、ナルヴィクに戻ってドイツ領事ヴッソウと市長の通訳に奔走することになりますが、イギリスがナルヴィクに砲撃を開始し、状況は悪化。

さらに厳しい選択を迫られることになり…。

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呑気に中立を過信していると…

『ナルヴィク』の序盤は何とも呑気な風景で始まります。緊張感のようなものはまるでないのが印象的です。

中立監視員として任務に就いている若いノルウェー兵士の和やかな空気。それもそうです。自国にいるのですから、緊迫する方が難しいでしょう。

そしてナルヴィクが地元であるグンナルはもっと気が緩んでいます。家でわずかに滞在した後に、夜中に現場に戻る際、港であれだけ爆発と炎が上がっていても、武器無しでふらふらと現れますからね。ドイツ兵との膠着状態の中、棒立ちするグンナルの浮きっぷりといったら…(仲間から武器を借りてなんとなく混ざっている姿が情けなくもあり…)。

この時期、イギリスは「ウィルフレッド作戦」という、ナルヴィク周辺のノルウェー領海にドイツの輸送船を攻撃するための機雷を設置する行動を開始しており、もう中立とか言ってられる状況ではないのですが、まだナルヴィクの人たちは兵士も含めてその立場を理解できていません。現場の人間なのに…。

また、その呑気さが別の角度で伝わるのはホテルの場面。序盤ではイギリスとドイツの領事を集めてちょっとしたパーティが行われており、ナルヴィク側は双方と取引をすることで前向きな関係性を構築して利益がもたらされることを期待しています

つまり、中立的な姿勢は儲けになると考えているわけで、イギリスが海に機雷を設置して、ドイツが兵士配備を強化している真っ只中にも関わらず、なかなかに図太い姿です。それだけ「ナルヴィクに実害がでるわけない」と思っていたということか…。

映画として俯瞰して見ると「これはもう中立じゃないじゃん!」とわかるのですけど、当の本人たちはやはり灯台下暗しなのか、自分たちの置かれている状況を冷静に分析はできないのかな。

この中立が完全に吹き飛んだのだとわかる本作の象徴的なシーンが、あの線路の爆破です。供給ルートとなる線路を爆破することでナルヴィクの戦略的な立ち位置は後退する…はずでしたが、現実はこれがナルヴィクの中立の終わりの始まりでした。

一方で冒頭から明らかに中立じゃない振る舞いをしているのは、グンナルの父で、ヒトラー嫌いな発言から察するにやはり過去の経験が身に染みているのでしょうか。ここではジェネレーションギャップが窺い知れますね。中立という概念に若い世代ほど依存して過信してしまっているという…。

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戦争は起こってしまったらもう終わり

戦禍が増すにつれ、グンナルとイングリッドはそれぞれの立場で中立を捨てて行動せざるを得なくなってきます。

グンナルの方は、ドイツ側の捕虜になった後、山岳兵にこき使われつつ、塹壕にて駆け付けたフランス&ポーランド&イギリスの連合軍の仲間に加わり、そこですっかりそちら側の空気に馴染んでいきます。

一方のイングリッドはもっと複雑です。職場のホテルではドイツ領事の通訳をする傍ら、イギリス領事を匿ってもいる。こうなってくると中立というか、常にどちらを裏切るかを迫られる厳しいポジション。結局、怪我をした息子オーレのためにイングリッドはイギリス領事の隠れ家をドイツ側に教えてしまいます。

グンナルがやっと地元のナルヴィクに帰還したとき、イングリッド&息子と感動の再会を果たせますが、単純に喜ぶわけにはいきませんでした

イングリッドはドイツ側につかざるを得ない状況にあったので、町の人たちからも冷たい目線を向けられ、居心地が悪くなっています。連合軍と行動してきたグンナルにとってもイングリッドの態度はショックです。しかし、イングリッドもそうしないと守れないものがあった…。

中立が消えてしまい、戦争で立場がすれ違ってしまった夫婦。たとえ夫婦のような親密な間柄でも、戦争というのは容易に引き裂けてしまうのだということ。

本作『ナルヴィク』が何よりも悲惨なのはこの映画の物語の後の顛末です。これで「ナルヴィクを取り戻しました。めでたしめでたし」になればいいのですが、そうはなりません。

イギリスの砲撃で滅茶苦茶にされた後、今度はドイツ側の空襲を受け、町は焼け野原に…。歴史上の表向きは「第二次世界大戦における連合軍の歩兵部隊の最初の勝利」なんて気前のいい評価もありますが、ノルウェーのナルヴィクの人たちにとっては双方から蹂躙されて捨てられただけの苦々しい体験です。

ちなみに同時期、連合軍はナチス・ドイツのフランス侵攻で敗戦し、映画『ダンケルク』で描かれた大脱出が展開していました。

本作『ナルヴィク』は多少展開が急ぎ足ではありましたが、ノルウェーが身をもって経験した中立の儚さを伝えるには意義ある作品でした。

ナルヴィクを見ているとものすごく日本と結び付けてしまいたくなります。日本もナルヴィクと同様に戦争では重要な戦略上の地理的位置にありますからね。とてもじゃないですけど、中立なんて言ってられない。だからといって今の政権のように増税してまでも防衛費をやたらと増やしまくりたいという姿勢を支持できるわけでもない。

戦争には勝ち負けはありません。起こってしまったらもうそれは終わりなのです。守るなんて都合のいいこともできないし、戦争の最中に利益を上げるなんてこともできない。

そもそも戦争をいかにして起こらないようにするか。戦争に幻想を抱かないようにするには…。

今のナルヴィクには戦争博物館があり、過去の戦争の悲惨さを後世に受け継いでいこうと努力しています。こういう取り組みこそ大切なのではないでしょうか。

『ナルヴィク』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
6.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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関連作品紹介

第二次世界大戦を題材にした戦争映画の感想記事です。

・『スヘルデの戦い』

作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『ナルヴィク』の感想でした。

Kampen om Narvik (2022) [Japanese Review] 『ナルヴィク』考察・評価レビュー

戦争
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