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アニメ『パリピ孔明』感想(ネタバレ)…若い女性のキャリアアップに必要なのは孔明?

パリピ孔明

若い女性のキャリアアップに必要なのは…アニメシリーズ『パリピ孔明』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Ya Boy Kongming!
製作国:日本(2022年)
シーズン1:2022年に各サービスで放送・配信
監督:本間修

パリピ孔明

ぱりぴこうめい
パリピ孔明

『パリピ孔明』あらすじ

中国後漢末期から三国時代の蜀漢の武将にして軍師として数多の伝説を生み出し、五丈原の戦いで病死した諸葛亮孔明。しかし、人生は2度目のルートに入る。諸葛亮孔明が目を覚ますと、そこは現代日本の東京都渋谷だった。その見慣れぬ世界で出会ったのは、駆け出しのシンガーソングライター・月見英子。素晴らしい歌声を持つが、夢を叶える自信はない。そんな彼女の導くべく軍師になることを諸葛亮孔明は誓うのだった…。

『パリピ孔明』感想(ネタバレなし)

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諸葛亮孔明、何しに日本へ?

「諸葛亮(しょかつ りょう)」という武将が今から1800年以上前の中国に存在しました。当時は実名以外に字(あざな)というもうひとつの名前を付けるのが習わしで、諸葛亮の字は「孔明(こうめい)」。なので「諸葛亮孔明」としても知られています。

この諸葛亮孔明は軍師として多くの武勲があり、それは無数の逸話になっているほど。中国では賢さの象徴的アイコンとして語り継がれており、今でも「知識や知恵に基づいて事前の準備を入念に行って物事に取り組むことができる人」のことを「事前諸葛亮」と呼ぶそうです。最近は中国国内で新型コロナウイルスの発生にいち早く気づいて警告をだし、その先見の明ながらも当初は大衆に信じてもらえず、感染によって亡くなった“李文亮”医師が「事前諸葛亮」として讃えられていました。

そんな諸葛亮孔明ですが、なぜか中国のお隣であるこの日本でも人気です。日本でも「賢い策士」の象徴として主に借用されることが多く、やけに軽々しく認知されています。

でもなんでなんですかね。日本の歴史じゃなくてわざわざ中国の歴史上の人物が日本でも賢人の代表として定着してしまっているのは…。「三国志」が人気だからなのか。にしたってここまでとは…。

ともかく日本では諸葛亮孔明はもはやフリー素材みたいになっており、なんでもかんでも賢ければ「孔明」と重ねられるノリすらあります。

今回紹介するのは、そんな諸葛亮孔明にリスペクトを捧げつつ、とことん遊び尽くしたアニメシリーズです。それが本作『パリピ孔明』

『パリピ孔明』はあの諸葛亮孔明が現代の日本の渋谷に生まれ変わって出現するという、いわゆる「転生もの」です。死んだときの姿ではなく、多少は若返って転生しているのですが、ほぼほぼオッサンです。中国の由緒ある歴史を体現する諸葛亮孔明と、日本の今の若者たちの文化の発信地として盛況である渋谷のギラギラした街並み…この全くミスマッチな二者が同じ画面に存在する。それだけでもネタとして完成されています。

“かつての歴史中の人物が現代に蘇る”系の物語ならこれまでもいくつもありましたし、例えば『帰ってきたヒトラー』なんてまさにそうですが、この『パリピ孔明』は現代日本で何をするのか。

本作では諸葛亮孔明が、駆け出しのシンガーソングライターの若い女性のために軍師として知恵を貸して夢を後押しするという物語が主軸に描かれます。あの諸葛亮孔明がイマドキな若者の隣で、音楽がガンガンなるクラブで、最先端ポップ・ミュージックの業界を攻略していく。そんなのあり!?というようなストーリーですが、これぞ日本ではフリー素材化している諸葛亮孔明だからできる、反則的な荒業の引用ですね。

普通に考えたら諸葛亮孔明は軍師であって「戦」の専門なのであり、音楽は専門外だろう…と思うのですけど、この『パリピ孔明』の諸葛亮孔明は音楽であろうと何であろうとサクサクとその知略で突破していく、凄い人物ってことになっています。まあ、あんまり細かいことを考えたら負けというか、リアリティは抜きにしてネタに振り切っている前提の作品ですからね。

でも楽曲面はかなりきっちりやろうとしていて、複数のキャラクターの声は通常の声優ですが、歌うときだけ音楽アーティストに専属で担当させていたりします。

諸葛亮孔明に導かれる主人公の若い女性の歌唱パートを担うのは、ニコニコ動画の「歌ってみた」で主に活躍する歌い手の“96猫”。そのライバルのキャラクターの歌唱を担当するのは、Youtubeなど話題の歌い手である“Lezel”。やっぱり今の日本の芸術業界は絵師とか歌い手とか、個人ベースの活動への依存が増えており、それがアニメ作品製作にも影響を与えていますね。

ラップをするパートもあって、そこも本格的なMCバトルをしていて見ごたえがあります。

原作は“四葉夕卜”、作画は“小川亮”による漫画が基になっており、漫画自体は2019年に始まっており、アニメ自体は2021年末には完成させていたそうなので、かなり企画は早かったのでしょうね。そのせいか、アニメの物語は序盤メインでややボリュームは少なめなのですが、こういう原作とアニメが並行しているときはいろいろ難しいんだろうな…。

アニメーション制作は、『サクラクエスト』『神様になった日』『白い砂のアクアトープ』などの「P.A.WORKS」

それにしても「パリピ」ってまだ死語じゃなかったのか…。もう私は何が死語で何が今でも使われている単語なのか全然わかんないよ…。

夢はあるけど何をすればいいのかわからない…そんな迷える人は『パリピ孔明』で元気をもらってください。とくに諸葛亮孔明をよく知らなくてもわかるシンプルなサクセスストーリーです。

日本語声優
置鮎龍太郎(諸葛亮孔明)/ 本渡楓(月見英子)/ 千葉翔也(KABE太人)/ 木村昴(赤兎馬カンフー)/ 山村響(久遠七海) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり3.5:気軽に観やすい
友人3.5:仲間との話題のネタに
恋人3.5:アニメ好き同士で
キッズ3.5:夢を応援してくれる
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『パリピ孔明』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『パリピ孔明』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):孔明ならなんとかしてくれる

1800年前、中華は「蜀」「魏」「呉」の3つに分かれ、覇権を争っていました。後に「三国時代」と呼ばれる戦乱の時代です。蜀漢の初代皇帝「劉備」は三国鼎立の時代を貫いた偉大な人物。その傍らにいたのは軍師である諸葛亮孔明でした。諸葛亮孔明の補佐は冴えわたり、戦の流れを掴みます。

しかし、234年。五丈原で司馬懿と長期に渡って対陣した地で、諸葛亮孔明は病魔に蝕まれていました。床に臥す諸葛亮孔明は「次の人生は命のやりとりなどない平和な世界に生まれ変わりたいものだ」と口にし、そのまま息を引き取ります。

でも…目を覚ます孔明。全く見慣れない場所です。私は死んだはず…。

ふと目の前に奇怪な格好をした人たちが「ハッピーハロウィン」と騒いでいます。「ここが地獄なのですね」と納得する孔明でしたが、「お前、孔明じゃねぇ? めっちゃなりきってるんじゃん」とその怪しげな者に話しかけられ、クラブという場所に連れて行かれます。

そこで腹の底まで響く騒音に苦しんでいると、奥のひときわ目立つ場所にひとりの女性が立ち、歌い始めました。それは孔明の心を夢中にさせます。あれは地獄の歌姫か…。

その歌が終わり、孔明はその女性に近寄って感想を述べます。「先ほどの美しい歌声、感服いたしました。屍の軍勢を率い、英霊たちと一戦を交えたい」…そんな意味不明な言葉にややドン引きする女性。その女性は「英子」と名前を呼ばれて離れていきます。

時間は経過。

BBラウンジで夜の仕事を終えた月見英子は、朝の街を帰路のために歩いていました。静かな路地裏を歩いていた英子は、あのクラブで唐突に話しかけてきたオッサンが座り込んで寝ているのを発見。「なんという素晴らしい歌声…」と寝ぼけており、このまま放置もできないので、家に連れ帰ります。

孔明は英子の部屋で目覚めます。どうやらここは地獄ではないようで、しかも鏡とやらを見ると、若き自分の姿がありました。もしかして蘇ったのか…。

「申し遅れました。私、姓は諸葛、名は亮、字を孔明と申します」と挨拶。見るもの全てに驚く孔明に英子も困惑です。スマホ、ペットボトル、時計、加湿器…。そんな中で、孔明はウィキペディアを読んで蜀の滅亡を知ります。ここには見知った顔はいないのです。

英子はギター片手に歌い出し、孔明は昔の友を思い出して涙します。そして「あなたの歌は人を元気にしますね。私、この時代の音楽というものに大変興味を持ちました。しかしまだ私は無知。もっともっと見聞を広めたい」と言い、BBラウンジで働くことに。

オーナーの小林は「お前が孔明だっつうならなぜ馬謖を街亭の守りにつかせた!」と疑問をふっかけ、なんだかんだですぐに意気投合。「こいつ超孔明じゃん、採用だ!」と話がつきます。

英子はオーナーに許可を貰い、またステージで歌います。オーナーは「大手の事務所に入ったほうがいいのに…あいつを裏切るような真似はするなよ」と孔明に釘を刺します。

英子になぜ音楽をするようになったのかを聞くと、学校で居場所を感じられずに生きていくのが嫌になったとき、オーナーに拾われ、たまたま連れて行かれたクラブのライブである歌手をパフォーマンスを生で見て震えたと語ります。しかし、英子は歌手の夢を諦めようかとも考えていました。オーディションに落ちまくっており、才能がないのではと凹みます。

それを黙って聞いていた孔明は宣言します。

「英子さん、自信を持ってください、あなたの歌に救われた人間が目の前にいるのですから。あなたにはあなたの想いを伝える力がある」「私があなたの軍師になります。いつでもご命令ください」

そう言われ、「もうちょっとだけ頑張ってみる気になってきたんですけど」と笑顔を取り戻す英子。

孔明の軍師の技がこの現代日本でも光るときがきました。

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“孔明”版の『マイ・フェア・レディ』

『パリピ孔明』は諸葛亮孔明が現代日本に転生して音楽業界で策を活かして覇権を目指すという、表面上は完全にネタに突っ走った作品で、確かにビジュアルは間違いなくネタありきです。

ただ、物語のフォーマットとしてはそんなに異色ではなく、要するに土台は“ジョージ・バーナード・ショー”による戯曲「ピグマリオン」であり、孔明版の『マイ・フェア・レディ』です。

あまり恵まれない立ち位置にいる若い女性を、知識人である男性が訓練して、その女性を立派に変身させるというもの。

この『パリピ孔明』がユニークなのはその「男性」の役割を担うのが孔明だということです。

月見英子は家に居場所は無く、自殺未遂までしており、相当に追い詰められた過去があります。今はなんとかBBラウンジでの歌のチャンスによって支えられていますが、しかしその歌手になる夢も叶える糸口も見つかりません。才能はじゅうぶんにあるはずなのに…。

孔明というキャラクターの起用が面白いのは、この「ピグマリオン」的関係性における男女のジェンダー不平等な構造が払拭されているということ。孔明は英子から金銭を貰うわけでもなく、若い女性を従える優越感に浸りたいわけでもなく、とにかく一切の見返りを求めません。純粋に軍師としてその身を捧げてくれます。なのでシュガーダディ的な側面がゼロです。それを象徴するように、第1話で英子が孔明を家に連れ帰ったシーンで、普通はこんな若い女性が見知らぬオッサンを部屋に入れさせるなんてしないのですが、だからこそこの孔明の人畜無害さが際立ちます。本作における孔明はほぼ男性ですらない、ジェンダーが「孔明」になってますね。

でもこういう孔明みたいな存在感は今の若い女性(とくに貧困女性)に最も必要なものなのでしょう。女性蔑視的な要素はひと欠片もなく、恋愛伴侶規範的な軸に縛られることもなく、ただただ支え抜いてくれる。ほんと、夢のような理想的メンターであり、まさしく軍師ですね。

現実のそういう立場に陥っている女性には、良からぬ男性的存在がどうしたって群がって搾取しようとしてくるのですが、本作の英子には孔明という存在が舞い降りる。孔明が転生することよりも、若い女性にとってこんな男性が存在することの方がマジカルな出来事ですよ。

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孔明はどことなく論客に似ているけど

『パリピ孔明』はそういう孔明というマジカルなパーソンの降臨によって救われていく若い女性のサクセスストーリーとして気持ちはいいのですが、諸々の全体面ではネジの締め方が緩いところも多く、そこは気になる人もいるはず。

とくに音楽業界の描き方はかなり画一的です。まだ序盤のせいだからなのかもしれませんけど、もう少しリアリティがあった方が孔明の「石兵八陣」とかの「HEIHOU!」な策がどう繰り出されていくかのハラハラが楽しめた気がします。これだとずっと孔明の手のひらの上すぎて、勝負が決まっている試合をただ見ているだけになってしまうし…。

AZALEAを出し抜く後半の展開も、ある意味での孔明とは真逆なダメな男性メンターである唐澤プロデューサーと対比させるのは良いとしても、最終的に円満解決すぎる感じもあったかな。あそここそジェンダー構造を強く意識した物語の仕掛けがあると一気にリアルさが増して、久遠七海たちの葛藤も深みが出ると思うのだけど…。

私は音楽業界を知っている人間ではないですけど、『ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている』とか『ミス・アメリカーナ』とか、若い女性のアーティストを扱った音楽ドキュメンタリーを見ていると、ほぼ確実にジェンダー構造の壁が当事者である若い女性には立ちはだかっているわけで、題材としては無視できないでしょうし、それをどう料理するかで作品は味をいくらでも変えられる楽しさもあるでしょう。

この『パリピ孔明』を見ていて私も諸葛亮孔明がなぜ今の日本の若い世代でも受け入れられるのかなんとなく分かった気がします。たぶん「とりあえず頼れてしまう“わかりやすい”万能型な人」というのを世間は欲してしまうのでしょうね。それこそ「論客」とかがもてはやされる今の現状も同じ。日本にとって孔明は軍師というか論客なんでしょう。だからあまり専門性を問わなくてもいい。もっともらしい発案で相手を圧倒して勝っていく(論破する)、そこに自分が乗っかるのが楽しかったりする。

ただし、現実では一部の論客著名人は本作の孔明とは似ているとすら言えないほどに、無自覚なダメさも安易に露呈したりしています。「現実の論客は孔明ではない」ということはわかっておきたいところです。パリピな孔明はやっぱりフィクションの中にしかいないのです。

『パリピ孔明』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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・『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』

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作品ポスター・画像 (C)四葉夕卜・小川亮・講談社/「パリピ孔明」製作委員会 ぱりぴ孔明

以上、『パリピ孔明』の感想でした。

『パリピ孔明』考察・評価レビュー