続編はもっとスケールアップ!…映画『SING2 シング2 ネクストステージ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2022年3月18日
監督:ガース・ジェニングス
恋愛描写
SING シング ネクストステージ
しんぐねくすとすてーじ
『SING シング ネクストステージ』あらすじ
『SING シング ネクストステージ』感想(ネタバレなし)
また歌う!みんなで歌う!
2022年も続くコロナ禍。2020年の夏頃には収束するのかなと内心では思っていた私も今振り返ればバカでしたね…。さすがに10年後でも第25波が襲ってきているということはないと思うけど…。
そんなパンデミックにともなう規制のせいでいろいろとストレスが溜まっている人もいるでしょう。当然です。そんなときはどうすればいいのか。厚生労働省のメンタルヘルスのサイトでは「歌を歌う」ことが推奨されています。これは実際に科学的にも有効性が示されていること。人間は歌を歌うなど大きな声を出すとスカっと感情が解放されて爽快感を味わえるのです。
とはいえ今のご時世、なかなか歌を歌う場所もないのが困りもの。カラオケに行くにしても感染リスクが心配です。歌を歌ってあげくに感染したら意味ないですからね。
こうなってくると「歌を聴く」というのもストレス解消には効果的ですのでそちらに切り替えるのも良しです。けどどこで歌を聴くか。いつものスマホなどから音楽をイヤホンに流して聴くのでは慣れ切ってしまってあまり効果はないかもしれません。でもライブ会場にも行きづらい。
新鮮な体験ができて臨場感あふれる音響でエキサイティングに盛り上がる…そんな音楽に触れ合える場所…はい、映画館ですね(いつもの誘導)。
ということで今回の紹介する映画で最高の歌を大スクリーン&音響設備で全身で感じましょう。そのうってつけの作品とは本作『SING シング ネクストステージ』です。
本作はミニオンですっかり日本でも馴染んだ「イルミネーション」。このイルミネーションのアニメーション制作スタジオ「Illumination Mac Guff」がフランスのパリにあるため、コロナ禍によるロックダウンでスタジオが一時閉鎖。作品が作れない事態に陥りました。そんなピンチを経験しつつもコロナ以降の最初の劇場公開作となったのがこの『SING シング ネクストステージ』です。
イルミネーションのシリーズ化している人気作と言えば、ミニオンでおなじみの『怪盗グルー』シリーズ、そして2作目が2019年に公開された『ペット』シリーズがあるのですが、もうひとつの人気シリーズとして快調なのが『SING シング』シリーズ。1作目となる『SING シング』が2016年に公開。そして続く2作目が2021年12月(日本では2022年3月)に公開です。
『SING シング』シリーズはタイトルそのまんまのとおり「歌う」ことがメインの物語です。経営危機にあった劇場の運営者がエンターテインメントへの夢だけを誇りに、歌の才能を持つ原石をかき集めて再起を図るというストーリーはシンプル。でもその王道が観客の心を震えさせました。世界観はキャラクターが動物の擬人化になっており、子ども向けではあるのですが、やはり「歌」という国籍老若男女問わない普遍的な要素が前面にあるせいでついつい感動させられてしまうパワーがあります。まさに歌の力です。
2作目となる『SING シング ネクストステージ』は1作目のキャラクターたちがさらなる夢の大舞台に立つべく奮闘します。やっていることは同じ。でも歌の力は色褪せません。それにコロナ禍で苦境に立たされたリアルな劇場業界の境遇とシンクロしているというのも無視できない気もします。今の時代に必要なのは、皮肉も嫌味も無しの純真無垢なエンターテインメント賛歌なのかもですね。
監督は1作目と同じく“ガース・ジェニングス”。新キャラクターの声として、“ボビー・カナヴェイル”、“レティーシャ・ライト”、“チェルシー・ペレッティ”、“エリック・アンドレ”などが活躍。また、本作は音楽業界の人たちも声優に起用するのが定番なのですが、今作では“ファレル・ウィリアムス”、“ホールジー”、さらには“ボノ”までもが登場し、歌を披露します。“ボノ”は「U2」としてオリジナル曲「Your Song Saved My Life」を提供までしてくれているので、“ボノ”さまさまですよ。
1作目の『SING シング』のときは日本語吹き替えの気合いの入れようも好評で、とくに歌に対するこだわりが評価されてもいました。日本語吹替版の音楽プロデューサーである“蔦谷好位置”の指揮のもと、日本ならではのハイクオリティな音楽体験ができるのも魅力でした。
2作目の『SING シング ネクストステージ』でもそこを継承しています。声優として「BiSH」の“アイナ・ジ・エンド”、「SixTONES」の“ジェシー”などが参加し、さらに「B’z」の“稲葉浩志”が重要キャラを務め、滅多にない座組で独自に盛り上げてくれています。
溜まりに溜まったストレスは『SING シング ネクストステージ』で発散してください。
『SING シング ネクストステージ』を観る前のQ&A
A:1作目の『SING シング』を観ておくとキャラクターのここまでの経歴や背景がわかってより楽しめると思います。
オススメ度のチェック
ひとり | :前作が好みなら |
友人 | :前作好きの友達と |
恋人 | :気軽なエンタメ好きに |
キッズ | :子どもでも安心で楽しめる |
『SING シング ネクストステージ』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):さらなる夢へ!
舞台に魅せられたバスター・ムーンは自分の劇場を持つことに成功しましたが、その劇場は経営危機。なんとか一発逆転しようとオーディションを開催し、そこに集まったのは個性豊かなメンバーでした。
25匹もの子育てと家事に追われる主婦のロジータ、自分らしさ全開で歌えないことにフラストレーションを溜めるパンクロックシンガーのアッシュ、ピアノでの弾き語りで天性の才能を秘めるジョニー、極端に恥ずかしがりやで歌に自信もないミーナ、自分のマイペースでテンション高めのパフォーマンスをするグンター…。
そんな仲間が集結したことでバスター・ムーンの劇場は大勢の観客を熱狂させ、晴れて問題は解決し、夢は叶ったのでした。
それから月日は経ち…。
ミーナが不気味な森をライトを持ちながら必死に逃げ、穴に落ちます。そこは幻想的な場所。小さな扉が開き、覗くとウサギがギターを弾いている? 猫姿のロジータと帽子のジョニーが歌を奏で、客席の後ろからはグンターが芋虫の姿で登場し、ノリノリのショーが開幕します。
バスター・ムーンの劇場の今の目玉、「不思議の国のアリス」をモチーフにしたミュージカル劇は大盛況です。ステージ裏のバスター・ムーンも調子が良さそうです。今日の劇は失敗できません。なぜなら大切な人が客席にいるからです。
舞台の天井付近の上から事務員のミス・クローリーがその人を監視しています。その人とは、エンターテイメントの聖地であるレッドショアシティでカリスマ性を発揮するクリスタル・エンターテインメントのトップに立つジミー・クリスタルのアシスタント、スーキーです。彼女に認めてもらえば今度はジミーのもとでパフォーマンスできるかもしれない。バスター・ムーンの次なる夢です。
ところがスーキーは劇の途中で席を立って帰ってしまいました。ショックで引き出しの中でいじけていると、この劇場を応援してくれている有名歌手のナナ・ヌードルマンが咤激励。レッドショアシティに行きたい。諦めるわけには…。バスター・ムーンは決心します。
クラブでアッシュを誘い、他の皆も集めて、バスに乗り込みます。目指すはレッドショアシティ。自分たちでアピールしてやるのです。
さっそく到着。ジミー・クリスタルが審査しているオーディションを脇から覗き込みます。素晴らしいパフォーマンスをしている人たちばかりでしたが、ジミーは厳しく、次々と失格に。
流れでバスター・ムーンたちもステージへ。でも始まって数秒で失格。これで夢は終わりなのか…。そのとき、グンターがクレイ・キャロウェイを出演させる宇宙SFミュージカルをパっと提案。伝説のロックスターであるクレイ・キャロウェイは引退済みで、こっちにコネもない、完全なグンターの妄想です。でも意外にもそれに関心を持つジミー。即興でパフォーマンスし、プレゼン。するとジミーは乗ってくれます。そして言いました。「3週間以内にショーを立ち上げろ」
バスター・ムーンたちのさらなる夢への1歩が開幕です。
王道とギャグのバランスの良さ
『SING シング ネクストステージ』は1作目の展開をなぞって発展させた王道の構成です。単純にさらに大舞台を目指しているというだけ。奇をてらったことは無し。逆に言えば、歌のパワーで観客はじゅうぶんに感動させられるという自信の表れでしょうか。それでも全体的に程よくまとまっており、前回でテンポを掴んでいるせいか、作り手もこの世界観を扱うのに慣れている感じがします。私は1作目よりも快適さを感じたかも。
『スタートレック』に似た宇宙船も出てくる壮大な宇宙SFミュージカルという今回のステージも突拍子もなく思えますが、前作で「月」という要素が重要性を持っていたことに対する、今度は宇宙へ飛び立つという展開も意外にロジックのある構成なんじゃないでしょうか。グンター、あいつわかっているな…。
今作の新キャラも良い存在感でした。ポーシャ・クリスタルは扱いによってはかなり残念なオチで終わりかねないのですが、父の支配から気持ちよく解放されて、自分らしく伸び伸びとエンターテインメントの世界で開花していくという、2作目でも初志貫徹の成長を見せてくれます。
ジミー・クリスタルがホッキョクオオカミということで、どことなく家父長的コミュニティからの飛躍が作品の根底にあるテーマな気がしてきますね。
一方でクレイ・キャロウェイ(名前の由来は実在のミュージシャンのキャブ・キャロウェイ)はライオンになっており、妻を失っての自信喪失という彷徨いが描かれており、同じ男キャラでもジミーと対比されています。
そんな中で個人的にはやっぱり『SING シング ネクストステージ』と言えば王道の中に紛れ込むギャグの秀逸さも見どころ。前回は失意のバスター・ムーンが自分自身の身体で洗車し始めるという爆笑シーンがあったのですが、今回も序盤の失望でずぶ濡れになって前作を彷彿とさせます。ずぶ濡れコアラは面白いというのはすっかりインターネットミームなのかな。
今作のギャグ名シーンは序盤の潜入場面ですね。あそこでビリー・アイリッシュの「bad guy」が流れるのですが、この曲をあえてギャグ全開の映像で起用できるのはやはりイルミネーションだけですよ。みんなでモップをかけて場に紛れ込む(紛れ込めていない)シーンのしょうもなさといい、選曲センスといい、イルミネーションのこういう才能はやっぱりスゴイな…。
ミス・クローリーの出番も増えているのも良かったです。あの人、もう事務職では収まっていない、完全に影のフィクサーだな…。
あのキャラのエピソードの不満も…
『SING シング ネクストステージ』は映像面も1作目より格段に細部まで細かく作り込まれており、ラストのパフォーマンスも圧巻だったのですが、いくつかの欠点として気になるポイントもあり…。
例えば、今作の悪役となるジミー・クリスタルですが、彼は最後は悪行もバレて逮捕されるのですけど、ここの善悪はかなりフィーリングで片付けられている感じは雑でしたね。確かに暴力的な行為は擁護不可能でアウトなんですけど、バスター・ムーンたちも建造物侵入とか普通にしているし、犯罪の境界がだいぶゆるゆるじゃないかな、と。そもそも資金面でも曲がりなりにも当初はパトロンだったジミーの不正が明らかになったらバスター・ムーンたちのキャリアにも傷がつかないのかなとも思うし…。
また、ミーナの今回のエピソードはこれでいいのかとも…。彼女は今回はペアを組んでロマンスを歌うことになるのですが、お相手となるダリウスとどうも上手くいきません。そこでキスシーンがあることに動揺するミーナに、バスター・ムーンは全くお構いなしなのですが、さすがに昨今のエンターテインメント業界における性的強要を考えれば、もうちょっとフォローアップのいるシーンだったんじゃないかと思います。ミーナ、まだ10代だよね?
ミーナはアイスクリーム・ボーイのアルフォンゾという男性にひとめ惚れし、彼を思い浮かべることで本番を乗り越えるのですが、なんかずいぶん女性単身に我慢させるオチですし…。恋愛ムードで誤魔化した感じも…。せめてアッシュやロジータなどの女性陣がミーナの不満を代弁してバスター・ムーンに一喝するか、もしくはベテランのスーキーからインティマシー・コーディネーターを参加させるのがプロとして当然だと指導されるとか、そういう展開があっても良かったのではと…。
あと、前作のマイクというネズミのキャラ、どこへ消えたのだろう…。どっかで助けに入るのかと思ったのに…。
ともあれシリーズの可能性としてまだまだ頑張れる気もするので、これは3作目もありだと思います。イルミネーション作品で一番批評家評価も高いシリーズだし…。次はワールドワイドになるかな。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 70% Audience 98%
IMDb
7.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
関連作品紹介
イルミネーション制作のアニメ映画の感想記事です。
・『ペット2』
・『グリンチ』
・『怪盗グルーのミニオン大脱走』
作品ポスター・画像 (C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved. SINGシングネクストステージ
以上、『SING シング ネクストステージ』の感想でした。
Sing 2 (2021) [Japanese Review] 『SING シング ネクストステージ』考察・評価レビュー