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『スニーカーシンデレラ Sneakerella』感想(ネタバレ)…こんなシンデレラ・ストーリーが見たかった

スニーカーシンデレラ

こんなシンデレラ・ストーリーが見たかった…映画『スニーカーシンデレラ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Sneakerella
製作国:アメリカ(2022年)
日本では劇場未公開:2022年にDisney+で配信
監督:エリザベス・アレン・ローゼンバウム
恋愛描写

スニーカーシンデレラ

すにーかーしんでれら
スニーカーシンデレラ

『スニーカーシンデレラ』あらすじ

ニューヨークのクイーンズの小さな靴屋に、クリエイティブな才能あふれる少年がひとりくすぶっていた。自分のスキルを活かして最高のスニーカーを作ることが夢だったが、義父と意地悪な義兄弟のせいもあって、そんな未来は実現しそうにない。しかし、ある日、友人と一緒に向かった憧れのブランドのスニーカーお披露会の場で、魅力的な少女と出会い、運命を感じる。その少女はスニーカー界の王族のプリンセスだった。

『スニーカーシンデレラ』感想(ネタバレなし)

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シンデレラ・ストーリーの変化球

すっかり古臭くなった物語のテンプレ。その代表格が「シンデレラ・ストーリー」です。

恵まれないような立場にいる若い女性が、ステキなお金持ちの特権的な男性に出会って恋に落ち、魔法の助けもあって運命的に惹かれ合ってそのまま結ばれる。そういうハッピーエンド。

この「シンデレラ・ストーリー」を確立させたのが、1950年のディズニー製作のアニメーション映画『シンデレラ』。この作品以来、この定番はすっかり定着しました。

しかし、今や猛烈に批判されている物語構造でもあります。大人しくて受け身なヒロイン像、結婚こそが女性の幸せであるという恋愛伴侶規範的な固定観念…。元は民話だったのですが、それをディズニーがいかに歪めたのかは、以下のメディア記事にも専門家によって詳しく解説されているのでそちらを参照してください。

近年はバックラッシュ的な動きもあって、この批判されがちな「シンデレラ・ストーリー」を保守層や極右的な人たちがこぞって擁護してあえて崇め称える(絶対不変の教典の扱いをする)ような反応もあったり…嫌な感じになりました。

一方で、その批判はじゅうぶん承知のうえであり、それを意識したアップデートというべきアレンジ作品もいくつも生まれ始めています。

日本ではAmazonプライムビデオ独占配信だった“ケイ・キャノン”監督の『シンデレラ』(2021年)は物語の骨格は同じですが、マイノリティな人種の女性を主人公に据えて、キャリアを目指す主体的なヒロイン像としてリメイクし、全体的にポップになっていました。

また、ディズニーも自身の生み出した「シンデレラ・ストーリー」の呪いを解こうと必死です。

2020年の『フェアリー・ゴッドマザー』は「“女の幸せは結婚”って古くない? そもそも今の結婚の価値観は多様だよ?」という魔法の前提をおちょくるようなメタっぽい視点で作られたラブコメ・ファンタジーでした。

そんな中、ディズニーがさらにその「シンデレラ・ストーリー」を骨格ごとかなり大胆に改変するチャレンジングな映画を贈り込んできました。

それが本作『スニーカーシンデレラ』です。

『スニーカーシンデレラ』は「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信されたのですが、私もなんとなくとりあえず観るか…という感じで鑑賞したら、これが予想以上に良作で、良い映画を作ったなと製作陣を褒めたい気分。もちろんベースになっているのはあのシンデレラ・ストーリーなので、話の展開はすぐに察しがつきます。ここがこうなって、次にああなって、それで最後はハッピーエンドなんでしょ…とおおよその予測はつくし、予定調和です。でも個人的には現行の「シンデレラ・ストーリーもの」としてはベスト級に好きな一作かなと思います。

『スニーカーシンデレラ』はとにかくアレンジ個所が多いです。まず男女の立場が逆転しており、恵まれない境遇にいる夢見がちな男子がプリンセス的な女子に出会うという主軸になっています。そして舞台が現代のニューヨークであり、黒人が主役に。さらにキーアイテムの「ガラスの靴」は「スニーカー」に変わっています。

つまり、この『スニーカーシンデレラ』はストリートのブラック・カルチャーを強く反映した物語構造を持っており、ヒップホップ・ミュージカルで展開されるのもまた特徴的。

正直、こんなシンデレラ・ストーリー作れるなんてやればできるじゃないか!…もっと早くディズニーはこれを作るべきだったよ!…と、そんな気持ちですよ。

このジャンル革新な『スニーカーシンデレラ』を監督したのは、“エリザベス・アレン・ローゼンバウム”。これまではドラマ『新ビバリーヒルズ青春白書』や『MACGYVER/マクガイバー』『栄光へのスピン』などを監督してきた人物です。

俳優陣は、主人公を熱演するのは『IT イット』でも活躍していた“チョーズン・ジェイコブス”。もともとミュージシャンとしても活動していたこともあり、今作ではその音楽センスを披露してくれています。『IT イット』では酷い目に遭うばかりでしたから、幸せそうにしている姿を見るとホっとする…。

共演は、こちらもシンガーで『ジャスト・ビヨンド 怪奇の学園』などにでていた“レクシー・アンダーウッド”、NBAの元バスケットボール選手で“ジョン・サリー”、ドラマ『ジニー&ジョージア』の“デヴィン・ネコダ”など。

『スニーカーシンデレラ』は「Disney+」でサクっと観れるので気軽にどうぞ。軽快な音楽を聴きながら、前向きな元気をもらえます。

日本語吹き替え あり
石谷春貴(エル)/ 髙橋ミナミ(サミ)/ 金子睦(キラ)/ 根本泰彦(グスタポ)/ 四宮豪(トレイ)/ 山野井仁(ダリウス)/ 東内マリ子(リブ) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり4.0:王道好きな人にも
友人4.0:気軽に観やすい
恋人4.0:異性愛ロマンスあり
キッズ4.0:夢を応援してくれる
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『スニーカーシンデレラ』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『スニーカーシンデレラ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):このスニーカーに愛と夢を詰めて

お伽噺は遠い異国だけでなく、すぐそばにもあります。ニューヨークのクイーンズにも…。ここに心優しくクリエイティブなひとりの少年がいました。最高のスニーカーを履けば翼が生えたように羽ばたけると信じて育ったエルは、彼の住む世界がどんなに足を引っ張ろうとも純真です。お気に入りのスニーカーを履いて外へ飛び出し、みんなハッピーな理想を実現して…。

という夢を妄想することができますが、現実は厳しいです。今のエルは、義理の父親トレイの経営する小さな靴屋のショーウィンドウでスニーカーを並べる仕事をしているだけ。遊ぶなと自分にだけ仕事を押し付けられ、しかも義理の兄弟であるゼリーとステイシーは意地悪。地面に縛り付けられたまま飛び立つこともできないような人生でした。

友人のサミと用事があったのに、みんな出かけてしまった店内で意気消沈するエル。でもここでじっとしているのもバカらしい。思い切って勝手に閉店にして出かけます。

サミと合流後、近所のグスタボの土運びを思わず手伝ってしまうエル。困っている人は放置できません。グスタボは大きな庭を持っており、そこには今は亡き母のロージーの花畑もありました。

それが終わり、サミと地下鉄へと滑り込みます。サミとスニーカーのトークに花を咲かせ、スニーカー協定ルールで一緒にスニーカー愛を共有。エルには得意技があり、それはスニーカーのデザインです。サミのスニーカーを分析し、その場で独自にアレンジしていきます。最高だとサミもご満悦。「才能あるよ」と褒められますが、自分でスニーカーを作ろうとはしません。母の死からその熱意は失ってしまいました。

エルとサミがウキウキで出かけた目的は、スニーカー界の王族と称されるダリウス・キングの新作スニーカーのお披露目がマンハッタンであるからです。店はすでに長蛇の列。これに並ぶのかと困惑していると、キラという子が親戚のふりで列に並ばせてくれます。お礼にスニーカー超能力を見せてあげるエル。靴で人柄や性格を診断し、ずばり近くの通行人の行動を的中させてみせます。

肝心のスニーカーは完売してしみましたが、エルはキラと距離がグッと近くなり、クイーンズの素晴らしさをアピールして、仲を深めます。

グラフィティ・アートの前でキラのスニーカーを診断してみせるエル。「普通すぎる。もっと個性的なのが似合うかな」と語ると、キラもどうやら心当たりがあるようです。

そう言えば店を勝手に閉めているんだったと思い出し、エルは急いで帰ります。キラは連絡先を聞こうとしますが、エルは猛ダッシュでその場を去ってしまい…。

帰った店では義父に問い詰められ、外出禁止を命じられます。

一方のキラの家はペントハウス…あのダリウス・キングの保有するビル。キラの父はダリウス・キングだったのです。姉のリブに「このスリークスじゃ一番にはなれない」と自分の意見を言うも、キラの意見は父に跳ね返されます。それでも「デザイナーを見つけて、実績を見せればいいだろう」とチャンスをもらい、キラは張り切ります。スニーカーコンまでもうすぐです。

その頃、エルはキラがダリウス・キングの娘だとサミの見せた記事で気づき、「俺は何者でもない。あの子は特別だ」と住む世界の格差を痛感しますが…。

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黒人コミュニティのスニーカー文化

『スニーカーシンデレラ』は前述したとおり、シンデレラ・ストーリーを大胆に改変した物語です。ただ、この男女を逆転させて、ニューヨークが舞台で、黒人プリンセスがいて…という「シンデレラ」設定の映画は実は過去にもありました。それがニコロデオンの『Rags』という2012年の映画です。

『スニーカーシンデレラ』はその先行作品と比べると、よりストリートの黒人コミュニティに特化しており、もっといえば「スニーカー」というアイテムの活かし方が非常に上手いです。

これ、日本人だとわからない人もいるはず。なぜそんなにスニーカーをもてはやすの?…と。私も普段はニューバランスのスニーカーを履いているのですが、たかがスニーカー。平凡な靴じゃないのか、と。

でもそうじゃない。ブラック・カルチャーにとってスニーカーは切っても切り離せない存在なのです。

スニーカー・カルチャーの始まりは1980年代。その中心にあったのは黒人の若者コミュニティでした。当時のNBAの大スターであった“マイケル・ジョーダン”などが履くスニーカーは注目を集め、黒人選手の多いバスケの影響を土台に、黒人の若者の間ではスニーカーはトレンドとなります。単なる履物では終わりません。どのスニーカーを持っているか、それがアイデンティティになったのです。ナイキやアディダスなどスニーカーのメーカーもこぞってバスケのスポンサーになり、それはヒップホップ文化にも波及し、スニーカー文化圏は現在も深く根付いています。「ブラック・ライブズ・マター」が叫ばれたときも、スニーカーのメーカーは続々と連帯の姿勢を見せており、一心同体です。

既存の「シンデレラ」においては「ガラスの靴」はただの男女を繋げるアイテムにすぎません。でも本作『スニーカーシンデレラ』の「スニーカー」はそういう道具ではなく、それ自体が自己実現そのものです。

主人公のエルもプリンセスのキラもスニーカーが軸になる。これには良い点があって、「シンデレラ」にあった恋愛伴侶規範が払拭されること。エルもキラも愛を感じて惹かれ合っていますが、恋愛ありきではない。互いの夢を支えるという一点でスニーカーによって繋がり合っているので、そこは良い作用をもたらしていたんじゃないかなと思います。

人種、出自、家庭環境…そんな枠にとらわれることなく、人は夢を抱いてそれに向かって突き進んでいいんだというメッセージを打ち出すのに、スニーカーはぴったりなのでした。

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登場人物、みんな愛らしい

『スニーカーシンデレラ』は主題のスニーカー以外にも随所に良さがあります。

何より登場人物みんな愛らしいのがいいですね。

主人公のエルの正しさのお手本としての真っ当さもいいですし、これはもちろんステレオタイプではないマスキュリニティの提示にもなっています。ルッキズムもないです。彼自身が本当に正しくあろうとしてくれるので、こちらも安心して観ていられます。

対するプリンセス・ポジションのキラ。こちらはエルと対等に描かれており、女性側も自己実現の主体性があり、エルと共鳴し合う。ハッシュタグで王子様探しをするくだりは、完全にZ世代の積極性でしたけどね。

既存の「シンデレラ」では継母家族が極端に醜く悪く描かれすぎているという欠点がありましたが、今作ではステップ・ファミリーを不幸に象徴にせず、しっかり最後は和解させます。案外と物分かりのいい義父なのでもっと話し合えばよかったのではと思わなくもないけど…。

キラも家族にギクシャクした関係性の歪を抱えていますが、こちらもそこまで家父長的な横暴さはなく、素直に娘を尊重する父親なので良かったです。

それにしても終盤でちゃんとラップバトルしてくれるのはわかっているな…。

親友のサミもナイスなキャラクターでした。あえて苦言を言うなら、サミはレズビアンみたいですけど、典型的なゲイフレンドの立ち位置で、一応はエルの義父を説得する物語上の役割がありましたが、もっとサミ自身のストーリーがあってもいいかなとは思いました。アジア系の少女が変人でもなく普通に自然体に主人公と戯れている表象はこれはこれで新鮮で嬉しかったですけどね。

魔法担当のグスタボもさりげないサポートに徹しており、魔法が主人公のスニーカーのデザインのキャリアを脅かすこともない配慮もあって、それも安堵。

まあ、最大の惜しいところは、本作の撮影がカナダで行われており、ニューヨークには見えないという部分かな。これは大人の事情でしょうがないことではあるのだろうけども。

『スニーカーシンデレラ』はシンデレラ・ストーリーの新しい道を切り開いたので、これに続く作品がどんどん生まれるといいですね。

『スニーカーシンデレラ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 100% Audience 69%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
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作品ポスター・画像 (C)Disney

以上、『スニーカーシンデレラ』の感想でした。

Sneakerella (2022) [Japanese Review] 『スニーカーシンデレラ』考察・評価レビュー