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韓国映画『三姉妹』感想(ネタバレ)…3姉妹はそれでも支え合うしかない

三姉妹

3姉妹はそれでも支え合うしかない…映画『三姉妹』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Three Sisters
製作国:韓国(2020年)
日本公開日:2022年6月17日
監督:イ・スンウォン
DV-家庭内暴力-描写 児童虐待描写 性描写

三姉妹

さんしまい
三姉妹

『三姉妹』あらすじ

花屋を営みながら元夫の借金を返済している長女のヒスクは、娘に疎まれながらも大丈夫なふりをして毎日をやり過ごしている。高級マンションで家族となるべく完璧に暮らそうとする次女のミヨンは、模範的な信徒として熱心に教会に通い、聖歌隊の指揮者も務めている。劇作家の三女のミオクはスランプに陥って自暴自棄になり、酒浸りの日々を送っている。父の誕生日を祝うため久々に集まろうとする姉妹たちだったが…。

『三姉妹』感想(ネタバレなし)

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イ・チャンドン監督が大絶賛するのも納得

個人的な話になってしまいますが、私は「兄弟」よりも「姉妹」の方が身近な存在で、家族・親戚周辺もなぜか3姉妹が多いです。逆に3兄弟は3姉妹よりは少ないですけど一応はいるので、3姉妹と3兄弟の比較…みたいなことが自然とできてしまったり…。

まあ、でも安易に3姉妹や3兄弟を類型化して語れないですけどね。やっぱりそれぞれの家庭の事情とか境遇とかで全く変わってくるものですから。

ただ、「3」という数字は他にはないマジック・ナンバーな気がしてきます。上があって、下があって、その中間がある。最小構成で世代の違いもでる(3つ子は除く)。その3人の違いや共通点というのを軸にすれば物語も描きやすいですし、映画やドラマでも格好の素材になりやすいです。

今回は3姉妹に焦点を当てたいと思います。

これまでも3姉妹を描いた映画はいくつもありました。最近のアジア系のものだと、日本の『海街diary』、台湾の『弱くて強い女たち』など、印象的な作品もチラホラ。

今回は韓国の3姉妹モノの映画の紹介です。それが本作『三姉妹』。タイトルはあまりにもそのまんまですね。

『三姉妹』はその名のとおり、とある3姉妹を描いた映画で、ソウルに暮らす3姉妹はそれぞれが実家を出て独立しており家庭を持っています。子どももいて、職もあって…と、これだけ聞くと、なんだ普通じゃないかと思うのですけど、この3姉妹の置かれた状況はちょっと…キツイ感じで…。

本作は3姉妹の人生をほんわかと描くアットホームな映画ではありません。正直に言って、映画全編に渡ってキツイです。心理的な息苦しさが半端ないです。人間、もっと言えば家族という概念のエグさが濃密に詰めに詰めきって描かれるので精神的ダメージを受け続けることになります。

ネタバレにならない程度でありきたりな表現で言えば、この『三姉妹』は「女性の生きづらさ」を主題にしたもので、昨今も『はちどり』(2018年)、『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019年)、『野球少女』(2019年)などがありましたが、それに連なる一作です。

主婦的な立場にいる大人の女性を描くという点では『82年生まれ、キム・ジヨン』に一番近いかもしれませんが、この『三姉妹』はもっとシビアでエグい雰囲気があります。まずなにせ3人分の女性の人生が折り重なって描かれますからね。その時点でエグさが3倍ですよ。それに直接的な描写があるわけではないのですが、登場人物の内面的な苦悩を描き出すのが本作はとても上手く、その演出力や演技力の妙もあって、こっちも思わずグサっと突き刺さってしまう…。私もこういうタイプの作品を見てしまうとつい自分の家族に関するあれこれと重ねてしまって感情が一気に下がるんですが、本作も見終わった後はしばらくは現実逃避したい気分になりました。

なんでもこの『三姉妹』、あの『シークレット・サンシャイン』『バーニング 劇場版』でおなじみの名匠“イ・チャンドン”監督も絶賛するコメントを寄せているのですが、確かに鑑賞するとこれは“イ・チャンドン”監督が好きそうな内容だよねという雰囲気があって…。

この『三姉妹』は非常に高く評価され、コロナ禍の2021年の青龍映画祭では主演女優賞と助演女優賞を受賞し、監督賞と脚本賞にもノミネートされました

『三姉妹』を監督したのは、“イ・スンウォン”。2015年に『コミュニケーションと嘘』で長編デビューしています。

そして本作の主演だけでなくプロデューサーも務めたのが、“イ・チャンドン”監督の『ペパーミント・キャンディー』で鮮烈に映画デビューを果たし、続く『オアシス』でも素晴らしい名演を見せた“ムン・ソリ”。本作では次女を演じています。

他の俳優陣は、“イ・スンウォン”監督のパートナーでもあり、『マルモイ ことばあつめ』やドラマ『愛の不時着』でも活躍する“キム・ソニョン”が長女を熱演。さらに2015年の『ベテラン』で映画初出演を果たした“チャン・ユンジュ”。この“チャン・ユンジュ”も見事すぎる名演です。

さらに『ひかり探して』の“チョ・ハンチョル”、『楽園の夜』やドラマ『D.P.-脱走兵追跡官-』の“ヒョン・ボンシク”、ドラマ『結婚作詞 離婚作曲』の“イム・ヘヨン”など。

『三姉妹』はあまり他人とワイワイ観るものではないですが、じっくり腰を据えて鑑賞するのがオススメです。自身の抱える言葉にできない生き苦しさをゆっくり咀嚼するような気持ちで…。

オススメ度のチェック

ひとり4.0:女性を描く韓国映画好きなら
友人4.0:悩みを語れる友と
恋人3.5:デート向きではない
キッズ2.5:大人のドラマです
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『三姉妹』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『三姉妹』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):姉妹のそれぞれ

金髪のミオクは暗い部屋でおもむろに起き上がり、机にある「酔いざましのスープです。執筆前に飲んでください」というメモを目にし、そのスープを口に運ぶも「まずい」と吐き捨てます。ミオクは劇作家でしたが今はスランプとなっており、荒れていました。

別の場所。ヒスクは病院で名前を呼ばれ、奥へ。その後、ヒスクは自身の経営する小さな花屋で仕事をしますが、どこか心はここにあらずで…。

別の場所。ミヨンは模範的な信徒として熱心に教会に通い、牧師のサポートをしたり、聖歌隊の指揮者も務めたりと、献身的です。スンウハウンという子どもがおり、夫と裕福な家庭を築ています。

この3人はマンソプ家の姉妹。長女ヒスク、次女ミヨン、三女ミオク。今はそれぞれの家庭を持っており、実家にはあまり顔を出していません。そして姉妹同士でそんなに頻繁に会うわけでもありませんでした。

ある日、教会で忙しくしているミヨンのもとにミオクから電話があります。「ちょっと気になって」と言いながら「昔食べたホヤ」の話をし出すミオク。「古びた食堂を一軒見つけたわよね、姉さんはホヤを食べた。店名を思い出せなくてイライラする」…そう酔っているのかボヤくミオクを律儀に励ますミヨンは「今度一緒に行こう」ととりあえず呼びかけます。今度は買い物中に、ミオクは酔いながら「私はゴミなの」とミヨンに電話してきたりも…。

ミオクの夫はアルコールに溺れる妻を世話し、いつもそばに置いている酒瓶を取ろうとします。義理の息子であるソンウンはそんな義理の母を奇怪なものでも見るような目で見つめ、距離をとっていました。

ミヨンは食卓で幼い娘のハウンにお祈りさせようとしますが、全く言うことを聞きません。夫は朝食時でもスマホに夢中です。そして夫が教会のヒョジュンという若い子と浮気をしていることに気づきます。

ヒスクは娘ボミと関係が悪く、でも自分ではどうすればいいのかわかりませんでした。態度の悪い娘はカネをせがみ、ヒスクは従うように渡します。ヒスクは娘に「昨日病院に行ってきたの」と切り出すも興味なさそうでした。花屋でヒスクはうずくまり、客に「癌なんです」と開き直ったように語り…。

別の日、ミヨンの教会にミオクがフラっとやって来ます。スナックをぱくぱく食べながら、随分と粗雑な態度です。ミヨンはミオクを連れ出し、一緒に食事。今度の父の誕生日に家族で集まることになっており、ミオンは「ヒスク姉さんは来るの?」と聞きますが、ミオンは「知らない」と答えます。

そのヒスクは娘のボミが活動しているステージを見に行き、娘と交友があるらしい男性に急に泣きつきながら、「娘には幸せになってほしい…」と感情を爆発させます。

一方のミヨンは夫と不倫しているヒョジュンを教会での泊まりの日の夜中に踏みつけ、顔を怪我させて脅します。さらにお祈りしないハウンを部屋に閉じ込めるなど、行動は荒れていくばかりでした。

またミオクから電話がかかってきて、ミオンは対応します。「母親の役割ってなに?」と漠然と疑問をぶつけてくるミオク。そしてふと昔の話をしだします。「私が5歳の時、大通りまで裸足で一緒に走らなかった? なぜあんなことをしたんだっけ…」

しだいに3姉妹の原点が浮かび上がってきて…。

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次女ミヨンの物語

まず次女のミヨンの話から。ミヨンは一見すると理想的な家庭を手に入れており、おそらく世間の同性代の女性からの信頼も厚いのでしょう。しかし、その内側はボロボロでした。

その上手くいかなさをずっと宗教に依存することで補ってきたのだと思いますが、それでもカバーできなくなってくると、ミヨンは苛立ちを手近の女性にぶつけ始めます。夫や牧師や息子ではない、娘やヒョジュンなどの女性たちをターゲットにしてしまう(あのヒョジュンが顔の打撲痕のまま涙を浮かべて懸命に歌うシーンも良かった。彼女にもドラマがある感じで)。

家父長的な苦しみを抱えた女性があげくには女性を抑圧する側に回っていくという構図が痛いほどによくわかる物語でした。こういう女性を日本語では「毒親」と安易に表現されたりもしますが、その背景に何があるのかを本作はミヨンの人間性を含めて丁寧に見つめていたと思います。

『三姉妹』は3人の妻の物語であるのでそこには3人の夫もいます。この夫たちも三者三様です。ミヨンの夫は実のところ妻に逆らえず、それは離婚を持ち出すシーンでも示されます。あくまで理想的な家族を構築するパーツとして機能していればいい。そういう役割ありきの存在感ですね。

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長女ヒスクの物語

長女のヒスクはミヨンとは真逆です。とても貧しくおカネにも困っているような生活状況。それでいて追い打ちをかけるように癌が発覚し、命の不安も抱えている。

ヒスクはとにかく謝ってばかりです。そして「味方をしてくれる人」がひとりもいません。友人らしき人間もでてきませんし、夫はDV的で酷い態度ですし、娘のボミとも反抗期ゆえにコミュニケーションが全然とれない。ひたすらに周囲に従順で、生きていく気力さえ感じない。ミヨンと違ってヒスクには宗教すらも救いにはならない(あのわけもわからず水に顔を沈まされるシーンとかも…)。これだったらまだ宗教が偽りでも希望になっているミヨンの方がマシなのかも…。

ヒスクの精神状態はかなり危険水域を超えており、ハッキリ言えば今すぐにでもメンタルケアを必要としているレベルです。演出も暗めで、ゴリゴリとこっちの心理防壁を削ってきますね。

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三女ミオクの物語

3人目は三女のミオク。このミオクは作家らしいのですが(どんな作品を生み出しているのかちょっと気になるけど)、作中ではそのクリエイティビティが発揮されることはありません。ほぼずっと飲み散らかし、喚き、暴れ、狂っている。私はあの汚い食べ方の演技含めて、“チャン・ユンジュ”のクセのある佇まいに夢中になってしまったけど。

そんなミオクは次女で姉であるミオンにだけやたらと甘えて依存してきます。たぶんずっとそうしてきたのでしょう。ミオクがここまで生きていられたのもミオンがギリギリで支えているおかげなのか。

そのミオクの夫の描写は独特です。この夫、妙に従順。ヒスクやミオンの夫のようないかにも家父長的な雰囲気とはまるで違います。夫というか介護ヘルパーみたいですよね。寝ぼけたミオクに「抱いてよ」とせがまれて、何の躊躇もなく言われたとおりにその場で服を脱ぎだすあたりとか、ちょっとシュールですらあるんですけど。

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2022年の最悪食事シーン“1位”

『三姉妹』の前半はこの3姉妹のそれぞれの生活模様がかなりゆったりしつつも速いテンポのシーンのツギハギで語られていきます。どれもキツイ描写ばかりなので、開始30分くらいでこっちの気分はすっかり消沈してきます。じわじわと心理的負荷がかかり続けるような…。

そして後半の父の誕生日での集結のシーン。ここの食事会の描写が本作の白眉。いやぁ、2022年のベスト最悪食事シーンの堂々の1位ですよ(そんなランキングある?)。ここでの演出の畳みかけが凄くて、もう圧倒されまくりです。

その前に唐突に挟まれる回想シーンのエグさも忘れてはいけない部分。つまり、この3姉妹の原点にある気まずさの原因が明かされます(もちろんこれだけでもないのでしょうけど)。あそこでの「通報してもらえませんか」と父の暴力を告白する幼いミオンとミオクへの大人たちの酷すぎる言葉といい、弟のジンソプを必死に守り抜いて耐えたヒスクの姿といい、この社会の歪みが強烈に突きつけられる。

それからのあの今の家族食事会。乱入したジンソプの父への尿ぶっかけに始まり、ミオンのぶちギレ、ミオクのぶちギレ、そしてボミの癌暴露からのヒスクの奇行。あの「ここは尿はかかってないので食べられますよ」と必死に食事をかっこむヒスクの形相…キツイ、キツすぎる…。

ともかくこの食事シーンのヘビーパンチ1発のためのこれまでのじわじわ攻撃だったんだな、と。

私はこの『三姉妹』である意味での諸悪の根源である姉妹の父親をそんなに描写していないのがまたいいなと思いました。変に悪役っぽく露骨に描かない。いかにも普通の、弱々しくさえも思えるほどの凡人男に見える。でも姉妹にとってはそうではないという…。

かといって本作は夫や父さえ善人なら女性は幸せだという安直な片付け方もしていません。それはミオクの夫の件でもわかる。たぶんあの夫婦は「私はおカネ目当てで結婚したんじゃない」とミオクも言ってましたけどわりとバカップルな感じだったのではないだろうか。でも上手くいかないこともある。おしどり夫婦的な能天気さが女性を救ったり、ジェンダー構造の格差を解消するわけではない…。

本作で最後に提示されるのは3姉妹が浜辺で寄り添い合う姿。ここでやっと「あ、この3姉妹はやっと肩の荷が一応は下りて3姉妹でいられるようになったのかな」と思わせる。もちろんあの後にどうなるかはわかりません。まだまだ苦痛もあるでしょう。けれどもこの3姉妹が本当に力を合わせたら牧師を絞めあげるくらいはできそうな可能性もあるような…でもそれも願望的な感覚に過ぎないのか…。

ともあれ心が揺さぶられすぎて私もよく整理がつかないのですが、『三姉妹』の終盤の絶望の極みからの一筋の光、その鮮やかな転換の技に、私は観客としてやられました。最高の3姉妹映画ですね。

『三姉妹』
ROTTEN TOMATOES
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IMDb
6.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
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関連作品紹介

3姉妹を描いた作品の感想記事です。

・『ジェーンと家族の物語』

・『好きだった君へのラブレター』

作品ポスター・画像 (C)2020 Studio Up. All rights reserved.

以上、『三姉妹』の感想でした。

Three Sisters (2020) [Japanese Review] 『三姉妹』考察・評価レビュー