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反トランスのレトリック解説とメディアの問題【トランスジェンダーと陰謀論②】

トランスジェンダリズム
このページは「トランスジェンダーと陰謀論」についてまとめた記事の「PART2(後編)」です。「PART1(前編)」から読むのをオススメします。
この記事にはトランスジェンダー差別の言説が多く掲載されています。ご注意ください。

差別や陰謀論でよく使われるレトリック

PART1(前編)」では、「トランスジェンダリズム」という言葉を中心に、トランスジェンダーと陰謀論の事例をざっくりと紹介しました。次から次へと飛び出す主張に整理がつかないかもしれません。しかし、案外と中身はワンパターンです。

すでに何度か触れていますが、反トランス論者の用いる「“トランスジェンダリズム”」という言葉自体が「レトリック」なのですが、これらの主張の多くはさらに細かい「レトリック」を駆使しています。「レトリック」とは、言語的な技巧のことです。詭弁のような論法であり、誤謬とも言えます。そしてその「レトリック」は使い古されたもので、すでに過去に別の差別で用いられた論法を流用しているだけです。

そのいくつかをピックアップしましょう。

すべり坂論法

「すべり坂論法(Slippery slope argument)」です。

これは「Aをしてしまえば、次はBが起こるに違いない。だからAはするべきではない」というもので、実際はAとBに因果関係はありません。

例:「ジェンダー・アイデンティティに基づくトイレ利用を認めれば、犯罪者が女性トイレに入ってくるに違いない。だからジェンダー・アイデンティティに基づくトイレ利用は認めてはいけない」

藁人形論法

「藁人形論法(Straw man)」です。

これは「議論において、相手の考え・意見を都合よく歪めて引用し、その歪められた主張に対してさらに反論する」というものです。

例:「トランスジェンダリズム活動家(TRA)は、ペニスのついた人でも女風呂に入れることが平等だと言っている。そんなのおかしいことです!」

極端な訴え(極論)

「極端な訴え(極論;Appeal to Extremes)」です。

これは「本来の議題とはかけ離れたあまりに極端な物事と関連させて議論しようとする」というものです。

例:「腕が2本の人が“私は腕が1本がいいから手術させてくれ”と言ってきたら医者のあなたは手術しますか? 性別適合手術もそれと同じく倫理に反しているでしょう?」

フィアモンガリング

「フィアモンガリング(Fearmongering)」です。

これは「危険が差し迫っているという誇張された噂や情報を利用して巧みに恐怖心を引き起こす」というものです。

例:「このままトランスジェンダリズムの好き勝手にさせてしまえば、女性やレズビアンの存在が滅ぼされてしまいます!」
例:「LGBTのレインボーフラッグが街のあちこちでたなびく。まるでナチスのようです!」

前後即因果の誤謬

「前後即因果の誤謬(Post hoc fallacy)」です。

これは「Aが起きてからBが起きたという事実を捉えて、AがBの原因であると早合点する」というものです。

例:「オールジェンダートイレを作ったら、そのトイレ内で子どもが不審者と遭遇した。オールジェンダートイレを作ったせいだ」
例:「男子寮と女子寮を廃止したあとに、トラブルが起きた。やはり男女は厳格に分けないといけない」

自然に訴える論証

「自然に訴える論証(Appeal to Nature)」です。

これは「自然なことだから正しく、自然ではないものは正しくない」というものです。

例:「トランスジェンダーの存在はあまりに不自然です。生物の理に反します。だから認められません」
例:「性別は“男”と“女”の2種類だけ。持って生まれた特徴で分けられる。それこそ自然で生物学的なことです」

権威に訴える論証

「権威に訴える論証(Appeal to Authority)」です。

これは「権威によって裏付けられたものは、とにかく正しいに違いない」というものです。実際は検証が大事です。権威を用いるために“疑わしい専門家”を利用することもあり、これは「偽りの権威」と呼びます。都合のいい“当事者”をここぞというときに持ち出して差別的言説を正当化するのも当事者を権威と錯覚させることによる手法であり、「権威に訴える論証」に類似します。

例:「49の州でトランスジェンダーを規制する法律が提案されている。そういう世の流れがあるというのは、それだけ正しいということだ」
例:「日本には昔からオカマ系の芸能人が普通にテレビにでているので、トランスジェンダー差別なんてない」
例:「これは私の知り合いのトランスジェンダー当事者が言っていたことだから…」

無知に訴える論証

「無知に訴える論証(Appeal to Ignorance)」です。

これは「前提がこれまで偽と証明されていないことを根拠に真であることを主張する、あるいは前提が真と証明されていないことを根拠に偽であることを主張する」というものです。

例:「性自認は科学的に証明できないから、存在なんてしていない」

純粋さに訴える論証

「純粋さに訴える論証(Appeal to Purity)」です。

これは「“真の~ではない”や”本当の~ではない”といった詭弁で主張を防衛しようとする」というものです。「真のスコットランド人論法」とも呼びます。

例:「本当のトランスジェンダーなら、他人に迷惑をかけるような主張はしない」
例:「性別適合手術をしない人なんて、真のトランスジェンダーではありません。ただの女装です」
例:「まともなトランス女性なら手術前に女子トイレを使おうとしない。それを要求してるのはまともじゃないトランスかトランスのふりをした犯罪者だ」

燻製ニシンの虚偽

「燻製ニシンの虚偽(Red herring)」です。

これは「重要な事柄から受け手の注意を逸らそうとする」というものです。論点をすり替えています。無関係な話を延々と展開するのは「チューバッカ弁論」とも呼びます。

例:「ジェンダーレストイレの最大の問題は、女性や子どもの安全性です」
※シスジェンダーしか想定しておらず、トランスジェンダーの女性や子どもの安全性は無視している。
例:「性別を自認できるなら、次は年齢や人種、動物を自認する人が現れますね」
※トランスジェンダーは自称ではなく、ジェンダー構造のトピックなので、年齢や人種など他のことにやたらと拡大させて本題をずらすのは、「燻製ニシンの虚偽」や「チューバッカ弁論」の典型例である。年齢・人種・動物の自認がありうるのかを議論させること自体が、反トランス側の思うツボとなる。
例:「トランスジェンダーへの差別ではなく、全ての国民へ
の差別がよくないと言うべきです」
※俗にいう「All Lives Matter」論法。

トーンポリシング

「トーンポリシング(Tone Policing)」です。

これは「何か声を上げた相手に対し、主張内容ではなく、相手の話し方、言葉づかい、態度、感情を批判することで、論点をずらす」というものです。

例:「なんでもかんでも“差別”とレッテルを貼るのは良くないですよ。穏便にいきましょう。気にしなければいいんです」
例:「偏見や陰謀論などと言ってばかりでは、分断を煽るだけだ」

ホワットアバウティズム

「ホワットアバウティズム(Whataboutism)」です。

これは「何かのトピックに対して“じゃあ○○はどうなんだ?”と言い返す」というものです。話題をオウム返しに相手にぶつける(もしくは話題をずらす)ことで、自分の言責を相手に押し付けることができます。

例:「陰謀論だと非難してくる人は自分こそ陰謀論者じゃないか」
例:「多様性を推進する方がむしろ多様性を狭めているんですよ」
例:「マイノリティ差別を禁止するのはマジョリティ差別だ

例:「“差別”と言った方が差別なんだ」
例:「私にはセクシュアル・マイノリティの友人がいるし…」
※俗にいう「I have black friends」論法。

誤った二分法

「誤った二分法(False dichotomy)」です。

これは「実際には他にも選択肢があるのに、二つの選択肢だけしか考慮しない」というものです。

例:「トランスジェンダリズムの危険性を訴える私に反対する人は、女性や子どものことなんてどうでもいいと思っているのでしょう」

完璧主義者の誤謬(ニルヴァーナの詭弁)

「完璧主義者の誤謬(Nirvana fallacy)」です。

これは「実際の物事を非現実的で理想化された選択肢と比べてしまう」というもので、この誤謬に陥った人は、どんな対案にも反発し、現実的な解決策を評価しません。

例:「そのオールジェンダートイレは安全とは言えない。ほら、こことか問題でしょ?」
※トイレの構造の問題点を単に改善のために指摘することと、特定のトイレの案を潰すために“完璧ではない”という理由で否定するのは、全く異なる。
例:「性別適合手術は後戻りできないので後悔する人が少なからずいる。だから危険だ」
※不可逆な手術は他にいくらでもあるが、原則として医師と患者の慎重な合意のもとで進められる。”全くリスクのない”手術などそもそも存在しない。

定義の誤謬

「定義の誤謬(Definition fallacy)」です。

これは「定義が用語を説明できない状況」で生じるものです。定義というのは「広すぎる」「狭すぎる」「曖昧」といったことが起きます。単一の定義が全てを説明するわけではありません。セクシュアル・マイノリティの各ラベルの定義は包括性を重視するコミュニティの姿勢ゆえに「umbrella term(範囲の広い単語)」として設定されることが多いです。

例:「トランスジェンダーという単語には、女装したいだけの男も含まれるんでしょ?」

事実誤認(早まった一般化)

「事実誤認(Mistakes of Fact)」です。

これは「証拠や根拠があるにもかかわらず事実を明らかに誤って認識する」というもので、「一部の突出した事例だけを紹介して全体的な事実を誤認させる」場合は、「早まった一般化」とも呼んだりもします。

例:「トランスジェンダー女性が女性刑務所で女性をレイプしまくっている。そういう事件が実際にあった!」
※典型的な「早まった一般化」である。トランスジェンダーの犯罪者も当然世の中にはいるが、実際はトランスジェンダーのほうが刑務所で性的暴行を受けやすいLGBTQ Nation)。
例:「トランスジェンダーというのは欧米の思想です。そんな思想を外から押し付けられたくはない」
※典型的な歴史的事実の誤解である。トランスジェンダーは古くから歴史があり、欧米に限らず、ジェンダーの規範に当てはまらない人は存在していた(National Geographic)。

擬似相関

「擬似相関(Spurious relationship)」です。

これは「2つの事象に因果関係がないのに短絡的に因果関係があるものとして推測する」というものです。

例:「性的暴行の加害者のほぼ99%は男性。トランスジェンダー女性は元は男性。つまりトランスジェンダー女性を性的暴行の加害者として想定するのは当然だ」
※別に「性的暴行の加害者」と「トランスジェンダー女性」には因果関係はない(実際にトランス女性が加害者として統計的に多いデータもない)。このレトリックを駆使すれば「性的暴行の加害者のほぼ99%はペニスがある。犬や猫のオスにもペニスがある。つまり犬や猫のオスは性的暴行の加害者であるから駆除すべきだ」など何でも成り立ってしまう。

多重質問の誤謬

「多重質問の誤謬(Complex question fallacy)」です。

これは「質問の前提に、議論に関わる人々が受け入れていない、あるいは証明されていない前提に基づく事柄が含まれており、“はい”と答えても“いいえ”と答えてもその前提を認めたことになる」というものです。

例:「男性器を持つ“身体男性”の人は、女性更衣室で服を脱いだり、女子トイレで下半身を露わにしていいと思いますか?」(反トランス論者は「身体男性」というフレーズをよく用いる)
※この例に挙げた質問は、反トランス活動家の“ヘレン・スタニランド”に因んで「スタニランド・クエスチョン」とも呼ばれる(Xtra Magazine)。トランスジェンダーとペニスを接合して連想させるように仕向け、この質問に「Yes」と答えさせれば「性犯罪を肯定した」とみなし、「No」と答えれば「ジェンダー・アイデンティティを否定した」と得意げになることができる。つまり、どちらの答えでも反トランス側が得をする。事実上は“回答を要求された側”へのハラスメントでしかないので、この手の質問には付き合うだけ無駄となる。
例:「反トランス本は出版されるべきだと思いますか?」
※この質問に「Yes」と答えさせれば「差別表現をしてもいいと認めた」とみなし、「No」と答えれば「言論の自由を侵害してもいいと考えているんですね」と得意げになることができる。

思考を終わらせる常套句

「思考を終わらせる常套句(Thought-terminating cliché)」です。

これは「その言葉を言えばそこで議論を終了させ、これ以上考えなくていいことにさせてしまう」というものです。

例:「差別はダメだけど、区別は必要だよね」
例:「それはデマだ!フェイクニュースだ!」
※デマだと断定するには適切な検証が必要である。

差別目的で用いられる造語

これはレトリックとはまた少し違いますが、トランスジェンダー差別目的で反トランス論者の間で用いられる造語がいくつもあります。いずれの単語もトランスジェンダーについて誤解を与えさせ、差別を助長する意図があります。

例:「場面的トランスジェンダー」「トランスエイジ」

「無知に訴える論証」とも関連しますが、反トランスの論者は「ジェンダー・アイデンティティは非科学的で立証できない」と主張します。しかし、「立証できない=存在しない」ということにはなりません。逆に反トランスの論者の主張は非科学的であると科学界は根拠に基づき指摘していますCBC Radio; Scientific American

日常的な差別的言説においてもこれらのレトリックは多用されます。トランスジェンダーへの直球の罵詈雑言はさすがに差別だと誰が見てもわかってしまうので、レトリックを使って一見すると差別でないような表現に変換する…というわけです。こうしたレトリックで変換された差別的言説は短い文章でありながら、大衆を惹きつける心地いいインパクトがあるので、SNSでも拡散されやすいです。

これらのレトリックは反トランスの論者ではない人でも、日常でつい使ってしまいがちなので、自覚的に注意するのは誰にとっても大切だと思います。

トランスジェンダリズム陰謀論は誰が広めているのか

こうしたレトリックを駆使したトランスジェンダー絡みの陰謀論。ではこれらの陰謀論は誰が広めているのでしょうか。

一般的には極右」「保守的な政治思想」「宗教右派がその最前線として挙げられます。1950年代の同性愛者への政治的弾圧「ラベンダーの恐怖」が今のトランスジェンダーを攻撃する政治的な文化戦争に繋がっているという歴史の指摘もありますLGBTQ Nation

「Fox News」「The Daily Wire」「Telegraph」「Daily Mail」のような右翼メディアの関与も盛んですTeen Vogue; Hope not Hate。より過激な極右メディアが「Fox News」を批判するなど、右翼メディア同士での内紛で、さらに過激性を増し合っている実態も観察されていますLGBTQ Nation

極右との関連はレイシズムやファシズムを監視する「Hope not Hate」でも報告されています。白人至上主義者がプライド・パレードで参加者に暴力を振るう事件も発生LGBTQ Nation。「4chan」などのカルチャーに端を発する「Qアノン」も反トランスに結びついていますThe Independent

宗教面においては、アメリカでは「キリスト・ファシズム(Christofacism)」の存在がありますThe Texas Observer。これはその名のとおり、ファシズムとキリスト教が交差する極右です。キリスト教全てが反トランスというわけではありませんが、キリスト教と反トランスの関わりは深い残酷な歴史があり、転向療法(コンバージョン・セラピー)を主導してきたのもキリスト教コミュニティでしたRebecca Jane Morgan。なぜキリスト教と右翼が結び付いたのかと言えば、メディアの存在が原因のひとつに挙げられることがありますTeen Vogue

転向療法(コンバージョン・セラピー)とは、同性愛やトランスジェンダーなどのセクシュアル・マイノリティの人を矯正する試みのことです。現在、この転向療法は科学的にも有害で、人権を著しく侵害するものとして認識されています。

日本では、神道政治連盟などの宗教右派松岡宗嗣; PRIDE JAPAN、さらに旧”統一教会”(世界平和統一家庭連合)などカルトとの関わりも指摘されたりしていますやや日刊カルト新聞。これらは自由民主党などの政治家と深い癒着があり、政権批判を避ける日本の主要メディアの体質もあって、あまり問題視されずに放置されてきました。

一方で、「反トランス=極右・右派・保守」という認識一辺倒も正確性に欠けます。

反トランスが頻繁に右翼に結びついているアメリカとは異なり、イギリスの反トランスはしばしばフェミニズムに結び付けられていると指摘する声もあります。基本的にフェミニズムはトランスジェンダーの権利を包括するものですがPinkNews、そう考えないフェミニストも一部にいます(そういう人をフェミニストと呼ぶべきかどうかは別として)。反トランスによって左派と右派が繋がっていき、「反トランス・グループは公の議論やメディアで信じられないほどのスペースを獲得している」と「Xtra Magazine」にてジャーナリストでトランスジェンダーの権利運動家でもある“オウル・フィッシャー”は述べています。イギリスだけでなくカナダも同じ状況だと伝えられていますrabble.ca

一例を挙げると、反トランスの姿勢を打ち出しているフェミニスト団体「Women’s Liberation Front(WoLF)」は極右との繋がりが指摘されていますByline Times; Science-Based Medicine。女性とトランスジェンダーを対立させたがる構図が生まれるのは、いわば「ゼロサムゲーム」の概念(例えば「トランスが勝てば女性が負けて損をする」という考え)に基づいており、こうした思考パターンは白人至上主義などと通じているとの指摘もありTruthout、極右との繋がりもこの点から相性がいいのだと思われます。

フェミニストというほどではないにせよ、教育や育児熱心な人が反トランスの沼に浸かっていくのも珍しくありません。“ステファニー・デイヴィス・アライ”という育児ブロガーだった女性は、自身の教育信念からイギリスで有名な反トランス組織「Transgender Trend」を設立するまでになりましたTransgender Map

メディア監視グループ「FAIR」は、いくつかの大手メディアが「トランスジェンダーのトピックを議論の余地があるもの」と扱うことの問題を指摘しています。「トランスジェンダーとフェミニストは対立するものである」など敵対心を煽る記事もときに平然と作られていたりしますFAIR。「The New York Times」「The Washington Post」「The Guardian」といったリベラルなメディアでさえもそのような状況に陥っていますTeen Vogue。その背景には反トランス論者と化しているジャーナリストやレポーター、ライターの存在Transgender Map、情報源の不足、取材方法の問題FAIRなどが挙げられています。

日本のメディアの状況も似ています。日本は専門家が少ないこともあり、そのメディアの政治的立ち位置に関係なく、トランスジェンダーに関する正確で適切な報道が乏しいです。大手メディアも明らかにトランスジェンダーのトピックを報じるのに慣れていない印象です。中には、露骨に反トランスの方向性で情報を発信しているメディアもあり、それがSNSで拡散され、より過激な差別発言を助長していたりもします。

メディアがよくやりがちな反トランスに加担するパターン(メディア・バイアス)
高度な専門的視点の欠如
専門知識のないライターの持論や思考実験的文章、体験レポート、ネット反応まとめ、はたまた的を射ない当事者の意見ピックアップなど、専門性がなく好奇心だけでクオリティの低い情報を伝えてしまう。
差別者側に発言の場を与える

安易に反トランス側に発言の機会を与えて権威づけを後押しし、かつそれを無批判に掲載する。または、反トランス論者を有識者として紹介・引用してしまう。
▼Bothsidesism(嘘のバランスの誤謬)
2つの主張のうち、一方の側は全く根拠がないなど有効性に問題があるにもかかわらず、有効性がある側の主張と並列に提示することで、まるでどちらも対等な主張のようにみせてしまう(FOREIGN PRESS)。「難しい問題です」などの立場を避けた論調、“中立”のように見える両論併記など。
▼Just asking questions(ただ質問しているだけ)
トランスジェンダーについて「純粋に素朴な疑問を呈しているだけである」「議論をしているだけである」というメディアの体裁であっても、結果的に差別的な言説が助長されてしまう。その「疑問」「好奇心」「学び」がマジョリティ側の視点に偏っている。
トランスジェンダー報道をめぐる不適切な日本メディアの事例
NHK
2023年3月27日にアメリカのテネシー州ナッシュビルで起きた銃乱射事件を報道した際、「容疑者は自身を心と体の性が一致しないトランスジェンダーだと認識していた」と警察の発表をそのまま注釈も無しに報じた。犯罪と不用意に属性を結び付けて報じてはならないと「Trans Journalists Association」はガイドラインで注意喚起している。また、LGBT法連合会は「LGBTQ報道ガイドライン」の中で「“体の性と心の性の不一致”という表現は不正確」と注意喚起している。
②弁護士ドットコム

2023年に日本政府内で検討が進むLGBT関連法のトピックの中で、トランス差別に反対する当事者の声明会見を報じる記事を掲載する一方、反トランス団体の会見を報じる記事 [注意!この外部リンク先は差別的主張の記事です]も同様に掲載。両者を並べることで中立的に見えるが、実際は反トランス側に有利な構図を生み出している。メディア・バイアスのひとつである「Bothsidesism」の典型例である。
– – –
※海外の事例は「FAIR」(英語記事)によくまとめられている。

厄介なのは、当事者すらも反トランス論者になりえます。トランスジェンダーではない他のセクシュアル・マイノリティ当事者が反トランス側に立つこともあれば、トランスジェンダー当事者が反トランス側に立つこともあります。トランスジェンダーと言えども、一枚岩ではなく、考え方もバラバラです。先に紹介したトランスメディカリズムを信条とする当事者もいますし、バイナリー規範的なトランスジェンダー当事者もいますし、差別構造に逆らわずに迎合することで生存しようとする当事者もいます。これらの当事者の一部が反トランスに加担することがあり、こうした反トランスの当事者団体は、今や反トランス勢力の柱です。

当事者団体を名乗る反トランスの組織の実例としては「Gays Against Groomers」などが指摘されていますThe Adovacte。これらの反トランスの組織は当事者団体を名乗っていても、反トランスの主張でのみ登場し、それ以外では活動実態がほぼないことが多いです。

結局のところ、反トランスの論者や団体は、極右」「保守的な政治思想」「宗教右派」「左派・リベラル」「包括性を支持しないフェミニズム団体・個人」「排外主義的な性的少数者団体・個人」「ちょっと面白そうかもと安易に手を出している人などの極めて広範な連合体によって支えられており、これらは直接的に結束はしないのですが、陰謀論がこれらを緩く結合するのに一役買ってしまっている状態です。

こうした陰謀論的な勢力が、性犯罪などに不安を持っている真っ当な人たちさえも抱え込んで利用してしまう構図です。一部の「“トランスジェンダリズム”」危険主張はそうやってときに正当的に見せかけ、社会的地位を得ようとしています。

つまり、反トランスの陰謀論を支えているのは、影の暗躍する存在などではないということ(それこそ陰謀論的発想です)。ごく普通の何の変哲もない一般人なのです。「自分は極右でも保守派でもないから大丈夫…」なんて考えは通用しません。何らかのメディアに触れている人ならこの陰謀論との接点はいくらでも発生します。

反トランスのレトリックを受け入れる人々は、多くの場合、そうした主張が反響し合う「エコーチェンバー」内にいると言われており(Gina Gwenffrewi 2022)、オンラインのシステム空間が憎悪を増幅させています。

「エコーチェンバー」とは、ソーシャルメディアを利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってきたり、“いいね”などを集めやすくなったり、関連記事がレコメンドされやすくなったりする状況のこと。それが有害な空間であれば、一気に極端な価値観に囲まれてしまいやすくなり、それが普通だと思い込んでしまう。

こうした反トランス主張の拡散に関して、メディアの責任は重いです。政治や宗教だけでなく、これはメディアの問題でしょう。

陰謀論が飛び交う世界で、LGBTQを学ぶには

最後に、こういう実態を知ってしまうと余計に不安になります。じゃあ、どうやって「トランスジェンダー」や「LGBTQ」について正しく学べばいいの?…と困ります。

難しいところではありますが、やはり情報に気をつけるしかありません。以下は陰謀論にて気をつけるチェック項目を整理したものです。

チェックシート
✔ センセーショナルで不安を煽る情報にはとくに注意。すぐに拡散したいと思わせる情報こそ、少し判断を保留にして冷静になろう。陰謀論は常に魅力的に見える。
✔ 数字はときに危険。図やグラフもわかりやすいが危うい。一部の数字だけが切り取られていないか?(全体の数字がわかるか、最新のデータなのか、情報源が明らかか)
✔ それが「誰」の言葉かに気をつける。もっともらしくメディアに取り上げられていたとしても、「専門家ではない人(論客・ライター)」の持論や考察にすぎないこともある。それの真実性を保証する客観的な立場の複数の専門家がいることが望ましい。
✔ 表向きは「専門家」と名乗っていても専門業界から逸脱した人物も中にはいる。反トランス論者も「専門家」を自称する。専門的な業界内でそれが「一般論」なのか「独自論」なのか、その判断は素人にはなかなか難しい。判断できないなら素直にその主張から距離をとる。
✔ 適切な「専門家」は他の専門家や業界の情報源を適度に引用するので、判断の目安に。逆に独りよがりの「専門家」は同じ業界の他者の専門家の情報や分析を集約しようとしない。
✔ 一見良さそうな「当事者」のコメントも要注意。ときに当事者のコメントは印象操作に利用されやすい。当事者のコメントは常に何かしらの誰かによって取捨選択されている。
✔ 陰謀論は「無知だから」「情弱だから」騙されるわけではない。どんな人でも誤情報やデマに流されるし、陰謀論に染まる。年齢も学歴も関係ない。
✔ 陰謀論を拡散してしまったら、つい差別してしまったら、「ごめんなさい」と謝って取り消そう。恥ずかしいと思わないで、素直に反省すれば良し。
✔ 陰謀論や差別に過去に加担してしまった人を、いつまでも咎めない(非人間化・悪魔化しない)。かといって「反省」を崇める必要もない。

日本にもトランスジェンダーの専門家、もしくは専門家となりうるような人たちはいますし、声をあげる当事者の人も大勢います松岡宗嗣。大手メディアはこうした人たちを積極的に活用してください。

とはいっても差別的な陰謀論を否定するのは本当に大変です。膨大な資料をリサーチし、適切な情報源を選別するだけでも疲れます…。

有用な日本語の書籍も出版されています。やみくもにネット検索するのは全くオススメしません(反トランスの記事ばかりが検索上位に表示されるので)。確実に信頼できるメディアや専門家をマークするのがいいです。

オススメの専門書
●『トランスジェンダー入門』(集英社)
●『トランスジェンダーQ&A: 素朴な疑問が浮かんだら』(青弓社)
●『トランスジェンダーと性別変更: これまでとこれから』(岩波書店)
●『トランスジェンダー問題 議論は正義のために』(明石書店)
●『ウィッピング・ガール トランスの女性はなぜ叩かれるのか』(サウザンブックス社)

陰謀論として確立してしまうと、「“トランスジェンダリズム”という危険なイデオロギーが社会に拡大している」と陶酔して主張する人に「それ、違うんじゃない?」と指摘しても聞く耳を持ってくれないでしょう。陰謀論化すると歯止めがききません。だからといって「陰謀論者はもう人生が終わったな」などというスティグマ(否定的な汚点)を与えるのはやめましょう。

rabble.ca」は、“反トランス論者”の女性を記事で紹介しています。この人物は大学で臨床心理学の博士号を取得するほどの人でしたが、「ジェンダー・アイデンティティを認めると、女性や子どもが危険にさらされる」という誤った主張に触れているうちに、反トランスにハマったそうです。やがて反トランスの人たちとそりが合わないと感じ始め、それでも親しくなった人とのコミュニティや運動を断ち切ることに何ヶ月も葛藤を感じながら、最終的に完全に反トランスの主張から離れました。「trans101.jp(こちらは日本語記事)」でもかつてトランスヘイトに加担していた人のインタビューが掲載されています。

こうした差別主義から脱することを「de-radicalization」と言います。そして「de-radicalization」した人を「formers」と呼んだりします。「de-radicalization」を支援する組織「Life After Hate」もあるくらいです。

もし近しい人が反トランスの陰謀論をしきりに口にしていたらどうすればいいでしょうか。書籍『トランスジェンダー問題 議論は正義のために』の著者である“ショーン・フェイ”は、「誤りを暴くよりも他の話題によって関係性を維持するほうが効果的なことがある」と述べていますVogue。 「de-radicalization」のきっかけはさまざまで、燃え尽き症候群、グループ内での自分の地位や上司への不満・幻滅、新しい人間関係、雇用の変化などAmerican Psychological Association差別主義から離れて新しいアイデンティティと人生を構築し始めるのは長い時間がかかりますLife After Hate。陰謀論について知ると同時に、元陰謀論者のケアについても頭の片隅に入れておくべきです。

本当に最後になりましたが、あらためて…。これらの陰謀論はトランスジェンダーの現実を無視することで蔓延しています。トランスジェンダーについて正しい情報を学びましょう。学び続けましょう。

この『トランスジェンダーと陰謀論(PART1&PART2)』の記事はトランスジェンダー特集の第1弾です。以下の記事に続きます。
●第2弾『「生物学的性別」とは? その意味と定義の歴史、そして性スペクトラム



陰謀論に関する特集記事
は、他にも以下のような記事があります。
●『「ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)」とは? 意味と歴史を整理する。そして作品をポリコレで語る是非
●『あなたも「“昆虫食”陰謀論」にハマってませんか? 昆虫食への嫌悪感の理由と映画の影響

参考文献
【ネット】
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●2014. Myths and Truths about Gender-Inclusive Washrooms. Anti-Violence Project.
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●2016. Transgender People and Bathroom Access. National Center for Transgender Equality.
●2016. A History of Transgender Health Care. Scientific American.
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●2019. Designing Inclusive and Gender-Neutral Restrooms. I+S Design.
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Myths and Facts: Battling Disinformation About Transgender Rights. Human Rights Campaign.
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Are children at risk of sexual abuse in public bathrooms? Stop It Now!
The “Trans + Gender” Project.
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