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アニメ『アンデッドガール・マーダーファルス』感想(ネタバレ)…生首はディサビリティでいじれるか

生首はディサビリティでいじれるか…アニメシリーズ『アンデッドガール・マーダーファルス』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Undead Girl Murder Farce
製作国:日本(2023年)
シーズン1:2023年に各サービスで放送・配信
監督:畠山守
児童虐待描写

アンデッドガール・マーダーファルス

あんでっどがーるまーだーふぁるす
アンデッドガール・マーダーファルス

『アンデッドガール・マーダーファルス』あらすじ

19世紀末。人ならざる異形な存在がまだこの地に密かに暮らしていた世界。とある理由で首から下のない不老不死の少女探偵・輪堂鴉夜が、「鬼殺し」の異名を持つ半人半鬼の真打津軽と、彼女に付き従うメイドの馳井静句と共に、怪物専門の探偵「鳥籠使い」として数々の事件を饒舌に解決しながら、鴉夜の奪われた体を探してヨーロッパ各地を巡る。そこには魑魅魍魎に蝕まれた謎が隠れていた。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『アンデッドガール・マーダーファルス』の感想です。

『アンデッドガール・マーダーファルス』感想(ネタバレなし)

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生首でも謎は解ける

今の私たちは日本で「生首」を見かける機会は当然のようにほぼないですが、昔は違ったようですね。

なぜなら「さらし首」の文化があったからです。

江戸時代から始まった「さらし首」。重い罪を犯した庶民に課せられた処刑のひとつで、「獄門」「梟示」とも呼ばれます。斬首した後に、その首をひと目につく獄門台に載せて3日間は晒して見せしめにする…。

この形としての行為は1879年(明治12年)に廃止されるまで続いたと言いますから、つまり140年ちょっと前の日本では生首がそこらへんで見かけられた…ってことですよね。

そうやって考えると日本の風景はこの点でも随分変わったんだな…。2023年は北海道の札幌でとある殺人事件が発覚し、それが殺人者が被害者の首を切断してその首を保管していたので、ニュースなんかでは散々「猟奇的だ」「異常だ」と煽りまくって報じてましたが、「1世紀半前まではうちらの国はさらし首の文化がありましたよ」とボヤきのひとつでも言いたくなったり…。

そして今は生首が主人公のアニメだってある時代ですからね。

ということで本題に強引に持っていきました。はい、本作『アンデッドガール・マーダーファルス』の話です。

本作は、推理作家としてデビューした“青崎有吾”による小説が原作。なんでもライトノベルに当初は興味あったそうですが、この『アンデッドガール・マーダーファルス』はファンタジー要素が濃く、ライトノベルっぽい雰囲気がなくもないです。

『アンデッドガール・マーダーファルス』はジャンルはミステリーなのですが、主人公は先ほども書いたように「生首」。生首が喋って推理するという、なんとも珍しい謎解きモノです。

加えて本作の世界観も独特で、文化的によく知られた怪物や妖怪はでてくるわ、著名な古典的作品の登場人物もでてくるわ、実在の組織や人名もでてくるわ、もう何でもありでぶっこんだような感じ。と言っても『フェ~レンザイ -神さまの日常-』みたいにみんな楽しく和やかに共存しているわけではなく、迫害と対立でギスギスした世界ですが…。

何が登場するのかは観てのお楽しみですが、そんな世界観でどうやって真面目に推理なんかやるんだ?という思わなくもないのですけど、それでもちゃんとロジックを考えてミステリーを成立させているのだから器用なもの。軽妙な語り口で、奇怪な関係者が混じり合う謎がサクサクと暴かれていくのは気持ちがいいです。

バトルアクションのような展開もあるので、映像的な見栄えもあり、アニメには向いていた作品なんじゃないかなと思います。丁丁発止で謎解きし合ったかと思えば、物理的に戦い合ったりするし、なかなか忙しい作品ですけどね。

なお、残忍な殺人を多数扱っていますが、ビジュアルとしてはそこまで残酷なシーンを映していません。これはレーティングを気にしてのことなのかな。ただ、そのボカされるゆえに、少し背景がわかりにくいエピソードもあるので、そこはやや整理が必要かも…(後半の感想で少し具体的に言及してます)。

アニメ『アンデッドガール・マーダーファルス』を制作するスタジオは『さらざんまい』「ラパントラック」

『アンデッドガール・マーダーファルス』は全13話。注意として1話完結で謎は解決しませんので、ある程度のエピソードをまとめて観るのが良いです。

私の以下の後半の感想ではディサビリティの観点で、謎解きするほど賢くはないですけど、この作品に小言をぶつけています。

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『アンデッドガール・マーダーファルス』を観る前のQ&A

✔『アンデッドガール・マーダーファルス』の見どころ
★独特な世界観での謎解き。
✔『アンデッドガール・マーダーファルス』の欠点
☆ディサビリティなどの観点で話運びが雑。
日本語声優
黒沢ともよ(輪堂鴉夜)/ 八代拓(真打津軽)/ 小市眞琴(馳井静句)/ 鈴代紗弓(アニー・ケルベル)/ 木下浩之(ジャン・ドゥーシュ・ゴダール) ほか
参照:本編クレジット
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オススメ度のチェック

ひとり3.5:怪奇モノを堪能
友人3.5:生首な友とも
恋人3.5:作風が好きなら
キッズ3.0:やや残酷描写あり
セクシュアライゼーション:ややあり
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『アンデッドガール・マーダーファルス』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『アンデッドガール・マーダーファルス』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):私があなたを楽しませてさしあげましょう

1897年、日本では明治30年と呼ばれていたその年。この国では世界の潮流に倣って、文明開化のもと、怪異などの類の一斉駆除が行われていました。「怪奇一掃」とも称されるその行為によって、人ならざるものの居場所は限られるようになり…。

東京。見世物小屋で小鬼のような怪物と戦う青い髪に青い筋が体に入った男、真打津軽。「鬼殺し」と歓声を受け、あっけなくその迫りくる怪物を殺してみせます。それも終わって裏でひと息ついていると、何かの気配を感じます。

別の日、真打は酒を飲みながら貧しい村を歩き回っていました。町人に猫がいじめられており、殺してくれと言われますが、軽妙な口調で「殺せません」と頭を下げます。

夜、真打はひとけのない場所で、ずっと自分をつけている気配に声をかけます。「私に何の御用でしょう? いい加減付きまとわれるのも迷惑でして…」

そこには鳥籠を持ったひとりのメイド。真打が手を伸ばそうとすると、背中に抱えた銃剣を向けて戦闘になり、メイドの身のこなしに驚きながらも対峙。

そのとき「もうよい」とどこからか声が聞こえてきます。「どうせ舞台の上でしか殺せないのだろう。さすがだな、鬼殺し。静句とここまで渡り合うとは」…真打はメイドが喋っていると思いましたが、そのメイドは口を動かしていません。

半人半鬼だと謎の声に言い当てられる真打。「お前には鬼が混じっている。だがちょっとばかり乱暴に混ざっているな。お前、近いうちに鬼に飲まれて死ぬぞ」

その声は取引があるそうで、寿命を伸ばしてやると言ってきます。そして正体を現しました。それは籠の中にあった生首でした。

その生首は「私を殺してくれ」と呟きます。

流暢に平然と言葉を話す生首の名は輪堂鴉夜。寡黙な馳井静句という従者を連れており、輪堂鴉夜は不死で900年間以上も生きてきたそうです。不死でも鬼にやられた傷は治らないのですが、相手は半人半鬼だったので完全に倒せず、こんな姿になったのだとか。

輪堂鴉夜をこんな姿にさせた鬼は正体不明ですが、その相手の親玉は異人で杖をついていたそうです。「同じ鬼混じりでも、鬼が濃いならお前は不死も殺せるはずだ」と死を望む輪堂鴉夜は淡々と懇願します。

「なぜ生きたがる?」と逆に聞いてくるので、真打は「どうせ死ぬなら愉快に死にたい。低俗な客と座長を殺せればいい」と芸として一級品のこだわる姿勢をこれまた呑気に語ってみせます。

それを聞いた輪堂鴉夜は「お前は生まれながらの人外だ」と感想をこぼします。

真打は答えます。「寿命は伸ばしていただけきますが、あなたは殺しません」と…。そして輪堂鴉夜の体を取り戻すことを提案。相手の行方は欧州だとわかっているようで、ダメもとで追いかけるのはどうかと持ちかけます。

「私にそんな話を薦めてどんな徳がある?」と輪堂鴉夜は質問しますが、「その杖にはMの字が刻まれていたのでは?」と問う真打。どうやら真打を捕えてこんな姿にした人物と同一のようです。

こうして目的が一致したので、真打、輪堂鴉夜、馳井静句の3名は欧州へ旅立ちました。

「鳥籠使い」という「人ならざるものが絡んだ事件」専門の探偵として世界各地で有名になっていく一同。その先に待つのはどんな闇なのか…。

この『アンデッドガール・マーダーファルス』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2023/11/06に更新されています。
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パブリックドメインのおかげです

ここから『アンデッドガール・マーダーファルス』のネタバレありの感想本文です。

アニメ『アンデッドガール・マーダーファルス』は第1話が「チーム結成のプロローグ」で、第2話から第4話がフランスでの「吸血鬼ゴダール家の殺人事件」、第5話から第8話が「アルセーヌ・ルパンとの対決」、第9話から第13話が「人間と人狼の村での少女連続殺人事件」と、それぞれのストーリーアークが続きます。

正直、1話目の導入は良いとして、2話目でもういきなり探偵としてそれなりに有名になってしまっている状態まで時間が飛ぶので、「そもそもなんで探偵になることにしたんだ!?」とか、「もっと徐々に有名になっていく過程が見たかったのに…」という感想もないわけではないです。

そして内容、とくに登場人物のボリュームも凄いです。

吸血鬼や人狼に焦点を絞っている前半と最後のパートはまだいいとしても、中盤の「最後から二番目の夜」争奪戦のパートはちょっと整理しないと混乱するキャラクターの洪水状態でしたね。

アルセーヌ・ルパン、シャーロック・ホームズ、エルキュール・ポアロ、オペラ座の怪人、ジェームズ・モリアーティ、切り裂きジャック、アレイスター・クロウリー…その他多数。

こういう作品を観ると、あらためてパブリック・ドメインさまさまだなって思います。こうやって有名な作品のキャラクターを総出演させることができるのも、パブリック・ドメイン化で著作権切れになっているか、もともと著作権がないか、そのどちらだからこそですからね。これ、全部、権利が生じていたら、とんでもない利用料になるだろうな…。

この調子なら『アンデッドガール・マーダーファルス』の世界に「くまのプーさん」が参加するのも夢じゃないです。

そんなキャラ盛沢山でも、謎解きをするときはしっかりしているのが本作の良さです。ハンナ・ゴダール殺害の吸血鬼らしいトリックもなるほどですし、人狼村の事件もかなり大掛かりで手の込んだ謎でしたがちゃんとスッキリ解き明かします。

ただ、あの人狼村の背景は少し曖昧でわかりにくかったですね。要するにあの人狼村は「キンズフューラー」という銀も聖水も克服した優生個体を作ろうとしており、そのためにあの村の少女たちは実質上は性的な奴隷のように繁殖に参加させられており、その非道さに嫌気がさしてあの犯人は行動を起こした…ということでした。

まあ、ちょっと謎解きの最中に「ロイス」「バンケット」みたいな勢力が乱入して戦い始めるのでミステリーに集中させてくれないところもあったかな…。

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笑劇では済まされない問題

アニメ『アンデッドガール・マーダーファルス』で個人的にちょっとモヤっとするのが、ディサビリティの観点です。

まずこの作品の主人公のひとりである輪堂鴉夜は不死ゆえに生首の状態で生き永らえているわけですが、これは見方によっては身体的障がい者と同質的な立ち位置なわけです。

そんな輪堂鴉夜が誰にも負けない名推理を披露していくというのは、プロットとしてそれだけで非常にオリジナリティがあるし、単なる見た目の異色さ以上の面白さになるポテンシャルがあると思います。「死にたい」と言っていた輪堂鴉夜が真打津軽のふざけつつも前向きにさせる言葉で生き方を変えていくというのも、実のところエンパワーメントある物語ですし。

しかし、そこで少しノイズになるが、作中で随所に挟まれていく真打津軽と輪堂鴉夜の軽妙な掛け合いで、その中には輪堂鴉夜が生首であることを前提にしたジョークが多数含まれます。例えば、足がないとか、手が出せないとか、胸がないとか、太ったとか、食べれないとか…。

こういう小粋な漫才風の冗談合戦が本作の味付けなのはよくわかりますが、これって結局のところ「障がい者をネタにしたギャグ」なんですよね。

こんな自虐は確かに当事者でもやることはあるので、絶対にダメだというものではないです。けれどもそれは思っている以上にセンシティブで現実で当事者が自身のマイノリティ性をギャグにするときも、当事者なりにかなり場を選んで慎重にやるのが一般的です。当事者性を有するスタンドアップコメディアンもそのネタに手を出すときは単に笑いをとるのではなく、社会への批判だったり、そういう問題意識を込めるのがセオリーです。

『アンデッドガール・マーダーファルス』にはその意識は感じられず、本当にただ笑いをとるだけのものになっています。

おまけにダメ押しでマズいのが後半の「人間と人狼の村での少女連続殺人事件」のパートで、このエピソードではルイーゼという生まれつき足が動かせずに車椅子生活をしていた少女が、実は虐待を受けていたという、障がい者差別を扱っています。

その社会問題をトリックに使うのですが、このルイーゼは最終的には悲劇的な惨い死を遂げるだけの役割で終わってしまうなど、達観したつもりでいる作り手の搾取的な軽薄さが滲み出てしまっていたのではないか、と。

他にも、吸血鬼のカーミラの典型的なレズビアン・キラーな表象だとか、唾液のためにわざわざ生首とキスさせるフェティシズムとか、本作はわりとステレオタイプなキャラの使い方が目立つ気もしました。

『アンデッドガール・マーダーファルス』は「笑劇(ファルス)」を謳っていますが、誰にとっての「笑」なのか、常々考える必要がありますね。

『アンデッドガール・マーダーファルス』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
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日本のアニメシリーズの感想記事です。

・『わたしの幸せな結婚』

・『お兄ちゃんはおしまい!』

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作品ポスター・画像 (C)青崎有吾・講談社/鳥籠使い一行 アンデッドガールマーダーファルス

以上、『アンデッドガール・マーダーファルス』の感想でした。

Undead Girl Murder Farce (2023) [Japanese Review] 『アンデッドガール・マーダーファルス』考察・評価レビュー