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『Zola ゾラ』感想(ネタバレ)…通知音のような無邪気なウザい奴

Zola ゾラ

通知音のような無邪気なウザい奴…映画『Zola ゾラ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Zola
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2022年8月26日
監督:ジャニクザ・ブラボー
性暴力描写 人種差別描写 性描写

Zola ゾラ

ぞら
Zola ゾラ

『Zola ゾラ』あらすじ

日中はウェイトレスとして地道に働き、夜はストリッパーとしてパフォーマンスで魅了しておカネを稼いでいるゾラは、勤務先のレストランにやって来た客の女とひょんなことから話が合う。このステファニも同じくストリッパーらしく、2人は意気投合し、連絡先を交換する。翌日、ゾラはステファニから「フロリダで大金を稼げるので一緒に旅に出よう」と誘われ、急な展開に戸惑いながらも一緒に行くことにするが…。

『Zola ゾラ』感想(ネタバレなし)

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私たち、友達だよね!…あれ?

今、若者の間で「親密な友達」を意味する言葉として何が使われているんだろう…。「ズッ友」はもう古いか…2000年代初めくらいから見られたものだし…。

そもそも「友達」の概念自体が大きく変化してしまっているのもあります。昔は学校に行ってそのクラスメイトの中でもとくに仲の良い人を「友達」と表現していたと思いますが、今はSNSなどネット上での交流もリアルと同じくらいに存在感が増しました。直接会ったことがない相手でも「友達」と認識することは若い世代ならことさら珍しくもないでしょうし、そうすると親密さを計る方法もまた違ってきます。

とはいえ、あんまり難しく考えすぎると疲れるだけなので、とりあえずノリで「私たち、友達だよね!」っていう雰囲気になればそれでいいわけで、あとはその雰囲気を盛り上げる適度な言葉をペタっと貼り付ければいいのか。うん、そんなもんだ、友達って。

しかし…ちょっと話は明るさから遠ざかりますが、「私たち、友達だよね!」と自分では思っていても相手は「いや、それほどでも…」なんて若干の引き気味かもしれません。そんなことは考えたくもないけど、そういうパターンもありうる…。同じ流行りの言葉を共有して、すっかり意気もぴったりな感じで全開だったのに、案外と本音ではそこまでシンクロしていなかった…。

そんな「友達(一方通行)」もあり得なくはない。

今回紹介する映画もそんな「私たち、友達だよね!…あれ?」という友情のボタンの掛け違いを描く、シニカルなストーリーが突き刺さる作品です。

それが本作『Zola ゾラ』

この『Zola ゾラ』は、独立系映画を対象とするインディペンデント・スピリット賞で、最優秀作品賞・監督賞・脚本賞・助演男優賞・撮影賞にノミネートされ、主演女優賞と編集賞を受賞した、隠れた話題作。

監督は“ジャニクザ・ブラボー”という人物で、ドラマ『アトランタ』『ゼム』でエピソード監督を務めたほか、2017年には『Lemon』という映画で長編映画監督デビューを飾っています。

『Zola ゾラ』の撮影は、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で絶賛された“アリ・ウェグナー”です。

その高評価な『Zola ゾラ』は具体的にはどんな物語なのかというと、あるひとりの若い黒人女性のストリッパーがいて地道に稼いでいたのですが、ある日、同業の白人の若い女性ストリッパーから「もっと良い稼ぎがあるよ」と教えてもらい、会ってばかりで連絡先を交換して話も合うので、ついていくことにします。道中で盛り上がっていくのですが、それも最初だけ。すぐに「あれ、なんだか思っていたのと違うぞ…」となっていく。そんなストーリーです。

元ネタは2015年にTwitterに投稿された148のツイートのエピソードだそうで、その投稿者である「Zola」の体験談がローリングストーン誌の記事になり、それを映画化したのが本作とのこと。ネットに書かれていた「実際にあったらしい」すっごい話を映像化!…というノリについては私はイマイチついていけないところもあるのですが、まあ、今はこういう物語の誕生も多いんですよね。

宣伝では「大熱狂!」とか書かれているので、なんだか「女友達同士が友情を深めて騒ぎを起こしながら駆け抜けていく痛快友情ストーリー!」という勢いを感じるかもしれません。でも「友情イエーイ!!」みたいな軽さだけの物語ではないので、そこは言っておきます。

『Zola ゾラ』は先ほども話題にだしているように、友情だと思っていたけどそこには認識のずれがあった…という構図があり、もっといえば無自覚な人種差別を描いています。そういうコンテクストを読み解けるかは観客のリテラシーにも影響されてしまうのですが、監督含めて製作者がそのテーマにハッキリ言及しているので、これは紛れもなくそういう映画だと断言できます。ピリっと辛めの話です。

人種が異なるも女同士の友情を描き、そこに潜む白人特権などの人種差別を痛烈に浮かび上がらせる映画と言えば、最近も『ノット・オーケー!』がありました。あちらと比べると、『ノット・オーケー!』はかなり意図的にわかりやすい図式になっていたのですが、『Zola ゾラ』はちょっと込み入っていてわかりにくい部分もあるでしょうけど、でも『Zola ゾラ』の方がリアリティはあるのかな。

『Zola ゾラ』の俳優陣は、主人公を演じるのは、『ホワイト・ボーイ・リック』『マ・レイニーのブラックボトム』の“テイラー・ペイジ”。その友人(?)役を演じるのは、『アメリカン・ハニー』『アンダー・ザ・シルバーレイク』『ロッジ 白い惨劇』など多彩な役柄で才能を発揮する“ライリー・キーオ”。彼女は最近『War Pony』という映画で監督デビューもしており、今後はもっと制作面でも活躍があるはず。

共演は、ドラマ『メディア王 ~華麗なる一族~』で大人気となったあのクセのある役を演じた“ニコラス・ブラウン”(今回もあんな感じの頼りなさをたくさん見せてくれます)、そして『ビール・ストリートの恋人たち』『キャンディマン』など実力を兼ね備えたベテランの“コールマン・ドミンゴ”

「A24」配給の『Zola ゾラ』ということで、映画ファンも注目している人もいると思いますが、個性的な演出も楽しめる一風変わった現代寓話を期待してください。

なお、ものすごく露骨な性描写が多いので、レーティングは「R18+」です。

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『Zola ゾラ』を観る前のQ&A

✔『Zola ゾラ』の見どころ
★性の現場の人種差別を可視化させている。
★ちょっと変わった演出が見られる。
✔『Zola ゾラ』の欠点
☆クセのある人間模様と独特の風刺は好み分かれる。
☆直接的な性描写が多い。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:性の現場の人種差別に関心があれば
友人3.0:盛り上がる物語でもない
恋人3.0:デート向きではない
キッズ1.5:明確な直接的性描写あり
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『Zola ゾラ』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『Zola ゾラ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):聞いてないですけど?

アメリカ、ミシガン州南東部のデトロイト。この街でアザイア・キング(ゾラ)はフーターズのウェイトレスとして日中は働く傍ら、それだけでは稼ぎも足りないので、夜はストリッパーとしてセクシーな衣装を身にまとい、ポールで体を淫らにくねらせて稼いでいました。今日も人を惹きつけられるようにメイクで完璧にキメて、男たちを虜にします。

この日も、昼間に店でウェイトレスをしていたところ、料理を運んだテーブルに一組の男女がいました。黒人の男といたのは若い白人の女。なんだか妙に馴れ馴れしいです。

「踊るの?」と聞かれ、どうやらこのステファニもストリッパーらしいことがわかり、ポールダンスの話題などで話が合います。そして連絡先を交換することにしました。

ゾラは帰宅し、さっそくステファニから連絡が来ます。

「これからフロリダに行くのだけれど、一緒に来ない?」…話によれば、そこにあるストリップクラブならあっという間に大金を稼げるというのです。

「昨日会ったばかりなのにもう旅行に誘うの?」とゾラも最初は躊躇しますが、ボーイフレンドとルームメイトも一緒らしく、そこまで悪そうな話でもないかとOKしてしまいます。

翌日、テンション高く迎えてくれるステファニ。ルームメイトのXは大柄な黒人で、一方の頼りなさそうな長身の白人の恋人はデレクという名だそうです。

デトロイトからフロリダまで車で約18時間。車内でもノリノリで、大盛り上がり。夜は面白動画で大笑いし、宿泊場所に到着します。汚いモーテルです。気まずそうなゾラ。なんだか思っていたのと違います。

怪しげなモーテルにデレクを残し、ゾラとステファニはクラブに出発。そこでさっそくポールステージにあがり、張りのある尻を突き出してパフォーマンス。確かにデトロイトよりは稼ぎの勢いはありますが、でも大金というほどではないです。

するとステファニが道中で何気なく一緒に自撮りしていた写真を勝手に使っていたことが判明。話を聞き出すと、大金を稼げるというのは売春のことだとのこと。さすがに聞いていないのでゾラは降りようとしますが、仕切っているXに車に戻れと脅され、従うしかありません。

ところが事態はさらに思わぬ方向へ転がり、ゾラにとってはうんざりする48時間に変貌することに…。

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その仕事自体は何も悪くない

『Zola ゾラ』はざっくり言えばセックスワークを描いた作品です。同様のものだと最近は“ジェニファー・ロペス”主演の『ハスラーズ』が話題となりました。

そちらの映画では、その業界でときに虐げられてしまうこともありながらも自分たちなりに居場所を見つけて支え合っているセックスワーカーの女性たちの絆が描かれており、人種を超えたフレンドリーシップとして、とても理想的に映し出されていきます。

対するこの『Zola ゾラ』もそのノリでいくのかなと少なくとも序盤は思わせます。主人公のゾラはステファニと職業柄の共通点で打ち解け合い、もっと稼げるフロリダへ安易に同行。なんかよくわからんステファニのカレシ(デレク)も付いてきているし、ちょっとノリとして微妙なところがありつつも、しっかり現地でパフォーマンスをこなします。このへんはゾラのストリッパーとしてのプロ意識を感じますね。

ところがそこで身体を売るのが稼ぎのメインだと判明し、ゾラとしては裏切られた気分で失望。当初は怒りをぶつけますが、ここで大事なのは別にゾラはそういう身体を売る仕事自体を低俗とかそんなふうに見下しているわけではないということ。ゾラが許せないのはステファニが黙っていたことであり、仕事内容そのものではない。

だからなんだかんだでステファニに「150ドルしか貰ってないの? 500ドルとれるよ」と稼ぎ方の改善指導をしてあげる。ゾラの面倒見の良さと、ビジネスのスキル&駆け引きの上手さ、さらにリスク・マネジメントの的確さなどが垣間見えます。

ここでやけに流れ作業的に描かれる、次々と男を部屋に迎え入れて体を重ねていく光景のシーン。ちゃんと男性たちが脱ぐ姿を対等に映し出していき、とてもセックスワークの描写に対する誠実さを感じる扱い方だなと思いました(過度にセックスワークを陰湿で醜悪なものとして暗く描いていない)。

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あなたと“同じ”親友ではありません

しかし、そんなセクシービッチたちのシスターフッドが軽やかに描かれ…という雰囲気でそう易々と安定着地するわけではありませんでした。

『Zola ゾラ』の物語の中心に立つゾラとステファニ。同じ職業だったとしてもそこには決定的な差がある。それが人種。

ステファニはどことなくその態度からわかるように、文化の盗用を無自覚に根底にして成り立ってしまっている白人女性です。セックスワークの業界では人種はとても重要で、特定の人種的な要素が性的消費の対象となることもあります。ステファニはそれを体感的に理解しており、ゾラの有色人種のエキゾチックな魅力を借りパクしているわけで…。

ゾラにしてみれば、悪気があるとかないとか以前に、やはりそのマイクロアグレッションの繰り返しは一緒にいるだけで嫌な気分になってきます。

ステファニを演じた“ライリー・キーオ”のあの全くわかってなさそうな特権的佇まいの演技も上手かったですね。“ライリー・キーオ”って過去の出演作でも、『アンダー・ザ・シルバーレイク』や『ロッジ 白い惨劇』でもそうだったのですが、どことなく得体の知れないミステリアスさがあって、主人公や周囲を振り回していく役柄で、そういう演技がハマるんですかね。

ちなみに“ライリー・キーオ”の祖父はなんとあの“エルヴィス・プレスリー”であり、映画『エルヴィス』の感想でも書きましたが、そのエルヴィスも文化の盗用で批判されていたこともある人物であり、なんだか運命的なのか、皮肉なキャスティングです。

その人種差別のテーマをこの『Zola ゾラ』はそこまでシリアスには描きません。TikTok的な軽い話運びでトントンと進んでいき、そのストーリーテリングもまるでTikTok用の動画を編集するような展開のさせ方。随所にTwitterの通知音が入り、どことなくマヌケな雰囲気もでますし(あの通知音は元ネタのツイートに関連するセリフのシーンで挿入されているそうです)、“ジャニクザ・ブラボー”監督のセンスがでているなと思いました。

あとやっぱり“ニコラス・ブラウン”、面白すぎるな…。ドラマ『メディア王 ~華麗なる一族~』を観ていない人で、この『Zola ゾラ』で“ニコラス・ブラウン”が気に入ったなら、ドラマ『メディア王 ~華麗なる一族~』もぜひオススメですよ。

その“ニコラス・ブラウン”演じるデレクの大失態もあって、カネを持っていることがバレて強奪されそうになる危機が発生するも、なんとか状況から脱出。全く下手糞な飛び降りでヘマしたデレクはさておき、車内で無邪気に振り向いてくるステファニの「親友」目線に、ゾラはやれやれと目を背けて風にあたる

友達って難しいですね。それをわかってくれない相手ならなおさらね…。

『Zola ゾラ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 88% Audience 68%
IMDb
6.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
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作品ポスター・画像 (C)2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved

以上、『Zola ゾラ』の感想でした。

Zola (2021) [Japanese Review] 『Zola ゾラ』考察・評価レビュー