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映画『モンスターハンター』感想(ネタバレ)…ミラ・ジョヴォヴィッチとひと狩りいこうぜ

モンスターハンター

ミラ・ジョヴォヴィッチの狩猟解禁…実写映画『モンスターハンター』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Monster Hunter
製作国:アメリカ(2020年)
日本公開日:2021年3月26日
監督:ポール・W・S・アンダーソン

モンスターハンター

もんすたーはんたー
モンスターハンター

『モンスターハンター』あらすじ

陸軍兵のアルテミス率いるチームは砂漠を偵察中、突如発生した超巨大な砂嵐に襲われてしまう。気を失ったアルテミスが目を覚ますと、そこは元いた場所とは違う見知らぬ異世界だった。その世界には巨大なモンスターが跋扈し、そんなモンスターの狩猟を生業とするハンターがいた。そしてそのモンスターを相手に、鍛え上げられた肉体と武器を装備し、激闘を繰り広げていくことに…。

『モンスターハンター』感想(ネタバレなし)

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今度はモンハンです!

1500万人のハンターが世界中で狩りをしている…。

そんなふうに書くと「え?一体なにごと?」という感じですが、リアルな狩猟者のことではありません。ゲーム「モンスターハンター」のプレイヤーの話です。

2004年に「モンスターハンター」というゲームが「PlayStation 2」のソフトとして発売されました(プレステ2とかもはや懐かしすぎる…)。早い話が、みんなでモンスターを倒すというアクションゲームであり、自然あふれる世界で個性豊かな大物モンスターを見つけ、倒し、戦利品を獲る…というサバイバルなジャンルです。この通称「モンハン」と呼ばれるゲームは瞬く間に人気に。続々とシリーズ化して作品が生まれ、シリーズ累計販売本数は6200万本(2020年3月時点)。2018年1月に発売された『モンスターハンター:ワールド』は世界でもヒットし、史上最高となる1500万本を達成しました。

かくいう私はそんなにモンハンに親しんでおらず、ちょっと触った程度なんですけどね。でもその人気っぷりは間近で感じていました。やっぱり通常のマニア向けのオンラインゲームと違って敷居が低く参加しやすかったのが大ヒットの理由のひとつだったりするのかな。

そんな16年以上経っても勢いを増し続けている「モンスターハンター」がついにハリウッドで実写映画化されるときがきました。いよいよこのステージに到達したのか。最近は『名探偵ピカチュウ』『ソニック・ザ・ムービー』など日本のゲームのハリウッド映画化が相次いでおり、その中でも「モンスターハンター」はかなり若い新参者ですが、ブロックバスターと相性は良さそうです。

その映画『モンスターハンター』を制作するのはドイツの映画会社「コンスタンティン・フィルム」。このスタジオと言えば、もちろんこちらもゲームである「バイオハザード」シリーズの映画で一気に有名になったところです。「バイオハザード」の方は6作目となった『バイオハザード ザ・ファイナル』でとりあえず終幕となりましたが、この映画『モンスターハンター』もそれくらい続編を連発する気なのか…。

監督は映画『バイオハザード』シリーズでも登板し続けた“ポール・W・S・アンダーソン”。そして、主演は“ポール・W・S・アンダーソン”の妻でもあり、数多くのフィールドで活躍してきた“ミラ・ジョヴォヴィッチ”。この夫婦、仲いいな…。

つまり映画『バイオハザード』シリーズと全く同じ座組です。こんな一緒でいいのかと思わなくもないですけど、いいんでしょう(雑)。ちなみに“ポール・W・S・アンダーソン”監督は1995年にこちらもゲームが基である『モータル・コンバット』を監督していますから、すっかりゲーム映画化の代表みたいになってます。

他の俳優陣は、『マッハ!』でおなじみのタイの俳優である“トニー・ジャー”が参戦。まさか『モンスターハンター』に出演するまでになるとは、当時は夢にも思いませんでした。さらにギレルモ・デル・トロ監督の『ヘルボーイ』で愛嬌を振りまいた“ロン・パールマン”もいたり。なお、日本からは“山崎紘菜”が出演しており、おそらく事務所的に東宝推薦枠なんでしょう。

といっても結局はいつもどおり“ミラ・ジョヴォヴィッチ”無双なんですけどね。

その映画『モンスターハンター』ですが、アメリカでは12月公開となり、コロナ禍で大作不足に苦しむ映画館へのプレゼントになる…かと思われました。しかし、先行して公開された中国で映画内にアジア人を差別するセリフが指摘され(「“Chinese, Japanese, dirty knees”という童謡)、まさかの急遽公開中止。いまどきこんなヘマをするなんてどうなっているんだという脱力感なのですが…。

そういうわけで初手から攻撃を盛大に空振りしてしまった映画『モンスターハンター』。もう頼れるのは日本だけです。日本では遅れて3月公開(2021年3月26日には最新作ゲーム「モンスターハンターライズ」が発売されるので、まあ、そういう事情ですね)。

日本のハンターたちよ、君たちが参加してくれないとこのクエストはクリアできない!

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:ゲームファンもそうでない人も
友人 4.0:気楽に観られるエンタメ
恋人 3.5:恋愛要素は皆無です
キッズ 3.5:やや怖いシーンもあるけど
↓ここからネタバレが含まれます↓

『モンスターハンター』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):モンハンの世界へ!

稲光轟く悪天候を進む。しかし船と言っても進行しているは海の上ではありません。砂漠、砂の上です。そして乾いた砂煙をあげ、その船を追う巨大な影が…。

船には屈強なハンターたちが乗船していましたが、突然の衝撃を受けます。「ディアブロス!」…それは地下を潜行する巨大な怪物。気づいたときには手遅れ。船は一瞬で大ダメージを受け、船員は次々とやられていきます。さらにひとりの男は落下し、船から取り残されてしまい…。

別の世界。ここも砂地。アメリカ陸軍のナタリー・アルテミスは偵察任務を実行中でした。マーシャルやアックスといった仲間と車2台で、この見渡す限り何もない砂地帯を走行しています。ブラボーチームを見つけるためにとりあえず移動です。仲間と他愛もない会話で和むくらいしかできません。

しばらく進むと車の痕跡を発見。けれども不自然に消えています。チームの姿は影も形もありません。一体何が起きたのか。

すると目の前に真っ黒な雲が迫るのが見えます。です。急いで車に戻りますが、砂嵐は猛然と襲いかかってきて、なすすべもなく飲まれます。視界は滅茶苦茶。さらに謎の現象が…。

急に車は落下し、激しく横転。気が付くと青空の砂漠でした。GPSは故障。ここがどこかもわかりません。

アルテミスの隊は消えたブラボーチームの車を発見します。残骸です。警戒して近づくと、中には死体。酷いありさま。敵に襲撃されたにしてもここまでの破壊は普通ではありません。

ここにいても埒が明かないので車で進むことにします。しかし、困惑はさらなる衝撃へと変わります。

目の前に信じられないものが…。巨大な骨が砂地に埋まっています。恐竜なのか。にしてはデカいです。巨大すぎます。

すると遠くの岩の上に男がいるのが視認でき、矢を撃ってきて何かを叫んでいます。敵かと警戒する一同。しかし、本当の敵は違いました。

突然の揺れ。後方から何かが迫ってきます。即座に発進させ、銃座で攻撃するナタリー。1台は横転。そして、角の生えた超巨大なモンスターが全身を見せました。こんなものは見たことがない…。存在していいわけがない…。

ひとりやられるも、車のエンジンが復活。しかし、車を一気に吹き飛ばされ、投げ出される4人。続いてひとりが角で刺され、死に際に手榴弾を投げ込みます。まるで効いていません。

狭い岩の穴に逃げ込む4人。怪物は岩の上には登ってこれないようで、砂の中に逃げてしまいました。

ホっと安心したのもつかの間、アルテミスは背後から接近した謎の生物に刺されます。蜘蛛のようなサソリのような異形のモンスターです。アルテミスを放置し、散り散りに逃げる他の兵士でしたが、群れで襲ってくるその生物にどんどん殺されていきます。

アルテミスだけがかろうじて生きていました。こうして孤立無援となったアルテミス。かつてない絶望に心は挫けます。

しかし、そこに意外な助っ人が…。その男は言葉は通じませんが、頼れる戦士のようです。

このモンスターが蔓延る世界で生存することはできるのか…。そのためにはならないといけません。ハンターに。

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前半はホラー映画

映画『モンスターハンター』、私の感想の結論を言ってしまえば「限りなくモンハンではない何かだけど、モンスター映画としてじゅうぶん楽しめる」という感じでしょうか。

これは予告動画の段階で薄々わかってはいたことなのですが、本作の導入はいわゆる『戦国自衛隊』的と言いますが、「現実の軍隊が異世界に来ちゃってさあ大変」系です。

最近であれば『キングコング 髑髏島の巨神』とほぼ全く同じフォーマットと言ってもいいと思います。あちらも軍隊が未知の巨大モンスターがうようよする世界に迷い込んでしまい、阿鼻叫喚の地獄を経験していくという導入で始まります。

なので前半はほぼほぼモンハンではありません。でも私はここがなんだかんだで一番面白かったかもしれません。なにより“ポール・W・S・アンダーソン”監督が最も得意とする分野でしょう。『イベント・ホライゾン』(1997年)みたいにパニック映画を任せたらノリノリでやってくれます。

『ブレイブ 群青戦記』でも同じですけど、こういうのは序盤の知らない世界にパニックになっている瞬間が一番ワクワクしますよね。

最初にアルテミス(この名前は古代ギリシャの狩猟の女神に由来してますね)のチームがディアブロスに蹂躙されていく姿の絶望感。そこからのアルテミスがネルシラという蜘蛛っぽい生物に捕獲され、その地下の巣から脱出するまでの恐怖感。とくに後者は完全にホラー。体から幼虫が湧いてくるリンクという仲間の描写とか、たぶん小さい子が見たら怖くて泣くんじゃないだろうか。

ここでアルテミスがパニックになって「私、怖いの!」的なムーヴを見せますけど、まあ、“ミラ・ジョヴォヴィッチ”ですからね。そもそも『バイオハザード ザ・ファイナル』のときだって巨大モンスターをひとりで撃退してますから、すぐに覚醒することは目に見えています。

チュートリアルというか、すでにレベル100の主人公がそのパワーを自覚するまでのストーリーですかね。

でもああやって仲間の登場人物が情け容赦なく序盤で死んでいく映画というのも最近は減りつつあるので(『ジュラシック・ワールド』でも控えめになってきている)、この死ぬ気持ちよさ(変な言葉だけど)はいいものですね。

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終盤は怪獣映画

モンスターパニックというジャンルとしては楽しい映画『モンスターハンター』だったのですが、モンハン要素はもっと欲しかったのも正直な本音。

一応は用意されています。ネルシラの爪を剥ぐとか、ディアブロスの鱗を活用するとか、そういう採集要素。武器にエフェクトをつけて威力をあげる攻撃スタイル。オアシスでのハンドル式の肉焼き機を使って焚き火で肉を焼くというゲーム定番のシーン(「上手に焼けました」のセリフはないけど)。そして唐突に世界観に混ざりこんでリアリティラインをわけわからないことにしてくる「アイルー」という二足歩行猫。

ただ、それらは本筋とは大きく関与しない、あくまで「入れました」というノルマ達成の意味くらいしかなく…。

基本的な戦闘の派手なシーンは、現代兵器との対決に持っていかれます。終盤では翼を持った巨大なドラゴン型モンスター「リオレウス(Rathalos)」(英語だと「ラタロス」)が現実世界に入り込んでしまい、オスプレイや戦車などを八つ裂きにしていきます。このへんは怪獣映画。やはりそっちの方向性に戻ってしまうのか…とは思います。

ちなみに重火器で戦うと言えば、ゲーム「モンスターハンター」は「メタルギアソリッド ピースウォーカー」(こっちは現実社会が舞台の戦争ゲーム)という別のゲームとコラボしたことがあり、それで「メタルギアソリッド ピースウォーカー」内にゲスト登場したモンスターを現実の重火器(ロケットランチャーとか)を用いて戦えるんですね。この映画『モンスターハンター』もほとんどそのコンテンツと同一な感じでもありました。

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作品全体に滲むアジア蔑視を狩る

映画『モンスターハンター』は前述したとおり、アジア人差別なセリフで猛批判を受け、そのシーンを削除したうえで世界公開される騒動がありました。

ただ、私は本作のアジア人差別はそのセリフだけではないと思いますし、そこがこの映画のクオリティを左右もしていると考えます。

それが途中で仲間になる“トニー・ジャー”演じる男の扱いです。彼はアジア系が演じるキャラクターとして「英語を喋れない」「得体の知れない異民族」というステレオタイプどおりになってしまっており、無意識的に同列にはなっていません。チョコレートをあげて仲良くなるシーンとか、露骨なまでにアジア蔑視が出てしまっていますよね。

私はモンハンという作品の良さは世界観にあると思っていて、この作品はモンスターと戦うファンタジーでありながら、中世ヨーロッパな従来の王道とは違う、少し自然で暮らす先住民族的な、場合によっては和すらも感じる、そういう独自の世界観が売りです。

なのにこの映画『モンスターハンター』は、せっかくの作品の魅力であったオリジナリティ溢れる世界観が、西洋人から見た発展途上国的な枠におけるエキゾチックさで片付けられているのです。

これもどれも主人公の視点を現代社会を代表する「白人」にしてしまったのが根底にあるでしょう。冒頭で「our world」と表記されるように、この映画内ではあのモンハン世界を「私たちのもの」とは思ってません。異質な世界扱いです。

おそらく熱心なモンハンのファンである観客は、あのモンハン世界の集落の住人のひとりとして映画に存在したかったはずではないのか。そこで仲間を見つけて、ひとりでは到底敵わないモンスターを倒すという開放感に浸りたかったのではないのか。

「先進的な世界の白人」が「後進的な世界のアジア人」と人種を超えた融和を結ぶという、マジョリティに都合のいい設定しかないフレンドリーシップな物語は適切だったのか。

たぶん本作の“トニー・ジャー”演じる男が黒人のキャラクターだったら、もっとアメリカ国内で炎上していたと思います。でもアジア系だったらOKな空気になる。そこにやっぱり今のアメリカ、しいては白人社会の無自覚なアジア系への偏見というのがある気もします。

『マイル22』など他の映画でも同様の構造はあるのですけど、「アジア人は白人をさらに強く見せるためのお膳立ての役割しかない」というのはいい加減そろそろやめるべきだと思うのです。アジア人はコミュニケーションできない奴ではないし、ただの戦闘狂でもない、白人の手を借りずとも大ヒット・ゲームも作れて、自立している…そういう人間です。

個人的に次回作があるなら、“ミラ・ジョヴォヴィッチ”はサイドに回り、アジア系の若い俳優を主役に据えるべきだと思います。そして現実世界を一切出さずにあくまでモンハン世界をひたすらに堪能させるように作りこんでほしいな、と。

あとやっぱり“ポール・W・S・アンダーソン”監督だと世界観がダークでシリアスになりがちですから、もっと快活で底抜けに明るい感じでお願いしたいですね。モンハンってそういうものじゃないですか。

近年だと一番モンハンらしさを感じたのはドラマ『マンダロリアン』のシーズン2の第1話かな…。

『モンスターハンター』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 46% Audience 70%
IMDb
5.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
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関連作品紹介

日本のゲームを実写映画化した作品の感想記事です。

・『名探偵ピカチュウ』

・『ソニック・ザ・ムービー』

作品ポスター・画像 (C)Constantin Film Verleih GmbH モンスターハンター映画

以上、『モンスターハンター』の感想でした。

Monster Hunter (2020) [Japanese Review] 『モンスターハンター』考察・評価レビュー