最近ピンチの実写映画も救ってください…映画『DC がんばれ!スーパーペット』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2022年)
日本公開日:2022年8月26日
監督:ジャレッド・スターン
DC がんばれ!スーパーペット
でぃーしー がんばれすーぱーぺっと
『DC がんばれ!スーパーペット』あらすじ
『DC がんばれ!スーパーペット』感想(ネタバレなし)
ペットたちはスーパーパワーを持っている!
私たち人間がペットを飼う理由は、「可愛いから」とか「独りは寂しいので傍にいてほしいから」とか「捨てられていたのを保護するため」とか、それぞれの答えがあると思います。
その中のひとつに「人間と異なる動物を見るのはそもそも面白い」という感情もきっとどこかにあるんじゃないでしょうか。
ペットとなる動物たちは人間とは全く異なる生き物です。それはつまり見た目だけでなく、持っている能力が違うということでもあります。
例えば、犬は人間には考えられないほどの驚異的な嗅覚を持っており、匂いでさまざまな環境を感じ取っています。猫は普段はのんびりしているくせに時折びっくりするような身体能力を見せつけてきます。
他の動物は人間には持っていない能力を当然のように持っている…それは考えてみると当たり前のことなのですが、人間中心の社会で生きている私たちはたまに忘れてしまいます。そしてあらためてそんな仰天の能力を見てしまうと不思議な気持ちになる。
そうです、これはまさしく…スーパーパワーってやつじゃないか。私たちがペットにしている動物はスーパーパワーを持っている…。スーパーパワー保持者は映画の中ではなく、私たちの足元にいたのです。
今回紹介する映画はそんなペットたちが文字どおりのスーパーヒーローになってしまうという、なんとも奇想天外で愉快なファミリー・アニメーションです。
それが本作『DC がんばれ!スーパーペット』。
本作は、そこらへんの普通のペットたちがスーパーパワーを発揮して世界の危機を救うという話。ペットを題材にしたアニメーション映画と言えば、イルミネーションの『ペット』シリーズがありましたが、そこからさらに味付けが濃くなった感じですね。
登場するペットも、犬、ブタ、リス、カメなど多彩。猫好きの人も安心してください。今作はとびっきり可愛い猫が愛嬌を振りまいてくれます。そして敵はモルモットという…。こんなにモルモットたちが活き活きと動き回るアニメ、あれですよ、『PUI PUI モルカー』の再来ですよ。コラボとかすればいいのに。
で、この『DC がんばれ!スーパーペット』、ただの「ペット可愛い~」なキッズ向けアニメ映画というだけではありません。日本の宣伝ポスターでは全くその要素をだしていませんが(かろうじて権利上やむなくであろうと思われる、わずかな「DC」のマークが健気に頑張っている)、本作はマーベルと双璧をなすDCの関連作品。主人公の犬はあのスーパーマンが飼い主なのです。
もともとは「Legion of Super-Pets」というスーパーパワーを持つペットたちのチームを描くコミックが存在し、1961年にスーパーペットがクロスオーバーで初登場し、1962年にチームが描かれました。それが今回になってCGでアニメ映画化された…という経緯です。
なので『DC がんばれ!スーパーペット』は子ども向けながら、同時にDCファン向けのマニアックな要素も兼ね備えており、なかなかに濃密です。『レゴバットマン ザ・ムービー』と同系列だと思ってもらえればいいです(それよりもマニア度はややマイルドになっているけど)。
『DC がんばれ!スーパーペット』の作中ではスーパーマンだけでなく、バットマン、ワンダーウーマン、フラッシュ、サイボーグ、アクアマン、グリーンランタンもでてくる。「ジャスティス・リーグ」のメンバーが現状の実写映画よりも充実して勢揃いしているんですよ。海外ニュースを耳にしている人なら知っていると思いますが、今、DCの実写映画はワーナーの組織経営再編によって岐路に立たされており、シリーズの方向性がまたも揺れています。実写で「ジャスティス・リーグ」が見られる日がいつ来るのかもわからない状態です。
そんな中で『DC がんばれ!スーパーペット』は先行きの見えない未来に暗いムードになっているDCファンを照らす明るい癒しを届けてくれます。ほんと、ただヒーローたちが集まって敵を倒す…そんな単純さでいいんだよ…。
『DC がんばれ!スーパーペット』を監督するのは、『レゴバットマン ザ・ムービー』や『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』などの脚本を手がけ、2018年に『ハッピー・アニバーサリー』という実写映画も監督した“ジャレッド・スターン”。
スーパーパワーを思う存分に発揮するペットたちを見て、あなたも救われませんか?
『DC がんばれ!スーパーペット』を観る前のQ&A
オススメ度のチェック
ひとり | :ペット好きは癒される |
友人 | :犬猫が好きな者同士で |
恋人 | :気軽に可愛い作品を見るなら |
キッズ | :動物が好みな子に |
『DC がんばれ!スーパーペット』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):飼い主はスーパーマン!
クリプトン星が崩壊する直前。カル・エルというまだ赤ん坊の男の子は避難用の小型宇宙船に乗せられ、今まさに飛び立とうとしていました。そこにカル・エルととても仲の良いちびっこ愛犬のクリプトが、離れたくないという一心で避難船に飛び乗ってきます。こうして宇宙船は母星を離れ、爆発する星を後にして、宇宙へ進んでいきます。このひとりの赤ん坊と1匹の子犬が、どこか安全な場所に辿り着けばいいのですが…。
それから年月が経過。立派な大人に成長した犬のクリプトはまだ寝ている飼い主を起こします。その飼い主とはカル・エル、今はクラーク・ケントという名で地球の人間社会に馴染んで暮らしています。クリプトは空中に浮かび、クラークを高いところから落として目覚めさせます。それでも平気です。クリプトもクラークもスーパーパワーの持ち主なのです。
クラーク・ケントは「スーパーマン」という愛称でヒーロー活動もしており、クリプトも一緒にヒーローとして人々を助けています。みんなから愛され、スーパーマンとクリプトの銅像が立つほどです。
クリプトにとっては飼い主のクラークの一番のパートナーになれることが至福の喜び。
ところが最近はちょっと状況が変わってきました。クラークにロイス・レインという恋人ができ、どうもクラークはロイスのことばかりを優先しています。いつものお楽しみな時間もロイスとのデートに行ってしまう始末。こんなのクリプトには屈辱です。
一方、世界では悪だくみをしている奴がいました。レックス・コープという企業のCEOであるレックス・ルーサーです。彼はオレンジ色のクリプトナイトを使ってスーパーパワーを得ようとしていました。
しかし、スーパーパワーとクリプト、さらにジャスティス・リーグというスーパーヒーローたちの連携もあって、その野望は簡単に打ち砕かれます。
けれどもそれで終わりではありませんでした。そのルーサーによって密かに実験台にされて、ペット保護施設に捨てられたモルモットのルルは偶然にそのクリプトナイトを拾い、自分自身の世界征服の計画を実行に移します。そしてルルは全知全能なスーパーパワーを獲得しました。
その過程でエネルギーが拡散。たまたまペット保護施設にいた動物たちにもスーパーパワーが宿ってしまいます。
ルルの企みでジャスティス・リーグの面々は捕らえられ、ペットのようにケージに入れられます。
残されたのは弱り切ったクリプトだけ。この絶体絶命のピンチを救うには、スーパーパワーを持ってしまったあの動物たちの力を借りるしかない。
クリプトはペットのスーパーヒーロー・チームを結成しようとしますが…。
猫の毛玉は爆弾になるよ
『DC がんばれ!スーパーペット』は冒頭はもう何度見たかもわからない(最近はドラマ『スーパーマン&ロイス』で観た)、いつものごとくのクリプトン星脱出イベントからスタート。
ずっと思っていましたけど、赤ん坊だけで宇宙に避難させるのはいくら何でも無理やりすぎるんですが、今回みたいに犬が一緒です!となると、ちょっとだけ安心感がある…(実際の状況は何も変わってないんだけど)。
そんな定番の出だしの『DC がんばれ!スーパーペット』ですが、中身のメインはやっぱりペットたち。これが個性豊かで楽しいです。
無敵の防御力を手に入れた犬のエースは、見た目でもわかりますがバットマン・ポジション。“ケヴィン・ハート”が声を演じているだけあって、コメディ寄りの立ち位置になっています。
サイズが変幻自在となるブタのPBは、ミニブタなどの品種改良でサイズを変えられてしまうペットのあるあるを皮肉っているかのような設定。“ヴァネッサ・ベイヤー”が楽しく演じています。
高速移動が可能となったカメのマートンは、これはもうベタすぎるギャップの楽しさ。声を演じているのが“ナターシャ・リオン”であるというのも、俳優ファンには嬉しいポイントです。
電撃のパワーに目覚めたのはリスのチップ。名前はディズニーのあいつを連想させますが、元のコミックでは「Ch’p」と綴ります。今作の声は“ディエゴ・ルナ”でした。
そんなペットたちをまとめるクリプトが戦うことになるのが、モルモットのルル。といっても全身の毛が抜け落ちているので、宙に浮くマントを付けたハダカデバネズミみたいですけどね。声は安定の“ケイト・マッキノン”。このルルを生み出すモルモット軍団がまた愉快です。モルモットの潜在的可能性を引き上げ、スーパーパワーありきでキャラクター化していて、それぞれがみんな個性的。たぶんどこかに車の能力を手に入れたモルモットもいますよ(私の願望)。
さらに悪役側の隠し玉として登場する猫のウィスカーズ。これがあざといほどに猫のキュートさを詰め込み、攻撃方法もどこか愛らしさたっぷり。まあ、でも殺傷能力は普通にありそうなんですが…。ひげミサイル、しっぽマシンガンはまだいいとして、毛玉ボムとか、実際の猫があんなのじゃなくてよかった…。爆発でやられますけど「猫の命はまだ8つあるから平気」とケロっとしているので、今作は動物虐待にはなりません(そういう優しい世界!)。
現状で最も面白いジャスティス・リーグ映画
『DC がんばれ!スーパーペット』はこれらの個性豊かなペットたちがチームアップしていくことに醍醐味があります。能力を使いこなすべくトレーニングして、いざ実践でチームワークを見せる。これも定番中の定番ですが、やはりテンションは上がるものです。
しかし、『DC がんばれ!スーパーペット』はそれだけにとどまらない。実写映画でもやらなかったことを見せてくれます。
今回はそこにさらにスーパーパワーのペットたちが自分の飼い主となるようなパートナーのスーパーヒーローを見つけ、それらとの共闘を実現するという、いわばチームアップの2乗のような効果が終盤には炸裂します。
現状で最も面白い「ジャスティス・リーグ」映画なんじゃないか!? 喧嘩とかしていないで、みんなペットを飼えばよかったんだよ!
これが最高なのは、やはりペットはベストな飼い主を持ってこその幸せがあり、ペットの理想を体現していますし、そうやって輝いていくペットたちの姿を見るのはこっちも幸せになります。“キアヌ・リーブス”が声を演じるバットマンとエースとのやりとりとか、シュールですけど、「これだよこれ!」という多幸感がありますしね。バットマンはペットが絶対に必要なタイプの人間だし…(そしてペットにすごい依存しそうだ…)。
『DC がんばれ!スーパーペット』は物語全体が「どんなペットも見捨てない」というペットの幸せを第一に考えており、そこが一貫していて良かったです。悪役であるルルにも飼い主が見つかりますし、虹をだすモルモットにさえもエンディングクレジットの1枚絵で居場所が見つかっていることを示してくれるのは個人的に嬉しかったなと。
最後はちゃっかり「ブラックアダム」が登場して次の映画の宣伝してましたが…(ブラックアダムを演じるのは“ドウェイン・ジョンソン”で、今作でクリプトの声を演じるのも彼なので、完全にギャグになってもいる)。たぶんこの映画はスケジュールどおり2022年中に劇場公開される…はず。
『DC がんばれ!スーパーペット』の続編も期待したくなりますね。1作目は世界観とキャラクターのお披露目なので、2作目はもっと踏み込んだマニアックなことができるだろうし…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 73% Audience 87%
IMDb
7.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
関連作品紹介
DC映画の感想記事です。
・『アクアマン』
・『シャザム!』
作品ポスター・画像 (C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
以上、『DC がんばれ!スーパーペット』の感想でした。
DC League of Super-Pets (2022) [Japanese Review] 『DC がんばれ!スーパーペット』考察・評価レビュー