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アニメ『でこぼこ魔女の親子事情』感想(ネタバレ)…ミソジノワールは召喚しないでね

でこぼこ魔女の親子事情

ミソジノワールは召喚しないでね…アニメシリーズ『でこぼこ魔女の親子事情』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:The Family Circumstances of the Irregular Witch
製作国:日本(2023年)
シーズン1:2023年に各サービスで放送・配信
監督:たかたまさひろ
恋愛描写

でこぼこ魔女の親子事情

でこぼこまじょのおやこじじょう
でこぼこ魔女の親子事情

『でこぼこ魔女の親子事情』物語 簡単紹介

森でひとりで暮らす魔女のアリッサは、ある日、人間の赤子を拾う。傍には誰もいない。その子には魔力が宿っているようだった。戸惑いながらも見捨てるわけにはいかず、ビオラと名付け、この行き場のない赤子を育てることにしたアリッサ。そして16年後、ビオラはアリッサの想像を遥かに超える成長を見せていた。今でもわんぱくで無邪気なビオラに振り回されつつ、アリッサは親として前に進んでいく。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『でこぼこ魔女の親子事情』の感想です。

『でこぼこ魔女の親子事情』感想(ネタバレなし)

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どんな凸凹でも家族は家族

養子をとろうと思ったとき、子どもの年齢はよく話題になりますが、養子を持とうとする大人側…つまり養親になるうえでの年齢制限はあるのでしょうか。

多くの国では成人であることが年齢の下限の目安となっています。では年齢の上限は?

上限について法律で制限がないことが多いようです。しかし、養子縁組の仲介者などの組織では独自に年齢上限を設けていることがあり、例えば、57歳までとか、親と子の年齢差が45歳までとか、そうした決まりが作られています。

なので80歳になってから「養子を持とう!」と思い立っても無理です。もちろん年齢以外にもさまざまな条件があり、難しいのですけどね。

でもたくさんの子どもの人生を考え、より幸せに繋げるためにも、いろいろな家族の形を認めてあげてほしいものです。同性カップルが養子を気軽に持てるようになるといいですし、親が2人と制限するのではなく3人以上での子育ての在り方もいいでしょう。子どもが笑顔になるなら家族の形は問う必要はありません。

家族は無限大。そうであることで、救われる子どもだって増えます。自分に合った家族がどこかにいるのかもしれないのですから。

今回紹介するアニメシリーズはそんな子どもを包容するために家族の形を魔法のように広げていく作品です。

それが本作『でこぼこ魔女の親子事情』

原作は“ピロヤ”による2018年から続く漫画。とある親子を描く物語ですが、親は200歳を超える魔女で、それでいながら体質ゆえに見た目は子ども。一方、子ども側は年齢は元気に育った16歳ですが、中身の性格はまだ子ども気分が抜けていません。そんなタイトルどおり凸凹な2人の親子をユーモラスに描くドタバタなギャグ・コメディです。

この親子2人には血縁関係はありませんし、ひとりの女性がひとりの子を育てるシングルマザーな関係性でもあります。たくさんの育児を支援してくれる者たちの手を借りて奮闘している姿を描いており、ジャンルはコメディですが、テーマ自体はいたって教育的に真面目です。

こういう全く異なる立場が親子関係になることを土台とするものは、ひとつのサブジャンルとしてすっかり定着し、人気作も続々出ていますよね。『SPY×FAMILY』もそうですし、海外なら『マンダロリアン』なんかも同じです。

大衆が「普通の家族」の物語に飽きているのでその変化球バージョンが好まれているというのもあるかもしれませんが、そもそも「普通の家族」と従来は呼ばれてきた「父がいて、母がいて、子がいて、血縁同士で、ひとつ屋根の下で伝統的に暮らしている」という形はもう現代ではリアリティを持って受け入れられなくなってきているというのもあるのかもしれません。

どっちにせよこういうちょっと規範から外れた親子モノのサブジャンルはこれからも盛況となり続けるでしょう。

『でこぼこ魔女の親子事情』にいたっては、明らかに家族の形の多様さを全面に打ち出す姿勢を見せていますから。魔法が存在するファンタジーの世界観という性質を活かして、少し変わった設定でそれを見せようとするのが本作の特徴です。

ファンタジーで、小さい見た目の主人公が赤子を育てる親になるっていう作品だと私は真っ先に『ウィロー』を思い出すけど、他に何があったかな…。パっとでてこないや…。

子どもでも見やすい絵柄と物語の作品である『でこぼこ魔女の親子事情』。アニメになったことでコミカルなノリも増しています。

後半の感想ではその『でこぼこ魔女の親子事情』の家族と育児のテーマをもう少し掘り起こしつつ、「ミソジノワール」の問題点にも言及しています。「ミソジ…ノワール? 何それ?」という人は読み進めていってください。

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『でこぼこ魔女の親子事情』を観る前のQ&A

✔『でこぼこ魔女の親子事情』の見どころ
★家族や育児のテーマをコミカルに映し出す。
✔『でこぼこ魔女の親子事情』の欠点
☆ミソジノワールの問題点は無視できない。
日本語声優
古賀葵(アリッサ)/ 水樹奈々(ビオラ)/ 土師孝也(フェニックス)/ 朴璐美(リラ)/ 大地葉(ギリコ)/ 関根明良(ルーナ)/ 近藤孝行(フェンネル) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 3.0:気軽に観れる
友人 3.0:自由気ままに
恋人 3.0:恋愛要素は薄め
キッズ 3.0:子どもでも基本はOK
セクシュアライゼーション:一部あり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『でこぼこ魔女の親子事情』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):これが私たち親子です

昔々、とある森にひとりの魔女が住んでいました。見た目は子どものようですが、この魔女のアリッサは200歳を超える年齢です。

そんなアリッサが森を歩いていると、光る草むらを見つけます。そこには人間の赤ん坊がいました。状況がわからず混乱しますが、放っておくことはできません。その子には魔力が相当にあるようで…。

月日は流れて、その赤ん坊は立派に育ちました。ビオラという名で呼ばれ、アリッサとも仲がいいです。しかし、ビオラは16歳となって身長も大人らしくなりましたが、アリッサの姿は子どもっぽい背丈のまま。一緒に買い物をしていても、アリッサが母だとは普通はわかりません。

そんなことも気にせず、ビオラは町で「フェニックス召喚用の鉱石を買って~」と泣きつき、甘えてきます。「この間、ボルケーノドラゴンを召喚したばっかでしょ?」とアリッサは叱りますが、それでも駄々を込めて、道行く人の注目を集めてしまいます。

結局、道具屋に来てしまった親子。ビオラを引き取ったときからお世話になっている育児のベテランでもある女将のリラは「反抗期にはガツンとやったほうがいい」と助言してくれます。「いや、うちの子はまだ子どもですし…。それの16歳なんてまだ赤ちゃんじゃないですか! つい最近まで受精卵だったんですよ!」とアリッサは魔女基準でやや甘やかしすぎるのが難点です。

買ってもらった喜びの笑みで「ありがとう、大事に使うね」とビオラに言われて和んでしまうほどには親バカっぷりでした。

ビオラはその大人っぽさからいろいろな男にナンパされやすいですが、威圧で追い返します。当のビオラはアリッサのほうが男に狙われていると思っており、母が大好きゆえにアリッサを守ろうと必死です。

アリッサには魔女仲間もいます。魔女子会で相談相手となってくれるのはギリコルーナです。「女の子の成長は早いんだから」と言われ、いつかビオラも自立してしまうのかと寂しくなります。

でもビオラはやたら雄弁なフェニックスを召喚してしまったり、相変わらず親を困らせる問題児です。

恋人に興味あるのかと聞くとビオラは「興味ない」と答えます。でもアリッサには許さないといつもの攻撃性を全開にしますが…。ビオラはそんな母の態度をみて、まさかアリッサに恋人ができたのかと不安になります。

ビオラは「使い魔が欲しい」とまたおねだり。アリッサは身近な生き物を提案し、「猫はいいよ」とオススメしますが、アリッサの愛情を奪いそうな生き物は嫌らしいビオラは「めちゃくちゃ強くてビームだせるのがいい」と主張。

アリッサには使い魔がいないですが、ビオラが助けてくれるので助かっていると聞き、少しまた親子の絆が深まります。

命を預かるのは覚悟がいる。それはあの16年前からアリッサの心に刻まれていました…。

この『でこぼこ魔女の親子事情』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/01/24に更新されています。
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育児は社会全体で支えよう

ここから『でこぼこ魔女の親子事情』のネタバレありの感想本文です。

『でこぼこ魔女の親子事情』は冒頭から「竹取物語」「桃太郎」のようなおとぎ話みたいな語り口で始まります。不思議な出来事の結果として子どもと巡り合う物語は日本でも昔からの定番。ただし、そういう昔話は親はおじいちゃん・おばあちゃんの高齢者であることが多いですけど、このアリッサは確かに年齢は人間の基準から見ると超高齢ですけど、見た目は子ども。めぐり合う子どもだけでなく、親にも不思議な設定があるのが本作のポイントです。

全体として、「おね召」とか「お尻みたいな妖精」とか「うんちっぽい焼き菓子」とか、しょうもないネタが多めのギャグで構成されている本作ですが、育児のメインテーマに関してはきっちり向き合っています。

16年前にビオラを拾ったばかりの頃、育てるべきか悩むアリッサに対して「出産はただの結果だよ、血縁は必ずしも愛に直結しない」と背中を押してくれた謎めいたアリッサの母であったり、とにかくアリッサの周囲にはたくさんの支えてくれる人がいます。

シングルマザーであるということもありますが、育児はやっぱり親だけが責任を抱え込むのではなく、社会全体でサポートしてあげるべきだという信念が真っ直ぐ貫かれている作品です。

リザードマンの卵育であったり、ファンタジー世界を活かしたユニークな育児を見せつつも、その育児の普遍性を映し出してくれます。

育児の在り方も多様です。あのお尻みたいな妖精も屋敷のアンナを幼少期から見守り続け、実質は親みたいなものでしたし…。

眠れない睡魔ザントマンのために最後は病院での専門家の診察を推奨したり、公園での親たちの交流における姿勢を描いたり、育児にありがちな悩みに個別にフォローするエピソードもいっぱい。

アリッサとビオラは血縁のないシングルマザー関係ですが、アリッサを育てた母とその父のアウリについては姉弟関係で、アウリは義父として接しています。アリッサの種族が長命ゆえの設定にはなっていますけど、そういう親戚ぐるみで育児に取り組む家族の形も肯定してくれます。

育児のテーマは女性に限定せず、作中ではアウリはもちろんのこと、フェンネルなど男性も育児に参加する姿をフェアに描いており、そこも好感が持てます。

キャラクター作りもステレオタイプをあえて逆手に取る設定がちらほら見られ、とくに第2の母としてビオラに愛情を注いでくれるリラは女性ですが屈強な体格の持ち主で、一方のリラの夫であるポンドはどこか女性的な仕草の多い男性となっていました。それ自体を過度にネタにせず、自然に描いているのも良かったと思います。

第11話で、アウリがモテたい男たちに、自分が姉の魔法で性転換させられた経験をもとに「女になったときは辛かった」「女ってだけで舐めた態度をとってくる男たちがいっぱいいた」とその非対称のジェンダーの抑圧を語る場面があったりと、本作はちゃんとジェンダーの論点を意識している感じが伝わりますね(とは言え、この視点はまだ浅く、下手するとトランスジェンダー差別主義になりかねないので、もう少し包括的な語りは欲しいところですが…)。

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ミソジノワールの問題

こんな感じで『でこぼこ魔女の親子事情』はふざけたノリでありつつも、ステレオタイプを排して育児を軸に包括する真面目さがある作品だったのは間違いないと思うのですが、ひとつ致命的な問題を踏み抜いていて、そこを残りで言及しようかなと思います。

それがビオラの描写です。具体的にどこが問題なのかというと「ミソジノワール」の観点ですね。

本作の世界観には現実の人種や国家の概念はありませんが、それでも明らかにビオラは「ブラック・ガール」です。肌の色は濃く、ブラック・コード化されたキャラクターなのは否定のしようがないでしょう。

そんな人種的容姿のビオラが「養子として育てられる側」にいるのも、現実の人種的背景を意識しているのか、それはわかりません。ただ、「アダルティフィケーション」を意識はさせます。

「アダルティフィケーション(adultification)」というのは、子どもが大人のような抑圧や環境に晒されることを指し、例えば、子どもは子どもでもみな同じ経験をしているわけではなく、ある特定の人種の子はより過酷な状況を強いられやすいです。そうして特定の人種の子が無意識に成熟したものとして扱われやすい人種的偏見を「アダルティフィケーション・バイアス」と言います。

この『でこぼこ魔女の親子事情』はジェンダーの意識はあれど、人種の意識は極めて疎いなというのはハッキリ実感できます。

ことさらマズいのは、ビオラがセクシュアライゼーションを強調するデザインになっていることです。第1話からアリッサとの対比を目立たせるため、ビオラは豊満な胸をぽよんぽよんと演出で誇張し、加えて16歳にしては幼児的な態度をとります。

これは本作のあえての幼稚なギャグの延長だというのはわかりますが、「ギャグです」ではあまり通用しない一線を越えています。

人種関係なく未成年を性的対象化することの問題はありますが、それは置いておいて、こうした黒人やラテン系のような人種の若い女性が過度に性的に描かれるというのは、社会的な大きな問題として指摘されているトピックですAnime Feminist

こうした若い黒人女性に対する差別を「ミソジノワール(misogynoir)」と呼びます。「アンチ・ブラックネス(anti-blackness)」と「セクシズム」の集合体です。それがなぜ差別なのかはそれは長い歴史と社会構造の問題があるわけですが、説明し出すと膨大になるのでここでは割愛します。

厄介なのは、日本社会はこのミソジノワールの問題の認知があまりに低く、とりわけ黒人などの人種を性的に消費するのはアウトなのだという意識が全く浸透していない点です。

日本人だったら「広島みたいに原爆を落としてやるぞ~」と作品で発言するのはギャグのノリでも許されない一線だと理解しています。逆に海外の人はそれがわかっていないので「Barbenheimer(バーベンハイマー)」みたいなことが起きます。

それと同じで、日本社会は人種の問題意識が欠けていることが多く、それが作品のキャラクター描写にも浮き出るケースはよく見かけます『吸血鬼すぐ死ぬ』など中国キャラが誇張的に描かれることがあったり…。そしてブラック・コード化されたキャラクターも日本作品では危ういものが多く…。『でこぼこ魔女の親子事情』もそのステレオタイプの沼に無自覚に突っ込んだということです。

『でこぼこ魔女の親子事情』のビオラはミソジノワール的な描写抜きでも全然成り立つので、それさえなければもっと気持ちのいい作品になったはず。

知らなかったら学べばいいので、これからブラック・コード化されたキャラクターを描きたいと思ったクリエイターはちょっと見識を広げてみるといいですよね。召喚魔法よりも簡単です。

『でこぼこ魔女の親子事情』
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シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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関連作品紹介

日本のアニメシリーズの感想記事です。

・『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』

・『ティアムーン帝国物語』

・『私の推しは悪役令嬢。』

作品ポスター・画像 (C)ピロヤ・COMICメテオ/でこぼこ魔女製作委員会 デコボコ魔女の親子事情

以上、『でこぼこ魔女の親子事情』の感想でした。

The Family Circumstances of the Irregular Witch (2023) [Japanese Review] 『でこぼこ魔女の親子事情』考察・評価レビュー