続編に休む暇なし…Netflix映画『タイラー・レイク -命の奪還-2』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2023年)
日本では劇場未公開:2023年にNetflixで配信
監督:サム・ハーグレイブ
タイラー・レイク 命の奪還2
たいらーれいく いのちのだっかんつー
『タイラー・レイク 命の奪還2』あらすじ
『タイラー・レイク 命の奪還2』感想(ネタバレなし)
2作目のアクションも凄まじい
家具のパーツやスマホのディスプレイが壊れても勝手に直ったりはしません。でも人間は違います。人間の人体は不思議なもので、ある程度の自己修復能力を備えています。
例えば、骨が折れると、赤く腫れて痛みをともなう炎症が起きます(WebMD)。でもこれも修復の第一ステップです。次に骨折が起きてから早いと1週間で、「カルス(callus)」と呼ばれる不完全な骨組織が作られ、これは「仮骨」ともいいます。軟骨の一種なのでまだ強度はありません。これはしだいに硬くなっていきます。そして最終的には約6〜8週間もすると硬い仮骨が通常の骨に置き換わります。最初は不均一ですが、治癒中に形成された余分な骨を分解しながら、最後は怪我をする前の状態に戻ります。
もちろんこの修復期間中は安静にしていないといけませんし、修復が終わってもいきなり極端な負荷はかけられません。徐々に体を慣らし、回復を確実なものにしていく必要があります。
現実社会であれば、ちゃんと絶対安静を医者から徹底されると思いますが、医者よりも脚本家のほうが権限がある映画のフィクション世界では、安静は二の次となることもしばしば。
今回紹介する映画も主人公に休みなどほとんどありません。
それが本作『タイラー・レイク 命の奪還2』。
本作は2020年に「Netflix」で独占配信されたアクション映画『タイラー・レイク 命の奪還』の続編です。
『タイラー・レイク 命の奪還』の見どころはとにかくアクションで、“チャド・スタエルスキ”や“デヴィッド・リーチ”に続く新たなスタントマンから監督へとキャリアアップした“サム・ハーグレイブ”の初監督作であり、そのアクションのクオリティは凄まじいです。怒涛の長回しによる切れ目のない激しいアクションの連続は、目を休ませる暇を与えてくれません。
その『タイラー・レイク 命の奪還』は視聴者のウケも良かったので続編がすぐに企画され、どうやら世界観をもっと横に拡大させる構想もあるようです。
でも「あれ、1作目で主人公は死んでなかったっけ?」と思ったりもしましたけど、やっぱりちゃんと生きていたんですね。瀕死の重体ながらも奇跡の復活を遂げるなんて、いかにも映画的なご都合主義ですが、もうこのジャンルはそういうのは見慣れているから…。
『タイラー・レイク 命の奪還2』でも“サム・ハーグレイブ”監督は続投。製作は“ルッソ”兄弟で、脚本は“ジョー・ルッソ”とここも同じ。そのためか、1作目と雰囲気は微塵も変わっていません。
主演は1作目から変わらずの“クリス・ヘムズワース”。2022年末に一時休業を発表するという報道もあったけど、本当に休業しているんだろうか…。公開を控えている映画のリストを観る限り、今後も仕事しまくっているように思えるけど…。
共演としては、『パターソン』や『バハールの涙』でおなじみのイラン出身の“ゴルシフテ・ファラハニ”も引き続き登場し、今作ではこちらも負けじと激戦のアクションをたっぷり見せてくれます。
他にも『サンティネル』の“オルガ・キュリレンコ”、『Abigail』の“ティナティン・ダラキシュヴィリ”などが出演。さらにあの有名な大物俳優も顔をだすのですが、それは観てからのお楽しみに。
当然のように2作目も最高のアクションを提供してくれます。アクション映画好きは規制解除で出勤指示がでていても遠慮なく会社を休んで鑑賞してください(責任はとらない)。迫力ある映像が売りなので、なるべく大画面で観るほうが今回も絶対にいいです。Netflixはなぜこういうスクリーン映えする作品こそ劇場公開にしないんだ…。
それにしても邦題の「2」の位置、ここでいいのかな…。「タイラー・レイク2 なんとかなんとか」という日本語タイトルになるものだとてっきり思っていたのに…。このナンバリングの付け方は後々後悔するやつだと思いますよ。
『タイラー・レイク 命の奪還2』を観る前のQ&A
A:Netflixでオリジナル映画として2023年6月16日から配信中です。
オススメ度のチェック
ひとり | :アクション好きは絶対に必見 |
友人 | :エンタメで盛り上がる |
恋人 | :俳優好きなら一緒に |
キッズ | :暴力描写は当然ある |
『タイラー・レイク 命の奪還2』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):またも救出任務
元オーストラリアSAS連隊の傭兵であるタイラー・レイクは、バングラデシュとインドの麻薬王の抗争によって誘拐の被害に遭った子どもを救うべく、危険なミッションに挑みました。傭兵仲間のニック・カーンと共に、その救出の最前線で戦いましたが、その最中に致命的な被弾によって倒れ、川に落ちて沈んでいきました。
しかし、タイラーは溺れ死ぬことなく流れつき、仲間に助けられ、緊急処置を受けます。ドバイにドクターヘリで搬送され、一命はとりとめましたが、死の淵を彷徨っていました。
肩を並べて死線を潜り抜けてきたニックも、タイラーの復活を諦めていませんが、医者はかなり悲観的です。
それでも驚異的な生命力で目を覚ましたタイラー。とりあえず安心です。なおも体力の回復は程遠く、今度は気の遠くなるリハビリが待っています。
その頃、ジョージアの田舎の村では、ズラブという男にある知らせが入ります。それは弟のダヴィッドの刑期が伸びたというものでした。彼は今はカチリ刑務所に収監されています。
ズラブは知事と会い、ダヴィッドの刑期を10年延ばすことにさりげなく言及します。「DEAの捜査官を殺したからね」と知事はやむを得ない事情を説明しますが、「誰のおかげで知事になれたと?」とズラブは不敵に口にし、知事を農具(ピッチフォーク)でひと刺し。彼にとってもうこの知事は病気になった家畜も同じ、処分するだけでした。
タイラーのリハビリも順調に経過し、退院できるようになりました。ニックの弟のヤズ・カーンも来て軽口をたたきながら一緒に病院をでます。
とは言っても無理はできないのでタイラーはオーストリアのグムンデンの森の中にあるロッジでしばらく滞在することに。松葉杖をつきながら歩けるようになったとは言え、安静は必須です。
しかし、タイラーには退屈な時間です。犬とテレビを見たり、釣りをしていても、何も意味を感じません。
ところがある日、タイラーのもとに見知らぬ男がやってきます。こちらの実績をよく把握しており、名乗りもしない男に「失せろ」とタイラーは衰えぬスキルで発砲して威嚇します。
どうやら依頼があるらしく、タイラーの別れた妻のミアからだと言われ、家の中に通します。
ミアの妹ケテヴァンの夫ダヴィッド・ラディアニが刑務所におり、息子サンドロと幼い娘ニーナと一緒にケテヴァンも軟禁されているそうです。ダヴィッドの兄のズラブは麻薬を売っていましたが、今や一大組織となってナガジと称しており、実質的に国を動かすほどの権力だとか。タイラーへの依頼は密かにケテヴァンが画策した自分と子どもたちの救出任務でした。
アマルフィ海岸にいるニックに連絡し、タイラーは協力をお願いします。そしてトレーニング開始で本調子を急いで取り戻していきます。
カチリ刑務所への潜入はタイラーが主導し、ニックとヤズはサポート。ケテヴァンと子どもたちとは静かに合流できましたが、囚人に見つかり、騒ぎに発展。出口は封鎖。
なんとか子どもを逃がしたところでダヴィッドに発見され、格闘となり、ケテヴァンが最後にスコップで殴打してダヴィッドを殺しました。このことは息子には黙っています。
その裏切り的な殺しをズラブが黙って見過ごすわけもなく…。
列車内で戦闘はお控えください
ここから『タイラー・レイク 命の奪還2』のネタバレありの感想本文です。
『タイラー・レイク 命の奪還2』は1作目のラストと地続きで始まります。致命的な一撃で死亡したに見えた主人公のタイラーでしたが、かろうじて生存していました。ああなってくると、骨折、出血、内臓損傷などよりも、感染症のほうが心配になってきますが…。
ここからリハビリテーションと休息に数カ月、そしていきなりの戦いへの復帰です。いや、確かに『ジョン・ウィック』よりは休めているけれど、健康をなんだと思っているんだという急展開ですよ。
そもそもなんであんな医療サポートも何もない山奥のロッジに籠らせるんだろうか…。
しかし、タイラーにとっては案外と願ったり叶ったりな展開です。戦うことが一番のリハビリになってしまうのがこの男の体質。勇んで刑務所へと潜入していきます。
そしてここからこのシリーズ恒例の長回しアクション(厳密には何回かカットを入れているのだろうけど)。まず刑務所中庭の乱戦が凄まじいです。あそこの立ち回り方はほとんど『マイティ・ソー』シリーズのアイツですよ。いつ雷攻撃したり、ハンマーを呼び寄せるのかと…。
火炎瓶が投げ込まれたり、何が起きてもおかしくないアクションの連発にこちらも目が離せませんが、常にあのケテヴァンも渦中にいるのが地味に凄くて…。だんだんあのシーンを観ていると、この乱戦の中でもなんだかんだで上手く切り抜けているケテヴァンは実は凄いんじゃないかと思えてくる…。
そしてそれで終わらない。次は間髪入れずにカーチェイス。装甲車、頑張ってました。最後は派手にクラッシュするけど…。でも一番の頑張りはカメラマン。ああいう外から車内へと視点が通り抜けていくシーンは本当にカメラを物理的に手渡しして撮っているんですよね。
さらに今度は走って走って、列車に到着し、今度は走行している列車での縦横無尽のアクションに発展。上からは攻撃ヘリが襲ってくるわ、部隊が降下してくるわ、車外でも車内でも格闘するわ、てんやわんやです。
さすがにこの列車アクションは、実際に走行している列車で撮影したものと、ブルーバックで撮影した固定セットの映像を繋ぎ合わせているようですけど、素晴らしい完成度でした。メイキングを観ているだけでも楽しそうですよ。
しっかり最後はこの列車もクラッシュするし…。別にクラッシュしなくてもいいのですけど、お約束だから…。ズラブの戦闘部隊も相手の生死を気にしないなら線路でも攻撃すればいいのにね…。
主人公補正という理不尽
『タイラー・レイク 命の奪還2』の後半は、サンドロの気の迷いで位置がバレてしまい、オーストリアのウィーンの隠れ家のビルが戦場に。
今作の敵であるズラブは帝国を築いていると説明されていましたが、オーストリアにガンシップを普通に送り込んで、首都のウィーンでドンパチできる権力の持ち主なのか…。オーストリアの永世中立国という肩書なんて意味なしだな…。
ちなみにこの後半のウィーン戦では実際にウィーンでの2週間規模の撮影をしたそうで、撮影場所の一部はデイケアセンターがあるところだったらしいです。普通に傍迷惑だ…。
本作を観ていると「主人公補正」というものの理不尽さを思い知らされますね。あれだけ瀕死だったタイラーは冒頭から復活し、以降も遠慮なしで暴れまくって、戦えば戦うほどに強くなっている感じさえあるのに、ヤズはあれだけで死んじゃうので…。まあ、でも次回作があったら普通に生きているかもですけどね。この映画の死は信用できん…。
最終的にズラブをぶちのめし、疲労困憊のタイラーとニックは刑務所に収監。まあ、じっくり休めると言えばそうなので、これで良かったのかもしれない…。
しかし、そこに休みを切り上げさせる面倒な奴が登場します。“イドリス・エルバ”です。
序盤で休暇中のタイラーを任務に引っ張り出すあたりからも「いや、お前がやれよ!」とツッコミたい気持ちが抑えられませんでしたが、この“イドリス・エルバ”はタイラーとニックをリクルートして、さらなるヤバイことに従事させる気のようです。その職場、休みはどれくらいある労働規定ですか?
このシリーズは製作者としては拡大させていくつもりのようなので、“イドリス・エルバ”の登場も典型的なMCUで言うところの「ニック・フューリー」的な役回りなんでしょう。
ただ、“ルッソ”兄弟は『シタデル』というドラマシリーズをAmazonで巨大なフランチャイズ展開させ始めたばかりだし、なんか似たり寄ったりなことを各所でやってないか?と思うのですけど…。
おそらく『タイラー・レイク』シリーズだけでの世界観拡張を目指すと思われますが、自スタジオ作品同士でパイを奪い合っているような気もしなくもない。大丈夫なのか、“ルッソ”兄弟…。
休業しているのかどうかわからない“クリス・ヘムズワース”にしてみれば、マッチョイズム全開でアクションできる作品なのであまり手放さないでしょうし、3作目もあり得るかなと。そのときは、アクションのフィールドは列車と来て、今度は飛行機とかですかね。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 75% Audience 89%
IMDb
7.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)Netflix タイラーレイク2 エクストラクション2
以上、『タイラー・レイク 命の奪還2』の感想でした。
Extraction 2 (2023) [Japanese Review] 『タイラー・レイク 命の奪還2』考察・評価レビュー