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アニメ『Harley Quinn』感想(ネタバレ)…そして私は最愛の女に出会った

Harley Quinn

棘のある花のような女性に…アニメシリーズ『Harley Quinn(ハーレイ・クイン)』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Harley Quinn
製作国:アメリカ(2019年~)
シーズン1:2019年にDC Universeで配信
シーズン2:2020年にDC Universeで配信
原案:ジャスティン・ハルパーン ほか
性描写 恋愛描写

Harley Quinn

はーれいくいん
Harley Quinn

『Harley Quinn』あらすじ

悪事に身を投じるハーレイ・クインはジョーカーという極悪ヴィランのガールフレンドで、一緒にさまざまな犯罪に手を染めていた。ある日、ハーレイはバットマンに捕まってしまい、刑務所に収監される。きっと愛しのジョーカーが助けに来てくれるに違いないと考えていたが、待てども全く現れる気配はない。そうこうしているうちに同じ刑務所内のポイズン・アイビーが脱獄し、ついでにハーレイも外に出してくれるが…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『Harley Quinn』の感想です。

『Harley Quinn』感想(ネタバレなし)

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お祝いにはこのキャラを招きたい

9月23日は「Celebrate Bisexuality Day」です。これはバイセクシュアル(バイセクシャル)の人々と歴史の理解を深め、そのアイデンティティを祝うという当事者のための日です。この日の週は「Bisexual Awareness Week」ともなっています。

最近は「Bisexuality+ Day」とも呼ばれるようになってきました。「バイセクシュアル+」というのは、狭義のバイセクシュアルだけでなく、パンセクシュアルやポリセクシュアルなど、複数の性別/ジェンダーに惹かれる人を包括したラベルです。

そこで今回は「Celebrate Bisexuality Day」を記念して、ぴったりな作品を特別に紹介しようと思います。

それはこのアニメシリーズ『Harley Quinn』です。

『Harley Quinn』はタイトルでずばり言い切っていますが、「バットマン」「スーパーマン」でおなじみのアメコミ「DC」の人気キャラクターのひとり「ハーレイ・クイン」を主人公にしたアニメシリーズです。ハーレイ・クインは最近は実写でも活躍しまくっており、“マーゴット・ロビー”が演じ、『スーサイド・スクワッド』(2016年)、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020年)、『ザ・スーサイド・スクワッド 極悪党、集結』(2021年)と続いています。今や実写界においてDCヴィランの新しい顔です。

このアニメ化された『Harley Quinn』はそれら実写映画とは全然繋がりの無い独立した作品なのですが、実写以上に暴れ放題で、ハーレイ・クインらしい内容になっています。

アニメと言っても、基本的に大人向けの作品で、残酷な暴力描写も性描写もわりと普通に飛び出すのですけど、見どころはそこよりも、ハーレイ・クインの物語でしょう。

そもそもハーレイ・クインのセクシュアリティ(性的指向)はバイセクシュアルです。しかし、実写映画ではそれがわかるような展開は明確にはありませんでした。

しかし、このアニメ『Harley Quinn』はハーレイ・クインのバイセクシュアルとしてのアイデンティティをしっかり描いており、しかもそのクィア・ストーリーを主軸にしているのです。おそらく現状のDCの映像化の中では最もクィアな作品として先頭を突っ走っていると思います。男性支配からの脱却というフェミニズムな物語も満載で、ハーレイ・クイン本人は性格的に絶対にフェミニストやクィア・アイコンを容易く名乗らないでしょうけど、紛れもなくこの作品はそういうスタイルになっています。

アニメ『Harley Quinn』で、主役のハーレイ・クインの声を演じるのは、ドラマ『フライト・アテンダント』でも活躍中の“ケイリー・クオコ”。製作総指揮も務めているのですが、とても“ケイリー・クオコ”らしい「面倒女」みたいなキャラ造形で面白おかしく声をあてており、これはこれでぴったりです。

アニメ『Harley Quinn』は2019年から「DC Universe」という独自の配信サービスでスタートし、シーズン3以降は「Max(旧HBO Max)」で配信されてきました。

ただ、残念なことに2023年9月時点で日本では見やすい状況になく…。なんとかこの最高のクィア・アニメを日本語翻訳つきで公式取り扱いしてくれるサービスが現れないものですかね。絶対に求めている人には刺さる、大歓迎されるのに…。

独立した作品ですが、中身はDCのマニアックなネタがてんこ盛りで、キャラクターも総出演のようにめちゃくちゃ入り乱れるのですが、とりあえずハーレイ・クインの愛を見届けたいという想いさえあれば問題ないです。

口汚く、乱暴で、破壊的に混乱している…そんなクィアな女性キャラクターがもっと必要な時代ですからね。

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『Harley Quinn』を観る前のQ&A

Q:「ハーレイ・クイン」ってどんなキャラクター?
A:ジョーカーのパートナーとして登場した若い女性で、以前はアーカム・アサイラムの精神科医として働いていました。ジョーカーに触発され、快楽的に犯罪に手を染めていましたが…。
Q:『Harley Quinn』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:とくにありません。独立したアニメシリーズです(DCネタは豊富ですが)。
✔『Harley Quinn』の見どころ
★クィアな物語がエモーショナルに炸裂。
✔『Harley Quinn』の欠点
☆日本で観る機会がかなり乏しい。

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:届けたい物語
友人 3.5:DC初心者も誘える
恋人 3.5:同性ロマンス主体
キッズ 2.5:性的なシーンあり
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『Harley Quinn』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『Harley Quinn』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):別れは真の愛への芽生え

大金を持て余すいけすかない富裕層が集う船に突如として現れたのはハーレイ・クインです。でも金持ちの男たちはハーレイを「ジョーカーのガールフレンド」としてしか見なしておらず、腹が立ったのでとりあえずひとりの男の片足をハンマーで折ります。

そこにジョーカーが変装を解いて出現。ジョーカーはハーレイが喋っている間に勝手に乗客を溶かして燃やして殺していきます。ハーレイはジョーカーの対等なパートナーになりたいですが、サイドキックと認識しているだけのジョーカー。

口論していると空から颯爽とバットマンが現れ、ジョーカーはひとりで潜水艦で逃走。ハーレイは確保されます。でも「ジョーカーの身を売るようなマネはしない。真実の愛で結ばれている」とハーレイは強気です。こうしてアーカム・アサイラムに送られ、投獄の身に…。

6か月後、ジョーカーが来てくれると信じていましたが全然来ません。きっとバットマンと戦っているに違いない…。

さらに3カ月後。まだジョーカーを頑なに信頼しているハーレイ。あの人は最高の人だから…。

さらにさらに経過。なおもジョーカーの救いを諦めきれないハーレイ。同じく監獄にいるポイズン・アイビーは「ジョーカー離れしなさい」と健気に諭してくれますが、その親切心の言葉もハーレイの耳には入りません。

そうこうしているうちにポイズン・アイビーは派手に脱獄を決行。まだ粘るハーレイを眠らせて連れ出してあげます。それでもまだハーレイはジョーカーのケアをあてにしており、戻ろうとするのをアイビーは止めますが、ハーレイも意地を張ります。

結局、アイビーと一緒に好き勝手やっているジョーカーのもとへ行き、「なんで1年も放置なの?」と問い詰めます。そして「もう二度と会わない」と、とうとう別れを切り出すのでした。

しかし、ジョーカーは言葉巧みに上手い具合に丸め込んでハーレイは後悔しだします。あげくにジョーカーとべっとりキスして仲直り。

そうやってまたもジョーカーの言いなりになり、リドラーのもとに派遣されます。そこでバットマンと共に捕まり、ジョーカーが駆け付けますが、助けられるのは片方だけ。ジョーカーが最終的にバットマンを選んで去ってしまうと、ハーレイはやっとジョーカーは自分を愛していないことに気づきました。

実はリドラーはアイビーと組んでハーレイに気づかせてあげるひと芝居をうっていました。

ハーレイは衣装チェンジ。悪いことをしまくってやると意気込みます。ジョーカー無しで、スーパーヴィランに自分の手でなってみせる…。

この『Harley Quinn』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/02/04に更新されています。
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シーズン1:男に支配されているだけだった

ここから『Harley Quinn』のネタバレありの感想本文です。

アニメ『Harley Quinn』は、シーズン1の第1話からハーレイ・クインがジョーカーと別れる展開から始まります。この導入は実写映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』と同じです。

ただ、今作アニメ『Harley Quinn』は、そのジョーカーとの別れをもっと根深く、そして難しいものとしてじっくり描き出しています。完全に吹っ切れるのはシーズン1の最終話になってからです。

このハーレイ・クインのジョーカー依存は、言ってしまえば「男性に支配された状態」です。いわゆる「ガスライティング」され、マインドコントロール状態にあるのが最初のハーレイ・クインのありさま。

この状態からどうやって脱するのか。手始めにハーレイ・クインはアメコミでは定番の「チーム作り」から始めることにし、ポイズン・アイビー、ドクター・サイコ、クレイフェイス、ナナウエ(キングシャーク)、サイ・ボーグマンなんかを加えていきます(あとアイビーの植物フランクもいる)。

目指すは、ヴィランの巣窟「ホール・オブ・ドゥーム」を取り仕切るレックス・ルーサーがまとめている「リージョン・オブ・ドゥーム」のようなヴィラン・チームです。

とは言え、この即席チームはポイズン・アイビーを除くと男ばかりで、ヴィランさえも男社会な中でハーレイはかなり苦戦しているのが窺えます。

そしてここも面白いですが、ハーレイはもともとハーリーン・クインゼルという精神医学に長けたアカデミックなキャリアを持つ若い女性だったわけですけど、ハーレイはその専門知識を半ばメタ的に利用するかのように、自分の精神診断を自己流で行っていきます

ハーレイの人生には家父長的な父を中心とした家庭など、根底から「男性に支配された状態」があることを再確認し、一歩一歩、己を見つめ直していく…。たとえ、専門家並みの知識があろうとも、こうした男性支配の餌食になってしまうことはあるのだから、自分を責める必要はない。ひとつひとつのステップでセルフケアをしながら前に進んでいくだけでしい…。そんな無理をさせないエンパワーメントの物語でした。

最後は逆の立場で、今度はハーレイがジョーカーを突き落とします。アイツを真人間に変えてやるのがもっと極悪な行為だろうし…。

女がアイデンティティを取り戻した時、世間はその姿を悪者とみなすなら、喜んでヴィランになってやろうじゃないか…そんな気持ちですよ。

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シーズン2:棘のある花に愛されたい

アニメ『Harley Quinn』のシーズン2、すっかり見る影もなく崩壊したゴッサムシティで、前回のどん詰まりは嘘のように解放されて弾けているハーレイ・クインが、ノリノリでヴィランとしての道を突き進んでいるところから開幕です。

ベイン、ペンギン、トゥーフェイス、リドラー、ミスター・フリーズなどの「インジャスティス・リーグ」の面々が各地区を支配する中、ハーレイたちもわりと負けてません。

そんなカオスな世界で、ハーレイは新たな難問にぶちあたります。自身のセクシュアリティの自覚です。ジョーカーとのあれは真実の愛ではなかったわけですが、じゃあ、私の真実の愛ってどこかにあるの?…と。

第7話にて、地下からの危機一髪な脱出を体験した直後、ハーレイとポイズン・アイビーは衝動的に口づけを交わしてしまい…。以降のハーレイはもうずっとモヤモヤです。「キスくらい誰とでもするし!」みたいな照れ隠しでナナウエ相手であろうがキスしまくってみせたり…。今回は男性による心理的虐待とかではないので前シーズンよりも微笑ましく見ていられますが…。

一方で、ポイズン・アイビーのほうはカイトマンとシーズン1から付き合い始め、シーズン2では結婚式まで進んでいきます。でもポイズン・アイビーはどこか規範的な型に収まってしまうことに妥協している感じで、今回はハーレイとちょっと立場が逆転していますね。

第9話のナナウエの「アンダー・ザ・シー」パロディの傍ら、ハーレーとアイビーはバチェロレッテ・パーティーにて酔ってベッドインしたっぽいし(2度)、そんな経験を繰り返してもアイビーはまだ受け入れず、ハーレイも素直に告白できません。

ちなみにシーズン2ではキャットウーマンも登場し、彼女もバイセクシュアルなのですが、少し悩めるクィアの先輩としての導きを与える役目で、あれはあれで良かったですね。バットガール(バーバラ・ゴードン)も描かれ、女性キャラのボリュームも増えてきた感じ。

話を戻して、ハーレイとアイビーの恋模様ですが、キスで洗脳を解くという「真実の愛」テンプレを実現し、いよいよ否定するのもバカらしくなってきた頃。最終話、ようやく結婚式当日にカイトマンのほうからアイビーの愛がないことを悟り去り、ハーレイとアイビーはウェディング・カーで逃走。互いに愛しているとキスしながら車は走り去っていくという大団円でした。そりゃあ「The End?」の表示にもなりますよ。

これを実写でやってくれよ、ワーナーさん…。

なんか『テルマ&ルイーズ』みたいなラストだったけど、2人の人生はまだ続く…。

「もうスーパーヴィランになりたくない」との心境に到達してしまったハーレイなので、今度は次のアイデンティティ探しがまた始まるのかな? でも最愛の人が隣にいるのだから大丈夫…ですよね?

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シーズン3:どんな茨の道でも支え合う

※シーズン3に関する以下の感想は2023年11月1日に追記されたものです。

アニメ『Harley Quinn』のシーズン3は、前回の最高の結婚ENDを経て、ハーレイとアイビーはもう気兼ねなくイチャイチャ…はするにはするのですが、でもそれで満足ではありません。

カップルネーム「Harlivy」だとか、ベスト・カップル賞だとか、そんな周囲のお祝いムードはなんのその、この2人は前進します。

それぞれが何をしたいのか、そして互いをどう支え合いたいのか、そういう同意と目標が今回のシーズンのテーマですかね。

アイビーは都市緑化テラフォーミングに一瞬狂信的に惹かれますが、気を取り直してルーサーから「リージョン・オブ・ドゥーム」のリーダーの仕事を受ける…のかな。

一方のハーレイは本格的にヴィランに興味が失せ、ついにバットファミリーの新しいメンバーに参入(バット・ガールが率いる)。そんな中で、悩めるブルースのセラピーをしたり、ちゃんと博士号を活かしているのも印象的です。

クレイフェイスがジェームズ・ガン監督の椅子になったり、ジョーカーがゴッサムの新しい市長になったり、他の脇のキャラもそれぞれの道を見つけているようで良かった良かった。

それにしてもこの作品を見ていると「DCのキャラってこんなに変態ばっかりだったっけ」ってなる…(梟の法廷の乱交オチはすぐに察しがついた)。

『Harley Quinn』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 89% Audience 88%
S2: Tomatometer 100% Audience 90%
IMDb
8.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0

作品ポスター・画像 (C)DC アニメハーレイクイン

以上、『Harley Quinn』の感想でした。

Harley Quinn (2019) [Japanese Review] 『Harley Quinn』考察・評価レビュー