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『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』感想(ネタバレ)…Netflix;元刑事が脱獄する!

刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン

元刑事が脱獄する!…Netflix映画『刑事ジョン・ルーサー:フォールン・サン』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Luther: The Fallen Sun
製作国:アメリカ・イギリス(2023年)
日本では劇場未公開:2023年にNetflixで配信
監督:ジェイミー・ペイン

刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン

けいじじょんるーさー ふぉーるんさん
刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン

『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』あらすじ

狡猾な罠にハマって自らの暴走した行いを世間に暴露されてしまった刑事ジョン・ルーサーは獄中生活を送るしかなかった。しかし、社会は平和になるわけではない。邪魔者であるルーサーが消えた今、残忍な連続殺人犯がロンドンを我が物顔で恐怖に陥れる。ルーサーにとっても、この犯人をかつて取り逃がしたという事実が重く圧し掛かる。どんな手段を使ってでも終止符を打たなければならない。悪夢を断ち切るため、ルーサーは決意する。

『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』感想(ネタバレなし)

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今度は脱獄する!?

映画の中ではよく見るけど、実際に本当に起きているの?と疑わしくなってくるもの…そのひとつが「脱獄」です。

登場人物が脱獄する映画はたくさんあり、今も量産されていますが、現実ではそんなに脱獄しまくっているものなのでしょうか。

確かに日本では今は脱獄の事例がほとんどありません。最近だと2018年4月8日に松山刑務所の造船作業場から当時27歳の男性受刑者が脱走し、20日以上たって発見され確保された事件が起きたのですが、それっきりです。とは言え、この事例は作業場からの脱走なので、いわゆる刑務所らしい拘置施設や行刑施設からの脱獄ではないです。

一方、アメリカでは2019年の統計によればその年だけで2231人の受刑者がアメリカの州または連邦刑務所か​​ら脱獄したとのこと。全体的な傾向からみれば年々減少しているのですが、それでもまだまだ世界的には脱獄は全然あるのだなと実感させられる数字です。

これなら脱獄映画は今後もいっぱい作られそうですね。

しかし、今回紹介する脱獄映画はちょっとひと味違います。なにせ脱獄するのは元刑事なのですから。

それが本作『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』です。

本作はドラマシリーズの続編となる映画版となります。元々は2010年からBBCで放送が始まった『刑事ジョン・ルーサー』というイギリスのテレビドラマで、数々の賞に輝くほどに大好評となり、2019年にシーズン5まで放送されました。

内容は、ロンドン警察の主任警部であるジョン・ルーサーという男が、禍々しい難事件を解決していくという、構図としてはわりとベタなクライムサスペンスです。ただ、この主人公がなかなかの曲者で、一匹狼で独善的に行動することが多く、捜査のためなら多少の法律や倫理無視は気にしません。相手を脅迫もするし、不法侵入もするし、不正しまくりなのです。正義のために不正をするという矛盾を抱えたキャラクターが本作の魅力の柱です。

この主人公を“イドリス・エルバ”が演じているというのも人気の大きな理由で、“イドリス・エルバ”らしいダークでセクシーな魅惑がたっぷりの探偵モノになっています。最近は『アラビアンナイト 三千年の願い』で魔人とかになっている“イドリス・エルバ”ですが、やっぱりこういうジョン・ルーサーのようにオーソドックスな強面仕事マンみたいなスタイルが一番似合っている気がします。

そのドラマ『刑事ジョン・ルーサー』の物語がそのまま続編として映画になったのが『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』なのですが、「じゃあ、ドラマを観ていないと楽しめないのかな」と心配する人もいるでしょうけど、基本、そこは気にしなくてOKです。ここから初見でも大丈夫。

背景としてはジョン・ルーサーというちょっとやりすぎちゃった刑事がいるという事情さえ知っておけばいいので…。『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』ではこの主人公がこれまでの数々の不正ゆえに逮捕され、刑務所行きになってしまったところから始まります。しかも脱獄します。脱獄するのかよ…って感じですが、ジョン・ルーサーらしいと言えばそうなる…。

だから「刑事ジョン・ルーサー」という邦題は今回ばかりは若干整合性がないんですけどね。「元刑事ジョン・ルーサー」だし、もっと言えば「脱獄犯ジョン・ルーサー」ですよ。

『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』を監督するのは、ドラマ『ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ』などを手がけた“ジェイミー・ペイン”。脚本は本家ドラマでもおなじみの原案者である“ニール・クロス”です。

“イドリス・エルバ”と共演するのは、『ハリエット』の“シンシア・エリヴォ”、『スターリンの葬送狂騒曲』の“ダーモット・クロウリー”、『オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体』の“ハティ・モラハン”…。

そしてドラマ『キャシアン・アンドー』でも名演を見せてくれました“アンディ・サーキス”が今作ではかなり過激な猟奇殺人鬼を怪演しています。さすが芸達者な俳優です。

かなり残酷な展開も連発するのですが、エンタメ要素強めのクライム・スリラーが好きなら、ぜひこの映画からでも飛び入り参加してみてください。

『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』はNetflix独占配信中です。

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『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』を観る前のQ&A

Q:『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2023年3月10日から配信中です。
✔『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』の見どころ
★イドリス・エルバのワイルドかつセクシーさ。
★猟奇殺人鬼との緊迫の攻防。
✔『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』の欠点
☆残酷な展開が多めなので、見る人を選ぶ。
日本語吹き替え あり
坂詰貴之(ルーサー)/ 佐古真弓(レイン)/ 関輝雄(シェンク)/ 宗矢樹頼(ロービー)/ 増元拓也(アーチー)/ 井上喜久子(コリン) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:ジャンル好きなら
友人 3.5:俳優ファン同士で
恋人 3.0:ロマンス要素無し
キッズ 2.5:残酷展開が多め
↓ここからネタバレが含まれます↓

『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):事件は終わらない

深夜の高層ビル。誰もいないオフィスを掃除する清掃員の男。すると自分のスマホに電話がかかってきて、「カラム。15分後に会いたい。場所はここだ」と怪しげな声。「間に合いそうにはない」とカラム・オルドリッチは答えるも、「彼女や母にスクリーンショットを送るぞ」と不敵に脅してくる謎の声にカラムは血相を変えます。

仕事を放り出して車を走らせるも、土砂降りの中、道路に人が倒れているのを見つけ、通報。車が放置されており、中を確認。しかし、背後で倒れていたはずの男が狙いすましたかのように起き上がり、カラムを気絶させ…。

翌日、現場にジョン・ルーサー警部がやってきます。車の持ち主はケリス・ジョーンズで、銀行員でしたが7年前に失踪。通報した男の名はカラムで、通報後に消えたと見られます。何者かに導かれたとルーサーは分析。

そこにカラムの母のコリンが息子を心配して現場に駆け付けます。カラムを見つけると約束してと言われ、ルーサーは約束します。

それから月日が経過。裁判所前は騒然としていました。失踪したカラムの捜査責任者であったルーサー警部の有罪を示す証拠がメディアに示され、不法侵入や容疑者の脅迫、証拠改竄、賄賂など重犯罪が多数明らかになったのです。マスコミは彼自身の正義への思い込みがそうさせたと報道し、捜査の進展がないことで警察は批判にさらされていたと解説。

ルーサーは警察を解雇され、今は護送車で運ばれようとしています。行先は刑務所です。

その後、ルーサーは刑務所という別世界に佇んでいました。囚人たちは警官が憎いので当然のようにルーサーに厳しい目線を向け、隙あらば襲ってきます。

一方、息子の捜査が途絶えて絶望していたコリンのもとに、カラムから電話がかかってきて、言われた場所に車で向かいます。豪華な邸宅でドアは不自然に開いています。中へ入ると声をかけても誰も現れません。カラムに電話をかけるとある部屋から音が鳴ります。

そこに足を踏み入れると、大量に吊るされた人の姿が…。足元には多くのスマホ。カラムもそこに吊るされており、大勢の遺族とおぼしき人たちが同じく集い、嘆くしかできません。

すると家に火がつき、瞬く間に燃え上がります。窓に不気味な人物が立っているのを目撃したコリンはわけもわからずその場を去るしかできず…。

警部のオデット・レインは通報を受けて現場へ。燃え尽きた邸宅。犠牲者は8名で、邸宅は長らく不在だったようで犯人に利用されたと思われます。レインはただちに捜査を開始するように部下に命じます。

ルーサーはその事件を刑務所のニュースで知り、さらに手紙に「65.8」とだけ書かれたものが送りつけられ、ラジオをつけて合わせると、苦痛そうなカラムの声が流れてきました。ルーサーを知っている犯人とみられる声もあり、ルーサーを檻に閉じ込めたのも自分だと挑発してきます。

こうなってはルーサーはここでじっとしているわけにはいきません。この危険な犯人を一刻も早く止めなくては…。

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あなたなら脱獄できますよ

『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』は前述したとおり、主人公の刑事は刑務所から始まります。ドラマの続編とは言え、刑務所スタートで開幕する刑事モノもなかなかないです。

さすがのルーサーでも刑務所内だけで捜査を完了はできないので、「よし、脱獄しよう」みたいなノリで脱獄計画を友人のデニスに連絡して実行します。しかも、脱獄時に囚人を檻から解放してパニックを起こすという、脱獄の中でも一番大迷惑なプランを選択。この人、これでも元刑事ですよ。覚えておいてくださいね。

そんなパニックを起こせばルーサーの身にも危険が及ぶぞと仲間が至極真っ当な意見を言うのですが、ルーサーは覚悟の上みたいな顔をします。でもこっちの観客にしてみれば「まあ、イドリス・エルバなら大丈夫だろう」という冷静な気持ちですけどね。

ライオンとだって戦っても違和感が全くない“イドリス・エルバ”です。人間の囚人なんて別に…。実際、この『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』内でも暴徒と化した囚人と乱闘になっても全然ルーサーが優位に見えますもんね。独房に火を放ってもルーサーは突破できるのはいくらなんでも強すぎだと思いましたけど…。

でも、もうちょっとスマートに脱獄できたんじゃないか…とは考える部分はあるにはある…。本作は全体的にそうなのですけど、映画的な見せ場のために用意したわざとらしい展開がやたらと多いんですよね。

本作で最も見ごたえがあったのは、やっぱりロンドンの名所であるピカデリーサーカス広場での大惨劇。あそこでの上下含む360度全てで残忍な惨劇が起こっていく緊迫感は空間の見せ方も合わせて上手いです。なんでも本当にピカデリーサーカス広場で撮影したらしく、よくあんな規模で撮れたなと感心します。

ちなみに刑務所のシーンは「HM Prison Dorchester」という今は刑務所としては使用していない施設で撮ったそうです。1795年に完成した古い刑務所で、ビクトリア様式のデザインが地味ながらも歴史を感じさせます。映画やドラマの撮影場所にもよくなっているそうなので、「あれ、なんか同じような刑務所を他の作品でも見たぞ…」となるかもしれません。

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結局はパワーで勝つ

そのルーサーに立ちはだかる敵、『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』を支配するヴィランこそ、デヴィッド・ロービーです。

このサイバーなジョーカーみたいなロービーを“アンディ・サーキス”が実に不気味に演じきっていました。劇場型犯罪としては相当なエンターテイナーで、リアリティとかは正直乏しいのですが、“アンディ・サーキス”の熱演で見れるものに仕上がっているというか…。これぞ“アンディ・サーキス”の独壇場という暴れっぷりです。

主人公は正義のために不正をするというキャラクターである以上、それと対峙するのは完全に嗜虐欲求のために不正をするという極端なキャラクターになるということでしょう。レッド・バンカーとか、若干陰謀論じみているところはありますが…。

個人的になんだかなと思ったのは、ルーサーとロービーが格闘するシーンは少し無理があるんじゃないかなと感じる点。“イドリス・エルバ”と“アンディ・サーキス”なら、どう考えても“イドリス・エルバ”の方が肉体的に強いのですけど、脚本上は互角に見える雰囲気もだしていて無理な苦戦ポーズではあったかな…。

終盤の氷の下に落下する展開も、しっかり生きているルーサーとの間で、謎の生命力の格の違いを見せつけられた感じだし…。結局、パワーがものいうオチだな、と。

なお、この車が水没するスリルたっぷりな水中シーンは、巨大なウォーターステージで有名なベルギーの「Lites Studios」で撮られています。

また、ルーサーを際立たせるためなのでしょうがないとは言え、それ以外の警察が無能になりすぎているのはやや残念です。かつてのボスだったマーティン・シェンクはそこそこの活躍はあっても、今回のレインのあの足引っ張り役しかない立ち位置はもったいないです。“シンシア・エリヴォ”もせっかくの卓越した役者なのに、出番が恵まれないな…。

今作のルーサーは過去の反省という意味もあるのでしょう、基本的に「不正をする」という自分を抑え込み(限りなく脅しちゃってたけどね)、できる限り協調するような姿勢をとって、「次は頑張ります!」というパフォーマンスだけはクリアしていました。

それでもあの大脱獄騒動はさすがに情状酌量の余地もないのではと思いましたけど、本作のエンディングを見ると、MI5長官からの直々の指名で新しい仕事先が見つかりそうな感じだったので、まあ、結果オーライなのか。ズルいぞ、ルーサー。また囚人に恨まれる理由が追加されているじゃないか…。

次は「“何”ジョン・ルーサー」になるんだ…。

『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 65% Audience 85%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0

作品ポスター・画像 (C)Netflix 刑事ジョンルーサー フォールンサン

以上、『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』の感想でした。

Luther: The Fallen Sun (2023) [Japanese Review] 『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』考察・評価レビュー