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『グッド・ナース』感想(ネタバレ)…Netflix;副反応よりも恐ろしいものがある

グッド・ナース

副反応よりも恐ろしいものがある…Netflix映画『グッド・ナース』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Good Nurse
製作国:アメリカ(2022年)
日本:2022年にNetflixで配信、10月21日に劇場公開
監督:トビアス・リンホルム

グッド・ナース

ぐっどなーす
グッド・ナース

『グッド・ナース』あらすじ

シングルマザーの看護師エイミーは自身も心臓病を抱えながら過酷な夜勤を続け、心身ともに限界を迎えていた。それでも入院患者のケアを最優先に考えるという職業倫理は大切にしている。そんな折、彼女の部署に新しい同僚チャーリーが配属される。2人は友人として固い絆で結ばれ、エイミーは彼のおかげで自分や娘の未来に希望を持てるようになっていく。しかし、病院で患者の突然死が相次ぐようになり…。

『グッド・ナース』感想(ネタバレなし)

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その病院は信用できる?

2022年9月、なんとも不気味なニュースが報道されました。それは、新型コロナウイルスのワクチンを打ったように装い接種委託料を騙し取ったとして逮捕された東京都のクリニック医師が「接種希望者に生理食塩水を打ったこともある」と供述した事件です。この医師はワクチンに否定的な考えを持っていたそうで、嘘の接種証明を作ったこともあると語っています。

医学的に誤った知識や陰謀論に基づく反ワクチン主義は日本でも深刻に蔓延していますが、まさか医者までその思想に染まっているとは…。しかも、適切に接種を希望している人に、ワクチンではない生理食塩水を打つとは…。生理食塩水なので健康被害はないとは言え、同意のないものを何食わぬ顔で体内に注射してくるんですよ。そんなのワクチンの副反応よりも何千倍も恐ろしく、ゾっとする話です。

基本的に患者は医者や看護師など病院を信頼するしかありません。患者は弱い立場におり、病院側に自分をさらけださないといけませんし、生殺与奪を握られます。当然、病院は最も倫理観の高い場所に違いない…そう思っているからこそです。その前提が崩れるなら、病院は狂気の場に様変わりしてしまいます。

今回紹介する映画もそんな信頼しきっている病院の空間が脆くも崩れていく恐ろしい作品です。

それが本作『グッド・ナース』

『グッド・ナース』は実話に基づいており、あるひとりの看護師が勤めている病院で手を染めていた狂気の事件を題材にしています。詳細は伏せておきますが、病院に行く気分は減退すること間違いなしのいや~な空気が漂う物語です。

正直、このコロナ禍でこんな映画を観るのは医療不信を助長しそうであんまり推奨するのもあれかもしれないとも思うのですけど、でも実話ですし、何より冒頭で取り上げた事件も日本で起きたりしているわけで、他人事ではいられないですよね。

本作はアメリカ映画なのですが、監督はデンマークの“トビアス・リンホルム”です。『偽りなき者』『アナザーラウンド』など“トマス・ヴィンターベア”監督作で脚本を手がけることで有名な人物ですが、『ある戦争』やドラマ『インベスティゲーション』などで監督としての実力も発揮。

非常に静かな話運びの中で人物の繊細な心理描写を浮き上がらせるのを得意とし、私も大好きなライターのひとりです。

なのでこの『グッド・ナース』もベタなアメリカ映画というよりは北欧映画みたいな雰囲気を漂わせており、エンタメ的な盛り上げ方は皆無です。凄惨な事件を描くといっても、過度に煽ったりもしてきません。そこは好みが分かれるかな。

ちなみに本作の脚本を手がけるのは、“トビアス・リンホルム”ではなく、『1917 命をかけた伝令』や『ラストナイト・イン・ソーホー』の“クリスティ・ウィルソン=ケアンズ”です。

俳優陣は、ハリウッドの有名俳優が2人主演しています。

ひとりは、『女神の見えざる手』(2016年)、『モリーズ・ゲーム』(2017年)など安定の名演を見せることに定評があり、2021年には『タミー・フェイの瞳』でアカデミー主演女優賞にも輝いたばかりの“ジェシカ・チャステイン”。プロデュース業にも精力的で、今やハリウッドの良心であり、頼れる姉御という感じです。

もうひとりは、『ファンタスティック・ビースト』シリーズで広く有名になり、最近も『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』『シカゴ7裁判』など印象的な活躍が目立つ“エディ・レッドメイン”。彼は『博士と彼女のセオリー』(2014年)でアカデミー主演男優賞を受賞しているので、今作ではアカデミー主演賞の俳優がダブルで揃っていることになります。

共演は、『シルヴィ 恋のメロディ』の“ンナムディ・アサマア”、ドラマ『サスピション』の“ノア・エメリッヒ”、ドラマ『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』の“キム・ディケンズ”、ドラマ『サバイバー: 宿命の大統領』の“マリク・ヨバ”など。

『グッド・ナース』はNetflix独占配信映画ですので、家でじっくり観るのがいいと思います。間違っても病院では見ないでくださいね。

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『グッド・ナース』を観る前のQ&A

Q:『グッド・ナース』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2022年10月26日から配信中です。
✔『グッド・ナース』の見どころ
★俳優の名演。
★静かに描かれる日常の恐怖。
✔『グッド・ナース』の欠点
☆エンターテインメントな盛り上げはない。
日本語吹き替え あり
佐古真弓(エイミー)/ 福田賢二(チャーリー)/ 石田圭祐(ティム・ブラウン)/ 中川慶一(ダニー・ボールドウィン)/ 小野洋子(ジャッキー) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり4.0:落ち着いて鑑賞しよう
友人3.5:俳優ファン同士で
恋人3.0:ロマンス要素無し
キッズ3.0:子どもにはやや地味か
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『グッド・ナース』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『グッド・ナース』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):経験豊富な看護師だけど

1996年、ペンシルベニア州。聖アロイシウス病院にてベッドで痙攣する患者がひとり。看護師が駆け付けて処置し、急に発作で心停止となったと近くの看護師男性のひとりは説明。慌ただしく救命措置がとられる中、じっとそれを横で見る看護師の男。それでも死亡が確認され、その看護師はそっと立ち去り…。

2003年、ニュージャージー州。パークフィールド記念病院では、看護師のエイミー・ロークレンが丁寧に入院患者に対応していました。患者や見舞いの家族の気持ちを汲む優しさを見せますが、上司からは家族を泊めたことを怒られてしまいます。

忙しい日々ですが、夜勤の人員が増えるそうで、経験豊富な男性看護師が来るとのこと。

入院患者に懸命に話しかけながら重たい体を横にするエイミーですが、自分の息の荒くなってしまい、誰もいないベッドに座り込み、暗がりで落ち着こうとします。

家に帰るものの、疲れて眠い体を休ませる時間はありません。子どもたちの世話はシッターに任せていますが、それでも大変です。

エイミーは検査を受けます。数カ月以内に致命的な発作があると良くない結果を告げられ、移植しないとダメだと忠告されます。働くのをやめるべきとも言われますが、「無理です」と答えるエイミー。万が一のために子どもにも伝えておくべきなのはわかっていますが、簡単には言えません。

次の日、職場で新人のチャールズ(チャーリー)・カレンを見かけて挨拶します。病棟を案内し、患者ごとの医薬品を提供する機器である「ピクシス」の使い方を教えるエイミー。チャーリーも担当している患者の詳細な情報を知りたがるなど学びに熱心な様子。

卵サラダを共有して一緒に職場内で食事しつつ、チャーリーは「僕にも娘が2人いる。でも今は一緒に住んでいない」と身の上も明かしてくれます。共に仕事できる相手ができて少し肩の荷が下りるエイミーでした。

しかし、家のこともあり、過労を和らげる暇はありません。職場ではまた発作が起きそうになってしまい、今回も物陰で休んでいるとチャーリーに見つかります。落ち着くまで隣にいてくれ、「失業したくない」と吐露すると「誰にも言わないよ」と言ってくれます。

チャーリーはピクシスのバグを利用してエイミーのために密かに薬を入手してくれます。直前でキャンセルを押しても薬が手に入ってしまうそうです。

ある日、310号室のアナ・マルティネスはシフト交代の時間に死亡したと知らされます。チャーリーと2人で面倒を見ていたアナの遺体はまだベッドの上で、2人で丁寧に取り扱います。アナの主人が来て、エイミーは説明。ショックを受けていました。

7週間後。パークフィールド記念病院にブラウンボールドウィンという2人の刑事が来ます。患者であるアナの不審死を調査するためで、アモキシシリンの副作用で搬送された77歳で、死因は不明。

病院の会議室では危機管理の担当者が説明してくれます。異例の副作用だそうで、保険局の指示で通報したとか。遺族は何も認識していないとのことで、もう遺体は火葬されたと言われます。これでは捜査は困難です。

しかし、不審死はこれで終わらず…。

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病気の恐怖を上回る恐怖の実在

昨今では実在の事件の加害者を作品の題材にすることは論争を巻き起こしやすいです。例えば、ドラマ『ダーマー』や映画『ニトラム NITRAM』などが、まさしく炎上しました。

それはつまり加害者を過剰に心情的に描きつつ、同時にトラウマを煽る残酷な映像や演出で視聴者を取り込もうとする作品スタイルへの批判と言えます。犯罪“消費”だと非難を受けることもあります。それが今の社会では最も効果的に視聴者を釣りやすい方法なのはわかりますが…。

この『グッド・ナース』も実在の事件を引き起こした加害者が描かれるわけですが、決して最近の流行りに乗っかるタイプではありません。アプローチとしては非常に抑えられています。過度にエンタメ化していませんし、犯人であるチャーリーをサイコパスとしてありきたりに描くこともしません。

本作はエイミーというひとりの同僚看護師の視点を通して、得体のしれない“何か”が起きている状況にいつの間にか立ってしまった人間の恐怖心を淡々と描いています。ものすごく静かなホラー映画のようです。

演出として上手いなと思うのは、当初はエイミーは自分の心臓の病気によって死ぬかもしれない事態に直面しており、彼女にとっての身近な恐怖はそれでした。ところがチャーリーの所業を知ってしまったことでその恐怖が別の恐怖に塗り替わる。病気の恐怖も怖いけど、それ以上の恐怖がこの世に存在したのか!というショッキング。この反転が実に背筋がゾっとする描かれ方をしており、“トビアス・リンホルム”監督らしいところです。

そしてやはりチャーリーを演じた“エディ・レッドメイン”が抜群に上手すぎる…。“エディ・レッドメイン”って過去のフィルモグラフィーでも規範から外れた変わり者を演じるのがハマる俳優でしたけど、本作はそれを非倫理的な方向に活かしており、これがとにかく怖いです。

あのチャーリーが以前勤めていた病院の看護師から「過剰投与で患者を殺したと噂になった。彼が去った後は連続した急死はなくなった」と聞かされ、確信に変わった後にエイミーが発作で倒れ、目覚めると自分の寝ているベッドの横にチャーリーが見守っているシーン。あの特に何もしていないのに本作最大の恐怖が襲ってくるあたりとか、“エディ・レッドメイン”の顔が怖くてたまらないですよ。怖い顔を作っていないのに怖い…。

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犯人を理解する必要はない

『グッド・ナース』の怖さはこのチャーリーという犯人だけでなく、病院という組織の体質、もっと言えば病院の空間自体すらも恐怖をもたらすようになってきます。

そもそも病院側はこのチャーリーが意図的な投与ミスで患者を殺している可能性があることをデータ上では把握できていました。それにも関わらず、あえて具体的な調査はせず、チャーリーを他所の病院に転属させ、なおかつ証拠となる資料も隠蔽し、遺族への説明も無しに有耶無耶にしています。

こういう不正を覆い隠す組織体質はそれこそ、『スポットライト 世紀のスクープ』で描かれたような性犯罪を黙認していたカトリック教会など、あらゆる組織に通じる話です。

ただ、今回の犯人は別に組織の中枢にいる権力者でもない。ひとりの労働者にすぎないわけですから、病院側が普通に正義の名のもとに告発すればいい。しかし、それをしない。その理由を察するに、病院さえもこのあまりにも猟奇的な恐怖というものに対して、感覚がマヒし、見なかったことにするという対応しかとれなくなってしまうという硬直反応みたいな感じもします。

もちろん絶対にダメなことですけど、気持ちとしてはわからなくもない。人は極端に常軌を逸した存在に出くわすと、思考停止して現実逃避しようとしてしまいますよね。

私が『グッド・ナース』で良いなと思うのは「加害者を理解してあげようとしない」こと。映画にありがちですが、犯人を描こうとすると「この犯人にもこんな心情があったんだ」と掘り下げて“わかった気になる”ことが多いです。

ところが『グッド・ナース』はそれをしません。エイミーと刑事の連携もあってチャーリーは逮捕されます。エイミーも拘留されているチャーリーに会って、あえて親身に語りかけますが、それでもチャーリーの心は開けません。映画ではそのまま刑務所に連行されるチャーリーの後ろ姿で終わります。

犯人を理解してあげようなんてことはしなくていい。それ自体が根本的に無理な加害者というのも存在するし、それこそまさに恐怖なのではないか。ドラマ『マインドハンター』と同じような、犯人への突き放した態度なのですが、実在の犯罪を映画化するならこういうスタンスでもいいと思います。

実在の犯罪の加害者を煽情的エンタメ形式ではないやり方で描く回答例としてはつい最近も『ザ・ストレンジャー 見知らぬ男』などもありましたが、『グッド・ナース』もそのひとつとして、最近の流行りに一石を投じたのではないでしょうか。

とりあえず病院選びは慎重になりますけどね。不正行為をしていない医療従事者だけがいる病院…ありますよね?

『グッド・ナース』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 80% Audience 81%
IMDb
6.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
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作品ポスター・画像 (C)Netflix グッドナース

以上、『グッド・ナース』の感想でした。

The Good Nurse (2022) [Japanese Review] 『グッド・ナース』考察・評価レビュー