CGアニメに大変身!…映画『トランスフォーマー ONE』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2024年)
日本公開日:2024年9月20日
監督:ジョシュ・クーリー
とらんすふぉーまー わん
『トランスフォーマー ONE』物語 簡単紹介
『トランスフォーマー ONE』感想(ネタバレなし)
パラマウントとトランスフォーマー
ハリウッドの映画業界は毎年何か勢力に変化が起きています。2023年は「メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)」が「Amazon」に買収されましたが、2024年も大きな買収が起きそうな報道がありました。
それはかつて「ビッグ5」と呼ばれていた「パラマウント・ピクチャーズ」が買収されるというもの。正確には「パラマウント・ピクチャーズ」を傘下とする「パラマウント・グローバル」の買収。2024年8月時点の報道によれば、「スカイダンス・メディア」が買収することで暫定合意に達しており、取引は2025年上半期に完了する予定とのこと。
そもそも「パラマウント・ピクチャーズ」はすっかり独立しておらず、「バイアコムCBS」から「ナショナル・アミューズメンツ」と経営母体は移り変わっていたので、今回も「スカイダンス・メディア」に変わるというだけだとも言えるのですが…。
とは言え、経営者が変わるといろいろ変わるものですからね。今後、映画企画にどんな影響がでるかはわかりません。
「パラマウント・ピクチャーズ」も人気シリーズを多数抱えています。『スタートレック』、『ミッション:インポッシブル』、そして『トランスフォーマー』…。
とくに『トランスフォーマー』シリーズは2010年前後の「パラマウント・ピクチャーズ」を引っ張ったメガヒット作でしたが、将来的にどうなるのやら…。
今回の紹介するこの2024年公開の『トランスフォーマー』最新作は現行の「パラマウント・ピクチャーズ」体制最後の『トランスフォーマー』作品になりそうです。
それが本作『トランスフォーマー ONE』。
『トランスフォーマー』シリーズは映画では、2007年からずっと実写映画として展開を重ねてきました。『トランスフォーマー』(2007年)、『トランスフォーマー リベンジ』(2009年)、『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』(2011年)、『トランスフォーマー ロストエイジ』(2014年)、『トランスフォーマー 最後の騎士王』(2017年)、『バンブルビー』(2018年)、『トランスフォーマー ビースト覚醒』(2023年)…。
しかし、ここにきてCGアニメーション映画として装いも新たに登場したのが、本作『トランスフォーマー ONE』となります。
“マイケル・ベイ”が始めた一連の実写シリーズはティーン・マッチョイズムな感じでしたが(後半作はもうめちゃくちゃで何が何やらだったけど)、最近の2作である『バンブルビー』と『トランスフォーマー ビースト覚醒』は子どもも安心のフラットな感じにタッチが変わりつつありました。デザインもオリジナル寄りに回帰しつつありましたし…。
それを継承してか、今作『トランスフォーマー ONE』は2000年代の映画としては最も子ども向けの絵柄になっています。完全にオリジナルのデザインに舞い戻り、懐かしいので、オールド・ファンも大歓喜。
『トランスフォーマー』シリーズのアニメ作品というと、1980年代の『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』や『トランスフォーマー ザ・ムービー』などもありましたけど、より幅広い層に対しての敷居の低い映画を用意してきましたね。
『トランスフォーマー ONE』の物語は地球を舞台にすることは一切なく、サイバトロン星だけで展開します。過去の実写映画とはストーリー上の繋がりは直接はないですけども、一応はプリクエル的な過去話として位置づけられ、実写映画を仕切り直ししているような感じにはならないように配慮されています。
そういうわけで今回の『トランスフォーマー ONE』をシリーズの入門作としてみなすのも理解できます。
ただ、日本での問題は大半の日本庶民にとっては今や『トランスフォーマー』は実写のイメージが強く、タカラ(現・タカラトミー)から販売されていた変形ロボットが原点だとわかっている人さえ少ないという点でしょうかね。『トランスフォーマー ONE』が答えてくれそうな需要は、やっぱりクラシックなオタクなんじゃないかな。
とりあえずオタクも初心者も『トランスフォーマー ONE』の世界へようこそ。
『トランスフォーマー ONE』を観る前のQ&A
A:シリーズ未見の人が本作から観ても物語は理解できます。実写映画とは世界観が直接大きく接続はしません。
オススメ度のチェック
ひとり | :オタクのあなたに |
友人 | :シリーズ好き同士で |
恋人 | :相手がファンなら |
キッズ | :ロボット好きなら |
『トランスフォーマー ONE』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
宇宙のどこかにあるサイバトロン星。その地下には高度なテクノロジーで発達した都市がありました。ここにはロボット生命体トランスフォーマーが暮らしています。
エネルゴンの鉱山労働者であったオライオンパックスは好奇心で普通は立ち入れないアーカイブ施設に忍び込みます。お目当ては最初の13人のプライムの創造に関する記録を見ること。オライオンパックスにとっては憧れの存在で、少しでも詳しく知りたかったのです。
このプライムは何年も前に異星人のクインテッサとの激しい戦争で敗れ、かろうじてトランスフォーマーを守ったものの、マトリクス・オブ・リーダーシップとして知られる神秘的なアーティファクトが失われて伝説となっていました。
記録に魅入るオライオンパックスでしたが、そのとき、セキュリティアラートが侵入者を検知し、警備に通知。屈強な警備兵がすぐさま駆け付けます。オライオンパックスは軽口で相手にしますが、警備兵は別の形態にトランスフォーム。しかし、オライオンパックスは全然できず、街中を逃げ回るしかありません。
なんとか親友のD-16が絶妙のタイミングで割って入り、上手く出し抜くことに成功しました。2人は息ぴったりです。
仕事場の鉱山ではエリータ-1は労働者を統率し、オライオンパックスもD-16もテキパキと働いていました。
その最中、落盤や爆発が起き、危機一髪の事態に。オライオンパックスやD-16も絡んだ事故のせいで、エリータ-1は責任をとらされ、現場をクビになります。
そんなこともあった日、就寝時間にD-16を起こしたオライオンパックスはアイアコン5000レースにでようと提案。巨大なスタジアムで行われるこのレースで優勝すれば栄光が手に入ります。開催場ではサイバトロン星のリーダーであるセンチネル・プライムが颯爽と演説。
2人は密かに出場し、他の出場者は変形しているのに、人型のままレースに紛れ込みます。意外な出場に鉱山労働者仲間も盛り上がりますが、勢いのままに突き進むも結局はノックアウトされてレースには負けてしまいます。
意気消沈していた2人ですが、そんな2人の前にセンチネル・プライムがひょっこり登場。2人の心意気を気に入ったようです。憧れの人物と握手できて有頂天になります。
しかし、警備員は激怒。奥深くの労働場に強制的に連れて行かれてしまいますが、そこである出会いがあり…。
Transform “Evil Former Friends”
ここから『トランスフォーマー ONE』のネタバレありの感想本文です。
『トランスフォーマー』の映画シリーズはこれまでずっと「地球に宇宙生命体が飛来して、人間と交流を育んで、敵対側と戦って…」という定番の流れを繰り返してきました。登場キャラは多少変わりつつも、「はいはい、またこれね」と見慣れた展開の連発で、それはこのシリーズのマンネリを助長していたのは否めません。
その約15年繰り返されてきた光景が今作『トランスフォーマー ONE』ではまるっきり変わったんですよ。そりゃあ、「お、今までのトランスフォーマーと違うぞ!」という感触にはなりますよね。
でもよくよく考えると本作『トランスフォーマー ONE』もストーリーは別の王道をストレートになぞったベタベタなものです。
主役はオライオンパックスとD-16。オライオンパックスは本作終盤で「オプティマスプライム(コンボイ)」と名乗り、「オートボット」と総称を改めたサイバトロン星のトランスフォーマーたちを統括する総司令官となります。一方のD-16は自分の支持者を「ディセプティコン」と総称し、己を「サイバトロン」と名を変え、サイバトロン星の現勢力であるオプティマスプライムと対峙することになります。
実写映画ではおなじみのオプティマスプライムとサイバトロンの敵対図式。『トランスフォーマー ONE』では実はこの2人は親友だったという背景を描き、いかにしてこの2人が敵対するかという関係の亀裂の真相を映し出す前日譚です。
この「今は敵対している二者が実は昔は親友だった」という設定は、俗に「Evil Former Friend」と呼ばれてるお約束(トロープ)であり、いろいろな作品で見られます(古いものだと北欧神話とか)。
本作ではオライオンパックスとD-16のキャラクターがとても人間臭い描かれ方になっていて、魅力も何倍にも増して親しみやすいです。冒頭からあの2人のじゃれ合いがまたなんとも可愛いこと…。人間だとティーンぐらいの年齢のノリですかね。
オリジナル英語だと、オライオンパックスは“クリス・ヘムズワース”、D-16は“ブライアン・タイリー・ヘンリー”が声を担当しており、2人の声もどこか若々しいです。
その2人に加わるエリータとB-127(後のバンブルビー)が組み合わさっても無邪気さは変わらず。4人で初めて変形するシーンも微笑ましいです。なんか、子どもの成長を見守る親戚の気分になってるな…。
エリータの声は“スカーレット・ヨハンソン”が担当しており、だいぶ落ち着いた声質にどこかフレッシュな感じもあって新鮮。対するB-127は“キーガン=マイケル・キー”が担当しており、後のことを考えるとこんなに喋りまくるだけでもう面白いです(もろに“キーガン=マイケル・キー”のトークセンスですが)。
反乱していこう!
『トランスフォーマー ONE』のオライオンパックスとD-16の決裂も映画1本分の中で全てが収まっているので、ポンポンと展開が進みます。
このメインストーリーにバックグラウンドとして味付けをプラスしているのが、サイバトロン星のコミュニティ、というか政治情勢。
本作では、サイバトロン星のリーダーであったセンチネルプライムが実はクインテッサに従属して民衆を騙している為政者だったと判明。序盤の親しみやすい雰囲気が一転して、最低野郎を露呈するという、わかりやすい仮面を被ったヴィランになっています。
これもまた王道のお約束であり、本作はオライオンパックスとD-16は鉱山作業員という労働階級の出自にし、このセンチネルプライムの権力圧政に反旗を翻すレジスタンスの展開が用意されていました。
このレジスタンス展開も本当にあっという間に起きるので、結果的に無茶苦茶に無能なセンチネルプライムでしたね。絶対にアイツ、政治力ないだろ…。お付きの蜘蛛型のエアラクニッドのほうがビジュアル的に凶悪そうで強そうで、それでいて賢そうではある…。
王道の物語を合わせてシンプルにしつつ、映像もシンプル。しかし、『トランスフォーマー ONE』のデフォルメされたキャラクターであっても、そのCGは細部までよくできています。今作のCGを担当したのは、“マイケル・ベイ”実写映画シリーズでもCGに関わっていた「Industrial Light & Magic」。クオリティは保証されてますし、期待に応えてくれました。
『トランスフォーマー ONE』を監督したのは、『トイ・ストーリー4』の“ジョシュ・クーリー”。ちゃんとアニメーター畑の人に監督を任せているのも成功の秘訣だったと思います。
今回の『トランスフォーマー ONE』もヒットを受け、3部作の企画で進めているらしく、まだこのCGアニメの世界観を味わえそうです。しかし、全編CGなので製作するのはかなり大変なはず。製作ペースはゆっくりめになるんじゃないかな、と。
また、同時に実写映画企画も並行しており、2023年の『トランスフォーマー ビースト覚醒』がラストである作品とクロスオーバーするサプライズをぶち上げて、そのとおりで続編企画も進んでいるそうで…。
『トランスフォーマー』フランチャイズは、「パラマウント」「ハズブロ」「タカラトミー」と権利関係が複雑なので、先行きは予測しづらいのですけども、まだ見ぬかたちへとトランスフォームしてほしいです。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
作品ポスター・画像 (C)2024 PARAMOUNT ANIMATION. A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES HASBRO. トランスフォーマーワン
以上、『トランスフォーマー ONE』の感想でした。
Transformers One (2024) [Japanese Review] 『トランスフォーマー ONE』考察・評価レビュー
#トランスフォーマー #楽しい