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『永遠に12才!』感想(ネタバレ)…女の子らしくなんて気にしない!

永遠に12才!

女の子らしくなんて気にしない…アニメシリーズ『永遠に12才!』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Twelve Forever
製作国:アメリカ(2019年)
シーズン1:2019年にNetflixで配信
原案:ジュリア・ヴィッカーマン

永遠に12才!

永遠に12才!

『永遠に12才!』あらすじ

12歳になった。でも親は「女の子らしくなって」とうるさいことしか言わない。私は狭い世界しか知らないとも言ってくる。でも大人たちこそ何もわかっていない。私には無限に広がる特別な世界がある。そこでは何をしても怒られない。自分を偽ることもない。自分のしたいことを好きにしてもいい。今日も私は個性豊かな仲間と一緒にここで満喫する。12歳になっても…。

『永遠に12才!』感想(ネタバレなし)

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女の子の“さしすせそ”なんてぶっ倒せ!

思春期になった子どもは誰しもが悩みます。そのモヤモヤの中心にあるのはジェンダーセクシュアリティです。

「私はあの子が好きなのだけど、どうすれば…」「私って周りの子よりも見た目が変な気がする…」「性って全然よくわからない。これって劣ってるの?」「恋愛していない自分は笑われるのかな?」

いろいろな疑問や葛藤が頭に渦巻くものですが、他人には気軽に相談できません。ひとりで悶々とするだけに終わってしまいます。

でも大人もそんな思春期の子どもに上手くアドバイスができなかったりするのですよね。なぜなら自分もスマートにその思春期をクリアしたわけではないし、実のところよくわからないままに大人になっていたりするので…。

変な話です。地球上の人間はみんなが思春期を経験しているのに、その悩みを共有しきれていないなんて。これほどまでに共通点となる存在なのに…。

それだけ思春期というのは厄介で手強い敵です。どうしたら倒せるでしょうか。

いや、倒すべきはもっと別の問題かもしれません。世の中には思春期の子どもたちを危うい偏見や固定観念に閉じ込める情報もあちこちに手招きしているので油断なりません。

例えば、とある女子小学生向けの本で「男ウケするためのモテ技」として「さしすせそ」というまとめかたでレクチャーされているものが、ネット上で話題となりました。これは「さすが!」「知らなかった!」「すごい!」「センスがいい!」「そうなんだ」の頭文字で、これさえ言っておけば男の子たちは喜ぶよ…という話です。当然、こんなの大問題で、これでは女の子はただ男性に媚びうるだけの存在でしかありませんし、男の子も女性を応援マシーンのようにしか思わなくなります。しかし、世間はこれを“女の子”としての正しさとして教えている。それは子どもの無限の未来を狭めるだけなのに…。

こんな情報を平気でメディアが載せる。じゃあ、ちゃんとまともなアドバイスはないのか。せめて子どもたちの心を偏見から解き放つ、本当の意味で正しい導き手になる素材が欲しいものです。

ではこんな海外アニメシリーズはどうでしょうか。それが本作『永遠に12才!』です。

本作はNetflixで2019年にシーズン1が配信された子ども向けのアニメシリーズです。1話12~13分なのでサクサク見られます。

本作はひとりの12歳になったばかりの女の子が主人公です。普通であれば思春期。“女の子らしさ”を気にし始める時期です。しかし、この主人公は“女の子らしさ”に全力で抵抗します。オシャレな服? 興味ない! お化粧で身だしなみ? 興味ない! おしとやかな落ち着き? 興味ない! 男の子とデート? 興味ない! あらゆる面で真っ向から反発しまくりです。

そんな主人公の女の子が「ちゃんと女の子らしくなる」ということがこの作品のゴール…では当然ありません。その子の自分なりの生き方を全肯定して受け止める、それが『永遠に12才!』というアニメシリーズです。

また、本作はいわゆる「クィア・アニメーション」でもあり、LGBTQを題材のひとつにもしています。その点でも子どもに多様性を自然に学んでもらうこともできるでしょう。

原案は『パワーパフガールズ』にも参加していた“ジュリア・ヴィッカーマン”というクリエイター。『デンジャー&エッグ なかよし2人のおかしな大冒険』でおなじみの“シャディ・ペトスキー”も製作の初期に関与しています。

幼稚園児から小学生くらいの年齢層に最適なアニメですし、もちろん大人が楽しんでもOKです。これで「女の子の“さしすせそ”」なんてぶっ倒しましょう。

オススメ度のチェック

ひとり◯(LGBTQ当事者も注目)
友人◯(海外アニメ好き同士で)
恋人◯(思春期の悩みを語り合うのも)
キッズ◎(思春期をむかえる子に)
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『永遠に12才!』予告動画

TWELVE FOREVER (2019) Trailer | New Netflix Series
↓ここからネタバレが含まれます↓

『永遠に12才!』感想(ネタバレあり)

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エンドレス島は私の世界

レジーは12歳の誕生日を迎えました。家で兄のダスティンといった家族に祝われます。親友のトッドも一緒です。

誕生日と言えばもちろんプレゼント。レジーも何がもらえるのかワクワクです。そっけない兄からは割とどうでもいいアイテムしかもらえませんが、そこは最初から期待しているわけではないのでスルーです。肝心なの母からのプレゼント。結構たくさん入っていそうな包みを受け取ります。

その中身は…女の子らしい服、可愛らしいソックス、デオドラント、そしてキュートな柄のブラジャー。レジーのテンションは急激にダウン。うんざりなようにそのプレゼントの品々を脇に置きます。

レジーは「戦士メリッサの別バージョンの人形が欲しかった」とぼやきます。しかし、母は12歳なのだからもっと女の子らしくなってほしいようで、その思いはこのプレゼントの中身から嫌というほど伝わりました。でもレジーはそんなことは全く望んでいませんでした。

レジーの部屋はオモチャでいっぱいです。それをみかねた母は、ガレージセールなのでそのレジーのオモチャを捨てようとします。すかさず「大事なのに」とレジーは抵抗。母は「1日よく考えなさい」と叱りつけます。

もちろんレジーには捨てられないものばかりです。部屋でトッドとそのことについて議論していると、「エンドレス島に持っていって隠そう!」と思いつきます。そして取り出したのはなにやらヘンテコな鍵のようなもの。何かを唱えると2人は一瞬で不思議な島にワープしました。ここがエンドレス島。2人しか知らない秘密の島です。

昔、レジーが学校の授業で作った鍵。それがある時、不思議なパワーを発揮して、このエンドレス島に行けるようになったのでした。最初はレジーも驚愕でしたが、今はすっかり慣れっ子。

この島には個性豊かな住人がいます。その形も大きさもいろいろで、みんなが楽しそうに喋り、思い思いに過ごしています。12歳になったレジーを「トゥエルブ」と呼ぶ個性豊かな仲間たち。

レジーはここではヒーローのような恰好をしており、怪力も出せます。トッドは自由に姿を変身できるようになっています。

そんなことを知らない母は「私があれくらいの頃はお化粧したり、男の子を追いかけたりしていたのに。あの子は世界が狭すぎる」と不満げ。娘が心配です。
その母に怒りを溜め込むレジーは、土に埋めたオモチャが動き出して、茶色いロジャーとして元気に駆け回る姿に満足。オモチャを売りつけるためのラベルメーカーはぶん投げてしまいます。

しかし、このラベルメーカーが巨大化して襲ってきたり、ときには大変なことも。ある日、 体の変化を理解できるとして母に渡された本。それもやっぱり気に入らないレジーはこの島に捨てますが、それが「お尻まじょ」という存在を解き放ってしまいました。「お尻まじょ」はあらゆる企みを企てているようです。

また、別の日、レジーの学校にエスターという転校生がやってきます。なんとその子も笛を吹くことでこのエンドレス島に来れてしまうのでした。最初は自分の秘密の場所に侵入されたことに不快感を露わにし、張り合うレジーでしたが、飛べるエスターの能力と素直な性格を見て、3人の島として受け入れることに。

エンドレス島は今日も不思議な出来事で満ち溢れています。

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変わりたいと思わない

『永遠に12才!』の主人公であるレジーは世間的には女の子ですが、性格は言ってしまえば「ガサツ」で、悪ガキのようにやんちゃでもあります。遊ぶオモチャの趣味は、いわゆる「男の子向け」と一般にカテゴリされるものばかり。
それゆえにレジーは母からは「女の子として劣等生」のように思われてしまっています。この女の子としての特有の採点基準が本作の主題です。

本当にそれは女の子を評価するうえで大事なことなのか?…と。

でも母はそんなレジーの本心は考えず、世間に流布するステレオタイプどおりにレジーを女の子らしくしようと躍起。それが親の務めであると自負しているかのごとく…です。

第1話の誕生日プレゼントはまさにそうですね。たぶんどの人も経験あると思うのですが、ある一定の年齢になり始めると、誕生日やクリスマスのプレゼントにジェンダーの区分けが生じるのではないでしょうか。男の子は男の子らしいものを、女の子は女の子らしいものを。でもそれがその子の本当に気持ちを汲んだものなのか、それを考えている親は案外と少ないでしょう。

ブラジャーのような女性用下着をプレゼントされるというのはいかにも女の子が直面しがちな出来事です。そもそも親に下着をプレゼントされて嬉しいのかという話もありますけど、たぶん母親は同じ女としての指導をしないといけないと思っているのでしょうし、体の変化を理解できる本をさりげなく渡して、体のラインの成長や生理痛について学んでもらおうという意図も別に間違っているわけではないです。ただ、そこに当人の意思がない。

別にレジーは、女の子として劣っているわけでも、遅れているわけでもありません。これがレジーなのでした。作中でも「今の自分が好きだし、変わりたいと思わない」と言っていましたが、それこそレジーの素直な気持ちです。

こういう母と娘のジェンダーやセクシュアリティを論題にしたすれ違いと相互理解というテーマは、最近だと『17.3 about a sex』でも描かれているとおり、思春期モノの定番ではあります。

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クィアから同性愛へ

LGBTQの観点から言えば、『永遠に12才!』の主人公であるレジーは「クィア」として描かれていることが製作陣からも語られています。

「クィア」というのはあらためて説明すると、LGBTQ全般を指すこともありますが、別の意味として「ジェンダーやセクシュアリティがよくわからない状態になっている人(もしくはそういう揺らぎ)」を示すものです。

レジーもそう考えるとクィアです。いや、極論を言ってしまえば思春期の子どもはみんな大なり小なりクィア的な立ち位置にあるのかもしれません。

レジーの場合は明確に女の子らしさに反発しているので、少なくともそういうジェンダーを受け入れる気はないようです。かといって男の子になりたいとこの時点で明確に示しているわけでもなく、このどちらでもない状態で模索している感じです。

別にこのままどちらでもない状態でいてもいいし、別の在り方を見つけてもいい。将来はどうなるかはわからないですが、少なくとも作中ではクィアになっています。ちなみにレジーは靴が左右で違う色をしたものを履いており、片方が薄いブルー、もう片方がピンク色。これはトランスジェンダーのフラッグ・カラーと同じですね。

一方でレジーは恋愛にも興味がない素振りを見せます。トッドやエスターが異性との関係性をプロムでも求めるのに対して、レジーはかなり孤立感を味わいます。

ではレジーはアロマンティックなのか。しかし、そんなレジーにも気になる相手が。それが同じ学校で年上のコネリーという女子です。彼女は趣味で映画の撮影をしているクリエイティブ気質な子で、レジーの才能を素直に認めてくれます。変人扱いをしません。そのコネリーにレジーは普段の明快なフレンドリーさを発揮できず、ややドキマギするばかり。つまり、ちょっと同性愛を匂わすことになります。

クィアからの同性愛(レズビアン)への発展…というと日本のアニメ『やがて君になる』を最近だと思い浮かべますが、まあ、こういうのもひとつのかたちとしてよくあることでしょう。

レジーとコネリーの今後の関係性の進捗が大いに気になるところですが、残念ながら『永遠に12才!』はシーズン1までしか作られていないので、この関係性がどう発展するかはわからずじまい。観たかった…。

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現代アップデート版「ピーター・パン」

『永遠に12才!』の主人公であるレジーはエンドレス島という、彼女自身のイマジネーションが反映された島にワープできる力を得ます。この島は基本的には空想を意識したものらしく、現実的ではありません。レジーに必ず紐づいているわけではないようですが…。

この設定は、あの有名な『ピーター・パン』の「ネバーランド」と同様です。あそこも子どものままでいられる場所でしたが、この『永遠に12才!』も島内にずっといると正気を失うような時間の間隔が消えてしまうので、やはり同質の異世界なのでしょう。

このエンドレス島の住人にもLGBTQのキャラクターがいます。いつも一緒のマックビーフハウスはハッキリとラブラブなゲイ・カップルであると描写されますし、ギャラクサンダーもゲイであるように暗示されます。まあ、あいつらは個性が強すぎてジェンダーやセクシュアリティとか超越している感がありますけど…。

その世界を脅かすのは「お尻まじょ(The Butt Witch)」。女の子らしさを否定するレジーにとっての最悪の存在を体現するかのような奴です。また、レジーの潜在意識の中のもう一人の自分とも解釈できます。成長することの恐怖…というのは抱えたことのある人もいるのではないでしょうか。大人になることは子どもの欲する未来とは違うかもしれませんし、得体が知れず不安で怖いものですし。

このように『永遠に12才!』は『ピーター・パン』にジェンダーやセクシュアリティの視点を加えた、非常に現代的なアップデート版と言えると思います。『ピーター・パン』も先住民差別とか、フック船長の障がい者差別とか、今観ると必ずしも無条件に子どもに見せて安心な作品でもないですからね…。

他にもレジーやトッドはひとり親の子であり、そんなシングル家庭の中でも、肯定感を追い求める子どものための作品としても期待に応えてくれます。このへんは『ピーター・パン』よりもよほど現実的な着地をしているのでそのまま前向きさをもらえると思います。

以上、『永遠に12才!』は今の多様性時代を生きる子どもたちの心強い味方になってくれるパワーを持っているのですが、前述のとおり、本作はシーズン2は無期限に休止中のようで、続きは作られる気配はありません。

この心意気を受け継ぐ作品が生まれるといいのですが…。でも絶対に生まれるでしょう。待っている子どもたちはいるのですから。

『永遠に12才!』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer –% Audience –%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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関連作品紹介

LGBTQを題材にした海外の子ども向けアニメシリーズの感想記事の一覧です。

・『スティーブン・ユニバース』

・『シーラとプリンセス戦士』

・『キポとワンダービーストの冒険』

作品ポスター・画像 (C)Puny Entertainment, Netflix トゥエルブ・フォーエバー

以上、『永遠に12才!』の感想でした。