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アニメ『デリシャスパーティ プリキュア』感想(ネタバレ)…食べるフェミニズムのパワーをコメコメ!

デリシャスパーティ プリキュア

食べるフェミニズムのパワーをコメコメ!…アニメシリーズ『デリシャスパーティ♡プリキュア』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Delicious Party♡Precure
製作国:日本(2022年~2023年)
シーズン1:2022年に各サービスで放送・配信
シリーズ構成:平林佐和子
恋愛描写

デリシャスパーティ プリキュア

でりしゃすぱーてぃ ぷりきゅあ
デリシャスパーティ プリキュア

『デリシャスパーティ プリキュア』あらすじ

おいしーなタウンに暮らす和実ゆいは食べるのが大好きな中学2年生。ある日、クッキングダムという世界から盗まれた「レシピボン」という大切なものが怪盗ブンドル団に盗まれる事件が起き、それを取り戻すべく、ローズマリーと3匹のエナジー妖精がこの町にやってくる。そして、和実ゆいの純粋な心にエナジー妖精のコメコメが反応し、和実ゆいは伝説の戦士プリキュアのひとり、キュアプレシャスへと変身する。

『デリシャスパーティ プリキュア』感想(ネタバレなし)

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「プリキュア」は人生のごはん!

初めては一瞬。そこからは深い沼地のように永遠。フランチャイズの作品に触れるというのはそういうもの…。

2018年の映画『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』で遅ればせながら初めて「プリキュア」シリーズに触れた私は、そこから「プリキュア」作品を観漁っていきました。映画は全然観ていないのですが、テレビアニメシリーズは初代の『ふたりはプリキュア』から最近の作品まで年順ではないのですけど3分の2くらいは観終えました。わりとサクサク見れたな…さすが「プリキュア」は見やすい…。

こうして「よし、次に新作アニメシリーズが始まったらリアルタイムで鑑賞して感想を書こう」と意気込んでいたのですが、なんだかコロナ禍でドタバタしているうちに時間は過ぎ去り、私の初リアルタイム鑑賞「プリキュア」はこのシリーズになりました。

それが2022年から放送された『デリシャスパーティ♡プリキュア』です。

「プリキュア」シリーズ」の通算19作目にして、17代目のプリキュアにあたる『デリシャスパーティ プリキュア』は、かなりオーソドックスな「プリキュア」です。いや、私も「プリキュア」を観てきたことで本作がオーソドックスだとかなんか偉そうなこと言えるようになってしまった…これで面倒くさい「プリキュア」批評家の仲間入りだ!

でも冗談抜きで『デリシャスパーティ プリキュア』は「プリキュア」初心者にものすごく見やすいシリーズだと思います。あまり尖ったこともしてないですし、シンプルだからです。

しかし、一方で『デリシャスパーティ プリキュア』はこれまでの「プリキュア」シリーズと比較しても非常に一歩進んだ作品でもあります。オーソドックスに前進した…って感じです。

毎回コンセプトがある「プリキュア」シリーズですが、前作『トロピカル〜ジュ!プリキュア』は海とコスメを題材にしており、オシャレな人魚をビジュアルとしつつ、なかなかに際立っていた設定でした。

今回の『デリシャスパーティ プリキュア』は「料理」、とくに「食べる」ことが題材になっています。とても馴染みのあるテーマです。

どうしても「料理」を題材にするとなると心配になるのが、女性のステレオタイプを助長しないかということ。といっても「子育て」を題材にした『HUGっと!プリキュア』も比較的そのへんを上手くクリアしており、きっと今回も大丈夫だろうと思っていましたが、この『デリシャスパーティ プリキュア』はむしろそのステレオタイプをぶち破るパワーを見せつけてくれました

具体的にどうやってステレオタイプを打破しているのか…それは見てのお楽しみ。後半の感想で詳しく書いています。

これから「プリキュア」を見ていこうかなという人は、私が言うのもなんですが、あまり一気見はオススメしません。プリキュアって変身シーンが毎回あって同じ映像が繰り返されるので、連続でエピソードを視聴すると同じシーンだらけで新鮮味が薄れるから…。できれば毎週1話くらいのペースで見るのがちょうどいいですし、作り手もそういう感覚で作ってるはず。

「プリキュア」は人生のごはん。適度に食べれば元気が湧いてきますよ。

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『デリシャスパーティ プリキュア』を観る前のQ&A

✔『デリシャスパーティ プリキュア』の見どころ
★ステレオタイプを打ち破るパワーを見せる。
★ポジティブな「食べること」へのメッセージ。
✔『デリシャスパーティ プリキュア』の欠点
☆お腹が空く。
日本語声優
菱川花菜(和実ゆい)/ 清水理沙(芙羽ここね)/ 井口裕香(華満らん)/ 茅野愛衣(菓彩あまね)/ 高森奈津美(コメコメ)/ 日岡なつみ(パムパム)/ 半場友恵(メンメン)/ 前野智昭(ローズマリー)/ 内田雄馬(品田拓海)/ 三上哲(フェンネル) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:初心者でも大丈夫
友人 3.5:好きな人同士で
恋人 3.0:気楽に眺めるのも
キッズ 4.0:子どもに元気を!
↓ここからネタバレが含まれます↓

『デリシャスパーティ プリキュア』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):ごはんは笑顔

和食ストリートや洋食ストリート、中華ストリートなどがあって世界中の美味しい食べ物が味わえる「おいしーなタウン」。美味しい料理を作る人、美味しい料理を食べたい人、みんなが集まって毎日賑わっています。

この町で暮らしている和実ゆいは運動が得意で、今日もサッカー部の助っ人をしています。体を動かし終わったら、「デリシャスマイル~」と言いながらおにぎりをいくつも頬張るのが人生の楽しみ。ふと和実ゆいは「ねぇ、おむすびの妖精って見たことある」…一瞬そんなことを隣の友人の前で呟きながら、「何でもない」とまた食べる行為に戻ります。

「おばあちゃんがよく言ってたんだ。ごはんは笑顔だって」

その頃、どこか遠くの世界であるクッキングダムでは、「レシピボン」という国の宝がブンドル団という組織に盗まれてしまっていました。捜索隊隊長のローズマリーは王の前に跪きながら捜索に出発することを伝えます。レシピボンを盗んだ何者かは次はレシピッピを集めだすに違いない…そう想定して、ローズマリーはケースで眠るエナジー妖精のコメコメ、パムパム、メンメン…を渡され、人間界へ向かいます。

一方の和実ゆいは『戦艦ポチョムキン』みたいに勝手に滑り降りていくベビーカーをダッシュで追いついて止めていました。ちょうどその直前を華満らんが出前自転車で通りかかったところでした。その様子を車で送迎中の芙羽ここねも見かけます。

その後、和実ゆいはコメコメという小さな妖精を見つけ、おにぎりをあげます。コメコメは行き倒れたローズマリーのところに連れて行き、和実ゆいはローズマリーを軽々と抱え、母のやっている定食屋に連れて行ってご飯をあげます。

ローズマリーもおむすびの妖精が見えると知って驚く和実ゆい。レシピッピというらしく、人々が料理を食べて美味しいと幸せを感じると出現するようです。

和実ゆいは幼馴染の品田拓海とオムライスを食べに行ったところ、また元気そうにふわふわ漂う小さなレシピッピを見ます。するとブンドル団のジェントルーにレシピッピが奪われるところを目撃。その瞬間、店の料理の味が変わってしまいました。

ジェントルーは巨大なフライパンの怪物ウバウゾーを出現させ、ローズマリーはデリシャスフィールドという空間を作って対峙。そこに居ても立っても居られずに和実ゆいが力技で入ってきます。

そして和実ゆいの料理を想う素直な心にコメコメが反応。クッキングダムに伝わる伝説の戦士プリキュアのひとり「キュアプレシャス」へと和実ゆいは変身。ウバウゾーを「ごちそうさまでした」の満腹感で浄化し、レシピッピを救い出したのでした。

さらに他の妖精であるパムパムは芙羽ここねをパートナーにして「キュアスパイシー」に変身させ、同じく妖精のメンメンはクラスメイトの華満らんをパートナーにして「キュアヤムヤム」に変身。

こうして3人はプリキュアとしての力を発揮し、協力して戦うことになります。世界の美味しいご飯の体験を守るために…。

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料理を作るフェミニズム、そしてマスキュリニティ

『デリシャスパーティ プリキュア』は表向きは「食」がテーマにありながら、女の子の物語ということで自然と裏のテーマに「ジェンダー」が配置され、これらの双方向的な関係性が暗黙で軸となっています。

『作りたい女と食べたい女』でもそうでしたが、女性ばかりが「作って食べる」という行為を「女らしさ」でジャッジされやすいです。「料理を作る=お嫁さんの仕事」とか「ご飯を食べる=体型の問題」とか…。しかし、『デリシャスパーティ プリキュア』はそういうもろもろのステレオタイプは全部吹き飛ばしています。

まず「料理を作る」ということに関してですが、そもそも本作のメイン主人公である和実ゆいたちは「料理を作る」という行為にそんなにスポットがあたりません。別に料理作りが苦手というわけでもなく、作中でも自然と作っているシーンもチラホラありますが、ジェンダーロールとしての「料理を作る」という役割は一切背負っていません。作りたいから作る…常に楽しそうです。

それよりも作中で紅一点的な男子キャラである品田拓海の方が「料理が上手い」という設定になっており、何かと料理作りで頼りになります。スイーツづくりが専門のようで、第22話では品田拓海は男性のために伝説のクレープを作ってあげ、その男性は女性の見舞いのためにクレープをプレゼントするという、非常に典型的なジェンダーロールを意図的に逸らしたエピソードもありました。第39話では弁当を作る父が描かれ、本作は「料理する男性」を過剰に誉めたてることなく、普通に描いていましたね。

『デリシャスパーティ プリキュア』ではこの品田拓海が「ブラックペッパー」に変身し(「ブラペ」というブラッド・ピットみたいな省略名で呼ばれるのが笑える)、レギュラーメンバーで戦闘に参加。『セーラームーン』のタキシード仮面的なポジションですが、終盤では回復担当になっていたり、ここでも女性のサポートに徹する男子像が徹底されていました。

ジェンダー・ノンコンフォーミングなローズマリーの存在も印象的でしたね。

大人の女性たちの描写も配慮が効いており、和実ゆいの母は定食屋を営んでいるので家事ではなく仕事として料理をしています(父は遠洋漁業しており、ずいぶんハードワークな家だったな…)。

一方で料理を完璧にできないことで劣等感を抱えてしまったブンドル団のセクレトルーに対しては、芙羽ここねの母である芙羽はつこからの「私も料理はそんなに得意ではない」という肯定の言葉をかけられ、別に女性が料理を作れないからといって恥に思う必要はないと立ち直ります。芙羽はつこの存在も、料理関係の仕事ながら「作る」ではなく「企画する」経営者のスキルが取り上げられ、働く女性の姿を子どもに提示していましたね。

「料理を作る」という点であらゆるジェンダー的視点を包括しており、まだまだステレオタイプな料理役割の表象があったりする日本アニメにおいて、『デリシャスパーティ プリキュア』は明快に抜きん出ていたと思います。

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ご飯を食べるフェミニズム、そしておなかいっぱい

次に「料理を食べる」という観点。和実ゆいたちはこっちがメインです。そして『デリシャスパーティ プリキュア』の凄いところはその料理の主題で、料理と言っても多種多様なのですが、本作はズバリ明確に「おにぎり・パン・麺」と、要するに炭水化物なんですね。

これまでの「プリキュア」では『キラキラ☆プリキュアアラモード』はスイーツが題材で、これはいかにも女の子らしいベタなものでしたが、今回の『デリシャスパーティ プリキュア』はまさかの三大炭水化物。これは結構思い切っているなと思います。

どうしたって炭水化物って「ダイエット」を要求されやすい女性の天敵として描かれやすいもの。しかし、この『デリシャスパーティ プリキュア』では「ダイエット? なにそれ? 美味しいの?」と言わんばかりに体型のことなど1ミリも話題にせず、炭水化物の食品をモリモリ食べまくる

とくに和実ゆいはとても象徴的で、「あつあつごはんでみなぎるパワー!」と変身シーンでは力こぶポーズを披露し、女の子の類型をパワフルに粉砕。「500キロカロリーパンチ」など技名も凄いです(ちなみに500kcalは具無しおにぎり3個分くらい。終盤に「2000キロカロリーパンチ」にパワーアップしますがこれはおにぎり12個分。10歳〜11歳の子どもの必要目安カロリーは2100~2200kcalなので一発の凄さがよくわかる。この技にそれだけカロリーを消費するならそりゃ「はらペコった〜!」になりますよ)。

和実ゆいの変身シーンは初見時、一瞬コメコメを食べているのかとヒヤっとしたけど違った…。

炭水化物じゃないのは、後で加入する先輩ポジションの菓彩あまね「キュアフィナーレ」。まあ、炭水化物を食べた後にパフェで食卓の最後を飾ろうっていうのもなかなかのカロリーオーバーなダメ押しですけどね…。

「料理を食べる」ことに関しての描写も包括的です。

野菜嫌いをなくそうという定番のテーマもあったかと思えば、そもそもお料理が苦手な人にはどう向き合おうかという一歩踏み込んだテーマに和実ゆいがぶつかったり、芙羽ここねは誰かと一緒に食べるということに喜びを感じ、華満らんは食べるだけでなく「料理の写真を撮る」というグルメインフルエンサーとしてのイマドキな描写もあって、SNSを悪用する敵と戦ったり、変と言われて気にするSTEM理系女子の葛藤が描かれたり…。

最終話ではベジタブル丼としてヴィーガン料理もちょこっとですけどピックアップされていもいましたね。ヴィーガンへのバッシングが陰湿な日本では大切な描写です。

個人的に少し残念なのは第14話。初恋の味をめぐるエピソードで、せっかく和実ゆいは恋がわかってなさそうなのだから、アセクシュアル・アロマンティックな表象にしてもいいと思いました。みんな恋の味がいずれわかるという描き方は、アセクシュアル・アロマンティックな子どもを排除するだけですので。

ともあれ「料理を食べる」…それだけでみんなを笑顔にするのは口で言うのは簡単ですが、実行するとなれば難題です。『デリシャスパーティ プリキュア』はそのお題目をインクルージブにやってやるという覚悟をバンバン感じるシリーズでした。

『デリシャスパーティ プリキュア』の満腹は独りよがりな自己満足じゃない、全員のための「ごちそうさまでした」を考え抜いた作品であり、私もほかほかです。

『デリシャスパーティ プリキュア』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
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子ども向けのアニメシリーズの感想記事です。

・『ONI 神々山のおなり』

・『ふしぎの国 アンフィビア』

・『アウルハウス』

作品ポスター・画像 (C)ABC-A・東映アニメーション

以上、『デリシャスパーティ プリキュア』の感想でした。

Delicious Party♡Precure (2022) [Japanese Review] 『デリシャスパーティ プリキュア』考察・評価レビュー