マ・ドンソクの拳は日本刀より硬い…映画『犯罪都市3 NO WAY OUT』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:韓国(2023年)
日本公開日:2024年2月23日
監督:イ・サンヨン
はんざいとし のーうぇいあうと
『犯罪都市 NO WAY OUT』物語 簡単紹介
『犯罪都市 NO WAY OUT』感想(ネタバレなし)
マブリー!!!
「マブリー!!!」…そんな黄色い歓声が日本でも響き渡る。この人気はもはやグローバルです。
それは誰か。韓国系アメリカ人の俳優“マ・ドンソク”に他なりません。
圧倒的な肉体をチャームポイントとする俳優ならいくらでもいます。しかし、これだけ「可愛い」とチャーミングさに惚れ込む人が続出する男性俳優は早々いないでしょう。ましてや「マブリー」なんて可愛いあだ名をつけられるくらいに。
“マ・ドンソク”も人の通常サイズの頭部より太い腕の筋力以上に、この可愛さを使いこなしています。最近も韓国の若者の間で流行っている「砂からのハート自撮り」を自分でもやってみて、SNSのプロフィール写真に取り入れていました。“マ・ドンソク”がこれをやるとどんな可愛い子よりもキュートになるのだからズルいもんですよ。
その“マ・ドンソク”主演作にしてシリーズ化に大成功し、快進撃を巻き起こしているのが『犯罪都市』シリーズです。
「犯罪都市」って邦題はあまり適切じゃなかったかもしれませんね。もう都市とかどうでもいいですもん。これは純然たる“マ・ドンソク”絶対中心で成り立つ作品ですから。
2017年に1作目の『犯罪都市』が公開され、韓国国内で大ヒット。2022年に2作目の『犯罪都市 THE ROUNDUP』が続き、こちらは2022年の韓国映画の最高の興行収入を記録し、コロナ禍から韓国映画界を復活させたのは“マ・ドンソク”のパワーでした。
そして3作目となったのが本作『犯罪都市 NO WAY OUT』。
この『犯罪都市 NO WAY OUT』も特大ヒットで、もう天井知らず。国際的にも好成績をおさめ、“マ・ドンソク”の名は轟いています。どこまでいっちゃうんだ、マブリー。
『犯罪都市 NO WAY OUT』は日本では2024年2月公開で、プロモーションで“マ・ドンソク”も来日。「マブリー」の声援に可愛く答えてくれました。
ちなみにその後は2024年のベルリン国際映画祭で向かうことになり(『犯罪都市』シリーズの4作目がすでに公開待機)、忙しいです。それにしても韓国勢だと”ホン・サンス”監督なんかもベルリン国際映画祭に行ってるけど、“マ・ドンソク”はそこに並んでるのか…全然ベクトルの違う組み合わせだからな…。
ところで『犯罪都市』シリーズがどういう映画か知らないって? 大丈夫! 簡単です。“マ・ドンソク”が刑事の役で、悪い奴をぶん殴る! 以上!
2作目のときはベトナムが少し関わってきていましたが、3作目の『犯罪都市 NO WAY OUT』は、日本のヤクザが殴り込んできます(日本が舞台になるわけではない)。「マ・ドンソクvs暴力団」のタイマンです。
そういう顔触れなので、今回は日本の俳優もキャスティングされています。目立つのは『ゴジラ-1.0』でも世界に羽ばたいた“青木崇高”。正直、ゴジラと戦えるよりも、“マ・ドンソク”と戦えたほうが羨ましいな…。
また、『哭声/コクソン』で韓国国内受賞歴もある“國村隼”が暴力団の組長の役で手慣れた貫禄の演技を披露。
メインの韓国勢は、悪役に『神と共に』シリーズや『野球少女』の“イ・ジュニョク”。“マ・ドンソク”の殴られ役(サンドバッグ)、ご苦労様です…。
すっかりフランチャイズとして盤石なシリーズになってしまいましたが、見やすさはバッチリ確保。過去作を観ていなくても問題ないですし、「マ・ドンソク? 誰それ? 知らないな?」という初心者の方も本作を観れば一瞬で覚えられて一発ノックアウトは間違いなし。初めての人でもパンチの威力は手加減しません。
『犯罪都市 NO WAY OUT』を観る前のQ&A
A:3作目ですが、1作目や2作目を鑑賞しないと物語がわからないということもあまりないので、この映画からいきなり観ても問題ないです。
オススメ度のチェック
ひとり | :マ・ドンソクに魅了 |
友人 | :マブリー声援を! |
恋人 | :一緒にファンに |
キッズ | :暴力描写あり |
『犯罪都市 NO WAY OUT』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
2015年、韓国国内の真夜中の船場。とある船に人相の悪い男たちが集っています。麻薬などの密輸が密かに行われています。それは日本から韓国に持ち込まれたものでした。
そこに1台に車が到着。手下を引き連れて降りてきたのは身なりのいいひとりの男。麻薬捜査官である九龍警察署麻薬班長のチュ・ソンチョルです。しかし、取り締まりにきたわけではありません。実はチュ・ソンチョルは汚職に手を染めており、あろうことか、この麻薬を強奪し、自分で横流しして儲けていました。
それを嗅ぎつけられたときは、相手が警察であろうが容赦なく殺します。チュ・ソンチョルは自分の立場を悪用して、事件をもみ消すことも容易いのです。冷酷で残忍であることで怖れられる存在でもありました。
ところかわって、これまで幾度となく凶悪犯の逮捕に貢献してきたマ・ソクト刑事は、衿川警察署強力班副班長からソウル地方警察庁広域捜査隊副チーム長に異動していました。
今日も、白昼堂々と暴れまわる男たち相手に一戦を交わします。軽いフットワーク程度のノリで、刃物をだされても何もビビらず、腕っぷしひとつで解決。その力技は全く衰えておらず、向かうところ敵なしです。
ある日、女性の転落死事件があったビルに駆けつけます。事故のようにも思えますが、検死の結果、「ハイパー」と呼ばれる新型合成麻薬を服用していたことを確認。相当に危険な代物のようで、早急に摘発しないといけません。
取引の現場とされるナイトクラブに潜り込むと、中は大勢でごった返していました。熟練の勘で怪しい場所を特定。大柄のボディガードも一発ノックアウト。そこにいたのは密売人の日系韓国人ヒロシ。トイレで吸っている男を問い詰め、一瞬で密売の現場と関係者を制圧します。
捜査を進めると「ハイパー」を韓国で密売する大本である日本の暴力団「一条組」の情報を得ることができました。
一方、チュ・ソンチョルは中国麻薬マフィアのボスと裏で取引。「ハイパー」をさらに横流しして荒稼ぎする狙いです。以前は韓国の暴力団と麻薬密売で関わっていたのですが、そちらの相手が勢力を失うと、一条組韓国支部長のトモと癒着する方向へと舵を切り替えたのでした。
本家の一条組もこの韓国で起きている状況を把握。組長の一条は、殺しに長けたリキのチームを日本から韓国に送り込み、逆らう者を抹殺しようとします。チュ・ソンチョルもそれを迎え撃ち、徹底抗戦するつもりでした。支配権をめぐって両者とも引くつもりはありません。
まだ界隈のこの抗争を把握していないマ・ソクトたちは、地道に手がかりを追って怪しい人間をひとりひとり捕まえていきますが、しだいに麻薬戦争の本流へと首を突っ込むことになり…。
日本刀でも素手で戦う
ここから『犯罪都市 NO WAY OUT』のネタバレありの感想本文です。
『犯罪都市 NO WAY OUT』のオチ。マ・ソクトが殴って解決!
…はい、わかってましたね。そういうものです。いまどき、正義の拳ひとつで敵を吹っ飛ばして終わりなのは、マ・ソクトとアンパンマンくらいなものです。
最強キャラクターとしては『呪術廻戦』の五条悟と同等のネタっぷりか…。マ・ソクトはフィジカルだけで最強になってるけどね。
今回も腕っぷしだけでねじ伏せるという、ひたすらにパワープレイで事件を解決します。常に絶対正義の立ち位置にあり、なので観客は安心して見られる接待的な勧善懲悪モノ。“マ・ドンソク”が悪人をボッコボコにしている風景で観客はストレスを解消できればそれでいいという、「マ・ドンソク」というジャンルを体現するエンターテインメントを3作目も提供してくれました。
今作では実績を評価されたらしく(あの捜査スタイル、警察の職務規定を逸脱してない?!)、マ・ソクトはソウル広域捜査隊へと職場をチェンジ。これによってこれまで以上に大手を振ってあちこちに捜査の名目で首を突っ込むことができるようになっています。まあ、実際に突っ込むのはグーパンですが…。
それにしてもソウル広域捜査隊ですら収まりきっていない存在感だな…。宇宙からの侵略者と戦うとかのほうが似合ってる…(それは『エターナルズ』)。
マ・ソクトのアクションは、パワーファイターでありながらコメディとしても成立。リアルとユーモアの境界線をぶったぎるこの快感はやっぱりこのフランチャイズならでは。
今回の敵には、まず日本刀を駆使する一条組の刺客のリキ。さすがに鋭利な日本刀くらいの武器だと、マ・ソクトも警戒しながら戦うのですけど、普通に素手で攻略してましたね。いや、感覚がおかしくなるけど、一般的に日本刀に素手で立ち向かわないからね…。
その前に総合格闘技のマハとの戦闘もあったけど、もって1分もない感じだった…。
一条組の本家とは対峙しませんが、戦っていたら暴力団自体を壊滅させるのも不可能ではないでしょう。日本警察もマ・ソクトを借りてきたらいいんですよ。
そして今作のメインヴィランはチュ・ソンチョル。冒頭から極悪っぷりをギラギラと発揮しますが、彼もただのパンチのマトです。今回ばかりは警察組織の汚職も関わってくるので殴って解決するだけでは終われないだろうと思いましたけど、さも平然と殴ってフィニッシュだった…。とりあえず悪い奴だから殴っとけみたいな感じだ…。
笑っちゃうのが、韓国と日本の裏組織同士は互角に緊迫の戦いを繰り広げているのに、ひとたびマ・ソクトが乗り込んでくると、一気に一方的な独壇場としてやられっぱなしになるという…。
三つ巴というよりは、犬と猫の喧嘩にティラノサウルスが乱入してぶち壊すような、そういう圧倒的な弱肉強食を見せつけるのが本作の味で…。
マ・ソクトには逆らっちゃいけないよ…という教訓が治安をもたらすのです(でも結構この世界の犯罪者は歯向かってるほうだけどね)。
未知の成功を突き進む『犯罪都市』シリーズ
あらためて『犯罪都市 NO WAY OUT』を観ると、デカいアジアをグローバルに暴れまわるクライムサスペンスのエンタメを確立してみせたなと実感できます。
単一の国だけで展開するクライムサスペンスならいくらでもありました。日本でも最近は『孤狼の血』シリーズとかあったし…。
しかし、アジアの各国の映画業界は国内の市場だけに専念していることが多く、国内ヒットだけを狙っていればそれでいいのが通例でもありました。
それに対し、『犯罪都市』シリーズはどこよりも先にグローバルに飛び出すことに成功しました。韓国映画と言えば韓国と北朝鮮の二国間の緊張感を土台にするのが定番の材料でしたが、そこに縛られることもない。韓国以外のいろいろなアジア各国のクライムサスペンスの面白さを取り入れながら、どんどん吸収して進化していく。そんな最強のアジア網羅型のクライムサスペンスの特大フランチャイズが出来上がろうとしているのかもしれません。
こういう作品を確立しようとすると、やっぱりスーパースター俳優は必須なわけで、“マ・ドンソク”以外に任せられる人間はいない。本当に映画内だけでなく、業界においても無敵の人物になっているのではないでしょうか。
今、日本の映画業界もグローバルな売り込みに精力を注いでいて、ある程度の成功も積み重ねていますが、そのほとんどはアニメやゴジラなど既存の人気IPに依存しています。元から人気のあったフィクションのキャラクターが売れているのであって、新規開拓ってわけでもありません。
この『犯罪都市』は既存の人気IPでもないにも関わらず成功をしており、それは“マ・ドンソク”というスター性のある俳優が原動力になっています。世界中の人に認知されて支持される俳優を作り上げたというのは…しかもアジアからというのは、異例です。なかなか興味深い違いだと思います。『犯罪都市』の成功パターンは『ワイルド・スピード』に近いものがあるなとも思ったり。
4作目は本国公開直近で5作目も制作決定済み。未知の成功へと突き進む『犯罪都市』シリーズはどこまでいくのかわかりませんが、世界的な人気はますます加速すると思われます。
車に轢かれるマ・ソクト、回転ベッドで回るマ・ソクト…そんないろいろなマ・ソクトを愛好して眺めるだけでもいいですが、次のステージに進むには何が要るのか。
個人的には“マ・ドンソク”に並ぶような次のスター俳優を発掘できるかが鍵になりそうですけど、そう簡単に見つかるものでもないですしね…。“マ・ドンソク”が唯一無二すぎる…。
当面は“マ・ドンソク”を見ているだけで楽しいのでいいのですけど。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 100% Audience 96%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
関連作品紹介
マ・ドンソクが出演する映画の感想記事です。
・『バッドランド・ハンターズ』
・『白頭山大噴火』
作品ポスター・画像 (C)ABO Entertainment presents a BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A. ENTERTAINMENT production world sales by K-MOVIE ENTERTAINMENT ザ・ラウンドアップ ノー・ウェイ・アウト 犯罪都市ノーウェイアウト
以上、『犯罪都市 NO WAY OUT』の感想でした。
The Roundup: No Way Out (2023) [Japanese Review] 『犯罪都市 NO WAY OUT』考察・評価レビュー
#マドンソク #捜査 #警察