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アニメ『リコリス・リコイル』感想(ネタバレ)…女子高校生と銃とリアリズム

女子高校生と銃とリアリズム…アニメシリーズ『リコリス・リコイル』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Lycoris Recoil
製作国:日本(2022年)
シーズン1:2022年に各サービスで放送・配信
監督:足立慎吾

リコリス・リコイル

りこりすりこいる
リコリス・リコイル

『リコリス・リコイル』あらすじ

東京都内にある一軒の喫茶店「喫茶リコリコ」。そこで快活に働いて客からも評判がいい少女・錦木千束には裏の顔があった。それは日本の治安を影で守り、ターゲットを抹殺する極秘の公的治安維持組織「DA」に所属している通称「リコリス」という女子高校生の暗殺者ということ。千束はその中でも伝説的なスキルを有していた。そんな喫茶リコリコにワケありで転属してきた井ノ上たきなという同世代の少女が現れる。

『リコリス・リコイル』感想(ネタバレなし)

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喫茶店も何かと大変です

私は喫茶店にはあまり行かない人間なのですが(他人のいる空間でのんびり食事とかするのが苦手)、このコロナ禍で小さな喫茶店なんて間違いなく苦境に立たされたでしょうし、今は物価高騰で次の痛手を受けていると思いますから、応援したい人はどんどん行かないと周辺の喫茶店がなくなってしまいそうですよね。

喫茶店も何か別の事業でもやらないと経営が成り立たないかもしれませんけど、普通は喫茶店自体で手一杯だろうし、並行して他の仕事に手を出すなんて無理なんじゃないかな。

でも今回取り上げるアニメシリーズは凄いですよ。なにせ喫茶店の傍ら、要人警護・危険調査・敵対象排除までやってのけるのですから。

それが本作『リコリス・リコイル』です。

『リコリス・リコイル』、愛称「リコリコ」は、日本のアニメシリーズ。2022年の夏アニメの群れの中では最も話題になった作品のひとつとなりました。注目点は原作の無いオリジナルアニメだということであり、やはり原作ありきの人気作が大挙している昨今のアニメ界隈で、こういったオリジナル作品が目立てるのは嬉しいものですね(たまたま2022年夏アニメはエース級の原作人気作が乏しかったというのもあるだろうけど)。

本作は、日本にある一軒の喫茶店が舞台で、そこで働く女子高校生くらいの少女たちが主人公です。となると「お仕事系の日常モノ」に思えますが、実際はそれは表の顔。裏では極秘の公的治安維持組織に属しており、犯罪者を抹殺する仕事に手を染める少女たちなのでした。

要するに『ジョン・ウィック』みたいな「殺し屋が日常に潜んでいる」タイプのジャンルです。女子高校生が主役ということでは最近だと『ベイビーわるきゅーれ』とほぼほぼ合致しますね。

それでも喫茶店やりながら裏稼業なんて兼業できるのかという感じですけど、そのへんはわりと強引です。しかも、「喫茶店」という言葉から感じる軽さが吹っ飛ぶほどの、なかなかに壮大な世界観設定が飛び出します。

アニメーションの制作は『かぐや様は告らせたい』『心が叫びたがってるんだ。』などの「A-1 Pictures」。『ソードアート・オンライン』などでキャラクターデザインを務めた“足立慎吾”の初監督作となり、そのシリーズ&世界観構築も含めての実力が問われるところ。ストーリー原案は『revisions リヴィジョンズ』の脚本を手がけるライトノベル作家でもある“アサウラ”、キャラクターデザインは『この美術部には問題がある!』の“いみぎむる”が担当していますが、アクション重視で動いていく絵柄としてはいかにも「A-1 Pictures」ד足立慎吾”のお得意空間という感じですし、『リコリス・リコイル』は銃を軸にしたアクションなので、前述した『ソードアート・オンライン』の中の「ファントム・バレット編(ガンゲイル・オンライン)」と似たテイストですね。

なお、『リコリス・リコイル』の「リコリス(lycoris)」とは「ヒガンバナ」のことで作中でもアイキャッチなどで多用されているのですが、たぶん仏教的も「死」を連想する花なので、それでセレクトしたのだと思いますが、キャラクターが口に咥えているアイキャッチが作中であったのですけど、ヒガンバナは有毒なのでマネしたら危ないということで差し替えとなる一件も起きました。まあ、それは安全のためにやむを得ない対応か…。「ヒガンバナを食べて死んだ!」という事例は今はほとんどなく、稀にニラなどと混同して食事として食べてしまい、食中毒を起こす事例はあります。口に咥えたくらいで即死したりはしませんが、万が一、『リコリス・リコイル』へのファン愛が突っ走ってヒガンバナを舐めました!っていう人がいたら、迷わず病院で診てもらってください。

ちなみに「リコリス菓子」の「リコリス(licorice)」とは綴りが違う別物です。

アニメ『リコリス・リコイル』は人気を獲得して作品支持基盤を固めたので今後も展開が続くでしょう。気になる人は出発点となるアニメをぜひどうぞ。

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『リコリス・リコイル』を観る前のQ&A

✔『リコリス・リコイル』の見どころ
★キャラクター・アクション・世界観のアンサンブル。
✔『リコリス・リコイル』の欠点
☆やや話の展開は強引。後半はとくに粗が目立つ。
日本語声優
安済知佳(錦木千束)/ 若山詩音(井ノ上たきな)/ 小清水亜美(中原ミズキ)/ 久野美咲(クルミ)/ さかき孝輔(ミカ)/ 河瀬茉希(春川フキ)/ 小市眞琴(乙女サクラ)/ 上田燿司(吉松シンジ)/ 榊原優希(ロボ太)/ 松岡禎丞(真島) ほか
参照:本編クレジット
作品を観れます!
『リコリス・リコイル』
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オススメ度のチェック

ひとり3.5:世界観が好きなら
友人3.5:趣味の合う者同士で
恋人3.5:ロマンス要素は薄い
キッズ3.5:殺人描写はあるけど
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『リコリス・リコイル』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『リコリス・リコイル』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):命、大事に!

気持ちのいい朝。テレビのニュースでは「延空木」(えんくうぼく)という新しい電波塔の完成を紹介していましたが、錦木千束(にしきぎ ちさと)はそんなこと気にせず、電話で呼び出され、バイクで静かな街を出発します。

この日本では治安を守るべく、極秘の治安維持組織「DA」が存在し、社会に潜む危険因子となる人間を抹殺していました。その実働部隊となるのが「リコリス」と呼ばれる少女たち。殺人技術を叩きこまれた彼女たちは普段は平凡な女子高生に偽装した姿で潜伏しており、任務を与えられると仕事をこなします。千束もそのひとりでした。

今、DAと深いつながりのあるミカは、スナイパーライフルで緊迫した状況を見つめていました。とある建物の上階でリコリスのひとりが人質になっていたのです。周囲には他のリコリスも待機。突入の許可はでません。

ところがリコリスのひとりである井ノ上たきなが独断で機関銃をぶっ放し、運よく人質救出に成功します。千束が到着する寸前にもう事態は解決していました。

事件は解決したものの、DAはたきなの行動を許しません。司令を無視したたきなは転属となり、喫茶店「喫茶リコリコ」に異動させられます。この何気ない喫茶店もDAの管轄なのだそうです。

さっそく店を訪れたたきなは席に座っていた女性(中原ミズキ)を千束だと思い込み、丁寧に挨拶します。ミズキは元DAの情報局であると店長のミカは説明します。

そこに千束がやってきました。千束はこの喫茶店で働いており、DAとは距離をとっています。「よろしく相棒」とハイテンションで元気です。

たきなは千束に質問します。「千束さんはどうしてDAにいないんですか」「問題児だからだよ」「優秀なリコリスだと伺っています」…千束は旧電波塔を一人でテロリストから護ったとされる逸話がありました。でも千束は控えめな態度です。

一方、DAでは取引現場にあったはずの消えた大量の銃が問題になっており、DAの司令官である楠木は対処に追われていました。

千束はあちこちで仕事しており、幼稚園の手伝い、日本語学校の講師、暴力団とさえも得意客です。

「この部署は何をするところなんですか?」「困っている人を助ける仕事だよ」

能天気な千束の雰囲気にあまり納得いかないたきな。しかし、ある日、護衛対象である女性を囮にする戦法を用いたたきなでしたが、千束はそれに怒ります。千束は非殺傷で敵を制圧。実力は確かでした。でも誰も傷つけないということにこだわるようで、そこにはまだたきなも理解ができません。

喫茶リコリコの制服姿で働き出すたきな。ここで働きながら成果をだし、DAに戻ることが目標でしたが、千束の存在がたきなの生き方を揺らしていき…。

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陽と陰の2つのバディ

『リコリス・リコイル』の一番の魅力は「バディ」で、錦木千束と井ノ上たきなというかなり両極端な2人が絆を深めていく王道の展開は素直に楽しいです。

とくに第3話で、DAに戻るという理想を挫かれたたきなに対して、喫茶店リコリコも居場所になりうること、ゆっくり自分の道を考えていけばいいと励ますシーンは、この作品のエモーショナルなピークとなる見せ場だったんじゃないかなと思います。「千束さん」から「千束」になる瞬間としてはこれ以上ないベストなシチュエーションです。

ここは冒頭からずっと発揮される千束の天真爛漫すぎるくらいにポジティブな性格が活かされる場面でもあり、声を演じた“安済知佳”の作るナチュラルな空気感もあって、とても自然にマッチしていたのではないでしょうか。

千束&たきなのバディの面白さを引き立てる部分としては、非殺傷でアクションをしなくてはいけないという要素があり、そういうスキルの共有でもバディ・ストーリーを盛り上げます。まあ、結構思いっきりぶん殴っていたので怪我させているんじゃないか?とか思いますし、千束は弾を完全にかわせるとか、チート級の能力も保有しているので(クルミも天才ハッカーだし)、アクションにおける戦術の面白さというところまでは達していないのですけど、あくまでバディを引き立たせる仕掛けとしては効いていたかな。

そしてもうひとつの「バディ」も忘れてはいけません。それはミカ吉松シンジです。この大人の男性2人は本作の裏の主軸になるバディであり、同性愛関係を示唆するシーンもありましたが、とにかくこの2人は過去は意気投合しており、千束に人工心臓を与えて延命し、実の娘のように育てる父親たちでもありました。しかし、千束に愛情をかけすぎたミカは吉松と溝ができ、それが今作の騒動の発端となります。結末は悲しい引き金をひくことになりますが…。

この陽と陰のバディが表裏で接着しているからこその『リコリス・リコイル』の絶妙なバランスがあったと思います。これが千束&たきなのバディだけだと物語がお気楽に軽すぎたでしょうね。もうミカ&吉松シンジのバディが無くなったのなら、今後は作品が緩くなりすぎないように引き締める別のバディを考えないといけなくなるかもですね。

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まだまだ進化する伸びしろはありそうだけど…

『リコリス・リコイル』の前半は、典型的な日常モノ(Slice of life)の中に少しばかりの非現実を混ぜていくというスタイルであり、この前半部は比較的あっさり見れるので楽しいです。そして徐々に巨大な陰謀が覗いていく展開のさせ方もスリリングでした。

ただ、やはり陰謀の全容が露わになる後半はかなり風呂敷の広げ方も閉じ方も雑で、さすがにそこは粗が目立っていたのは残念です。

テロリストである真島の作戦も釈然としないところが多く…。DAのリコリスの存在を世に知らしめるために、わざと銃をばらまいて、映像で公開してやる…というのは、計画として成り立っているのだろうか…。銃を拾っても即犯罪を起こすとは限らないし、リコリスがでる前に警察沙汰になるだけでは…。いくら日本は治安がいいと言っても犯罪は普通に起きていますからね。皮肉なことに2022年7月に発生した“安倍晋三”元首相の暗殺事件もあって、私たち日本人の中で日本社会における銃事件のリアリティがアップデートされたばかりだったというのもこの作品には不運だったかな、と。犯罪を起こしたい奴は自家製の銃でそれを実行することも容易いし、公安だろうとそれを未然に防げもしないと、広く国民に知らしめた事件だったわけで…。

そもそもこのジャンルはフィクションであってもリアリズムをどこまで構築するかでその説得力はガラっと変わってきます。『ソードアート・オンライン』みたいにバーチャルな空間で陰謀を巻き起こすなら突拍子もないことでもある程度観客は飲み込めますが、現実社会となると違和感が先立つものです。

また、本作の世界観の要である女子高校生の暗殺部隊「リコリス」についても、その実在感を突き通す力はちょっと弱かったなと思います。もちろん現実はオタクの需要ありきでの企画なんでしょうけど、それを作中ではどう納得させるかです。例えば、「JKは都会の迷彩服」なんて話が作中内で説明風に言及されていましたけど、その発想もやっぱり甘く、実際の女子高校生なんてただでさえ視線を集めやすいし、それこそ弱い立場で犯罪のターゲットにされやすい存在ですからね。

殺しの道具とみなされる残酷性を物語上議論するならば、やはりそこにはジェンダーの視点で論じないとリアリティは薄いですし、逆にそれが上手く物語に組み込めていれば、この『リコリス・リコイル』は化けるくらいには突出したオリジナリティを見せられた可能性もあったと思います。男の子版「リリベル」が少女以上に雑に作中で使われていたように、作り手はあまりジェンダーが作品の質を上げるツールになるとは考えていない感じもする…。これはもったいないことです。

日常パートでも、女の子同士のイチャイチャした描写に「male gaze」な空気をださないようにするなど、ありがちなマンネリ消費を回避する必要性は今作でも課題として残るかな…。

結局、「可愛い女の子に銃を持たせる」という「ミリタリー・ガール」なジャンルの分類としてビジュアルだけは上質に見えている程度であり、まだまだジャンルとして一皮むけるようなフレッシュさは薄いとは感じました。

とは言え、まだ始まったばかりなので『リコリス・リコイル』の伸びしろはわかりません。積極的にブラッシュアップしていけば、今後はびっくりするような真価を発揮するかもですね。

『リコリス・リコイル』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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作品ポスター・画像 (C)Spider Lily/アニプレックス・ABCアニメーション・BS11 リコリスリコイル

以上、『リコリス・リコイル』の感想でした。

Lycoris Recoil (2022) [Japanese Review] 『リコリス・リコイル』考察・評価レビュー