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アニメ『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』感想(ネタバレ)…友情と恋愛の反復横跳び

わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)

激しすぎて筋肉痛になる…アニメシリーズ『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:There’s No Freaking Way I’ll be Your Lover! Unless…
製作国:日本(2025年)
シーズン1:2025年に各サービスで放送・配信
監督:内沼菜摘
恋愛描写
わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)

わたしがこいびとになれるわけないじゃん むりむり むりじゃなかった
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』のポスター

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』物語 簡単紹介

中学生のときに友達付き合いの失敗で孤立してしまった甘織れな子は、高校では心機一転しようと張り切り、入学式の日に誰もが憧れる完璧と評判の女子である王塚真唯に勇気を振り絞って声をかけて、見事に友達となる。こうしてクラスの中でも特別なグループの輪に加われたが、慣れない人間関係に内心では焦っていた。そんな中、王塚真唯に恋人になってほしいと言われてしまい…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の感想です。

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』感想(ネタバレなし)

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無理は無理でもそっちの無理

私が最近、「無理だ」と思ったことは…「夜遅くまで起き続けること」でしょうか…。もともとあまり徹夜はしないようにしているのですが、今は疲れたり眠くなったらベッドで横になるようにしています。そうじゃないと体と心が持たない…。

今回紹介する日本のアニメシリーズはやたらと無理であることの主張が激しいタイトルですが、その題名に反して、わりと何でも包容力のある中身です。

それが本作『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』

私がこのタイトルを初めて見たとき、「どう英訳するんだろう?」と素朴に疑問に思ったのですけど、本作の英題は「There’s No Freaking Way I’ll be Your Lover! Unless…」だそうです。無難な訳し方ですが、日本語特有の勢いは表現できていないな…。

日本での略称は「わたなれ」らしいですけども、あれだけ「無理」と連呼しているのに略称には入らないのか…。「こいむり」とかじゃダメなのかな…。

本作は集英社の「ダッシュエックス文庫」のレーベルで2020年から出版されている“みかみてれん”によるライトノベルが原作。同年に漫画版も出版されています。イラストおよびキャラクター原案は『ささやくように恋を唄う』でおなじみの“竹嶋えく”です。

2025年に「studio MOTHER」によって、監督が“内沼菜摘”、シリーズ構成が“荒川稔久”の座組でアニメ化となりました。

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』は、まごうことなき「百合」作品であり、女子高校生を主人公にガールズ・ラブを主題しているロマコメです。

タイトルが若干誤った印象を招きやすいですが、「同性同士の恋愛なんてありえない!無理だ!」というホモフォビアな内容では微塵もなく、この「ムリ」は「主人公が人付き合いが苦手で非社交的な性格ゆえに、友達関係でもいっぱいいっぱいなのに、恋愛関係なんてもっと無理だ!」という意味合いです。

本作の主人公の女子高校生はとある同級生の女子と「友達」であろうとし、一方でその同級生の女子は「恋人」であろうとし、その両者の思惑がぶつかり合う…というのが一応の主軸。だいぶコメディ要素の強いラブコメですし、なんとなく察しがつくようにハーレムものに転がっていくのですが、それが友情であれ恋愛であれ人間関係はしっかり描いています。

後半の感想では、そんな『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』を多少なりともクィア批評してみています。

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『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』を観る前のQ&A

✔『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の見どころ
★主人公の無自覚なモテる才能とハーレム関係模様。
✔『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の欠点
☆キャラクター設定や演出はベタすぎるところもある。
日本語声優
中村カンナ(甘織れな子)/ 大西沙織(王塚真唯)/ 安齋由香里(瀬名紫陽花)/ 市ノ瀬加那(琴紗月)/ 田中貴子(小柳香穂)/ 相良茉優(甘織遥奈) ほか
参照:本編クレジット

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 2.0
性行為に言及するシーンがあります。
セクシュアライゼーション:一部あり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

甘織れな子は高校の教室での同級生たちとのお昼休みのランチ中も内心では慌てふためいていました。相槌を上手くできなかったかもしれない…。自分のせいで変な空気になったんじゃないか…。今の目の前で繰り広げられている会話にもついていけていない…。でも何か言わなくては…置いていかれる…。

なぜこうも静かにパニックになっているのかと言えば、甘織れな子は内向的で人間関係が苦手だからです。中学時代に友達付き合いに失敗し、孤立してしまったのがその始まり。当時はそのまま部屋に籠ってゲームするだけの日々を過ごしていましたが、小学生の頃の同級生はSNSを見ればみんな恋をしたりと青春を謳歌しているようで、急に焦りを感じました。

そこでイメチェンして、知り合いのいない高校に入学し、これからはスクールライフを充実させると意気込んだのです。そして入学初日に運命的な出会いを果たします。

それは王塚真唯でした。彼女は「スパダリ」の異名を持つ完全無欠の高校生で、男女問わず誰もが憧れる存在。もしあの王塚真唯と友達になる…なんてことができてしまえば、それは最高のスタートを意味します。

やぶれかぶれで甘織れな子は「お友達になりませんか?」と声をかけると、王塚真唯はあっさり受け入れてくれました。こうして王塚真唯を中心に瀬名紫陽花琴紗月小柳香穂らのグループに加わるという快挙を遂げます。学校で大勢が憧れるグループのひとりになったのです。

けれども2ヶ月で限界を迎えました。自分は変に思われているのではないかという劣等感が心の中で爆発。昼食中に耐えられなくなって屋上にひとり逃げ込みます

ところが、そこに王塚真唯が追いかけてきて、驚いた甘織れな子は落下。その状況に王塚真唯は躊躇なく自分までも屋上から飛び立ち、「私は運がいいから大丈夫」と圧倒的な自信で抱きしめ、2人は木に引っかかって助かります。どうやら飛び降りと勘違いしたらしいです。

甘織れな子は王塚真唯に「大勢の輪に入るのが苦手」と告白。それを妙に満足そうに聞いていた王塚真唯は納得し、「私も似たような気分になることがある」と彼女なりの人間関係の悩みを告白してきます。互いの不安を共有し、2人の仲は深まりました。甘織れな子は「たまには休んでもいいんだよ」と王塚真唯に語りかけ、王塚真唯も「本当の友達になろう」と言ってくれます。そして甘織れな子も「真唯」と下の名前で呼ぶことにするのでした。

しかし、翌日、さらに急転直下の出来事が起きます。またも屋上にて、王塚真唯は「どうやら私は君をひとりの女性として好きになってしまったようだ」と甘織れな子に愛を伝えてきたのです。

甘織れな子は驚愕しつつ、「私は親友がいいの、恋人は不安定で気まずくなりやすいから…」と受け止めることができません。

すると王塚真唯は動じることなく、折衷案を提案。それは「友達と恋人を交互に試す」というもので、期間は1か月で、どちらが認めさせられるかを勝負するとのこと。

王塚真唯が髪を結んでいたらそのときは「親友」、下ろしていたら「恋人」同士。

どちらの関係がこの2人にはお似合いなのか…。

この『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/10/30に更新されています。

ここから『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』のネタバレありの感想本文です。

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※ムリというか、わからない!?

いろんな百合作品をみてきて思うことがあるのですが、百合作品における異性愛規範の在り方でその作品の立ち位置を分けることができますよね。わかりやすく「これぞヘテロノーマティブ!」みたいなものがデデンと顔面に突き付けられることはあまりなく、どちらかと言うとその作品ごとに絶妙なニュアンスで混ぜ込まれる傾向があるのも多いですが…。その異性愛規範の捉え方がその作品の雰囲気そのものを構成することさえあります。

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の場合、目立った異性愛規範はありません。それは第1話の王塚真唯が甘織れな子に愛の告白をするシーンで明らかに示されます。

「渋っているのは、私が女だからか」との王塚真唯の懸念に甘織れな子はそうではないと答え、以降、その観点は論点にもなりません。甘織れな子の妹も「そういう関係なの? すごい!」で片づけてくれます。

とは言え、甘織れな子も「王塚真唯はカッコいいから女の子にもモテるだろう」「憧れ」のレンズでまずは捉えようとします。これ自体は今の日本社会の若い世代のコミュニティにはよくある「女から女への強い感情」の解釈のしかたです。恋愛とは断言せず、「憧れ」とオブラートに包むことで、異性愛規範を刺激しないやりかたでもあります。

しかし、『ささやくように恋を唄う』のように「憧れ」から「恋愛」へとその狭間で自身の体感を調整していく過程をじっくり描くことにこの『わたなれ』は主眼を置く気はないようです。

序盤から言い逃れできない勢いで待ったなしで恋愛へと突き進んでいきます。これはこれで百合ジャンルの良いところかもしれないですね。強引だろうが何であろうが、現実の規範を突破する…その思いきりのよさ。

甘織れな子は「勝負」(そうは言っても仕掛ける側があからさまに有利なゲームで勝負になっていないのですけど)の中で「友達」と「恋人」の間を振り回されるように往復を高頻度で繰り返し、だんだんと視聴者も同様に何が何だかわからなくなってきます。

「友情と恋心ってそんなに違いがない気がしてきた、友達だと思えば友達で恋人だと思えば恋人、曖昧なものなんじゃないか」と自評するのは、冷静な批評なのか、やぶれかぶれの混乱の結果なのかは、作風的な区別つきづらいですが…。

甘織れな子は「人に恋愛感情を抱いたことはない」と語っていますが、こういう恋愛知らずの設定は百合作品の主人公によくありがちです。たぶんそのほうが恋愛というものを白紙で批評できるので都合がいいのでしょうかね。

瀬名紫陽花が「友情と恋心の違いはえっちな気分になるかどうか。友達相手にそういう気分になったりすることある?」と自論を述べますが、その視点も無視しないのは、セックス・コメディに手を伸ばしかける本作ならではかな。

それでも、クワロマンティックのようなアイデンティティを論じることもできるくらいには射程の広さのある作品ではあると思います。

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※わたし、愛され主人公だった!?

そんな堂々巡りの恋愛論はさておくかのように、『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』は、ハーレムものに突き進み、エンタメ感が増します。

れな子と真唯で「れまフレ」と作中で言及されるメインカップルだけでなく、琴紗月からも矢印が伸び、瀬名紫陽花からも矢印が伸び、さらにさらに琴紗月はもともと王塚真唯に好意を抱いており、その矢印は混線。

その中心の自称「陰キャ」&他評「凡庸」のこのピンク髪の甘織れな子は「ぼっち・ざ・ゆり」な唐突なモテ期が到来。いかにも主人公らしい天然女たらしとラッキースケベ的なパワーで、「キス&風呂に一緒に入ること」はいともたやすく達成。本当に恋愛初心者なのか…ベテランゲーマー並みの攻略タイムアタック記録をみせます。

もちろん、本作をただのハーレムものと断じるのは語り不足かもしれません。女性同士のハーレムものを真面目にやること自体がまだまだ新鮮な開拓地でもあるでしょう。

「だいたいおっぱいがなんだ、私にだってあるんだ」とか、セリフも正直面白くはあったし…(でもおっぱいは男性にもあるよ?)。

また、甘織れな子の場合は、ここに“男子との付き合い”話に苦手意識があるという要素が加わり、そんな彼女が(共学にもかかわらず)女子たちのグループの中で意外と女子だけの空間を保持し、そこでやっと自分の愛され方に気づく…というのはそれはそれでじゅうぶんにエンパワーメントのある物語だとも思います。

キャラクター造形が意図的にベタな配置になっているので、クリシェに依存しすぎる点はややもったいないところでもありましたが…。私としては、スパダリの王塚真唯は開き直って観れるけど、瀬名紫陽花や琴紗月の親の労働含めた家庭環境の描写は、中途半端さを回避する余地はあったかなと感じました。

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)
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関連作品紹介

日本のアニメシリーズの感想記事です。

・『私の推しは悪役令嬢。』

・『私の百合はお仕事です!』

・『やがて君になる』

以上、『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)みかみてれん・竹嶋えく/集英社・わたなれ製作委員会

There’s No Freaking Way I’ll be Your Lover! Unless… (2025) [Japanese Review] 『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』考察・評価レビュー
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